月の沙漠の物語〜ある少女の話〜

榊咲

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②街までの道程

⑷次のオアシスにて2

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 ヒロトはユーリの姿を探しました。ユーリは食事の準備の手伝いをしていました。

「ユーリ、いいか」
「なあに、お父さん。……もそかして教えて貰えるの?」
「ああ、セイが教えてくれるそうだ。それでな、本を渡すからそれで勉強しろ」

「は~い。じゃぁ、後で本を渡してね。お父さん」
「食事の後にな。それと覚えた事を俺に話して貰うからな」
「えぇ!どうして?」

「この事はセイから言って来た事だ。……多分、セイは自分が記憶が無いのを気にしてたからだと思うぞ。ちゃんと教えられてるか不安なんだろう」
「そうなんだぁ。わかった、お父さん。私、頑張るからお願いします!」

 ユーリはセイが自分の不安を押して、教えてくれると聞いて、ヒロトに頑張って勉強すると約束しました。ヒロトはユーリが頑張ると約束した事に満足しました。でもセイに無理を敷いてしまった事には、申し訳ない気持ちになりました。

 ユーリと話していると、食事の準備が終わったとオリガから聞き、ユーリと一緒に食事をしに行きました。

 ユーリと向かうとセイがこちらに向かって来るところで、セイに声を掛けユーリにセイにお礼を言うように促しました。

「お~い、セイ」
「なんですか?ヒロトさん」
「ああ悪いな。ほら、ユーリ」

「セイさん。教えて貰えるってお父さんから聞きました。ありがとうございます」
「ああ、大丈夫ですよ、ユーリさん。頑張りましょう」
「はい、私、頑張ります」

「さぁ、食事にしような、ユーリにセイ」
「はい、お父さん」
「そうですね。ヒロトさん」

 ユーリとセイが話しが終わる時を見極めて、ヒロトが2人を食事に誘います。それに合わせてユーリもセイも同意をして食事の場所に3人で向かいました。

 食事場所には使用人と護衛達が一緒に居ました。食事を準備した料理人から食事をもらう為に、一列に並んでいました。ヒロト達もその列に並びました。

 ユーリは今年10歳の成長期真っ只中。その為、料理人達もユーリには『たくさん、食べろよ』と思い、普通の子どもの量から比べると多く皿に盛られて、「ちょっと多いよ~。食べられないってば」と泣きが入ってしまいます。それでも料理人達が、自分の事を大切に扱ってくれていつ事もわかっている為に、怒ることも出来ず、泣き笑いしながら、食べるのでした。

 それを見たヒロトが、娘のヘルプに反応して、料理人達を睨みました。ヒロトの睨みを見た料理人達は、首を竦めて、青い顔でお互いの顔を見てブルブルと震えています。それを見たヒロトはユーリの仇は取ったと言わんばかりの、満開の笑顔を浮かべました。

「ユーリ、食べられるか?」
「ふぇん、お父さ~ん。多いよ~」
「そうだな。多い分はお父さんが食べてやるからな。食べれるだけ食べればいいから」

「うん。お父さん、ありがとう」
「……と言うわけだから、もうユーリに山盛りにするんじゃ無いぞ!」

 ヒロトに怒られた料理人達は、首振り人形の様に首を縦に振って見せます。ヒロトは料理人達の行動を見ると、満足そうに首を縦に動かします。

 料理人達はそんな商団キャラバンの長をを見て、この人だけは、怒らせてはならないと心に刻むのでした。

 料理人達がヒロトの逆鱗に触れてしまった事以外は、平和的に食事は進んで行きました。

 食事が終わった使用人から休憩に入って行きました。それが終わると、今日の宿泊の準備をする使用人が増えてきました。テントを張ったり、ラクダを集めたりしました。
 
 準備が終われば、自由時間になり、それぞれ気の合う者が集まり、話をしたりゲームをしたりしてリラックスした時を過ごしています。

 その中でもユーリとセイは異色でした。彼等は分厚い本を見ながら、ブツブツと2人で交互に話しているのです。周りの者達は、2人が何をしているのか分からず、皆で首を捻りながら、『何をしてるんだろうね』と言っていました。
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