18 / 26
18. 小話 忍耐(メリー神官視点)
しおりを挟む
「私が描いた挿絵でご迷惑を掛けたことは誠に申し訳ありません。それでは、挿絵を描いて聖女様に捧げれば良いのでしょうか」
「そうですね。どうやら貴女には絵の才能があるようですから」
「恐れ多い事でございます」
という事で、リリアージュの伴侶であるカンジーンには疑いの目で見られているけど、新たな子供向け聖書の作成と童話の挿絵を描く事で話がまとまったのは良かった。一時はどうなる事かと思ったけれど。でも、これまでの流れでは私はいわゆる善意の第3者の立場になれたと思うのだけど、どうしてそんな顔で人を見るのかしら。
まさか、野性の勘? 取り合えず気を付けなくては。
「聖女様は国にお帰りになりますけど、貴女はそのままお供しなさい。そして、お二人の納得のいく挿絵を完成させてください」
「えっ、そんなワザワザ来ていただくなんて申し訳ないです」
「いえ、トンでもございません。是非お側で本の作成に関わらせて下さい。きっとお役にたちます」
「有り難うございます」
リリアージュが本当に感謝を込めた眼差しで見てくるのが困る。なんでこの子は慈愛に満ちた顔をしているんだろう。話によると、『氷の魔女』の挿絵のせいで結構苦労しているはずなんだけどね。ひねくれたところがないのが不思議。
それにしても、思いがけず、かの国に行く事になってしまったけど、これであの『切り裂くナイフ』の行方を捜す事が出来る。幸いな事に教皇猊下のスキルはウソを見抜くだけのモノだから、うまく言い回しを考えれば何とかなると思う。
それに私がリリアージュを害する事はない。十字の傷はリリアージュを害するモノではなくて、魔力を譲渡するバイパスを作るモノだから害するわけではない。
だから「リリアージュ様に対して、危害を加えようと思ってはいませんか?」という問いにも
「リリアージュ様が居なくなればいいと思ってはいませんか」という問いにも「いいえ」と答えられる。だってリリアージュは大事な魔力供給者ですもの。
それでも、これから先どうやってリリアージュに十字をつけるかは凄く策を練らないといけないと思う。十字の傷、いいえ、あれは傷ではなく印だわ。
でも。うーん、あれは額でなくてはならないのだろうか、いえ、額と指定されているわけではないから、何処でも構わないのだと思う。
さらった後、正体を隠して十字の印をつけてから戻せばいい。
何とか、かの国で信頼と実績を作らねば。これは一大プロジェクトだと思えばいいわ。一人チームだけどね。
幸い、イラストの報酬でかなりの貯蓄があるから、資金的には問題ない。イラスト関係の伝手とイラストのファンもいるからその辺で繋ぎを取ればいいわね。聖国にいると仕事の傍らにあれこれしなくてはならなかったから却って良かったかも。
主人公は牢屋にいるという事だから、会いに行って情報もゲットしなくては。
「そうですね。どうやら貴女には絵の才能があるようですから」
「恐れ多い事でございます」
という事で、リリアージュの伴侶であるカンジーンには疑いの目で見られているけど、新たな子供向け聖書の作成と童話の挿絵を描く事で話がまとまったのは良かった。一時はどうなる事かと思ったけれど。でも、これまでの流れでは私はいわゆる善意の第3者の立場になれたと思うのだけど、どうしてそんな顔で人を見るのかしら。
まさか、野性の勘? 取り合えず気を付けなくては。
「聖女様は国にお帰りになりますけど、貴女はそのままお供しなさい。そして、お二人の納得のいく挿絵を完成させてください」
「えっ、そんなワザワザ来ていただくなんて申し訳ないです」
「いえ、トンでもございません。是非お側で本の作成に関わらせて下さい。きっとお役にたちます」
「有り難うございます」
リリアージュが本当に感謝を込めた眼差しで見てくるのが困る。なんでこの子は慈愛に満ちた顔をしているんだろう。話によると、『氷の魔女』の挿絵のせいで結構苦労しているはずなんだけどね。ひねくれたところがないのが不思議。
それにしても、思いがけず、かの国に行く事になってしまったけど、これであの『切り裂くナイフ』の行方を捜す事が出来る。幸いな事に教皇猊下のスキルはウソを見抜くだけのモノだから、うまく言い回しを考えれば何とかなると思う。
それに私がリリアージュを害する事はない。十字の傷はリリアージュを害するモノではなくて、魔力を譲渡するバイパスを作るモノだから害するわけではない。
だから「リリアージュ様に対して、危害を加えようと思ってはいませんか?」という問いにも
「リリアージュ様が居なくなればいいと思ってはいませんか」という問いにも「いいえ」と答えられる。だってリリアージュは大事な魔力供給者ですもの。
それでも、これから先どうやってリリアージュに十字をつけるかは凄く策を練らないといけないと思う。十字の傷、いいえ、あれは傷ではなく印だわ。
でも。うーん、あれは額でなくてはならないのだろうか、いえ、額と指定されているわけではないから、何処でも構わないのだと思う。
さらった後、正体を隠して十字の印をつけてから戻せばいい。
何とか、かの国で信頼と実績を作らねば。これは一大プロジェクトだと思えばいいわ。一人チームだけどね。
幸い、イラストの報酬でかなりの貯蓄があるから、資金的には問題ない。イラスト関係の伝手とイラストのファンもいるからその辺で繋ぎを取ればいいわね。聖国にいると仕事の傍らにあれこれしなくてはならなかったから却って良かったかも。
主人公は牢屋にいるという事だから、会いに行って情報もゲットしなくては。
0
あなたにおすすめの小説
一級魔法使いになれなかったので特級厨師になりました
しおしお
恋愛
魔法学院次席卒業のシャーリー・ドットは、
「一級魔法使いになれなかった」という理由だけで婚約破棄された。
――だが本当の理由は、ただの“うっかり”。
試験会場を間違え、隣の建物で行われていた
特級厨師試験に合格してしまったのだ。
気づけばシャーリーは、王宮からスカウトされるほどの
“超一流料理人”となり、国王の胃袋をがっちり掴む存在に。
一方、学院首席で一級魔法使いとなった
ナターシャ・キンスキーは、大活躍しているはずなのに――
「なんで料理で一番になってるのよ!?
あの女、魔法より料理の方が強くない!?」
すれ違い、逃げ回り、勘違いし続けるナターシャと、
天然すぎて誤解が絶えないシャーリー。
そんな二人が、魔王軍の襲撃、国家危機、王宮騒動を通じて、
少しずつ距離を縮めていく。
魔法で国を守る最強魔術師。
料理で国を救う特級厨師。
――これは、“敵でもライバルでもない二人”が、
ようやく互いを認め、本当の友情を築いていく物語。
すれ違いコメディ×料理魔法×ダブルヒロイン友情譚!
笑って、癒されて、最後は心が温かくなる王宮ラノベ、開幕です。
2番目の1番【完】
綾崎オトイ
恋愛
結婚して3年目。
騎士である彼は王女様の護衛騎士で、王女様のことを何よりも誰よりも大事にしていて支えていてお護りしている。
それこそが彼の誇りで彼の幸せで、だから、私は彼の1番にはなれない。
王女様には私は勝てない。
結婚3年目の夫に祝われない誕生日に起こった事件で限界がきてしまった彼女と、彼女の存在と献身が当たり前になってしまっていたバカ真面目で忠誠心の厚い騎士の不器用な想いの話。
※ざまぁ要素は皆無です。旦那様最低、と思われる方いるかもですがそのまま結ばれますので苦手な方はお戻りいただけると嬉しいです
自己満全開の作品で個人の趣味を詰め込んで殴り書きしているため、地雷多めです。苦手な方はそっとお戻りください。
批判・中傷等、作者の執筆意欲削られそうなものは遠慮なく削除させていただきます…
恩知らずの婚約破棄とその顛末
みっちぇる。
恋愛
シェリスは婚約者であったジェスに婚約解消を告げられる。
それも、婚約披露宴の前日に。
さらに婚約披露宴はパートナーを変えてそのまま開催予定だという!
家族の支えもあり、婚約披露宴に招待客として参加するシェリスだが……
好奇にさらされる彼女を助けた人は。
前後編+おまけ、執筆済みです。
【続編開始しました】
執筆しながらの更新ですので、のんびりお待ちいただけると嬉しいです。
矛盾が出たら修正するので、その時はお知らせいたします。
もうあなた達を愛する心はありません
ぱんだ
恋愛
セラフィーナ・リヒテンベルクは、公爵家の長女として王立学園の寮で生活している。ある午後、届いた手紙が彼女の世界を揺るがす。
差出人は兄ジョージで、内容は母イリスが兄の妻エレーヌをいびっているというものだった。最初は信じられなかったが、手紙の中で兄は母の嫉妬に苦しむエレーヌを心配し、セラフィーナに助けを求めていた。
理知的で優しい公爵夫人の母が信じられなかったが、兄の必死な頼みに胸が痛む。
セラフィーナは、一年ぶりに実家に帰ると、母が物置に閉じ込められていた。幸せだった家族の日常が壊れていく。魔法やファンタジー異世界系は、途中からあるかもしれません。
婚約破棄された王太子妃候補ですが、私がいなければこの国は三年で滅びるそうです。
カブトム誌
恋愛
王太子主催の舞踏会。
そこで私は「無能」「役立たず」と断罪され、公開の場で婚約を破棄された。
魔力は低く、派手な力もない。
王家に不要だと言われ、私はそのまま国を追放されるはずだった。
けれど彼らは、最後まで気づかなかった。
この国が長年繁栄してきた理由も、
魔獣の侵攻が抑えられていた真の理由も、
すべて私一人に支えられていたことを。
私が国を去ってから、世界は静かに歪み始める。
一方、追放された先で出会ったのは、
私の力を正しく理解し、必要としてくれる人々だった。
これは、婚約破棄された令嬢が“失われて初めて価値を知られる存在”だったと、愚かな王国が思い知るまでの物語。
※ざまぁ要素あり/後半恋愛あり
※じっくり成り上がり系・長編
婚約破棄を伝えられて居るのは帝国の皇女様ですが…国は大丈夫でしょうか【完結】
繭
恋愛
卒業式の最中、王子が隣国皇帝陛下の娘で有る皇女に婚約破棄を突き付けると言う、前代未聞の所業が行われ阿鼻叫喚の事態に陥り、卒業式どころでは無くなる事から物語は始まる。
果たして王子の国は無事に国を維持できるのか?
失礼な人のことはさすがに許せません
四季
恋愛
「パッとしないなぁ、ははは」
それが、初めて会った時に婚約者が発した言葉。
ただ、婚約者アルタイルの失礼な発言はそれだけでは終わらず、まだまだ続いていって……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる