それ行け!! 派遣勇者(候補)。33歳フリーターは魔法も恋も超一流?

初老の妄想

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派遣勇者の進む道

163.空へ

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■エルフの里
 ~第16次派遣1日目~

 タケルが荷台に乗って空から降りて行くと、広場にはエルフ達が続々と集まってきた。タケルを興味深そうにみていたが、質問はリーシャが一手に引き受けてくれた。空飛ぶ絨毯ならぬ空飛ぶ荷台が出来たのは素晴らしいが、この荷台を持って帰る方法を考えないといけなかった。

 -転移でそのまま行けるかんじゃない!?

 タケルは難しく考えるのをやめて、荷台と一緒に転移することに決めた。だが、そのためには大きな転移ポイントを確保しないといけない。スタートスの転移の間は使えないし、エルフの里も集会所前は人通りが多いから都合が悪いので、ノルドの小屋の前の空き地を利用させてもらうことにしよう。

 転移ポイントとして埋めてある聖教石を土の中から回収して、荷台に乗ってノルドの小屋まで飛んで行った。小屋の中からは今日もリズミカルな槌音が響いていた。

「ノルドさん、こんにちは!」

 扉を開けて小屋の中に入ると、ノルドはタケルを見て皺だらけの顔の皺をさらに増やした。

「うむ、よく来たな。お前からの頼まれ仕事が何本かできておるぞ」

 ノルドは金槌で机の上に並べた山刀を差し示した。大きな机の上には革の鞘に収まった刃渡り40㎝程の短刀が並んでいた。15本揃っているうちの1本を手にして鞘から刀身を抜いて光にかざす。刃先の部分だけが白く輝いている綺麗な短刀だった。背中のリュックからレポート用紙を取り出して、1枚を刃に当てると抵抗感なく紙が二つに分かれる。

「ノルドさん、素晴らしい出来栄えですね! 形も切れ味も最高ですよ」
「そうか、気に入ったならそれで良い」
「では、これを町で売ってもらいましょう。代わりに欲しいものはありますか、焼酎は別にして」
「うむ、わしには無いが里の者が必要とするものがあれば、持って来てやってくれ」
「わかりました! では、後でまた来ますので、よろしくお願いします」

 タケルは今日の夜はここに焼酎を持って、もう一度来る予定にしていた。荷台を作ってもらったお礼をしたかったのだ。リュックにノルドの山刀を納めて小屋の外に出て、小屋の前の広い空き地に置かれた空飛ぶ荷台を改めて眺めた。

「リーシャ、このあたりに縄を張って入らないようにしてもらえないかな?」
「それは構わないが、何をしたいのだ?」
「ここから荷台でスタートスと行き来したいんだよ。荷台が大きいから、場所を確保しておかないとね」

 ■ムーアの町 レンブラント商会

 荷台の発着場設定はリーシャに任せて、タケルはマリンダと二人でレンブラントの所へ山刀を持ってきていた。

「これをできるだけ高値で買い取っていただきたいんですよ」
「ほう、これは・・・、見事な刃ですね? どこで加工されたのですか?」
「エルフの里です。鍛冶職人が神と呼んで崇めている方が作ってくれました」
「なるほど・・・、良いでしょう。通常のルートでは無く、目の肥えた方に回してみましょう。セントレアのイースタンさんにも声を掛けてみます」
「よろしくお願いします」
「ところで、タケル様。塩の方ですが・・・」

 前回の獣人村でも船で飛ぶことに夢中になって、タケルは塩の事をすっかり忘れていた。

「あ、ああ、スミマセン。明日にはお持ちしますので、もう少しだけお待ちください」

 今日もこれから獣人村に行くから、あるだけ持って帰って来れるはずだった。

■スタートス 聖教会裏の空き地

 タケルはスタートスの空き地にも大きな五角形になるように光聖教石(転移用)を埋めて、その周りに木の杭を打って縄張りをした。

「マリンダ、ここには教会の人も入らないようにしてもらって良いかな?」
「もちろんです、勇者様の場所として誰も入らないように皆に伝えておきます」
「よし、じゃあもう一度、エルフの里に戻ろうか」
「はい」

 マリンダは二人でムーアに行ったことでかなりご機嫌を直してくれたようだ。転移ポイントの中央で寄り添いながら笑顔を向けてくれた。戻ったエルフの里でもリーシャが同じように荷台を囲むように縄張りを張ってくれていた。

「良い感じだね。これで、スタートスとエルフの里の間は荷台で転移できるようになった」
「うむ、里の者にもここには入らないように長老から伝えてもらっている」
「いろいろとありがとう。そうだ、ノルドさんから里のみんなが欲しい物を買って来てやれって言われたけど、何が良いかな?」
「そうだな・・・、お前のおかげで鉱石が手に入って道具が作れるようになったから、獣人達のように不自由はしていないが、やはり着る物が一番足りないかもしれないな。織機がないから、綿布はこの村の中では作れないのだ」

 確かにエルフ達は麻と毛皮の服ばかりで綿の下着を着ていなかった。

「よし、まずは綿の服をたくさん買ってこよう。その後で織機を持って来られないかレンブラントさんに相談してみるよ。じゃあ、とりあえず、スタートスに荷台と一緒に戻ってみよう」

 エルフ達も自立するためにはここで布が作れる方が良いだろう。この世界の織機がどれぐらいの大きさか判らないが、この荷台になら乗るような気がしていた。

 タケルは光聖教石を手に持って天にかざした。

 -アシーネ様、少し大きいですけど。荷台ごとスタートスにお願いします

「ジャンプ」

 タケル達の目の前の景色が一瞬で変わり、縄張りの向こうで大きな荷物をたくさん持っているマユミ達と目が合った。

「あら? 変な縄が張ってあると思ったら、タケルが戻って来たわ」
「そっちも、今戻って来たの?」
「はい、ゲイルで色々買い込んできましたけど・・・、その四角い箱はなんですのん?」
「これか? これはね、空飛ぶ荷台だよ。丁度良かった。荷物を積んで皆もこの荷台に乗り込んでくれ」
「ってことは、これで飛べるようになったんですか!?」
「ああ、風の精霊にお願いしたら、簡単に飛ばせてくれた。その後は俺一人でも問題ない。チョー楽ちんだから、この荷台に乗せて神殿まで行こう」
「落ちたりはせーへんですよね?」
「それはだいじょうぶだよ。精霊のお墨付きだからな」

 本当は其処までの自信があるわけでは無かったが、安心させるために笑顔で嘘を吐いてみた。メンバーは素直に荷物を先に積み込んでから荷台に乗り込んだ。全部で7人と大きな荷物がたくさんあったが余裕で積み込めた。

「じゃあ、スタートスでの初飛行と行きますか!」

 タケルが腕輪を握ってイメージを伝えるとふわりと荷台は地面から持ち上がった。

「うーわ! 本当に飛んだ! うわうわ、どんどん高くなっていく!」

 マユミの騒々しい実況中継通りに荷台は上昇して、教会の屋根や周りの木々を見下ろす高さまで昇った。

「ダイスケ、全然揺れないだろ?」
「ええ、不思議な感じですね。硬い地面にいるみたいな感じです」
「そうなんだよ、それが精霊マジックだな。精霊の力で自動的に姿勢を制御してくれているんだ。俺が色々考えると良くないらしくてね、何も考えずに“飛べ”“動け”って命令するだけの方が良いらしい。じゃあ、神殿までの短い旅ですが、ごゆっくりお寛ぎください・・・」

 タケルの変なアナウンスが終わると荷台は空を滑るように泉に向かって飛び始めた。皆は恐る恐る縁から下を見て、高さと速度を確認している。

 とうとう、自分だけでなく全員で移動できる空飛ぶ荷台まで手に入れた。移動手段は転移とこの荷台を組み合わせれば自在にドリーミア中を回ることが出来るだろう。魔竜が何処に出現したとしても4日の派遣期間中にたどりつけるはずだ。

 -後は魔竜が現れるまで、ひたすら鍛錬するしかないのかな・・・

 未だに魔竜が何かは謎のままだったが。
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