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第8章
第375話 テスト前日②
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とりあえず、クライスと一緒にいるときは安全だということがわかってきた。彼と一緒にいるときは挨拶だって普通に返ってくるし、何かに躓くことはない。
彼と一緒に過ごす教室や、生徒会室や、寮の部屋で何かされると言うことはまずない。
ということは、一番危険なのはトイレだということ。肩にぶつかられるのも、転かされるのも、嘲笑されるのも、大体トイレの行き帰りだ。雨が降ってくるのだってトイレの中だけ。
(うう。そろそろ我慢の限界……)
水分を控えめにし、なんとか行かずに我慢していたけれど、もう無理だ。背に腹はかえられない。僕は隣で読書しているクライスに声をかけた。
「ねぇクライス…あのさ、一緒にトイレ行かない?」
「ん? ああ、いいぞ」
安全を確保するためには、連れションするしかない。今の僕にとってこれは必要なことなのだけど、男二人で手を繋いでトイレに行く恥ずかしさときたら。
ごめんねクライス。と思って隣を見たら、なんだかとても嬉しそうにしている。実は彼も行きたかったのかな?
でも彼は用を足しにはいかず、個室のドアの前で待ってくれていた。
手を洗いながら鏡越しにお礼を言う。自分で誘っておいて恥ずかしがる方が変だと思い、できるだけ平静を装いながら。
「ついてきてくれてありがと。今日このあと生徒会室行くんだよね?」
「いや、テスト前とテスト中は生徒会の仕事は休みだ。部屋に戻ろう」
「そうなの!?」
失敗した。じゃあ部屋に戻ってからトイレに行けばよかった! そうしたらこんな恥ずかしいことをせずに済んだのに。
部屋に戻るとすぐに机に向かい、色々なことを忘れてとにかく勉強に集中することにした。これだけ頑張ってきたのだし、明日はいい点を取りたい。
「むぅううううう……」
「キルナ」
「何? いま数術の問題と戦ってるとこ」
「そろそろ風呂にいこう」
「もうそんな時間だっけ?」
時計を見たらもう18時、ああ、時間がない。もっともっと勉強しないと。数術に自信がない。でも、魔法史もたくさん覚えなきゃいけない。あと一週間、いや、あと一日あれば……。
前世のテスト前にも同じことを思っていた気がする。
(ふぅ、だめだ。一旦落ち着こう)
僕はクライスが淹れてくれたハーブティーを一口飲んだ。勉強している間に机に置いてくれたらしい。
「あ、これスッキリした後味でおいしっ」
ルークというハーブで淹れたハーブティーだ。お湯の温度や蒸らし時間を間違えると渋みが出ておいしくない。それをこんなに上手に淹れるとは。疲れが取れるハーブを選んでくれたことにほっと心が和む。
「今からやるなら何の勉強するのがいいかな?」
「そうだな、もう遅いから暗記科目がいいだろう。寝ている間に記憶が定着する。あとは、今まで間違えたところの見直しだな。だが一番大切なのは早く寝ることだ。風呂に入って夕食を食べたら、一時間以上勉強せずに寝ろ」
「はぁい」
今日は常に成績トップの王子様の言葉に従おう。寝不足でテストを受けるべきじゃないことは僕にもわかる。正直今も目の下にはクマができていて、頭もぼおっとしていて体調が万全じゃない。
そういうときは、ものごとがうまく考えられないものなのだ。
例えば、大事なことを忘れていたり。
お風呂セットを持って大浴場のお風呂場へ行き、服を脱いで、思い出した。
「あ……」
タオルで隠してももう遅い。寝不足のせいか、痛みも鈍っていて忘れていた。
「なんだその怪我」
「あ……これは……その、言おうと思ってたの。明日」
「明日?」
鋭い視線に言葉が詰まる。
うまいこと言い訳を……。寝不足の頭では一つも良い案が思い浮かばない。
それを僕は今身をもって体験しているのだった。
彼と一緒に過ごす教室や、生徒会室や、寮の部屋で何かされると言うことはまずない。
ということは、一番危険なのはトイレだということ。肩にぶつかられるのも、転かされるのも、嘲笑されるのも、大体トイレの行き帰りだ。雨が降ってくるのだってトイレの中だけ。
(うう。そろそろ我慢の限界……)
水分を控えめにし、なんとか行かずに我慢していたけれど、もう無理だ。背に腹はかえられない。僕は隣で読書しているクライスに声をかけた。
「ねぇクライス…あのさ、一緒にトイレ行かない?」
「ん? ああ、いいぞ」
安全を確保するためには、連れションするしかない。今の僕にとってこれは必要なことなのだけど、男二人で手を繋いでトイレに行く恥ずかしさときたら。
ごめんねクライス。と思って隣を見たら、なんだかとても嬉しそうにしている。実は彼も行きたかったのかな?
でも彼は用を足しにはいかず、個室のドアの前で待ってくれていた。
手を洗いながら鏡越しにお礼を言う。自分で誘っておいて恥ずかしがる方が変だと思い、できるだけ平静を装いながら。
「ついてきてくれてありがと。今日このあと生徒会室行くんだよね?」
「いや、テスト前とテスト中は生徒会の仕事は休みだ。部屋に戻ろう」
「そうなの!?」
失敗した。じゃあ部屋に戻ってからトイレに行けばよかった! そうしたらこんな恥ずかしいことをせずに済んだのに。
部屋に戻るとすぐに机に向かい、色々なことを忘れてとにかく勉強に集中することにした。これだけ頑張ってきたのだし、明日はいい点を取りたい。
「むぅううううう……」
「キルナ」
「何? いま数術の問題と戦ってるとこ」
「そろそろ風呂にいこう」
「もうそんな時間だっけ?」
時計を見たらもう18時、ああ、時間がない。もっともっと勉強しないと。数術に自信がない。でも、魔法史もたくさん覚えなきゃいけない。あと一週間、いや、あと一日あれば……。
前世のテスト前にも同じことを思っていた気がする。
(ふぅ、だめだ。一旦落ち着こう)
僕はクライスが淹れてくれたハーブティーを一口飲んだ。勉強している間に机に置いてくれたらしい。
「あ、これスッキリした後味でおいしっ」
ルークというハーブで淹れたハーブティーだ。お湯の温度や蒸らし時間を間違えると渋みが出ておいしくない。それをこんなに上手に淹れるとは。疲れが取れるハーブを選んでくれたことにほっと心が和む。
「今からやるなら何の勉強するのがいいかな?」
「そうだな、もう遅いから暗記科目がいいだろう。寝ている間に記憶が定着する。あとは、今まで間違えたところの見直しだな。だが一番大切なのは早く寝ることだ。風呂に入って夕食を食べたら、一時間以上勉強せずに寝ろ」
「はぁい」
今日は常に成績トップの王子様の言葉に従おう。寝不足でテストを受けるべきじゃないことは僕にもわかる。正直今も目の下にはクマができていて、頭もぼおっとしていて体調が万全じゃない。
そういうときは、ものごとがうまく考えられないものなのだ。
例えば、大事なことを忘れていたり。
お風呂セットを持って大浴場のお風呂場へ行き、服を脱いで、思い出した。
「あ……」
タオルで隠してももう遅い。寝不足のせいか、痛みも鈍っていて忘れていた。
「なんだその怪我」
「あ……これは……その、言おうと思ってたの。明日」
「明日?」
鋭い視線に言葉が詰まる。
うまいこと言い訳を……。寝不足の頭では一つも良い案が思い浮かばない。
それを僕は今身をもって体験しているのだった。
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