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3. 変化
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「あ、あの私、そんなに持ち合わせが……」
思わず、バッグを抱きしめて泣きそうな顔をしたリナに
「ナキンさん、そんなに驚かさないでください。お嬢さん、確かにここは時価ですが、それは払える人が払えるだけ払って下さい、という事でここはボッタクリではありません」
「そうですよ。ナキンさんなんて、いつも全然、払ってないですから」
「なんだよ。俺は時々ポンと出しているだろう」
「そうですね。100万円とか、使えない金貨とか。100万円もわざわざ帯封を外して下さるので数えるのが面倒なんです。103万円とか微妙に100万から数字もずらしていますから」
「一応、裏帳簿も作っていますから正確に金額を数えなくてはいけませんし、帯封はそのままのほうが助かります」
「いくらあるかな、と数える楽しみがあったほうがいいだろ」
「自分のお金じゃないので手間がかからないほうが良いです」
リナは彼らのやり取りを聞いて混乱していた。
(お客が代金として100万円も払うなんて可笑しくない? 裏帳簿! それって犯罪? それにこの変な赤い靴を見ても平気だし、この人達って、何なの?)
動揺して目をパチパチさせているリナにマスターの翼が優しく声をかけてきた。
「お嬢さん、驚かせてしまいましたね。私達は決して怪し、怪しいモノではありますが、お嬢さんには危害を加える事はありませんから安心して下さい」
「何だよ、それ! 怪しいモノではありますって、余計、心配するって」
「いや、でも怪しくはないけど君たちはいわゆる『妖』または『妖怪』と言われるモノではないですか」
「翼は人間だろ」
「そうでした。お嬢さん、私は正真正銘、人間ですが私以外は人外で、この店員Aは妖狐ですしナキンはケルベロスです。あちらにいる店員Bは鬼で店員Cはヌラリヒョンになります」
「この喫茶店は人外が集まる場所だ。人間には認識されにくくなっている。あんたがこの店に入れたって事はつまり、人間から外れつつあるってことだ」
「ええっ! 私、人間です!」
「いや、人間だって思っていても先祖に人外の因子が入っていて先祖返りで人外の子ができる事はある。何かの切っ掛けでその人外の因子が目覚めるというのもたまにある」
「多分、その赤い靴が切っ掛けですね」
彼らの話によると人間世界に人外は意外と紛れて暮らしていて、それなりのコミュニティーも形成しているらしい。
ただ、人間以外の形態をとるいわゆる『見るからに妖怪』に見えるモノたちもいて、それらは人と離れた隠れ里に生活しているとの事。
たまに普通の人間から人外の因子が発現してしまったのを見つけた時はこっそり、隠れ里に保護をしている。隠れ里で上手に人間への擬態ができるようになると又、人間世界に復帰できる。
「あ、あの……」
「ん、なんだ?」
「ナキンさん、とても怖い顔をしていますね」
(ああっ、しまった! こんな事、言うつもりはなかったのについ。凄い美形、だけど怖い、って思ったから)
「いえ、そういう意味ではなくて、あの、その」
「イヤ、普通の人間にはナキンさんの顔は怖いと思いますよ。妖狐の俺だって怖いですから。よく平気で側に居るなぁ、と思っていました」
「てめえ、ふざけるなよ。おい、あんた、思った事をすぐ口に出すのは気を付けたほうが良い。俺みたいに優しい奴ばかりじゃないからな」
「は、はい」
リナは自分の失言にシュンとしてしまった。でも、これまでナキンや店員の顔もよく見てなかったのだ。それに確かに怖いけど、怖いだけではないような気がする。
「まぁ、それはそれとして、お嬢さん、お会計は大丈夫です。今日は無料の日となっていますから安心してください。では、この赤い靴に色々と質問してみましょうか。お嬢さんとしては靴から解放されたいんですよね」
「はい。お願いします」
という事で模造紙を前に赤いベビーシューズに質問をしてみた。
そして、わかった事は。
赤い靴は自分の主と仮宿と目的以外の事には全くの無関心であるという事だった。赤い靴はずっと暗闇の中に居て主に呼ばれるのを待っていた。本来の姿は具足であり主の足元をその場所に応じて守ることが靴の使命であった。
昔、主と共にあった時はただ、主の役にたつのが喜びだった。いつの間にか眠りについてそれから、主の元にたどり着くために仮宿を見つけて憑りついていたとのことだった。
「結局、この赤い靴は何もわかってない、という事がわかったな」
「結構、時間がかかったのに」
「あの、申し訳ありません」
「いえいえ、どういたしまして。ただ、この赤い靴が変化する事が出来て、お嬢さんの靴でいられるのなら、形も色も変えられるという事がわかったのは良かったですよ」
そう、赤い靴は本来の赤色は変えられないが明度を落とす事で黒い色に擬態する事ができるし、形態もこのデザインで、というとサイズもデザインも思いのままに足に合わせて変化してくれる。
家の中でも脱げなかったのはそういうもの、だと靴が認識していたから。
これからは玄関で脱げば其処に待機してくれるし、呼ばれれば飛んでくる、という事で話が付いた。これはリナにとって喜ばしい事である。何より服装の縛りが無くなるのは有難い。
そうなると、後は、そう、自分が人間からはみ出しかけている、というのが気になった。よく考えると、今はマスターの翼以外は人外、妖という事だが見かけは全く人間に見える。
「あの、」
リナが思い切って妖について尋ねようとした時、ドアベルがカランとなった。
思わず、バッグを抱きしめて泣きそうな顔をしたリナに
「ナキンさん、そんなに驚かさないでください。お嬢さん、確かにここは時価ですが、それは払える人が払えるだけ払って下さい、という事でここはボッタクリではありません」
「そうですよ。ナキンさんなんて、いつも全然、払ってないですから」
「なんだよ。俺は時々ポンと出しているだろう」
「そうですね。100万円とか、使えない金貨とか。100万円もわざわざ帯封を外して下さるので数えるのが面倒なんです。103万円とか微妙に100万から数字もずらしていますから」
「一応、裏帳簿も作っていますから正確に金額を数えなくてはいけませんし、帯封はそのままのほうが助かります」
「いくらあるかな、と数える楽しみがあったほうがいいだろ」
「自分のお金じゃないので手間がかからないほうが良いです」
リナは彼らのやり取りを聞いて混乱していた。
(お客が代金として100万円も払うなんて可笑しくない? 裏帳簿! それって犯罪? それにこの変な赤い靴を見ても平気だし、この人達って、何なの?)
動揺して目をパチパチさせているリナにマスターの翼が優しく声をかけてきた。
「お嬢さん、驚かせてしまいましたね。私達は決して怪し、怪しいモノではありますが、お嬢さんには危害を加える事はありませんから安心して下さい」
「何だよ、それ! 怪しいモノではありますって、余計、心配するって」
「いや、でも怪しくはないけど君たちはいわゆる『妖』または『妖怪』と言われるモノではないですか」
「翼は人間だろ」
「そうでした。お嬢さん、私は正真正銘、人間ですが私以外は人外で、この店員Aは妖狐ですしナキンはケルベロスです。あちらにいる店員Bは鬼で店員Cはヌラリヒョンになります」
「この喫茶店は人外が集まる場所だ。人間には認識されにくくなっている。あんたがこの店に入れたって事はつまり、人間から外れつつあるってことだ」
「ええっ! 私、人間です!」
「いや、人間だって思っていても先祖に人外の因子が入っていて先祖返りで人外の子ができる事はある。何かの切っ掛けでその人外の因子が目覚めるというのもたまにある」
「多分、その赤い靴が切っ掛けですね」
彼らの話によると人間世界に人外は意外と紛れて暮らしていて、それなりのコミュニティーも形成しているらしい。
ただ、人間以外の形態をとるいわゆる『見るからに妖怪』に見えるモノたちもいて、それらは人と離れた隠れ里に生活しているとの事。
たまに普通の人間から人外の因子が発現してしまったのを見つけた時はこっそり、隠れ里に保護をしている。隠れ里で上手に人間への擬態ができるようになると又、人間世界に復帰できる。
「あ、あの……」
「ん、なんだ?」
「ナキンさん、とても怖い顔をしていますね」
(ああっ、しまった! こんな事、言うつもりはなかったのについ。凄い美形、だけど怖い、って思ったから)
「いえ、そういう意味ではなくて、あの、その」
「イヤ、普通の人間にはナキンさんの顔は怖いと思いますよ。妖狐の俺だって怖いですから。よく平気で側に居るなぁ、と思っていました」
「てめえ、ふざけるなよ。おい、あんた、思った事をすぐ口に出すのは気を付けたほうが良い。俺みたいに優しい奴ばかりじゃないからな」
「は、はい」
リナは自分の失言にシュンとしてしまった。でも、これまでナキンや店員の顔もよく見てなかったのだ。それに確かに怖いけど、怖いだけではないような気がする。
「まぁ、それはそれとして、お嬢さん、お会計は大丈夫です。今日は無料の日となっていますから安心してください。では、この赤い靴に色々と質問してみましょうか。お嬢さんとしては靴から解放されたいんですよね」
「はい。お願いします」
という事で模造紙を前に赤いベビーシューズに質問をしてみた。
そして、わかった事は。
赤い靴は自分の主と仮宿と目的以外の事には全くの無関心であるという事だった。赤い靴はずっと暗闇の中に居て主に呼ばれるのを待っていた。本来の姿は具足であり主の足元をその場所に応じて守ることが靴の使命であった。
昔、主と共にあった時はただ、主の役にたつのが喜びだった。いつの間にか眠りについてそれから、主の元にたどり着くために仮宿を見つけて憑りついていたとのことだった。
「結局、この赤い靴は何もわかってない、という事がわかったな」
「結構、時間がかかったのに」
「あの、申し訳ありません」
「いえいえ、どういたしまして。ただ、この赤い靴が変化する事が出来て、お嬢さんの靴でいられるのなら、形も色も変えられるという事がわかったのは良かったですよ」
そう、赤い靴は本来の赤色は変えられないが明度を落とす事で黒い色に擬態する事ができるし、形態もこのデザインで、というとサイズもデザインも思いのままに足に合わせて変化してくれる。
家の中でも脱げなかったのはそういうもの、だと靴が認識していたから。
これからは玄関で脱げば其処に待機してくれるし、呼ばれれば飛んでくる、という事で話が付いた。これはリナにとって喜ばしい事である。何より服装の縛りが無くなるのは有難い。
そうなると、後は、そう、自分が人間からはみ出しかけている、というのが気になった。よく考えると、今はマスターの翼以外は人外、妖という事だが見かけは全く人間に見える。
「あの、」
リナが思い切って妖について尋ねようとした時、ドアベルがカランとなった。
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