いらない子の悪役令息はラスボスになる前に消えます

日色

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第6章

第297話 番外編 クライスSIDE① キルナの巣篭もり※ 

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実家に帰ると母が大量の衣装箱を用意して待っていた。

「(なんの用事かと思ったら……)お久しぶりです。母様」

「注文していたキルナちゃんの服が届いたからな。持って帰れ」

「(こんなに……?)はい、ありがとうございます」

「俺の一番のおすすめはこれだ。シャツは清楚な白色でそで口にはたっぷりのレース、首元にはビロードの黒いリボン。それに合わせる黒い半ズボンとサスペンダー。どうだ、可愛いだろう?」

「はい(まぁキルナは何を着ても可愛いですが)」

「あと、これも。これはなぁ、ミーネがどうしてもというからあつらえたのだが」

「ドレス、ですね(女の子用の)」

「オーダーメイドだからもちろんサイズはぴったりのはずだ。さすがにドレスはと思ったが、完成品を見たら俺も気に入った。クリスタルのように透明感のある水色で、キルナちゃんの白い肌によく合うに違いない。これを着て踊ったら、妖精のように可愛いだろうな!」

「はい(妖精…たしかに)」

「あとこれはルーファスが選んだものだな。やつは小動物が好きみたいで、どうやらうさぎの衣装らしい。中を確認する時間がなかったからどんなものかわからないが、今度会うときにでも見せてくれ」

「はい。伝えておきます」

平日は制服を着て家ではルームウェアばかり着ている彼に、こんなたくさんの服は必要ないと思う。しかもドレスなど絶対に着ないだろうが、母に口答えすると面倒なことになる。早く帰りたい俺は、とりあえず彼の言葉の全てに頷いた。

「発情期まであと一ヶ月、と言っていたか。いいか、キルナちゃんははかなくて繊細なんだ。くれぐれも丁寧に抱くんだぞ」
「わかっています」
「これを持っていけ」
「これは?」
「愛し合うには必要だろ? オメガといえど色々準備がいるからな。そのための道具だ」
「ありがとう…ございます」

キルナと愛し合う。それは想像するだけでも胸を高鳴らせた。もうすぐだ、あと一ヶ月したら、彼の発情期がやってくる。そうしたら、俺たちは番になれる。



その後もなんだかんだと持たされ遅くなってしまった。キルナはもう夕飯を食べているだろうか。

「ただいま」

玄関のドアを開けると……むわりと甘い香りがする。これは……シフォンケーキの、キルナのフェロモンの香り!? なぜ、こんなに濃い……。彼の部屋に近づくほど強い匂いがし、抑制剤を飲んでいるにも関わらずクラクラする。この感覚、前回彼がヒートを起こした時と同じだ。まさか。

「大丈夫か? 入っていいか?」

彼の部屋の扉を叩くが返事はない。中で倒れているのでは? そう思って慌てて扉を開くと、部屋の中央に衣類がうずたかく積まれていた。部屋の隅まで目を走らせるがベッドにもソファにも肝心のキルナの姿はない。

探そうと部屋に足を踏み入れた瞬間、彼の居場所はわかった。服の山の中から彼の声が聞こえたのだ。

「あ……ふぅ……っんぁ」

ゴソゴソと衣擦れの音に混じる喘ぎ声とくちゅくちゅという水音。姿は見えないが、中で何をしているのかは大体わかる。とにかく無事なようでよかった。

だがこれは、声をかけて良いものかと迷っていると、ふと見覚えのあるものが目に入る。

(ん? これは、俺のパンツ? なぜこの部屋に?)

衣類の山はよく見るとコートもシャツもズボンも、キルナのものではなく自分の使っているものばかり。そこまで確認してようやく事態を把握した。

ーーそうか、これは巣なのか!

オメガは好きなアルファの匂いがついたもの(主に衣類)を集め、それに包まれて安心するのだという。一生懸命俺の匂いを集めて巣作りをするキルナの姿を想像すると無性に愛しい気持ちが込み上げ、彼を求めて体が疼いた。


「キルナ!!」

結局我慢できずに声をかけ、彼の作った巣を壊さないように入口付近の布をそっとけていくと、床に膝をついた艶かしい白い脚が見える。四つん這いになっているようだ。続いてぷるんと丸みのある白い尻があらわれたのだが……。眩暈めまいがした。なんとその小さな尻は彼の指をくわえているのだ。三本も……。

衣類から突き出た細い腰が淫らにくねっている。彼は行為に夢中になっていて俺が帰ってきたことにまだ気付いていない。細い指はくちゅくちゅとそこをかき回し、止まる気配がない。なんて、魅惑的な光景……。

「んっ……あ……ぅ。クライスぅ……もっとぉ」

甘い声で名を呼ばれ、体がさらに熱くなる。どうやら俺のことを想いながら自慰をしているらしい。でも泣いている? まだ上半身は衣類に埋もれているせいで顔は見えないが、中から啜り泣く声が聞こえた。

「ふぇえええん。とどかないよぉ。たりない。もっとかたいの、もっとおくまでほしぃよお」

理性を保っていられるうちにと急いで母にもらった避妊薬を飲み、彼の指を優しく引っ張ると、こちゅっ……と音を立て粘液をまとった指が出てきた。

「あ……だれ? この香り……、クライス?」
「ああ、遅くなってすまない」
「どぅしてゆび……ぬいちゃうの? いやぁ! なか、あついの、がまんできないぃ!!」
「我慢しなくていい。いくらでもやるから。ほら、とにかく出てこい」

早くキルナと愛し合いたい。肌に触れたい。気持ちを抑えきれずつい急かしてしまう。こんなんじゃダメだ、抱く時は焦らず丁寧にしなければ……。しかしここで思わぬ反発があった。

「んぅいやら。ここにいるぅ……」
「は?」
「らってここぉクライスのにおいれいっぱいなの。でたくないぃ」

駄々をこねるキルナに色々と説得を試みるが、もう彼は発情しきっていて俺の言葉を聞こうとしない。巣に頭を突っ込んだまま動かず、無理やり引っ張り出そうとするとしくしく泣き始めるのでそれも諦めた。一体どうしたらいいんだ?

「ね、おねがい…クライスの…いれて。はやくほしいよぉ」

ふり、ふり、ふり

尻が、誘っている!? 
やばい、濃厚なフェロモンのせいでこれ以上我慢できそうにないのに。はぁ、はぁ、と荒くなる呼吸に自分の限界が近いことを知る。揺れる尻の誘惑に負けそうだ。

「キルナ…ベッドで優しく抱きたい。頼むから出てきてくれ」

「いや。クライスのをいれてくれるまで、ぼく、ここからでないから!」

なんだって?

とんでもない引きこもり宣言に俺は途方に暮れた。
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