赤い靴から始まるAYAKASHI殺人事件

サラ

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6. 御大

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 カランッとドアベルが鳴った。

「いらっしゃいませ」

 リナが入り口に向かって笑顔で挨拶をすると、そこには刑事の御大がいた。
 御大はこの喫茶店の常連でしょっちゅう来ていたそうだが、『タヌキ殺人事件』がおこってからはあまり来なくなった。
 どうも、あちこち出張しているらしい。『タヌキ殺人事件』とは正確には『田塗大善殺人事件』だが、常連は田塗大善の事をタヌキと呼ぶ。
 大善という名前は改名した名前だが、本名は大灰汁というらしい。大きな善とは正反対の性格と素行でかなり恨まれているのではないかという話だ。

「やぁ、お嬢さん、久しぶり」

 そう言いながら御大はグルリと辺りを見回した。

「大丈夫ですよ。いつものメンバーしかいませんから」
「この店はいつも空いていて良いなぁ。経営的にはどうかと思うが」
「それを言うなら、もう少し妖力を押さえていただくと、弱小の妖怪とかも気軽に来ることができるんですけどね」
「妖力を押さえるのは疲れるんだよ。普通の人間には何も感じ取れないからいいんじゃないかと思うけどな。それに朝早くとか、深夜遅くに来ているみたいじゃないか。付喪神の連中が」
「よく、知っていますね。その時間帯なら強いのは滅多に来ませんから。たまに遭遇すると慌てて逃げていきますけど」
「何かするわけでもないのに、な」

 御大は太い首をすくねて見せた。リナは御大にあっても特に何も感じないので不思議に思い、

「あの、私、皆さんに会っても特に何も感じないのですけど」
「ああ、人から目覚めた場合はちょっと鈍感になるみたいだ。だけど、ここに『駆け込み寺』みたいに入ってくる。本能でわかるのかなぁ。妖力に惹かれるのかもしれない」
「私もそうだったんでしょうか?」
「多分ね。寄らば大樹の陰っていうから。リーちゃんの場合はその赤い靴が助けを求めたのかもね」
「肝心の情報は何もわからないという役に立たない靴だけど、赤いのが今は黒い靴に見えるな」
「ええ、色も形も変えられますし、今は玄関に居てくれますから凄く助かります」
「でもなぁ、その赤い靴が大善のスマホに写っていたんだよ」
「えっ!?」
「靴だけじゃなくて、足首から下とあの鮮やかな赤い靴が最後の写真に何故か写っていたんだ。その証拠の赤い靴は変化してしまったけどな」

 そう言いながら見せてもらった写真にはリナの足にくっ付いて離れなかった赤い靴が写っていた。いわゆるダイイング・メッセージだろうか。
 履いているのはリナではないけれど。

「でも、普通写真を取ったら音がしますし、写真を取ったら気がつくと思いますからスマホを持ち去るものじゃないですか」
「いや、音を消す方法はあるし、写真も撮られたのを承知でワザと残したんだろう。学生証とセットで犯人に仕立てるために」
「えーっ、どうしてですか? 面識もないし、人にも恨まれるような覚えもないです」
「単に、都合がよかったんじゃないか。赤い靴を渡せる確信を得たから、その証拠をわかりやすく残して靴をわたして、逃げた」

「ただ、単独犯は無理だと思うし、あのタヌキを殺すためには何か罠に嵌めるとか不意をつくとかしないとダメなはずだ。それと、目的がわからない。わざわざ心臓から魔石を抜き出しているし」
「その、魔石って何ですか」
「ああ、全部じゃないが、人外は割と魔石を持っている。というかひょっとして、魔石があるから人外の身体が形成されているのかもしれない、という説もある。魔石は妖力の塊みたいなものだから」
「この御大さんの魔石は結構大きいと思いますよ」
「お前もな」

(魔石、魔石なんてこの世の中にあったなんてひょっとして私の中にもあるって事? そして、魔石は何かに利用できる?)リナが初めて聞いた魔石の使い道を色々考えていると

「大丈夫。リーちゃんの魔石はとても小さいから誰も取り出そうなんて考えないよ。利用価値はあまりないから」
「そうだな。まだ目覚めたばかりだと魔石は小さいが、赤い靴、じゃない今は黒い靴か、これが身体に馴染んでいくと段々変化が出てくるだろう」
「えっ!? この靴を履いているから人外になっていくって事ですか? 靴を履かなければそのまま人でいられたって事?」

「うーん。多分。その靴、仕える主を探しているらしいけど、主の為に妖力を集めてそれを履いている主に渡そうとしているんだ」
「今の靴にとっての主は仮とはいえリーちゃんだから、リーちゃんのために妖力を集めている」
「ええー、止め! 妖力、いらないから止めて!」

 リナは慌てて靴に向かって叫んだ。靴はなんの反応もしなかった。

「まだ仮の主だから無条件に従うわけじゃないんだ。靴はリーちゃんに仮の主と認めてもらう為にSOSを出したけど、それ以外は完全に主にならないという事聞かないよ」
「どうしたらいいんですか?」
「そうだなぁ。もう、既に目覚めているから妖力はあったほうがいいと思うけど、その靴の本体を探りに行こうか?」
「どこにですか?」
「妖の隠れ里」
「隠れ里!?」
「確か、マスターが何か依頼を受けていたと思うから、それについて行ったらいいんじゃないか」
「ああ、そういえば言ってましたね。ナキンさんも行くって言ってましたからちょうどいいかもしれません」

 という事でリナは『妖の隠れ里』にいく事になった。
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