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10. 小話 聖女(カンジーン視点)
リリアージュは無垢だ。自分自身についても、とても謙虚でおごる事がない。
結婚式でリリアージュと俺が光りを帯びた事についても、神様が祝福してくださったから、と素直に喜んでいる。自分が聖女だとは考えもしていない。
だけど、乙女ゲームの設定ではリリアージュの莫大な魔力を貰う事で主人公の聖なる力が目覚める事になっていた。ゲームでは主人公が無垢で謙虚な女の子だったが、現実では主人公のウンデとリリアージュの性格は全く逆だった。
それに多分リリアージュには聖なる力があると思う。どこかで二人が入れ替わったのかもしれない。
「カンジーン様、ウンデは聖女に成るのかもしれないんです~」
学園でウンデが俺にすり寄って甘えた声を出す。でも、それを気にくわない取り巻き達がすぐに間に入ってくれるのは有難い。
「いや、ウンデは今でも聖女じゃないか」
「ううん、聖女みたい、じゃなくて本当に聖女になるの」
「そうか、ウンデは聖女に相応しいと思う」
「ふふふっ、聖女みたいじゃなくて聖女に成るのに、もう皆、びっくりするわよ」
ウンデは自信たっぷりに聖女に成るのだと言っていたけど、あれは乙女ゲームのシナリオを知っているからの自信に違いない。
時々、人が見てないと思って独り言をブツブツ呟いていることがあって、それを聞いてぞっとした。
「ふふふっ、皆に傅かれるなんてとてもいい気持ち。このままハッピーエンドにゴーよね。でも、結婚相手だけは一人だから、それまでは色んな人と甘い一時を楽しまなくては。もう、主人公なんて最高! でも、リリアージュの顔が綺麗なのはムカつく。あの顔、グチャグチャにしてやりたい。なんで、私は平凡可愛い主人公なんだろう? 非凡美しい、さらに身分ありの主人公でもいいのに、そこは不満だね」
と言いながらウンデはそこに咲いていた花を握りつぶした。
「まぁ、誰だか知らないけど、リリアージュの顔を氷の魔女の挿絵にしてくれたのは良かった。良い仕事をした、だね。おかげでリリアージュの悪事をワザワザ暴かなくても皆に悪評が広がってとても楽だわ~」
ウンデはニヤニヤしながら独り言を言っていたが、とても気持ち悪かった。なるべく近づきたくなかったが、リリアージュに危害を加えるかもと思ったら、動向を把握しておく必要があった。
それにしても、ゲームではなかった、リリアージュそっくりの挿絵は誰が描いたのだろう?
『切り裂くナイフ』を俺が確保できたのは本当に良かったが、このナイフ、どうなっているんだろうと見ている時にリリアージュが後ろからそっと忍び寄って来た事があった。
そしてそっと後ろから抱き着いて、それはとても嬉しいんだけど、『切り裂くナイフ』を手に持っていたので、リリアージュの手にナイフが当たってしまった。
ナイフがリリアージュの手に触り、指先が少し切れてしまったのを見て驚いた俺は思わずリリアージュの手を持って指を口に含んでしまった。
リリアージュの血は甘かった。いや、本当に甘かった。俺は吸血鬼ではないはずなのに。
これは、『切り裂くナイフ』におれの魔力を流しておいたせいだろうか。
そして、思いがけずリリアージュの指先に傷をつけてしまったのでまさか、このまま傷口が塞がらないなんて、事は……と思ったら、無事に傷口は綺麗に治った。そう、直ぐに跡形もなく治ってしまったのだ。
「あら、傷が小さいと舐めたら治ってしまうのね。ありがとう、カンジーン様」
無邪気にそう言ったリリアージュに
「そんなわけないだろう!」
とは言わなかったが
「多分、愛の力だね。誰にも内緒にしよう」
と口止めした。
それ以降、リリアージュの魔力が俺に少しだが流れてくるようになったから、『切り裂くナイフ』の力は本物だ。
結婚式でリリアージュと一緒に俺も光ったのは、リリアージュが眩く光り過ぎて、俺は目立たなかったけど、俺自身も発光していた。どうやら、リリアージュと俺は連動しているみたいだ。そう、俺にも聖なる力が少し宿っている。
やはり、本当の聖女はリリアージュだったのだろう。ウンデはリリアージュの聖女の力を奪うはずが失敗したという事だな。
でも、聖女に認定されるのは避けたい。教会とのやり取りは必要だろうけど、正式な夫という立場は有難い。
絶対に教会には渡さない。
リリアージュには穏やかに幸せに過ごしてもらいたい。俺の側で。
結婚式でリリアージュと俺が光りを帯びた事についても、神様が祝福してくださったから、と素直に喜んでいる。自分が聖女だとは考えもしていない。
だけど、乙女ゲームの設定ではリリアージュの莫大な魔力を貰う事で主人公の聖なる力が目覚める事になっていた。ゲームでは主人公が無垢で謙虚な女の子だったが、現実では主人公のウンデとリリアージュの性格は全く逆だった。
それに多分リリアージュには聖なる力があると思う。どこかで二人が入れ替わったのかもしれない。
「カンジーン様、ウンデは聖女に成るのかもしれないんです~」
学園でウンデが俺にすり寄って甘えた声を出す。でも、それを気にくわない取り巻き達がすぐに間に入ってくれるのは有難い。
「いや、ウンデは今でも聖女じゃないか」
「ううん、聖女みたい、じゃなくて本当に聖女になるの」
「そうか、ウンデは聖女に相応しいと思う」
「ふふふっ、聖女みたいじゃなくて聖女に成るのに、もう皆、びっくりするわよ」
ウンデは自信たっぷりに聖女に成るのだと言っていたけど、あれは乙女ゲームのシナリオを知っているからの自信に違いない。
時々、人が見てないと思って独り言をブツブツ呟いていることがあって、それを聞いてぞっとした。
「ふふふっ、皆に傅かれるなんてとてもいい気持ち。このままハッピーエンドにゴーよね。でも、結婚相手だけは一人だから、それまでは色んな人と甘い一時を楽しまなくては。もう、主人公なんて最高! でも、リリアージュの顔が綺麗なのはムカつく。あの顔、グチャグチャにしてやりたい。なんで、私は平凡可愛い主人公なんだろう? 非凡美しい、さらに身分ありの主人公でもいいのに、そこは不満だね」
と言いながらウンデはそこに咲いていた花を握りつぶした。
「まぁ、誰だか知らないけど、リリアージュの顔を氷の魔女の挿絵にしてくれたのは良かった。良い仕事をした、だね。おかげでリリアージュの悪事をワザワザ暴かなくても皆に悪評が広がってとても楽だわ~」
ウンデはニヤニヤしながら独り言を言っていたが、とても気持ち悪かった。なるべく近づきたくなかったが、リリアージュに危害を加えるかもと思ったら、動向を把握しておく必要があった。
それにしても、ゲームではなかった、リリアージュそっくりの挿絵は誰が描いたのだろう?
『切り裂くナイフ』を俺が確保できたのは本当に良かったが、このナイフ、どうなっているんだろうと見ている時にリリアージュが後ろからそっと忍び寄って来た事があった。
そしてそっと後ろから抱き着いて、それはとても嬉しいんだけど、『切り裂くナイフ』を手に持っていたので、リリアージュの手にナイフが当たってしまった。
ナイフがリリアージュの手に触り、指先が少し切れてしまったのを見て驚いた俺は思わずリリアージュの手を持って指を口に含んでしまった。
リリアージュの血は甘かった。いや、本当に甘かった。俺は吸血鬼ではないはずなのに。
これは、『切り裂くナイフ』におれの魔力を流しておいたせいだろうか。
そして、思いがけずリリアージュの指先に傷をつけてしまったのでまさか、このまま傷口が塞がらないなんて、事は……と思ったら、無事に傷口は綺麗に治った。そう、直ぐに跡形もなく治ってしまったのだ。
「あら、傷が小さいと舐めたら治ってしまうのね。ありがとう、カンジーン様」
無邪気にそう言ったリリアージュに
「そんなわけないだろう!」
とは言わなかったが
「多分、愛の力だね。誰にも内緒にしよう」
と口止めした。
それ以降、リリアージュの魔力が俺に少しだが流れてくるようになったから、『切り裂くナイフ』の力は本物だ。
結婚式でリリアージュと一緒に俺も光ったのは、リリアージュが眩く光り過ぎて、俺は目立たなかったけど、俺自身も発光していた。どうやら、リリアージュと俺は連動しているみたいだ。そう、俺にも聖なる力が少し宿っている。
やはり、本当の聖女はリリアージュだったのだろう。ウンデはリリアージュの聖女の力を奪うはずが失敗したという事だな。
でも、聖女に認定されるのは避けたい。教会とのやり取りは必要だろうけど、正式な夫という立場は有難い。
絶対に教会には渡さない。
リリアージュには穏やかに幸せに過ごしてもらいたい。俺の側で。
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