いらない子の悪役令息はラスボスになる前に消えます

日色

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第5章

第254話 番外編:いちごパーティー②※

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「あのさ、これって何の遊び?」

なぜか目隠しされてベッドの四隅に手足を縛られてしまった僕は、大の字で全裸という格好で横たわっている。


いちごパーティーの途中で氷の王子様によって自室に連行され、一瞬のうちにこの状況が生まれていた。もっと抵抗できればよかったのだけど、あまりの寒さに凍死しそうで、僕は動けなかった。

カチコチのまま四肢を縛られて、目に布を巻かれ、なにがなんだかわからない状況に戸惑っていると、僕が震えているのに気づいた彼が、室内を暖かくしてくれた。
冷たくなった手をきゅっと握られ、じわじわと温かさが戻ってきた。足も同じように手のひらを当てて魔法で温めてくれる。

「あったかぁい……。ありがと」

と言ってしまってから、でも寒くしたのもクライスなんだよね、と思った。でもまぁいい。それよりも、この目隠しが邪魔でどうにかして欲しい。真っ暗で何が起きているのかわからないのだもの。

見えないと怖い。ただでさえ、クライスはさっきまで少し怒っているかんじだったし。(氷の魔王みたいにも見えた)

「ね。クライス? ほら、戻ってみんなと一緒にデザート食べようよ。僕まだあんまり食べてないし」

と、できるだけ彼を刺激しないよう優しい口調で誘ってみる。彼の機嫌は今どんな感じだろぅ。見えないから表情がわからない。するとすぐ近くで……(顔に息がかかるほど近くで)彼の声がした。

「そうだな。キルナは周りばかり気にして、あまり食べてなかったからな」

こくこくこく。力一杯頷く。

だから僕の手足を縛っている紐を今すぐ解いて? という僕のささやかなお願いは……。

「じゃあ、今から俺が食べさせてやる。全種類持ってきたから、全部食べよう」
「ふぇ……?」

叶いそうになかった。



「んぅ、もぐもぐもぐ。あまぁ」

言われた通りに開いた口に入れられたのは、生クリームの付いたイチゴだった。噛んだ瞬間ジュワッと果汁が口の中に溢れ、甘い生クリームと混じり合う。

(ふふふっ一番おいしいやつだ。この組み合わせは最高すぎる。)

「甘いのか?」

最高のコラボにほくそ笑みながらもぐもぐと口を動かしていると、急に彼の舌がぬるりと潜り込んできた。そしてなんと食べていたものを半分取られてしまった。

(んなっ! なんてこと!?)


「も、クライスは、自分の分を食べたらいいでしょ!」

僕がぷんすか怒ると、彼は、「キルナの食べているやつが食べたかったんだ」という。
デザートはたくさんあったはずなのに、人の口の中のものを取るなんて、意地悪にも程がある。極悪非道! 魔王! 心の中で悪口を言うけど、口に出すのは止めた。目も見えないし動けないのに、自分より強いものに楯突く勇気はない。



「じゃあ、次はこれにしよう」

口に入れられたのは……ストロベリーアイス。パフェに載せたやつだ。(冷たくて、おいしっ! 何これ当てっこクイズみたいでおもしろ)と思う余裕があったのはその一瞬だけだった。

「ア……んァ…ん……んはっ」
「確かにうまいな」

グチュグチュグチュと遠慮なく僕の口内を舐めまわし、溶けたアイスを舐めとる彼。ひぃ。へ、変態!!?

その後もそんなかんじで次々と僕の口にデザートを入れて食べさせては、お口に舌を入れて取りにくる王子様。っていうか自分の口に直接スプーンを運べばいい話なのに、なんで?

(あ、これ、上手に焼けたパンケーキだ。おいし……)

なんとなく、もうその無駄なやり取りに慣れてきてお腹がいっぱいになった頃、彼がペロペロッと僕の唇を舐めた。ごちそうさま、これでおしまいの合図かな?

ようやく解いてもらえると期待していたのだけど……ふいに右の乳首が熱い何かに包まれた。ぬるぬるとした何かがそこを這い回る。左側はツンツン、クルクルと撫でられ、擦られ、次第にジンジンと痺れるような変な感覚が湧き起こってくる。

「ふ……んくぅ…も……んやぁ…やめてっ……あ……」

変な声が出るのを止めようとするのだけど、手が固定されているから口を抑えることができない。暗闇の中自分の喘ぎ声とピチャピチャという水音だけが響き、余計に恥ずかしくなる。

(ああ、なにこれ。見えないせいかいつもより敏感になってる? 与えられる刺激のことしか考えられない。やばい……すごい…気持ちいいよぉ)

ジュウジュウと強く吸い上げられ、ビクッと胸を反らせ、突き出す形になった。背中に手を回され、吸引の力は増していく。しかも合間にチロチロとソフトに舐められるのがまた堪らない。

「ふぇ、もう…んあっ!! おねがぁ…ん……離してぇ!!」
「……」
「あ゛…もぅ…そこばっかりぃ。腫れちゃう……乳首痛くなっちゃうよぉ」
「……」

何も喋らない彼に、もしかしてこれはクライスじゃないかもしれない、と思い始めた。



だって、クライスだったらもっと優しくよしよししてくれるでしょ? 
気持ちいいのかって聞いてくれるでしょ?

ゾッとした。目の前の暗闇が怖い。

「んあああああ、いやらあああクライスじゃないとやらああああ!!!!!!!」

僕は無我夢中で叫んだ。こんなのは嫌だ。

彼の顔が見たい。ここにいるの? ああ、もし彼が出ていってて、これが違う人だったりしたら……。

「っん…うく…ふえええええ」

考えると悲しくて、熱い涙が布を濡らす。すると、次の瞬間パァーッと目の前が明るくなった。どうやら目隠しの布が外されたみたい。眩しくて目をパチパチさせ、ようやくよく見えるようになると、すぐ目の前にスーパーイケメンフェイスがあった。驚いたような、心配そうな顔で僕を見つめている。

「すまない。そんなに嫌だったのか?」

いたわるように僕の頭をよしよしする彼の手は、いつも通り優しくて。子どもみたいに泣き喚いてしまった僕は、照れ笑いしながらその心地よさを噛み締めた。

なんだ、やっぱりクライスだったのか。よかったぁ、という安心感が僕を包み込んでいる。

「違うの、クライスの顔が見えなかったから怖くなったの。もし違う人だったら絶対嫌だと思って……」
「そうか、俺だといいのか? たっぷり吸っても?」

ツンと腫れた僕の乳首を見ながらニヤリと笑う彼は悪どい悪徳商人?みたいな顔をしている。あ、違うか。魔王の顔か。

「もう! 嫌だよ、そればっかり。普通がいい」
「普通?」
「するなら普通のキスをして!」

となぜか勢いに任せてキスを強請ねだってしまった。だって、怖い思いをしたんだもの。それくらいご褒美があってもいいはずだよね。


目を開けて、近づく彼の顔を瞳をじっと見つめる。


ーー普通のキス。


それは甘酸っぱいいちごの味で、前世から僕が大好きな味だった。



*この後、キルナはいっぱいよしよしナデナデしてもらいましたとさ(*´∇`*)

                            🐰おしまい🍓
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