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15. また?
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静かな村にサイレンが鳴り響き、警察が駆け付けた。ちょうどその場に身内がいたことで身元確認も直ぐに済み、今は現場検証が行われている。
「また、お前らか」
ウンザリした顔で御大が皆を見回して言う。
「どういうわけか殺人現場に行き当たるのは、いい迷惑だ。しかも、またタヌキだ」
「はっ、タヌキ?」
御大にナキンとマスター翼が、殺された大上君善が養女で実の父が田塗大善であるとの話をすると御大は難しい顔をした。君善は少年Kの伯父によると、父親が生きている時から勝手に蔵の中を物色したりしていたらしい。
「何かを探していたらしいですよ」
「ずっと以前からワザワザ養女にして何かをしたかったという事か。まさか、あの武器と防具を集めようとしていたのではないだろうな。今の世の中で」
「そのまさかだと思いますよ」
「でも、その防具はリーちゃんが手に入れてしまったけど」
「またか!」
「そう、今度は籠手」
「あーっ、お嬢さん、籠手を手に入れたって?」
御大は気の毒そうにリナのほうを見た。リナは仕方なく左手を差し出すと、ブレスレットを見せた。
「赤い籠手だったんですけど、別に呼んだわけではないのに籠手、という言葉を口に出した途端に私の手に籠手が嵌ったんです。これはAさんがスマホで写真を見せたら、二つの籠手がまとまってこんなブレスレットに変わりました」
「まぁ、今の時代に籠手とか兜とか付けていたら、コスプレにしても目立つしな。ブレスレットになってくれて良かったじゃないか」
「でも、……どうして私なんですか。私、何も特に変わった事もない普通の子なのに」
「普通の子だったんだよな」
「でも、バラバラに隠された防具に何故か、なつかれてしまっている」
「どうしてでしょう!? まさかこの後も色々、まさか刀とか槍とか出てきませんよね」
リナの問いにその場にいた者は皆、顔を見合わせた。内心、この後も武具と防具は集まってきそうだと思っているのは顔を見ればわかる。
「えーっ、異世界召喚とかじゃないのに、変化する防具とか武具とか集まったら、魔王討伐をしろとか言われませんよね。私、剣道とかもした事ないですけど」
「いや、この世の中に魔王とかいないから」
「妖怪とか人外とか幽霊とかはいるけど」
「居ますね……」
リナはグルリと周りを見回した。マスターの翼以外は皆、人間じゃない。これまで人間以外のことなんて考えてもみなかったけど、『喫茶AYASHI』に集まってくるのは妖怪とか人外ばかりだ。
割とフレンドリーに接してくれているし、親切なので忘れがちだけど、彼らは力の強い妖怪たちらしい。
「だって、俺たちだっていわゆる妖怪変化という奴だから。もっとも、俺は可愛い狐ちゃんだけど」
「どこが、」
「その妖怪を束ねる親玉みたいな悪の帝王みたいな人はいないんですか!」
と言いながら、リナと他の皆は自然とナキンを見ていた。翼は笑いを押さえながら、
「いえ、いえ、確かにナキンは悪の帝王が良く似合いそうな、アッ、ハッハッハッ」
「煩い! 笑うな」
「いや、すみません。ナキンは悪の親玉ではありませんよ。今は。今、そういう妖怪変化とか人外を纏めようとしているのはいましたっけ?」
「うーん。力のある人外は大体、興味ある事以外には無関心だから、……、まさか、タヌキの奴、武具と防具を集めて妖怪を纏めようと、いや、あの妖力で人外を纏めるのは無理だな」
「力あるものは無理でも、その辺の有象無象だったら何とかなるんじゃないか。雑魚を纏めて何かしようとしていた、とか」
「今の世の中で何をしようっていうんだ? 人間に混ざって充分暮らしていけるだろ。特に日本は平和だから」
「だれかの墓でも暴いたんじゃないか。寝ている人外を蘇らせようとか」
「タヌキの家は家探ししたんだろう?」
「したさ。違法薬物とかわけわからん魔法陣とかアチコチの地図とか呪い付きの法具とか見つかったぞ」
「呪い、か」
「いや、見つかった呪いは大した物じゃない。欲望を増加させる効果はあるみたいだが。それより、何年か前から怪しい人物の出入りがあって、大善が殺されてからはその人物は来なくなったそうだ」
「あの、大善のほうがよっぽど怪しいだろうが」
「怪しい人物は常にフードを深くかぶっていて顔を見られないようにしてたってさ。今、タヌキの家族は何だか怯えているんだけど心当たりはないって言うんだ」
「善の字がつくのは、後何人いるんだ?」
「大善、広善、洋善、一善、定善、義善、十善」
「そんなにいるのか!」
「このうち女性が一善と十善でイチコとジツコと読むそうだ。それに加えて君善、キミコか」
「大善が父親で広善と定善、十善、君善がその子供、洋善と義善、一善が大善の兄弟だ」
「全員の所在は掴めているのか?」
「いや、今、所在不明なのが何人かいる」
「大善の葬式には来たんだろう?」
「いや、大善は密葬で妻と子供だけでひっそりと送ったらしい。でも、子供でも定善は行方不明。後、義善と一善が所在不明」
「いつから?」
「最近、連絡がなくて、電話しても出ないし、自宅にも帰ってないというのが分かった。3人ともに」
「それって、まさか」
「どこかで……倒れているのかもしれないな」
不穏な会話を聞いてリナはウンザリした。タヌキの一族とは全く面識はないけれどリナの持ち物が殺人事件のたびに出てくるのは気分が悪くなる。
「あ、あのまさかとは思いますが、」
とリナが御大に声をかけた時、警察官が御大の所に何かを持ってきた。それを見て御大は
「あー、お嬢さん、残念な事に今回はお嬢さんの名刺が使われたようだ」
と気の毒そうにリナを見た。
「また、お前らか」
ウンザリした顔で御大が皆を見回して言う。
「どういうわけか殺人現場に行き当たるのは、いい迷惑だ。しかも、またタヌキだ」
「はっ、タヌキ?」
御大にナキンとマスター翼が、殺された大上君善が養女で実の父が田塗大善であるとの話をすると御大は難しい顔をした。君善は少年Kの伯父によると、父親が生きている時から勝手に蔵の中を物色したりしていたらしい。
「何かを探していたらしいですよ」
「ずっと以前からワザワザ養女にして何かをしたかったという事か。まさか、あの武器と防具を集めようとしていたのではないだろうな。今の世の中で」
「そのまさかだと思いますよ」
「でも、その防具はリーちゃんが手に入れてしまったけど」
「またか!」
「そう、今度は籠手」
「あーっ、お嬢さん、籠手を手に入れたって?」
御大は気の毒そうにリナのほうを見た。リナは仕方なく左手を差し出すと、ブレスレットを見せた。
「赤い籠手だったんですけど、別に呼んだわけではないのに籠手、という言葉を口に出した途端に私の手に籠手が嵌ったんです。これはAさんがスマホで写真を見せたら、二つの籠手がまとまってこんなブレスレットに変わりました」
「まぁ、今の時代に籠手とか兜とか付けていたら、コスプレにしても目立つしな。ブレスレットになってくれて良かったじゃないか」
「でも、……どうして私なんですか。私、何も特に変わった事もない普通の子なのに」
「普通の子だったんだよな」
「でも、バラバラに隠された防具に何故か、なつかれてしまっている」
「どうしてでしょう!? まさかこの後も色々、まさか刀とか槍とか出てきませんよね」
リナの問いにその場にいた者は皆、顔を見合わせた。内心、この後も武具と防具は集まってきそうだと思っているのは顔を見ればわかる。
「えーっ、異世界召喚とかじゃないのに、変化する防具とか武具とか集まったら、魔王討伐をしろとか言われませんよね。私、剣道とかもした事ないですけど」
「いや、この世の中に魔王とかいないから」
「妖怪とか人外とか幽霊とかはいるけど」
「居ますね……」
リナはグルリと周りを見回した。マスターの翼以外は皆、人間じゃない。これまで人間以外のことなんて考えてもみなかったけど、『喫茶AYASHI』に集まってくるのは妖怪とか人外ばかりだ。
割とフレンドリーに接してくれているし、親切なので忘れがちだけど、彼らは力の強い妖怪たちらしい。
「だって、俺たちだっていわゆる妖怪変化という奴だから。もっとも、俺は可愛い狐ちゃんだけど」
「どこが、」
「その妖怪を束ねる親玉みたいな悪の帝王みたいな人はいないんですか!」
と言いながら、リナと他の皆は自然とナキンを見ていた。翼は笑いを押さえながら、
「いえ、いえ、確かにナキンは悪の帝王が良く似合いそうな、アッ、ハッハッハッ」
「煩い! 笑うな」
「いや、すみません。ナキンは悪の親玉ではありませんよ。今は。今、そういう妖怪変化とか人外を纏めようとしているのはいましたっけ?」
「うーん。力のある人外は大体、興味ある事以外には無関心だから、……、まさか、タヌキの奴、武具と防具を集めて妖怪を纏めようと、いや、あの妖力で人外を纏めるのは無理だな」
「力あるものは無理でも、その辺の有象無象だったら何とかなるんじゃないか。雑魚を纏めて何かしようとしていた、とか」
「今の世の中で何をしようっていうんだ? 人間に混ざって充分暮らしていけるだろ。特に日本は平和だから」
「だれかの墓でも暴いたんじゃないか。寝ている人外を蘇らせようとか」
「タヌキの家は家探ししたんだろう?」
「したさ。違法薬物とかわけわからん魔法陣とかアチコチの地図とか呪い付きの法具とか見つかったぞ」
「呪い、か」
「いや、見つかった呪いは大した物じゃない。欲望を増加させる効果はあるみたいだが。それより、何年か前から怪しい人物の出入りがあって、大善が殺されてからはその人物は来なくなったそうだ」
「あの、大善のほうがよっぽど怪しいだろうが」
「怪しい人物は常にフードを深くかぶっていて顔を見られないようにしてたってさ。今、タヌキの家族は何だか怯えているんだけど心当たりはないって言うんだ」
「善の字がつくのは、後何人いるんだ?」
「大善、広善、洋善、一善、定善、義善、十善」
「そんなにいるのか!」
「このうち女性が一善と十善でイチコとジツコと読むそうだ。それに加えて君善、キミコか」
「大善が父親で広善と定善、十善、君善がその子供、洋善と義善、一善が大善の兄弟だ」
「全員の所在は掴めているのか?」
「いや、今、所在不明なのが何人かいる」
「大善の葬式には来たんだろう?」
「いや、大善は密葬で妻と子供だけでひっそりと送ったらしい。でも、子供でも定善は行方不明。後、義善と一善が所在不明」
「いつから?」
「最近、連絡がなくて、電話しても出ないし、自宅にも帰ってないというのが分かった。3人ともに」
「それって、まさか」
「どこかで……倒れているのかもしれないな」
不穏な会話を聞いてリナはウンザリした。タヌキの一族とは全く面識はないけれどリナの持ち物が殺人事件のたびに出てくるのは気分が悪くなる。
「あ、あのまさかとは思いますが、」
とリナが御大に声をかけた時、警察官が御大の所に何かを持ってきた。それを見て御大は
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