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第6話
不思議なことに、辺鄙な場所であるにも関わらず、連日店にはお客さんがやってきた。さすがにここまで来てもらって準備中では申し訳ないから、ちゃんと看板は営業中に変えた。
お客さんは軽装に見えるけど、よく見るととても質の良い服を着ている。おそらく貴族なのだと思う。
(う~ん、なんとなくお父様やお母様に似ているような。あっちに座ってるお客さんは王様と王妃様?)
一瞬そんな考えが浮かんだけれどすぐに否定した。
いやいや、そんなはずがない。他人の空似だ。こうなった今では、貴族社会から離れられて清清するくらいに思っていたのに。僕はまだ、心のどこかであの時を恋しいと思っているのだろうか。
「あら、このケーキ初めて見るわ」
王妃に似た人がメニューの一つを指差す。僕はにこりと前世で鍛えた接客スマイルでお答えする。
「そちらは新作のケーキです。旬のフルーツをふんだんに使っているので、見た目も味も華やかでおすすめですよ」
「じゃあそれを」
「私も同じのをもらおうか」
「わたくしも!」
「わしはいつものチーズケーキで」
コーヒーや、デザートを出して喜んでもらえるとうれしくて、僕はどんどんメニューを増やし、今ではアップルパイにガトーショコラ、シフォンケーキに野いちごのタルトなんかも作っている。もともと甘いものが少ない世界だから喜んでもらえているようだ。
千秋だった時の記憶はうっすらとしかないけれど、甘いもののレシピはよく覚えていて、今のところゲームの知識より役に立っている。
「なんて可愛らしいケーキなのかしら。美しいだけでなく味も上品。ぜひ次回のお茶会で出したいですわ! ねぇ、よろしくて?」
王妃、に似た人が王様に似た人におねだりしている。「ああ、問題ない。私も気に入った」と、王様に似た人は彼女に優しく頷いた。
すると、向かいに座っていたお母様に似た女性が声を上げた。
「わたくしも注文したいですわ。何と言ってもこの子はうちの可愛い、ぐむ」
彼女が何かを言おうとしたのを、その隣に座っていたお父様に似た男性が口を塞いで止めた。
そんなこんなでお茶会用のケーキの予約が二つも取れた。
僕はやっぱりカフェ経営に向いてるかも! と調子に乗りながら次はどんなデザートを作ろうかと思いを巡らせた。
お客さんは軽装に見えるけど、よく見るととても質の良い服を着ている。おそらく貴族なのだと思う。
(う~ん、なんとなくお父様やお母様に似ているような。あっちに座ってるお客さんは王様と王妃様?)
一瞬そんな考えが浮かんだけれどすぐに否定した。
いやいや、そんなはずがない。他人の空似だ。こうなった今では、貴族社会から離れられて清清するくらいに思っていたのに。僕はまだ、心のどこかであの時を恋しいと思っているのだろうか。
「あら、このケーキ初めて見るわ」
王妃に似た人がメニューの一つを指差す。僕はにこりと前世で鍛えた接客スマイルでお答えする。
「そちらは新作のケーキです。旬のフルーツをふんだんに使っているので、見た目も味も華やかでおすすめですよ」
「じゃあそれを」
「私も同じのをもらおうか」
「わたくしも!」
「わしはいつものチーズケーキで」
コーヒーや、デザートを出して喜んでもらえるとうれしくて、僕はどんどんメニューを増やし、今ではアップルパイにガトーショコラ、シフォンケーキに野いちごのタルトなんかも作っている。もともと甘いものが少ない世界だから喜んでもらえているようだ。
千秋だった時の記憶はうっすらとしかないけれど、甘いもののレシピはよく覚えていて、今のところゲームの知識より役に立っている。
「なんて可愛らしいケーキなのかしら。美しいだけでなく味も上品。ぜひ次回のお茶会で出したいですわ! ねぇ、よろしくて?」
王妃、に似た人が王様に似た人におねだりしている。「ああ、問題ない。私も気に入った」と、王様に似た人は彼女に優しく頷いた。
すると、向かいに座っていたお母様に似た女性が声を上げた。
「わたくしも注文したいですわ。何と言ってもこの子はうちの可愛い、ぐむ」
彼女が何かを言おうとしたのを、その隣に座っていたお父様に似た男性が口を塞いで止めた。
そんなこんなでお茶会用のケーキの予約が二つも取れた。
僕はやっぱりカフェ経営に向いてるかも! と調子に乗りながら次はどんなデザートを作ろうかと思いを巡らせた。
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