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ダンジョン誕生
しおりを挟む深夜、この世の終わりかと思うような、大きい地震によって目が覚めた。
天地がどちらかもわからないまま、ベッドの上でトリプルアクセル決めたみたいになって床の上に放り出される。
なんとか立ち上がって柱にしがみついた。
かなり長く揺れているが、振動が細かいというか、揺れ幅が狭いというか、とにかくそんな感じの揺れ方だった。
なんだか、いつもの地震の揺れ方ではないような気がした。
永遠にも思えるほど長く続いたあと、揺れは収まった。
次の揺れが来る前にと、俺は蹴とばしたサンダルを追いかけるようにして家を出た。
道に出てあたりを見渡せば、俺と同じように出てきた近所の人たちが、道端で不安そうな顔を見合わせていた。
その中に幼馴染の女を発見した俺は、急に恥ずかしくなって顔を伏せた。
顔を合わせないように、地響きのような音が聞こえてくる裏庭の方へと顔を向ける。
何の音だろうか。
大した音ではないが、聞き覚えのない音である。
この方向の先には、裏庭と畑、あとは道路と林しかない。
この場を離れる口実にちょうどいいと、俺は音がする方に行ってみることにした。
自分の家の裏庭の方から聞こえてくるし、見ておいた方がいいだろう。
それにしても、いきなり現れた彼女に俺は冷や汗が出るほど驚いていた。
化粧気のなかった高校の頃とは違って、驚くほど綺麗になっていた。
幼馴染だというのに、高校に入ったくらいからあまり口を聞いた覚えがない。
俺の苦手意識もあって、いつの間にか話をしなくなったのだ。
そんなことを考えながら裏庭に回ると、そこには石でできた洞窟の入り口のようなものが、ぽっかりと口を開けて俺を待っていた。
思わず足から力が抜け落ちて、その場に尻もちをついてしまった。
なんと恐ろしい暗闇だろうかと、地の底までも続いていそうな闇に根源的恐怖を感じる。
奥はまったく見えないが、わずかに空気が漏れ出ている気配があった。
場所は大きなイチイの木の陰になったところで、シイタケの原木を並べていた場所である。
親が置いていた原木で、とっくにシイタケは出来なくなっていたが、そんな場所が洞窟になっている。
まるで岩でできた怪物が大口を開けているかのようだ。
中には下り坂が、ゆるやかに下へと向かっている。
そして穴の中からは、地鳴りのような凄まじい音がいまだに鳴り響いていた。
少し怖くなった俺は、家の中に戻って布団をかぶって寝ることにした。
地震もひとまずはおさまったようだし、いつまでも外にいたって蚊に刺されるだけだ。
どうせ洞穴に見えるだけで、きっとその先は何になっていないのだ。
その時は、ゲームに出てくる洞窟の入り口のような何かを調べてみる気にはならなかった。
結局、朝まで続いた振動音と余震のおかげで、俺は何度も起こされることになった。
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