婚約解消されたネコミミ悪役令息はなぜか王子に溺愛される

日色

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第4話 

 夢を見た。学園にいた頃の夢だ。僕は目の前にいるセリス=ラディエという男爵令息が気に入らなくて、彼に向かって怒鳴っている。レオンとの仲を自慢され我慢できなかったのだ。

『レオンは僕の婚約者なんだから、近寄るな!』
『だって、レオン王子が一緒にランチを食べようって誘ってくれたんです。ボクは歯牙ない男爵家の息子だから、王子の言葉に逆らうことなんて出来ませんし。もしかして、ルジア様は誘われなかったんですか?』
『僕は……』

 誘われてない。

 何も言えない僕に、きゅるんとしたピンクの瞳をこちらに向け、セリスは続ける。

『ふ~ん、誘われてないんだぁ。婚約者なのに可哀想。それでボクに辛く当たってくるんですね。そうだ、昨日王子が手ずから食べさせてくれたシュークリーム、おいしかったなぁ。クリームが口についたのを、王子ったら、ペロって舌で舐め取ったんですよ。いつも王子はあんななんですか?』
 
 レオンが手ずから食べさせた? クリームがついたところを舐めた? 

(どうしてセリスばっかり彼に可愛がられるの? 僕は婚約者なのに、手を握ったことすらない。やっぱりレオンはセリスのことが好きなんだ)

 そう思った瞬間、頭が燃えるように熱くなった。
 抑えきれない魔力が大きな炎の渦となり彼を襲う。まずい、止められない!

『危ない! セリス逃げて!』

 炎で周囲の木材が焼け、煙で前が見えない。

(まさか、殺してしまった?)
 
 風魔法で煙を払い、恐る恐る彼がいたところを見てみると、そこにはレオンに庇われたセリスの姿があった。レオンによって強力な結界が張られ二人は無事だったらしい。
 ほっと胸を撫で下ろしたのも束の間、彼の腕の中でうっとりするセリスを見て心が悲しみに支配される。
 誰が悪者で、誰がお姫様かは一目瞭然だった。

『……』

 レオンは何か言いたそうに、でも何も言わずセリスを横抱きにし、呪文を唱えて消えた。腕の隙間からちらりと見えたのは勝ち誇ったような表情。
 残された僕を皆が遠巻きに見ている。軽蔑、嫌悪の色を帯びた目。僕はその目が恐ろしくて、殊更大きな声を出した。

『僕を見るな』
 
 地面に尻もちをついた僕に手を貸すものはいない。魔力を放出しすぎてふらつく身体を抱きしめ一人自室に向かって歩いていく。転移魔法を使う魔力が残っていないから、歩いていくしかない。
 よく見ると手にも足にも火傷の痕がたくさんある。顔もおそらく煤だらけ。
 みじめでみっともない人間。
 こんな人間はひとりぼっちで歩いていくしかない。誰も助けてなんてくれない。

 ──僕は一人だ。


 そこで、夢から覚めた。
 頭が痛い。涙がとめどなく流れる。でも大丈夫。
 今は一人じゃない。
 ここには猫がいる。そして大好きなコーヒーの香りがする。
 
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