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2. メッセージ
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店員Aが靴を持ち上げながら
「きれいな靴ですね。まるで新品みたいな……赤い色が鮮やかで」
「そうですか。あれっ? なんだか輝いて見える……、まさか店員さんがこの靴にふさわしい人?」
「いや! いや! 辞めてくださいよ。これ女物でしょう?」
「密かな趣味を靴が見抜いたとか、な」
いつの間にか、ナキンが傍に立っていた。
「いや、止めてくださいよ。ナキンさん」
ナキンは店員Aが持っている赤い靴をチョイと突いてみた。すると赤い靴はピカピカと点滅をし始めた。
「その赤い靴、ここに置いてください」
マスターの翼がテーブルの上に新聞紙を広げた。
店員Aがそっと靴を置くと右の靴の爪先がトン、トン、トンとテーブルを叩いた。そして、左の靴がトンー、トンー、トンー、続いて、右の靴がトン、トン、トン。
「勝手に! 動いた。これはメッセージか?」
「何か、言いたい事があるのかな? 」
マスターの翼の声に答えるように又、赤い靴の爪先がトン、トン、トンとテーブルを叩いた。そして、左の靴がトンー、トンー、トンー、続いて、右の靴がトン、トン、トン。
「これ、モールス信号ですか?」
「そうみたいだな」
「トトト、ツーツーツー、トトト。SOS、助けてくれって?」
「モールス信号……」
「この靴は意志を持っていて何か伝えたい事があるって事ですか?」
「そうらしい。しかし、モールス信号はまだるっこしいな」
「仕方ないですよ。靴に口はないですから。時間はかかりますが、靴の言いたい事を聞き取りましょう。まずはイエスとノーを決めましょうか」
「イエスだと宙に浮いて、ノーだと左右に揺れる、でどうでしょう」
店員Aの言葉が聞こえたのか赤い靴は宙に浮いた。
「おお、良いらしいですよ」
「靴のくせに宙に浮くのか」
「離れていても飛んでくる、でしたよね?」
「ええ、かなり遠くに投げても飛んできます」
「でも、モールス信号で意思疎通をするのは大変ですね。時間もかかりますし」
「あっ、コックリさんはどうでしょう?」
「確かに、その手がありましたか。昔、やりましたね」
「何だ? コックリさんとは?」
「狐の霊を呼び出す、とされていますが実際にはどうだかわかりません。たまに本当に来てしまう事もあるらしいですが」
「霊がいたとしても、ここには絶対に来れないですね」
「コックリさんをするわけではない、ですが、紙に50音を書いて言いたい事をなぞってもらいましょう。モールス信号で伝えるよりは早いですし、なるべく質問はイエス、ノーで答えられるようにして」
そう言いながらマスターの翼が置くから大きな模造紙と黒マジックを取ってきたので、テーブルに模造紙を広げ、大き目に文字を書いていく。
「靴がもう少し小さいと文字が読み取りやすいと思うんですけどね」
「確かに、この模造紙を破らないようにしてくれよ」
そのナキンの言葉に答えるように赤い靴は宙に浮くと、パッと輝き小さな赤ちゃん用の靴、ベビーシューズに変わった。可愛らしい布製の赤いベビーシューズは手の平に乗るサイズだった。
「おお、この靴は変身? いや、人じゃないから変化するんだ」
「このベビーシューズだったら、バッグの中に入ります。もう、履かなくていいんですね!」
リナが嬉しそうに言うとベビーシューズは模造紙の『いいえ』の所に飛んで行った。
「えーっ、うそー。やっと解放されると思ったのに。こんなに赤い靴、履いていたら就活もできない!」
「ああ、確かに就活に赤い靴はないですね」
「そうなんです。この靴が鮮やかな赤色だから服装もこの靴に合わせているんですけど、もう、そんなに合わせる服がなくて」
「ああ、それでその赤いワンピースですか?」
「この赤い靴をこれまで履いていた子がいつもオシャレで、その赤い靴が良く似合っているな、とは思っていたんですけど、まさか私がこの靴を履く事になるとは思いませんでした」
「バイト先でもこの靴を?」
「ええ、服装、髪型なんかは自由なんです。相手に見えませんから」
「自由なバイトですね。ちなみにどんなバイトですか?」
「大手のコールセンターなんです。時間もシフトも割と融通が利きますし、大学の講義が終わった後、午後か夕方からのお仕事をしています。でも、この赤い靴は目立ってたみたいで他の人から「貰ったの?」って良く聞かれます」
「赤い靴の持ち主はバイトも辞めたんですか?」
「そうらしいです。個人情報とかで詳しい事は教えてもらえないんですが、突然辞めた、とは聞きました」
「大学とか地元の話とかは?」
「そういえば、した事なかったです。彼氏の話はよくしていましたけど」
「そうですか、でも靴が彼女の事を知っているかもしれませんね」
「あっ、本当に。ずっと一緒だったのなら靴に聞けばいいんですね。良かった~」
「まだ、わからないですけどね」
取り合えず、赤いベビーシューズを囲んで皆で質問をする事にした。
「オーイ、もう行くぞ。ごちそうさん。何かわかったら俺にも教えてくれ」
隣のテーブルに居たガタイの良い男性が立ち上がるとヒラヒラと手を振りながら出ていった。
「あっ、お会計はいいんですか?」
「ほら、テーブルに1万円札があるよ」
「えっ? お釣りは?」
「払える人が払える金額を置いていくことになっているから、10万ぐらい払う人もいるな」
「だって、一応メニューに金額が? うそ! 金額がない!」
「ああ、ここはボッタクリ喫茶店だから会計は時価なんだ」
「えっ?!」
リナは自分の財布の中身を考えて真っ青になってしまった。
「きれいな靴ですね。まるで新品みたいな……赤い色が鮮やかで」
「そうですか。あれっ? なんだか輝いて見える……、まさか店員さんがこの靴にふさわしい人?」
「いや! いや! 辞めてくださいよ。これ女物でしょう?」
「密かな趣味を靴が見抜いたとか、な」
いつの間にか、ナキンが傍に立っていた。
「いや、止めてくださいよ。ナキンさん」
ナキンは店員Aが持っている赤い靴をチョイと突いてみた。すると赤い靴はピカピカと点滅をし始めた。
「その赤い靴、ここに置いてください」
マスターの翼がテーブルの上に新聞紙を広げた。
店員Aがそっと靴を置くと右の靴の爪先がトン、トン、トンとテーブルを叩いた。そして、左の靴がトンー、トンー、トンー、続いて、右の靴がトン、トン、トン。
「勝手に! 動いた。これはメッセージか?」
「何か、言いたい事があるのかな? 」
マスターの翼の声に答えるように又、赤い靴の爪先がトン、トン、トンとテーブルを叩いた。そして、左の靴がトンー、トンー、トンー、続いて、右の靴がトン、トン、トン。
「これ、モールス信号ですか?」
「そうみたいだな」
「トトト、ツーツーツー、トトト。SOS、助けてくれって?」
「モールス信号……」
「この靴は意志を持っていて何か伝えたい事があるって事ですか?」
「そうらしい。しかし、モールス信号はまだるっこしいな」
「仕方ないですよ。靴に口はないですから。時間はかかりますが、靴の言いたい事を聞き取りましょう。まずはイエスとノーを決めましょうか」
「イエスだと宙に浮いて、ノーだと左右に揺れる、でどうでしょう」
店員Aの言葉が聞こえたのか赤い靴は宙に浮いた。
「おお、良いらしいですよ」
「靴のくせに宙に浮くのか」
「離れていても飛んでくる、でしたよね?」
「ええ、かなり遠くに投げても飛んできます」
「でも、モールス信号で意思疎通をするのは大変ですね。時間もかかりますし」
「あっ、コックリさんはどうでしょう?」
「確かに、その手がありましたか。昔、やりましたね」
「何だ? コックリさんとは?」
「狐の霊を呼び出す、とされていますが実際にはどうだかわかりません。たまに本当に来てしまう事もあるらしいですが」
「霊がいたとしても、ここには絶対に来れないですね」
「コックリさんをするわけではない、ですが、紙に50音を書いて言いたい事をなぞってもらいましょう。モールス信号で伝えるよりは早いですし、なるべく質問はイエス、ノーで答えられるようにして」
そう言いながらマスターの翼が置くから大きな模造紙と黒マジックを取ってきたので、テーブルに模造紙を広げ、大き目に文字を書いていく。
「靴がもう少し小さいと文字が読み取りやすいと思うんですけどね」
「確かに、この模造紙を破らないようにしてくれよ」
そのナキンの言葉に答えるように赤い靴は宙に浮くと、パッと輝き小さな赤ちゃん用の靴、ベビーシューズに変わった。可愛らしい布製の赤いベビーシューズは手の平に乗るサイズだった。
「おお、この靴は変身? いや、人じゃないから変化するんだ」
「このベビーシューズだったら、バッグの中に入ります。もう、履かなくていいんですね!」
リナが嬉しそうに言うとベビーシューズは模造紙の『いいえ』の所に飛んで行った。
「えーっ、うそー。やっと解放されると思ったのに。こんなに赤い靴、履いていたら就活もできない!」
「ああ、確かに就活に赤い靴はないですね」
「そうなんです。この靴が鮮やかな赤色だから服装もこの靴に合わせているんですけど、もう、そんなに合わせる服がなくて」
「ああ、それでその赤いワンピースですか?」
「この赤い靴をこれまで履いていた子がいつもオシャレで、その赤い靴が良く似合っているな、とは思っていたんですけど、まさか私がこの靴を履く事になるとは思いませんでした」
「バイト先でもこの靴を?」
「ええ、服装、髪型なんかは自由なんです。相手に見えませんから」
「自由なバイトですね。ちなみにどんなバイトですか?」
「大手のコールセンターなんです。時間もシフトも割と融通が利きますし、大学の講義が終わった後、午後か夕方からのお仕事をしています。でも、この赤い靴は目立ってたみたいで他の人から「貰ったの?」って良く聞かれます」
「赤い靴の持ち主はバイトも辞めたんですか?」
「そうらしいです。個人情報とかで詳しい事は教えてもらえないんですが、突然辞めた、とは聞きました」
「大学とか地元の話とかは?」
「そういえば、した事なかったです。彼氏の話はよくしていましたけど」
「そうですか、でも靴が彼女の事を知っているかもしれませんね」
「あっ、本当に。ずっと一緒だったのなら靴に聞けばいいんですね。良かった~」
「まだ、わからないですけどね」
取り合えず、赤いベビーシューズを囲んで皆で質問をする事にした。
「オーイ、もう行くぞ。ごちそうさん。何かわかったら俺にも教えてくれ」
隣のテーブルに居たガタイの良い男性が立ち上がるとヒラヒラと手を振りながら出ていった。
「あっ、お会計はいいんですか?」
「ほら、テーブルに1万円札があるよ」
「えっ? お釣りは?」
「払える人が払える金額を置いていくことになっているから、10万ぐらい払う人もいるな」
「だって、一応メニューに金額が? うそ! 金額がない!」
「ああ、ここはボッタクリ喫茶店だから会計は時価なんだ」
「えっ?!」
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