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2. 聖女のステータス
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「聖女様、どうぞこちらへ」
「なんて美しい方だ、神々しい」
「あら、そうかしら」
シオリが褒められて喜んでいる。そうして、神官らしき人達に傅かれながら謁見のようなところへ連れていかれたら王様と王子様がいた。そして、私達が部屋に入ると同時に王子様が駆け寄ってきて、シオリの手を取りニッコリと笑いかけた。
「聖女様、ご降臨いただきありがとうございます」
「えっ、えっとあなたは?」
「私はこの国の王太子、ブギウと申します。聖女様にお会いできて幸せです」
えーっ、ブギウですって、変わった名前。金髪に緑の目で顔はイケメンだけど、漫画に出てきそうないかにも王子様って感じ。
シオリの手を握って嬉しそうにしているし、周りも微笑ましそうに見ているけど、召喚って誘拐だから。ついでに私の事は目にも入ってないようで、それはちょっとどうかと思う。
シオリは元々の髪が茶髪だし、色白だからここの人たちに混ざってもそんなに違和感はないかもしれない。もっとも、顔立ちはしっかりと日本人顔だけど。それに比べると、私の髪は黒いし眼鏡をかけているし、ひっつめ髪で割烹着……かなり地味に見えるかもしれない。
「これ、ブギウ。聖女も来たばかりで落ち着かないだろう。早くステータスだけ確認してゆっくりしてもらえ」
「はい、父上。その通りですね。早くステータスの水晶を持て!」
「はい、殿下。水晶はここに」
「では、聖女さま。念のため水晶に手を当てていただけますか」
「えっ、はい」
そうしてシオリが水晶に手を置くと水晶は眩く光り、水晶の上に文字が現れた。
『シオリ 聖女』
えっ! それだけ? 苗字すら出ない、名前だけなの? でも日本語? カタカナだけど。
シオリの名前が何故カタカナかと言うと、前の父親がシオリ、と届けたらしい。由来は良く分からないけど、本人は目立って可愛いと気に入っているみたい。
「おお、やはり聖女様」
「良かった。これでこの国も安泰だ」
「召喚が成功して本当にお目出たい事だ」
アチコチから喜びの声があがり、皆が嬉しそうに盛り上がっている。皆さん、日本語が読めるの? それとも何か言語変換されているとか? 水晶を恭しく持ち上げている神官らしき人も嬉しそうだ。その彼がふと私を見た。
「そういえば侍女さんも一応ステータスを見てみますか?」
「うん、侍女? そういえば地味な女も付いて来ていたな。よし、一応ステータスを確認せよ」
地味、確かにそうかもしれないけど、それは料理をするための格好だからで、お化粧すればそれなりだと思う。そうして、私の前に水晶がやって来た。神官らしき人は優しそうな顔をしている。
「さあどうぞ。手を当ててみて下さい」
「はい」
そうして水晶に手を置くと水晶はすごく眩く光り、
『玲 冷女』
えっ? 冷女って何? 私がそう思ったのと同時に神官が
「冷女ですか。お名前と同じという事でしょうか? 冷の意味としては冷たいという事だとは思うのですが……」
「あの、文字が読めるのですか? あれは漢字で書いてあるのでは?」
「ああ、異世界の文字が読めるわけではありません。ただ、聖女様という文字は昔から伝わっていますからわかります。それと他の文字については大まかな意味が理解できる魔法がありますから。聖女様の場合は最初にお名前が出てきて、それから続いて聖女というステータスが出てきます」
「この世界と私達の言葉は同じですか?」
「いえ、多分ですがこの世界に召喚されるときに何か大いなるお力が働いて言語理解ができるようになられるのかと、侍女様も聖女ではありませんが言語理解ができているようですので何かしら役割がおありなのかもしれません」
「そんなはずないでしょう!」
シオリが甲高い声で割り込んできた。彼女は両手を組んでとても偉そうに私のほうを見ると、
「名前の後には冷女、冷たい女って出ているわ。つまり、性格が冷たくて嫌な女って事だわ」
「なんと、」
「本当ですか? 聖女様」
「ええ、この女はとても性格が悪くて私のモノをなんでも欲しがって、盗んでしまうようなとんでもない女よ!お情けで家に置いてあげていたんだけど、手癖が悪くて困っていたの」
「侍女ではないのですか?」
「侍女ではなく、召使よ、というより下女かしら」
いや、いや、いや、何をおっしゃるシオリさん。そんな嘘八百。日本に召使とか下女なんて存在しないでしょう。それに、あなたと私の家は全然違うし、普段の交流はないでしょう。時々、人の大学前で待ち伏せして絡んでくる事はあるけどね。
「何て女だ」
「そんな冷たい女を聖女様の側にはおけないぞ」
「そうだな、牢に入れてしまえ!」
「あ~、待って。牢屋は可哀そうだから、ここの召使とか下女とかで使ってあげたら良いと思うの」
「なんとお優しい」
「しかし、そんな手癖の悪い女は使えない」
「とりあえず、使用人の反省室に閉じ込めておけ!」
なんと、シオリのせいで私は手癖の悪い下女として扱われる事になってしまった。手癖が悪いのはシオリだと思うけど。
私のアクセサリーとか小物とか勝手に持っていってしまうし、本家の小物とかも持っていってしまうから、シオリが来る時、本家ではそれぞれ部屋付きの金庫に貴重品を入れるようになったし、価値のあるモノは鍵付きの倉庫に仕舞われるようになった。
もっともシオリのお母さんは真面な人なので、シオリが盗んだものは後から本家に戻ってくる。私はシオリが使ったモノは嫌なので、そのままシオリにあげてしまっていた。それがかえっていけなかったのかもしれない。
「こちらへどうぞ」
「ここは?」
「一応、見守らなくてはいけない人を保護するための部屋です」
モノは言いようですね。シオリの得意そうな眼付に見送られて案内されたのは王宮の端にある鍵付きの部屋だった。もちろん鍵は外からかかる。部屋の中には簡素なベッドとテーブルに椅子。洗面所とトイレが付いていた。
ここでどうしろと……。
何だか、四面楚歌の気分だけど、私、どうなるんだろう。
「なんて美しい方だ、神々しい」
「あら、そうかしら」
シオリが褒められて喜んでいる。そうして、神官らしき人達に傅かれながら謁見のようなところへ連れていかれたら王様と王子様がいた。そして、私達が部屋に入ると同時に王子様が駆け寄ってきて、シオリの手を取りニッコリと笑いかけた。
「聖女様、ご降臨いただきありがとうございます」
「えっ、えっとあなたは?」
「私はこの国の王太子、ブギウと申します。聖女様にお会いできて幸せです」
えーっ、ブギウですって、変わった名前。金髪に緑の目で顔はイケメンだけど、漫画に出てきそうないかにも王子様って感じ。
シオリの手を握って嬉しそうにしているし、周りも微笑ましそうに見ているけど、召喚って誘拐だから。ついでに私の事は目にも入ってないようで、それはちょっとどうかと思う。
シオリは元々の髪が茶髪だし、色白だからここの人たちに混ざってもそんなに違和感はないかもしれない。もっとも、顔立ちはしっかりと日本人顔だけど。それに比べると、私の髪は黒いし眼鏡をかけているし、ひっつめ髪で割烹着……かなり地味に見えるかもしれない。
「これ、ブギウ。聖女も来たばかりで落ち着かないだろう。早くステータスだけ確認してゆっくりしてもらえ」
「はい、父上。その通りですね。早くステータスの水晶を持て!」
「はい、殿下。水晶はここに」
「では、聖女さま。念のため水晶に手を当てていただけますか」
「えっ、はい」
そうしてシオリが水晶に手を置くと水晶は眩く光り、水晶の上に文字が現れた。
『シオリ 聖女』
えっ! それだけ? 苗字すら出ない、名前だけなの? でも日本語? カタカナだけど。
シオリの名前が何故カタカナかと言うと、前の父親がシオリ、と届けたらしい。由来は良く分からないけど、本人は目立って可愛いと気に入っているみたい。
「おお、やはり聖女様」
「良かった。これでこの国も安泰だ」
「召喚が成功して本当にお目出たい事だ」
アチコチから喜びの声があがり、皆が嬉しそうに盛り上がっている。皆さん、日本語が読めるの? それとも何か言語変換されているとか? 水晶を恭しく持ち上げている神官らしき人も嬉しそうだ。その彼がふと私を見た。
「そういえば侍女さんも一応ステータスを見てみますか?」
「うん、侍女? そういえば地味な女も付いて来ていたな。よし、一応ステータスを確認せよ」
地味、確かにそうかもしれないけど、それは料理をするための格好だからで、お化粧すればそれなりだと思う。そうして、私の前に水晶がやって来た。神官らしき人は優しそうな顔をしている。
「さあどうぞ。手を当ててみて下さい」
「はい」
そうして水晶に手を置くと水晶はすごく眩く光り、
『玲 冷女』
えっ? 冷女って何? 私がそう思ったのと同時に神官が
「冷女ですか。お名前と同じという事でしょうか? 冷の意味としては冷たいという事だとは思うのですが……」
「あの、文字が読めるのですか? あれは漢字で書いてあるのでは?」
「ああ、異世界の文字が読めるわけではありません。ただ、聖女様という文字は昔から伝わっていますからわかります。それと他の文字については大まかな意味が理解できる魔法がありますから。聖女様の場合は最初にお名前が出てきて、それから続いて聖女というステータスが出てきます」
「この世界と私達の言葉は同じですか?」
「いえ、多分ですがこの世界に召喚されるときに何か大いなるお力が働いて言語理解ができるようになられるのかと、侍女様も聖女ではありませんが言語理解ができているようですので何かしら役割がおありなのかもしれません」
「そんなはずないでしょう!」
シオリが甲高い声で割り込んできた。彼女は両手を組んでとても偉そうに私のほうを見ると、
「名前の後には冷女、冷たい女って出ているわ。つまり、性格が冷たくて嫌な女って事だわ」
「なんと、」
「本当ですか? 聖女様」
「ええ、この女はとても性格が悪くて私のモノをなんでも欲しがって、盗んでしまうようなとんでもない女よ!お情けで家に置いてあげていたんだけど、手癖が悪くて困っていたの」
「侍女ではないのですか?」
「侍女ではなく、召使よ、というより下女かしら」
いや、いや、いや、何をおっしゃるシオリさん。そんな嘘八百。日本に召使とか下女なんて存在しないでしょう。それに、あなたと私の家は全然違うし、普段の交流はないでしょう。時々、人の大学前で待ち伏せして絡んでくる事はあるけどね。
「何て女だ」
「そんな冷たい女を聖女様の側にはおけないぞ」
「そうだな、牢に入れてしまえ!」
「あ~、待って。牢屋は可哀そうだから、ここの召使とか下女とかで使ってあげたら良いと思うの」
「なんとお優しい」
「しかし、そんな手癖の悪い女は使えない」
「とりあえず、使用人の反省室に閉じ込めておけ!」
なんと、シオリのせいで私は手癖の悪い下女として扱われる事になってしまった。手癖が悪いのはシオリだと思うけど。
私のアクセサリーとか小物とか勝手に持っていってしまうし、本家の小物とかも持っていってしまうから、シオリが来る時、本家ではそれぞれ部屋付きの金庫に貴重品を入れるようになったし、価値のあるモノは鍵付きの倉庫に仕舞われるようになった。
もっともシオリのお母さんは真面な人なので、シオリが盗んだものは後から本家に戻ってくる。私はシオリが使ったモノは嫌なので、そのままシオリにあげてしまっていた。それがかえっていけなかったのかもしれない。
「こちらへどうぞ」
「ここは?」
「一応、見守らなくてはいけない人を保護するための部屋です」
モノは言いようですね。シオリの得意そうな眼付に見送られて案内されたのは王宮の端にある鍵付きの部屋だった。もちろん鍵は外からかかる。部屋の中には簡素なベッドとテーブルに椅子。洗面所とトイレが付いていた。
ここでどうしろと……。
何だか、四面楚歌の気分だけど、私、どうなるんだろう。
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