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第5章
第229話 悩み多き悪役令息
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「うわ~ん、どんなのにしよう……」
せっかく1から作るのだから、彼の好みに合ったものを作りたい!!
パーティーから一週間、僕は寝ても覚めてもセントラと共同で製作することになったアレのことばかり考えていた。今は理事長室から戻ってきて、寮の自分の机で考え中。でも案は浮かばず変な絵を描いてはぐちゃぐちゃっと塗り潰し、また描いては消し、を繰り返している。(ちなみにクライスは放課後お城に行ってから帰ってきていない。)
理事長室でも僕はひたすら悩んでいた。
色は黒と金が好きだと言っていたし、土台の色はゴールドに、文字盤は黒にしようかな? でも白のが見やすいかな……?
裏蓋は王家の紋章を刻印すると決めているのだけど、表蓋のデザインはどんなのがいい?
むぅ~
あれこれ悩んでいると、セントラがアドバイスしてくれた。
『表蓋と中のムーブメントに、キルナ様の魔力を込めた魔宝石を埋め込んではいかがですか』
『ムーブメントって?』
『中の機械部分のことです。部品の摩耗を防ぐために小さな宝石を20石ほど使うのですが、その宝石に魔宝石を使うと特別な贈り物になりますよ。私のはスケルトンになっていて中が分かりやすいので参考になるかもしれません』
セントラのを見せてもらうと、緻密に並んだ歯車の中心に小さな宝石がキランキランと輝いていた。中身なんて見ることがあるのかわからないけれど、ゴールドの歯車の中心にピンク色に輝くルビーという組み合わせはすごく芸術的で美しい。
『このピンクの宝石は、私の魔力を込めたルビーです。魔力を込めると真っ赤なルビーが反応してこんな色になりました』
『へぇ、可愛い色だね(鬼の家庭教師が作ったとは思えない)』
心の声が聞こえてしまったのか、セントラがこっちを向いて怖い顔で笑ったので、僕はさっと目を逸らした。
『魔力と同時に魔法式を組み込むと魔法を付与することもできます』
『え、そうなの!?』
『あなたのチョーカーについている宝石には色々と魔法が仕込まれているはずですよ。詳しくは王子に聞いてみると良いでしょう』
『じゃ、じゃあ僕もすごい魔法を組み込めるかしら』
『キルナ様の、魔法……』
え、なんで黙るの? 初級魔法を3つも使えるんだから、何か…便利なのを……。(えーと、そんなのあったかな?)
僕の魔法は水の形を変える、硬くする、刃にするの3つ。そんなこと、クライスなら簡単にやってのけるに違いない。残念ながらどれも全然彼には必要ない魔法だ。がっかりする僕を見て、セントラは励ますように言った。
『そうですね。念じると水の花が出てくる魔法を仕掛けましょうか。豆粒大の花一つくらいなら可能でしょう』
『宝石から花が出てくるようにするの? ん、それいいね。可愛いし!』
役にはたたないかもしれないけど、可愛いならマシだ。あれ、これ何だろ?って案外びっくりするかもしれない。彼を笑顔にすることができたら、うれしい。
『役に立つかどうかなんて、どうでもよいことです。魔宝石のついた装飾品を贈るという行為に意味があります。魔宝石は特別な人にしか贈らないものですから』
特別な人、大切な人ってことだね。
首元の石をそっと指先で触り、くすぐったい気持ちを味わう。
話を聞いて、魔宝石は絶対入れようと決めたものの、今度は魔力を込めるための宝石のチョイスが難しい。セントラも宝石の良し悪しはよくわからないというし。
『ふわぁ、いっぱいあるね。どれもキラキラしてて綺麗。どれが…いいのだろ』
取り寄せてもらったサンプルの石を見せてもらったけれどその数、数千種類。世の中には僕の知らない宝石がたくさんあるらしい。前世も今世も宝石に興味を持ったことのない僕にはどれが良いのか全く検討もつかない。
(やっぱり本人に好きなものを聞くのが一番早いかな? でもプレゼントはサプライズで渡したほうが嬉しさ倍増だよね?)
前のプレゼントが酷かった分、今度こそは全部こだわって最高のものを最高のシチュエーションで渡したい。
「うーん、どうしよぅ。考えないといけないことが多すぎる」
「どうした?」
やばい、クライスが帰ってきた! わたわたと勉強机に広げていた図案を片づけ、何でもないよという顔をする。
「えと、宿題のことを考えてただけだよ」
「そうか。たしかに今日の魔法数術は少し難しい問題があったな」
え、うそ……。数術の宿題まだやってない。(表蓋の図案作りに熱中し過ぎて忘れてた!)
僕は急いで数術の問題集をパラパラと捲る。どれだろう、クライスでも難しいと言う問題は……。
(1)魔法陣Aと魔法陣B、二つの魔法陣の重なっている部分の面積を答えよ。
あ、やばい。一問目からわかんない。これってどうやって解くんだっけ……。魔法陣Aはドーナツみたいな形、Bは五芒星…それの重なってる部分? ちょっと……頭が……痛い。
問題と睨み合うこと30分。教科書の該当箇所を探し、ノートを開いてみたけどどの公式を使えばいいのかも不明。まさか転生先で前世の数学によく似た学問に巡り合ってしまうとは……。(しかも前世では数学結構得意だったのに全然通用しないくらい難しい。)このゲームを作った人って、理系?
「ふぇええん、わからないよぅ」
「キルナ? どれがわからない?」
覗き込んできたクライスとトンと肩が触れ合い、僕はぽおっと赤くなって俯いた。
なぜだか最近ちょっと彼と目を合わせられないの。なんでだろ。
クライスの方は普通なのに、僕だけなんか、変。妙に意識してしまって……。
「あの、こ、これがわかんないの」
「ああ、この問題は、この公式を使ってーー」
ペンをカリカリと動かして、難しい問題をスラスラ解いちゃうクライス、格好いいな……。クライスはパーティーの後処理、僕はプレゼント作りで最近お互いに忙しくて授業以外ではなかなか一緒にいられない。パーティー前はトイレにまで入ってきていただけに、ちょっと寂しい。(もちろんトイレは一人で入りたいけど。)
「……ナ。聞いてるか?」
「んぇ、あ、ごめん。もう一回教えてほしぃ」
しまった。余計なこと考えている場合じゃないのに。忙しいクライスがせっかく教えてくれてるのに、僕のバカ。
「大丈夫か? 最近ずっと上の空で何か考えてるだろ? 今日は休んで明日の朝やるか?」
「え、だ、だいじょぶ。ちゃんとやるから、教えて」
いつもならとっくに寝てる時間だし、リリーに聞きに行くわけにもいかない。クライス先生の言うことをよく聞かなきゃ。
ドキドキドキ
(心臓、もう、うるさいよ、止まって。こんなにドキドキしてたらすぐ横にいるクライスにバレちゃうでしょっ!)
「じゃあ、もう一度やってみるぞ」
「っん…おねが…いします……」
「まず魔法陣Aの面積を求めてーー」
はぁ…格好いい。もうダメ、集中できない。
これはきっとあのキスのせいだ。もちろん僕のあげたやつじゃなくて、クライスのくれたあの、甘い甘いシフォンケーキみたいなキスのせい!!
あと、『愛してる』って言葉のせい。
あれのせいで僕はなんかおかしいの。
せっかく1から作るのだから、彼の好みに合ったものを作りたい!!
パーティーから一週間、僕は寝ても覚めてもセントラと共同で製作することになったアレのことばかり考えていた。今は理事長室から戻ってきて、寮の自分の机で考え中。でも案は浮かばず変な絵を描いてはぐちゃぐちゃっと塗り潰し、また描いては消し、を繰り返している。(ちなみにクライスは放課後お城に行ってから帰ってきていない。)
理事長室でも僕はひたすら悩んでいた。
色は黒と金が好きだと言っていたし、土台の色はゴールドに、文字盤は黒にしようかな? でも白のが見やすいかな……?
裏蓋は王家の紋章を刻印すると決めているのだけど、表蓋のデザインはどんなのがいい?
むぅ~
あれこれ悩んでいると、セントラがアドバイスしてくれた。
『表蓋と中のムーブメントに、キルナ様の魔力を込めた魔宝石を埋め込んではいかがですか』
『ムーブメントって?』
『中の機械部分のことです。部品の摩耗を防ぐために小さな宝石を20石ほど使うのですが、その宝石に魔宝石を使うと特別な贈り物になりますよ。私のはスケルトンになっていて中が分かりやすいので参考になるかもしれません』
セントラのを見せてもらうと、緻密に並んだ歯車の中心に小さな宝石がキランキランと輝いていた。中身なんて見ることがあるのかわからないけれど、ゴールドの歯車の中心にピンク色に輝くルビーという組み合わせはすごく芸術的で美しい。
『このピンクの宝石は、私の魔力を込めたルビーです。魔力を込めると真っ赤なルビーが反応してこんな色になりました』
『へぇ、可愛い色だね(鬼の家庭教師が作ったとは思えない)』
心の声が聞こえてしまったのか、セントラがこっちを向いて怖い顔で笑ったので、僕はさっと目を逸らした。
『魔力と同時に魔法式を組み込むと魔法を付与することもできます』
『え、そうなの!?』
『あなたのチョーカーについている宝石には色々と魔法が仕込まれているはずですよ。詳しくは王子に聞いてみると良いでしょう』
『じゃ、じゃあ僕もすごい魔法を組み込めるかしら』
『キルナ様の、魔法……』
え、なんで黙るの? 初級魔法を3つも使えるんだから、何か…便利なのを……。(えーと、そんなのあったかな?)
僕の魔法は水の形を変える、硬くする、刃にするの3つ。そんなこと、クライスなら簡単にやってのけるに違いない。残念ながらどれも全然彼には必要ない魔法だ。がっかりする僕を見て、セントラは励ますように言った。
『そうですね。念じると水の花が出てくる魔法を仕掛けましょうか。豆粒大の花一つくらいなら可能でしょう』
『宝石から花が出てくるようにするの? ん、それいいね。可愛いし!』
役にはたたないかもしれないけど、可愛いならマシだ。あれ、これ何だろ?って案外びっくりするかもしれない。彼を笑顔にすることができたら、うれしい。
『役に立つかどうかなんて、どうでもよいことです。魔宝石のついた装飾品を贈るという行為に意味があります。魔宝石は特別な人にしか贈らないものですから』
特別な人、大切な人ってことだね。
首元の石をそっと指先で触り、くすぐったい気持ちを味わう。
話を聞いて、魔宝石は絶対入れようと決めたものの、今度は魔力を込めるための宝石のチョイスが難しい。セントラも宝石の良し悪しはよくわからないというし。
『ふわぁ、いっぱいあるね。どれもキラキラしてて綺麗。どれが…いいのだろ』
取り寄せてもらったサンプルの石を見せてもらったけれどその数、数千種類。世の中には僕の知らない宝石がたくさんあるらしい。前世も今世も宝石に興味を持ったことのない僕にはどれが良いのか全く検討もつかない。
(やっぱり本人に好きなものを聞くのが一番早いかな? でもプレゼントはサプライズで渡したほうが嬉しさ倍増だよね?)
前のプレゼントが酷かった分、今度こそは全部こだわって最高のものを最高のシチュエーションで渡したい。
「うーん、どうしよぅ。考えないといけないことが多すぎる」
「どうした?」
やばい、クライスが帰ってきた! わたわたと勉強机に広げていた図案を片づけ、何でもないよという顔をする。
「えと、宿題のことを考えてただけだよ」
「そうか。たしかに今日の魔法数術は少し難しい問題があったな」
え、うそ……。数術の宿題まだやってない。(表蓋の図案作りに熱中し過ぎて忘れてた!)
僕は急いで数術の問題集をパラパラと捲る。どれだろう、クライスでも難しいと言う問題は……。
(1)魔法陣Aと魔法陣B、二つの魔法陣の重なっている部分の面積を答えよ。
あ、やばい。一問目からわかんない。これってどうやって解くんだっけ……。魔法陣Aはドーナツみたいな形、Bは五芒星…それの重なってる部分? ちょっと……頭が……痛い。
問題と睨み合うこと30分。教科書の該当箇所を探し、ノートを開いてみたけどどの公式を使えばいいのかも不明。まさか転生先で前世の数学によく似た学問に巡り合ってしまうとは……。(しかも前世では数学結構得意だったのに全然通用しないくらい難しい。)このゲームを作った人って、理系?
「ふぇええん、わからないよぅ」
「キルナ? どれがわからない?」
覗き込んできたクライスとトンと肩が触れ合い、僕はぽおっと赤くなって俯いた。
なぜだか最近ちょっと彼と目を合わせられないの。なんでだろ。
クライスの方は普通なのに、僕だけなんか、変。妙に意識してしまって……。
「あの、こ、これがわかんないの」
「ああ、この問題は、この公式を使ってーー」
ペンをカリカリと動かして、難しい問題をスラスラ解いちゃうクライス、格好いいな……。クライスはパーティーの後処理、僕はプレゼント作りで最近お互いに忙しくて授業以外ではなかなか一緒にいられない。パーティー前はトイレにまで入ってきていただけに、ちょっと寂しい。(もちろんトイレは一人で入りたいけど。)
「……ナ。聞いてるか?」
「んぇ、あ、ごめん。もう一回教えてほしぃ」
しまった。余計なこと考えている場合じゃないのに。忙しいクライスがせっかく教えてくれてるのに、僕のバカ。
「大丈夫か? 最近ずっと上の空で何か考えてるだろ? 今日は休んで明日の朝やるか?」
「え、だ、だいじょぶ。ちゃんとやるから、教えて」
いつもならとっくに寝てる時間だし、リリーに聞きに行くわけにもいかない。クライス先生の言うことをよく聞かなきゃ。
ドキドキドキ
(心臓、もう、うるさいよ、止まって。こんなにドキドキしてたらすぐ横にいるクライスにバレちゃうでしょっ!)
「じゃあ、もう一度やってみるぞ」
「っん…おねが…いします……」
「まず魔法陣Aの面積を求めてーー」
はぁ…格好いい。もうダメ、集中できない。
これはきっとあのキスのせいだ。もちろん僕のあげたやつじゃなくて、クライスのくれたあの、甘い甘いシフォンケーキみたいなキスのせい!!
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あれのせいで僕はなんかおかしいの。
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