初恋の行方

サラ

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18. 小話 忍耐(メリー神官視点)

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「私が描いた挿絵でご迷惑を掛けたことは誠に申し訳ありません。それでは、挿絵を描いて聖女様に捧げれば良いのでしょうか」
「そうですね。どうやら貴女には絵の才能があるようですから」
「恐れ多い事でございます」

 という事で、リリアージュの伴侶であるカンジーンには疑いの目で見られているけど、新たな子供向け聖書の作成と童話の挿絵を描く事で話がまとまったのは良かった。一時はどうなる事かと思ったけれど。でも、これまでの流れでは私はいわゆる善意の第3者の立場になれたと思うのだけど、どうしてそんな顔で人を見るのかしら。
 まさか、野性の勘? 取り合えず気を付けなくては。

「聖女様は国にお帰りになりますけど、貴女はそのままお供しなさい。そして、お二人の納得のいく挿絵を完成させてください」
「えっ、そんなワザワザ来ていただくなんて申し訳ないです」
「いえ、トンでもございません。是非お側で本の作成に関わらせて下さい。きっとお役にたちます」
「有り難うございます」

 リリアージュが本当に感謝を込めた眼差しで見てくるのが困る。なんでこの子は慈愛に満ちた顔をしているんだろう。話によると、『氷の魔女』の挿絵のせいで結構苦労しているはずなんだけどね。ひねくれたところがないのが不思議。

 それにしても、思いがけず、かの国に行く事になってしまったけど、これであの『切り裂くナイフ』の行方を捜す事が出来る。幸いな事に教皇猊下のスキルはウソを見抜くだけのモノだから、うまく言い回しを考えれば何とかなると思う。
 それに私がリリアージュを害する事はない。十字の傷はリリアージュを害するモノではなくて、魔力を譲渡するバイパスを作るモノだから害するわけではない。

 だから「リリアージュ様に対して、危害を加えようと思ってはいませんか?」という問いにも
「リリアージュ様が居なくなればいいと思ってはいませんか」という問いにも「いいえ」と答えられる。だってリリアージュは大事な魔力供給者ですもの。

 それでも、これから先どうやってリリアージュに十字をつけるかは凄く策を練らないといけないと思う。十字の傷、いいえ、あれは傷ではなく印だわ。
 でも。うーん、あれは額でなくてはならないのだろうか、いえ、額と指定されているわけではないから、何処でも構わないのだと思う。
 さらった後、正体を隠して十字の印をつけてから戻せばいい。

 何とか、かの国で信頼と実績を作らねば。これは一大プロジェクトだと思えばいいわ。一人チームだけどね。
 幸い、イラストの報酬でかなりの貯蓄があるから、資金的には問題ない。イラスト関係の伝手とイラストのファンもいるからその辺で繋ぎを取ればいいわね。聖国にいると仕事の傍らにあれこれしなくてはならなかったから却って良かったかも。
 主人公は牢屋にいるという事だから、会いに行って情報もゲットしなくては。
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