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第5章
第256話 魔宝石作り
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リリーが忠告してくれた通り、一ヶ月ほどは急に風が吹いてきたり、いきなり土が盛り上がって躓きかけたりと変な現象が続いていたけれど、時間が経つとともに減っていき、二ヶ月目になるとぴたりと止んだ。どうやらみんなの僕の顔への興味関心は消えて無くなったらしい。
そして嬉しいことにテアが学園に復帰した。やせ細っていた体もツヤツヤと輝く魅惑のボディに戻っていた。(そりゃ水の妖精って言われるよね。こんなに美しいのだもの)
「お姫さま~お待たせ~」
「あのね、言ったでしょ? 僕はお姫様なんかじゃないんだよ。キルナと呼んで」
「あ、そうだったね。学園ではわざとダサい眼鏡をかけて頭をボサボサにして、実は妖精のお姫様だってことを隠してたんだった。ごめんなさぁい」
「んぇ? 違うけど」
そうじゃなくてね、と説明している間に理事長室に着いた。
セントラが取り寄せてくれた色とりどりの宝石が入ったジュエリーボックスを見せると、テアはしばらく無言で宝石を見つめていた。
「キレイ~、キレイだね~」
石を眺める彼の近くにたくさんの妖精が集まっているのがわかる。ニコニコと笑いながらテアの持つ宝石を、テアと同じように眺めている。こんなふうに妖精が自分以外の人間に集まるところを見るのは初めてで新鮮な感じがする。残念ながら彼は妖精に気づいていないみたいだけど。
「ここにあるものは魔力を安定させやすそうなものが多いね~」
そうでしょう、と後ろでコーヒーを飲んでいたセントラの眼鏡がキラリと光った。
「宝石の良し悪しはわかりませんが、魔力との親和性は判断できますから、その点だけは気をつけて選んだのです」
「へぇ~これ理事長先生が選んだのか~やっぱりすごいねぇ。ふふ、でも変なのもあるよ。これとか、照り返しが鈍くて宝石としての価値は低いし、これは内包物が多い、こっちは傷が入ってるし濁ってる。これは……」
「ふ~む。そうですか。その辺の判断は難しいですね。それならこの宝石は……」
二人は宝石の話で盛り上がっているけど、いくら見ても僕にはちっとも違いがわからない。悲しい……。でもいいか。わからないからテアに助けを求めたのだし、いいものを選んでもらおう。
「20石使うんでしょう? せっかくだから色々な宝石を入れて力を強める組み合わせにしようよ~。お姫様は色とか好みはある?」
「好み…えと、黒と金が好きってクライスは言ってたけど、それはもう他のパーツに使ったから……」
「ふふ、お姫様の色だね。」
「ブルー系の色を」
「うん。王子様の色かぁ。じゃあ、それを中心に選ぶね。ちょっとお姫様の体をみせてもらうよ」
「ふぇ?」
なんで体を? と戸惑っている間に制服が脱がされ眼鏡を取られ、パンツ一枚にされてしまった。だけど、恥ずかしいと感じたのは最初だけだった。彼の鋭い視線を見ていたらこれが必要なことなのだとわかる。時折手や足やお腹を触られるけど、イヤらしいかんじはない。
「ハイ、もういいよ」
今度は宝石を机の上に広げ、上から見たり下から見たりしている。集中する彼の目が一瞬金色にキラッと光ったように見えた。
「あれ? 今テアの瞳…」
聞こえていない。すごい集中力だ。何千とある石から迷いなく選んでいく彼の姿はなんだかプロの鑑定士という感じで格好いい。僕が服を着ている間に、次々と選ばれた宝石が並べられていく。
「これでどぉかな~?」
「ふわぁ、すごく素敵!!!」
青空、夜空、海の水……なんかを連想させるような様々なブルーで、20石全て違う宝石らしい。
なんだか一粒一粒が星の雫のようにキランキランと自ら輝いているみたい。深く透明感のあるブルーに吸い込まれそうになる。
「お姫様の魔力に合うものを選んでみたよぉ。水と、闇の魔力。これに一ヶ月くらい毎日魔力を注げば固定されて、魔宝石ができるよ」
(え? 闇? 聞き間違い…ではないよね?)
「テアどうして……」
僕が闇属性だということは内緒にしている。なのにどうしてわかったのだろう。
「ふふっ、外には出てないからテアも普段はわからなかったけど、さっき宝石との相性をみるためによく目を凝らして見たら、お腹にたくさん魔力が入ってるのがわかったんだよぉ。光の魔力に包まれた強い闇の魔力。お姫様は闇属性なんでしょ~?」
言い切る彼に誤魔化せる気はせず、僕はこくりと頷いた。
「でも、みんなにはまだ内緒にしてて欲しいの」
この国で最も忌み嫌われている属性を持つことは誰にも知られてはいけない。知られた瞬間に僕とクライスの婚約はなかったことになるかもしれない。婚約破棄されるその日まで、この秘密は守らなければ……。
「もちろんお姫様がそうしたいのなら誰にも言わない。でも大丈夫? そんなに溜めていたらお腹が痛くならない?」
「うん……大丈夫。心配してくれてありがと」
闇属性だと知られることは怖い。バケモノ……近寄るな……! とまた言われるんじゃないかって恐ろしくなる。僕はおそるおそる聞いてみた。
「テアは、僕が…闇属性で、怖くない?」
「どうして? 怖くなんてないよ」
怖くないという言葉に感動して、じ~んとしていると、彼は「そうだ」と思いついたように言った。
「そういえば、お姫様は探しに行かないの?」
「何を?」
「妖精の花」
ーールーナの花を探しに行かないの?
不思議そうに尋ねる彼の隣で妖精がコロコロと笑っている。
そして嬉しいことにテアが学園に復帰した。やせ細っていた体もツヤツヤと輝く魅惑のボディに戻っていた。(そりゃ水の妖精って言われるよね。こんなに美しいのだもの)
「お姫さま~お待たせ~」
「あのね、言ったでしょ? 僕はお姫様なんかじゃないんだよ。キルナと呼んで」
「あ、そうだったね。学園ではわざとダサい眼鏡をかけて頭をボサボサにして、実は妖精のお姫様だってことを隠してたんだった。ごめんなさぁい」
「んぇ? 違うけど」
そうじゃなくてね、と説明している間に理事長室に着いた。
セントラが取り寄せてくれた色とりどりの宝石が入ったジュエリーボックスを見せると、テアはしばらく無言で宝石を見つめていた。
「キレイ~、キレイだね~」
石を眺める彼の近くにたくさんの妖精が集まっているのがわかる。ニコニコと笑いながらテアの持つ宝石を、テアと同じように眺めている。こんなふうに妖精が自分以外の人間に集まるところを見るのは初めてで新鮮な感じがする。残念ながら彼は妖精に気づいていないみたいだけど。
「ここにあるものは魔力を安定させやすそうなものが多いね~」
そうでしょう、と後ろでコーヒーを飲んでいたセントラの眼鏡がキラリと光った。
「宝石の良し悪しはわかりませんが、魔力との親和性は判断できますから、その点だけは気をつけて選んだのです」
「へぇ~これ理事長先生が選んだのか~やっぱりすごいねぇ。ふふ、でも変なのもあるよ。これとか、照り返しが鈍くて宝石としての価値は低いし、これは内包物が多い、こっちは傷が入ってるし濁ってる。これは……」
「ふ~む。そうですか。その辺の判断は難しいですね。それならこの宝石は……」
二人は宝石の話で盛り上がっているけど、いくら見ても僕にはちっとも違いがわからない。悲しい……。でもいいか。わからないからテアに助けを求めたのだし、いいものを選んでもらおう。
「20石使うんでしょう? せっかくだから色々な宝石を入れて力を強める組み合わせにしようよ~。お姫様は色とか好みはある?」
「好み…えと、黒と金が好きってクライスは言ってたけど、それはもう他のパーツに使ったから……」
「ふふ、お姫様の色だね。」
「ブルー系の色を」
「うん。王子様の色かぁ。じゃあ、それを中心に選ぶね。ちょっとお姫様の体をみせてもらうよ」
「ふぇ?」
なんで体を? と戸惑っている間に制服が脱がされ眼鏡を取られ、パンツ一枚にされてしまった。だけど、恥ずかしいと感じたのは最初だけだった。彼の鋭い視線を見ていたらこれが必要なことなのだとわかる。時折手や足やお腹を触られるけど、イヤらしいかんじはない。
「ハイ、もういいよ」
今度は宝石を机の上に広げ、上から見たり下から見たりしている。集中する彼の目が一瞬金色にキラッと光ったように見えた。
「あれ? 今テアの瞳…」
聞こえていない。すごい集中力だ。何千とある石から迷いなく選んでいく彼の姿はなんだかプロの鑑定士という感じで格好いい。僕が服を着ている間に、次々と選ばれた宝石が並べられていく。
「これでどぉかな~?」
「ふわぁ、すごく素敵!!!」
青空、夜空、海の水……なんかを連想させるような様々なブルーで、20石全て違う宝石らしい。
なんだか一粒一粒が星の雫のようにキランキランと自ら輝いているみたい。深く透明感のあるブルーに吸い込まれそうになる。
「お姫様の魔力に合うものを選んでみたよぉ。水と、闇の魔力。これに一ヶ月くらい毎日魔力を注げば固定されて、魔宝石ができるよ」
(え? 闇? 聞き間違い…ではないよね?)
「テアどうして……」
僕が闇属性だということは内緒にしている。なのにどうしてわかったのだろう。
「ふふっ、外には出てないからテアも普段はわからなかったけど、さっき宝石との相性をみるためによく目を凝らして見たら、お腹にたくさん魔力が入ってるのがわかったんだよぉ。光の魔力に包まれた強い闇の魔力。お姫様は闇属性なんでしょ~?」
言い切る彼に誤魔化せる気はせず、僕はこくりと頷いた。
「でも、みんなにはまだ内緒にしてて欲しいの」
この国で最も忌み嫌われている属性を持つことは誰にも知られてはいけない。知られた瞬間に僕とクライスの婚約はなかったことになるかもしれない。婚約破棄されるその日まで、この秘密は守らなければ……。
「もちろんお姫様がそうしたいのなら誰にも言わない。でも大丈夫? そんなに溜めていたらお腹が痛くならない?」
「うん……大丈夫。心配してくれてありがと」
闇属性だと知られることは怖い。バケモノ……近寄るな……! とまた言われるんじゃないかって恐ろしくなる。僕はおそるおそる聞いてみた。
「テアは、僕が…闇属性で、怖くない?」
「どうして? 怖くなんてないよ」
怖くないという言葉に感動して、じ~んとしていると、彼は「そうだ」と思いついたように言った。
「そういえば、お姫様は探しに行かないの?」
「何を?」
「妖精の花」
ーールーナの花を探しに行かないの?
不思議そうに尋ねる彼の隣で妖精がコロコロと笑っている。
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