にゃんこの居場所【完結】

榊咲

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【トトの章】

さよちゃんとの別れ

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 オレがさよちゃんに貰われて来て約13年経った。この頃、調子が悪い。もう長くないのだろうか?オレ達の種族は死期が近づくと自然と分かるようだ。そんな事、誰からも聞いた事が無いが、なんと無くわかってきた。

 さよちゃんはいつもの様に仕事に行っている。この頃は仕事に行く途中で会うネコの話をよく聞くようになった。なんでもオレと同い年だとか。さよちゃんは近親感が湧くらしく、オレに話してくれるんだが、オレとしては気に入らないんだよな!そんな新参者に目移りして、キー!!て思うぜ!!!!

 オレとしては、そんなヤツにうつつを抜かす前にオレを構え!!!って思っちぃまうぜ!ハァー、考えたら頭が痛くなっちぃまうな。もう考えるまい。

 そんな日々を送っていたんだ。まあ毎年の予防接種もなんとか堪えて受けてたぜぇ……。アア、今年も予防接種が来る………!逃げたい、逃げたい、どこに逃げたらいいんだよ~。逃げ場所がないから逃げられない!ああ、ヤダな~。結論、逃げられず行きました。痛かった!

 そんなイヤな事も終わって、オレも油断してたのかなぁ。近所のドラネコがオレの陣地に入って来やがった。ホント鬱陶うっとうしいよな。まあ追っ払ったけどなぁ!オレ様に敵うわけねえだろうが。ワハハハ、オレは強いんだぞー。(本当はさよちゃんが追っ払ったんだよな。グスン)

 毎日毎日、楽しく過ごしてたんだが、いつの頃からか、体が動かなくなってきたんだ。まさかな~っと思ってたんだが、ちょくちょく、そんな事が起こる様になって、ふと、本能でオレはそんなに長くないって思うようになった。でもさよちゃんにそんな事、気付かせたくない。

 そりゃ、怒られた時はコノヤロウって思ったこともあったさ。でもオレはここに来て良かったって思ってるんだ。ここに来た当初は寂しくて寂しくて仕方なかったよ。だけど、その何倍も楽しかったんだ。だからサヨナラは言わない。オレが居なくなったら、さよちゃんはどうするんだろうか?ちょっとは寂しくて思ってくれるんだろうか?それとも、清々したと思うんだろうか?オレとしては、寂しくて思って欲しいよ!

 ああ、もうサヨナラする時が来る……。今日、サヨナラしようと思う。いつもの様に過ごして、仕事に行ったさよちゃんを出迎えて、ご飯を貰って食べて、そしていつもの様に外に出してもらうんだ。この外に出して貰ったら、サヨナラしようと考えて実行する。

 さよちゃんはいつもの様に「トト、トト」と呼んでくれる。オレが帰らないから、懐中電灯を持って外までオレを探しに出て来てくれた。いつも遊びに行ってたハウスに行って「トト、トト、帰っておいで!」と言ってくれた。オレは物陰からそれを見ていたけど、今出ていく訳にはいかない。

 そぉーと物陰から出て、さよちゃんのいる所の反対側に向かって走った。ハァハァハァと息が苦しくなるぐらい走って、家から離れたんだ。さよちゃんはオレをまだ探してる。呼んでる声が聞こえてる。あああ、寂しいよ…。でもオレは早く誰にも見つからない所に行かなきゃ。オレの命の火が消える前に見つけられるかな?

 何としても見つけてみせるぞ。さよちゃんに悲しい思いはさせたくないからな。オレの死体を見たら、絶対悲しむよなぁ。そんな事はオレは望んでいないから……。だから、誰も見つけられない所を絶対に見つけて見せるんだ。だから悲しまないでくれよな。さよちゃん、ありがとう。サヨナラ……。
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