48 / 156
白衣の天使編
季節外れの海旅行 1
しおりを挟む
「海だーっ!!!!」
同期である入山悠貴の叫びに、雨宮雛子はそれまで俯いていた顔を上げた。
目の前には白い砂浜があり、その向こうには太陽を反射させて輝く海が一面に広がっていた。テンションの上がった悠貴はビーチサンダルで浜辺へと続く階段を駆けていく。
「雛子」
同じく同期の市ヶ谷夏帆は、雛子の肩にそっと手を置く。
「大丈夫?」
皆まで言わずとも分かる。特別に思い入れていた患者が亡くなって日が浅く、落ち込んでいる雛子を夏帆は心配気に見つめた。
「うん、大丈夫」
雛子は笑って見せた。
「せっかく三人で合わせて休み取ったんだもん。すっごく楽しみ!」
前々から、この夏は三人で泊まりがけで海水浴に行こうと話していた。しかしそれぞれに仕事も抱えており、念願叶ったのは時期を外した九月に入ってからとなった。
結果として人気のコンドミニアムが低価格で予約でき、同じ関東圏にいながら豪華なリゾート旅行に来た気分だ。
「ん、なら良いけど。いやーそれにしても意外とビーチもまだ人がいるのね。もっとスカスカかと思ってたわ」
「本当にねぇ。水着の人も結構多いね」
真夏よりはマシだと思うものの、まだまだ残暑の厳しい時期である。疎らではあるが、時期外れの海へ遊びに来る人間というのは一定数いるらしい。
さすがに泳いでいる人はいないが、波が高い分サーファーの姿は何人か確認できる。また、砂浜ではそれぞれ思い思いの方法で晩夏のビーチを楽しんでいた。
「海の家もないしクラゲがいて泳げないけど、砂浜と波打ち際で遊ぶには今が暑過ぎなくてちょうど良いのよね」
さっそく場所取りをしてパラソルを広げている悠貴の元に着くと、夏帆は躊躇いなくTシャツとホットパンツを脱ぎ捨てビキニ姿になる。
「よし入山、ビーチフラッグで勝負よ!」
「おう! 望むところだ!」
悠貴もTシャツを脱いで元々履いていた海パン一枚になると、荷物の中から旗を取りだし人通りの少ない所に立てる。
「負けたら裸でビーチ一周ね」
「何で俺が負ける前提で話してんだコラ」
「二人とも怪我はしないようにねー」
同期達のやり取りを微笑ましく見ながら、雛子は一人パラソルの下に置いたビーチチェアに寝そべった。
「ん~気持ち良い~」
じわりとまとわりつくような暑さの中にも、どこか秋めいた心地良さを感じる。
(やっぱりこの格好じゃちょっと暑いな……)
Tシャツの上に羽織ったUVカットパーカーを脱ぐかしばらく逡巡し、結局やめた。
(あの二人、同じジム通ってるんだよね。身体仕上がってるなぁ)
目の前を全速力で走り抜けていく水着姿の二人が、何だかとても眩しくて少し羨ましくなった。
「ほら、言ったじゃないですか。連れがいると」
突如として聞こえたここにいるはずのない声に、雛子は一気に現実に引き戻された。
「え~意外! こんなちんちくりんな女のどこが良いのよ!」
驚いて声のした方へ振り向くと、そこにいたのは思っていた通りの人物。
「鷹峯、先生……?」
総合内科医の鷹峯柊真、そして彼の腕にまとわりつく見知らぬ女性だった。
同期である入山悠貴の叫びに、雨宮雛子はそれまで俯いていた顔を上げた。
目の前には白い砂浜があり、その向こうには太陽を反射させて輝く海が一面に広がっていた。テンションの上がった悠貴はビーチサンダルで浜辺へと続く階段を駆けていく。
「雛子」
同じく同期の市ヶ谷夏帆は、雛子の肩にそっと手を置く。
「大丈夫?」
皆まで言わずとも分かる。特別に思い入れていた患者が亡くなって日が浅く、落ち込んでいる雛子を夏帆は心配気に見つめた。
「うん、大丈夫」
雛子は笑って見せた。
「せっかく三人で合わせて休み取ったんだもん。すっごく楽しみ!」
前々から、この夏は三人で泊まりがけで海水浴に行こうと話していた。しかしそれぞれに仕事も抱えており、念願叶ったのは時期を外した九月に入ってからとなった。
結果として人気のコンドミニアムが低価格で予約でき、同じ関東圏にいながら豪華なリゾート旅行に来た気分だ。
「ん、なら良いけど。いやーそれにしても意外とビーチもまだ人がいるのね。もっとスカスカかと思ってたわ」
「本当にねぇ。水着の人も結構多いね」
真夏よりはマシだと思うものの、まだまだ残暑の厳しい時期である。疎らではあるが、時期外れの海へ遊びに来る人間というのは一定数いるらしい。
さすがに泳いでいる人はいないが、波が高い分サーファーの姿は何人か確認できる。また、砂浜ではそれぞれ思い思いの方法で晩夏のビーチを楽しんでいた。
「海の家もないしクラゲがいて泳げないけど、砂浜と波打ち際で遊ぶには今が暑過ぎなくてちょうど良いのよね」
さっそく場所取りをしてパラソルを広げている悠貴の元に着くと、夏帆は躊躇いなくTシャツとホットパンツを脱ぎ捨てビキニ姿になる。
「よし入山、ビーチフラッグで勝負よ!」
「おう! 望むところだ!」
悠貴もTシャツを脱いで元々履いていた海パン一枚になると、荷物の中から旗を取りだし人通りの少ない所に立てる。
「負けたら裸でビーチ一周ね」
「何で俺が負ける前提で話してんだコラ」
「二人とも怪我はしないようにねー」
同期達のやり取りを微笑ましく見ながら、雛子は一人パラソルの下に置いたビーチチェアに寝そべった。
「ん~気持ち良い~」
じわりとまとわりつくような暑さの中にも、どこか秋めいた心地良さを感じる。
(やっぱりこの格好じゃちょっと暑いな……)
Tシャツの上に羽織ったUVカットパーカーを脱ぐかしばらく逡巡し、結局やめた。
(あの二人、同じジム通ってるんだよね。身体仕上がってるなぁ)
目の前を全速力で走り抜けていく水着姿の二人が、何だかとても眩しくて少し羨ましくなった。
「ほら、言ったじゃないですか。連れがいると」
突如として聞こえたここにいるはずのない声に、雛子は一気に現実に引き戻された。
「え~意外! こんなちんちくりんな女のどこが良いのよ!」
驚いて声のした方へ振り向くと、そこにいたのは思っていた通りの人物。
「鷹峯、先生……?」
総合内科医の鷹峯柊真、そして彼の腕にまとわりつく見知らぬ女性だった。
0
あなたにおすすめの小説
秘書と社長の秘密
廣瀬純七
大衆娯楽
社内の調査のため、社長・高橋健一はこっそり秘書・木村由紀と不思議なアプリで入れ替わることに。
突然“社長役”を任された由紀と、自由に動ける立場を手に入れた高橋。
ふたりの秘密の入れ替わり作戦は、どの様な結末になるのか?
ズボラ上司の甘い罠
松田丹子(まつだにこ)
恋愛
小松春菜の上司、小野田は、無精髭に瓶底眼鏡、乱れた髪にゆるいネクタイ。
仕事はできる人なのに、あまりにももったいない!
かと思えば、イメチェンして来た課長はタイプど真ん中。
やばい。見惚れる。一体これで仕事になるのか?
上司の魅力から逃れようとしながら逃れきれず溺愛される、自分に自信のないフツーの女子の話。になる予定。
お前が欲しくて堪らない〜年下御曹司との政略結婚
ラヴ KAZU
恋愛
忌まわしい過去から抜けられず、恋愛に臆病になっているアラフォー葉村美鈴。
五歳の時の初恋相手との結婚を願っている若き御曹司戸倉慶。
ある日美鈴の父親の会社の借金を支払う代わりに美鈴との政略結婚を申し出た慶。
年下御曹司との政略結婚に幸せを感じることが出来ず、諦めていたが、信じられない慶の愛情に困惑する美鈴。
慶に惹かれる気持ちと過去のトラウマから男性を拒否してしまう身体。
二人の恋の行方は……
モテ男とデキ女の奥手な恋
松田丹子(まつだにこ)
恋愛
来るもの拒まず去るもの追わずなモテ男、神崎政人。
学歴、仕事共に、エリート過ぎることに悩む同期、橘彩乃。
ただの同期として接していた二人は、ある日を境に接近していくが、互いに近づく勇気がないまま、関係をこじらせていく。
そんなじれじれな話です。
*学歴についての偏った見解が出てきますので、ご了承の上ご覧ください。(1/23追記)
*エセ関西弁とエセ博多弁が出てきます。
*拙著『神崎くんは残念なイケメン』の登場人物が出てきますが、単体で読めます。
ただし、こちらの方が後の話になるため、前著のネタバレを含みます。
*作品に出てくる団体は実在の団体と関係ありません。
関連作品(どれも政人が出ます。時系列順。カッコ内主役)
『期待外れな吉田さん、自由人な前田くん』(隼人友人、サリー)
『初恋旅行に出かけます』(山口ヒカル)
『物狂ほしや色と情』(名取葉子)
『さくやこの』(江原あきら)
『爆走織姫はやさぐれ彦星と結ばれたい!』(阿久津)
12年目の恋物語
真矢すみれ
恋愛
生まれつき心臓の悪い少女陽菜(はるな)と、12年間同じクラス、隣の家に住む幼なじみの男の子叶太(かなた)は学校公認カップルと呼ばれるほどに仲が良く、同じ時間を過ごしていた。
だけど、陽菜はある日、叶太が自分の身体に責任を感じて、ずっと一緒にいてくれるのだと知り、叶太から離れることを決意をする。
すれ違う想い。陽菜を好きな先輩の出現。二人を見守り、何とか想いが通じるようにと奔走する友人たち。
2人が結ばれるまでの物語。
第一部「12年目の恋物語」完結
第二部「13年目のやさしい願い」完結
第三部「14年目の永遠の誓い」←順次公開中
※ベリーズカフェと小説家になろうにも公開しています。
エリート警察官の溺愛は甘く切ない
日下奈緒
恋愛
親が警察官の紗良は、30歳にもなって独身なんてと親に責められる。
両親の勧めで、警察官とお見合いする事になったのだが、それは跡継ぎを産んで欲しいという、政略結婚で⁉
甘過ぎるオフィスで塩過ぎる彼と・・・
希花 紀歩
恋愛
24時間二人きりで甘~い💕お仕事!?
『膝の上に座って。』『悪いけど仕事の為だから。』
小さな翻訳会社でアシスタント兼翻訳チェッカーとして働く風永 唯仁子(かざなが ゆにこ)(26)は頼まれると断れない性格。
ある日社長から、急ぎの翻訳案件の為に翻訳者と同じ家に缶詰になり作業を進めるように命令される。気が進まないものの、この案件を無事仕上げることが出来れば憧れていた翻訳コーディネーターになれると言われ、頑張ろうと心を決める。
しかし翻訳者・若泉 透葵(わかいずみ とき)(28)は美青年で優秀な翻訳者であるが何を考えているのかわからない。
彼のベッドが置かれた部屋で二人きりで甘い恋愛シミュレーションゲームの翻訳を進めるが、透葵は翻訳の参考にする為と言って、唯仁子にあれやこれやのスキンシップをしてきて・・・!?
過去の恋愛のトラウマから仕事関係の人と恋愛関係になりたくない唯仁子と、恋愛はくだらないものだと思っている透葵だったが・・・。
*導入部分は説明部分が多く退屈かもしれませんが、この物語に必要な部分なので、こらえて読み進めて頂けると有り難いです。
<表紙イラスト>
男女:わかめサロンパス様
背景:アート宇都宮様
紙の上の空
中谷ととこ
ライト文芸
小学六年生の夏、父が突然、兄を連れてきた。
容姿に恵まれて才色兼備、誰もが憧れてしまう女性でありながら、裏表のない竹を割ったような性格の八重嶋碧(31)は、幼い頃からどこにいても注目され、男女問わず人気がある。
欲しいものは何でも手に入りそうな彼女だが、本当に欲しいものは自分のものにはならない。欲しいすら言えない。長い長い片想いは成就する見込みはなく半分腐りかけているのだが、なかなか捨てることができずにいた。
血の繋がりはない、兄の八重嶋公亮(33)は、未婚だがとっくに独立し家を出ている。
公亮の親友で、碧とは幼い頃からの顔見知りでもある、斎木丈太郎(33)は、碧の会社の近くのフレンチ店で料理人をしている。お互いに好き勝手言える気心の知れた仲だが、こちらはこちらで本心は隠したまま碧の動向を見守っていた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる