裏庭ダンジョン

塔ノ沢渓一

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パーティー

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 魔力酔いが無くなったところで蘭華を連れてレックス狩りに行き、今度は何匹か蘭華自身にも倒させる。
 すでに霊力が2000もあるから、ナイフを渡せば倒せないこともない。
 器用にレイピアとナイフの二刀流で戦っている。

 剣術とアイテムボックス、それにオーラは覚えさせた。
 あとはアイスランスとファイアーボールも高いながら覚えさせた。
 値下がりを待つより、蘭華を戦えるようにした方がいいアイテムを出せるようになるんじゃないかと考えたからだ。

 アイテムボックスの石でさえ、今では蘭華が欲しがったバッグよりも高くなっていた。
 いったいどこからそんな金が出てくるんだろうというくらいの金持ちというのはいる。
 賢者のローブは蘭華が使いたいというので、俺はゴーレムから出た黒いクロークを着ていた。

 革の服を着た蘭華は、体のラインが出すぎていて変態にしか見えない憐れな姿だったので仕方がない。
 ラバースーツかなにかを着ているようにしか見えなかった。
 黒い服の隙間から見える白い肌に、この俺でさえ変な気分になりかけたほどだ。

 ポニーテールを揺らしながら戦う姿を見ていると、娘の成長を見ているようで微笑ましい。
 まだドラグーンの加護を受けているから、あまり無理はさせられない。
 喋らなければ可愛げのある姿に見えた。

「なに見惚れてるのよ。いやらしいわね。次は剣治の番よ」

 口を開けば人のことを子分か何かだと思っている本性が露呈してしまう。
 性格は悪い癖に、やたら体つきだけはいいから嫌味な女だ。
 こんな感じで、お互いがお互いのことを手下か何かだと思っているから、昔から馬が合わないのだ。

 今は敵を見つけて数を減らすのが俺の仕事である。
 敵を探すにしても、蘭華はまだ段差を飛び越えられないから、俺が手を引いてやる必要がある。
 引かれる腕が痛いと苦情を言われるが、他の場所に触れれば何を言われるかわからない。

 誰に会うこともなく、朝から夜までひたすらレックスの相手をして過ごした。
 外に出る頃には、すでに夕方になっていた。
 汗を流したら着替えてひと眠りしたら、俺だけまたゴーレムを相手にする。



 もう一度蘭華を引き連れてレックスを倒したら、蘭華はレベル16になった。
 そしてドラグーンの加護から剣士の加護に切り替えさせた。
 ゴーレムから出たチェーンソードを蘭華に持たせる。

 槍でもよかったが、剣術の石を使っているし、軽いから蘭華にはこちらの方がいいだろう。
 刃が付いた鞭のような武器だが、システムとしては剣の扱いである。
 俺はやっと鈍器のようなクリスタルの剣に慣れてきた。

 村上さんに売っている革の服は好評で、日本だけでなく世界から買い取りの依頼が来ているそうだ。
 そのおかげで村上さんは新宿に支店を開けるほど儲かっていた。
 俺の方は買いたいものの売りもなく、蘭華の無駄遣いくらいにしか出費がない。

 そして今日は有坂さんと合流して、一緒にやる予定である。
 待ち合わせの場所には、なぜか相原までやってきた。

「こっ、こっ、この、女性はどちら様れすか」
「佐伯蘭華です。今日はよろしくお願いします」

 蘭華を見るなり挙動がおかしくなった相原に、別人としか思えないほどの猫をかぶった蘭華の挨拶である。
 有坂さんは落ち着いた様子で「よろしく頼むよ」と言った。

「ぼぼぼ僕は魔法戦士兼サブタンクという立ち位置でやっていきますので、よ、よろしくお願いすます」
「魔法戦士ってのは?」

 そう聞いたのは有坂さんである。
 当然の疑問だ。

「距離を保ちつつ槍と魔法で攻撃するスタイルですよ。有坂さんは遠距離魔法職ですから、僕より前には出ないようにしてくださいよ。前に出てって死なれても責任持ちませんからね」

 猪八戒にしか見えない男は、有坂さんに対しては横柄な態度である。
 本当にそんな器用な戦い方ができるようには思えない。

「もちろん僕は伊藤氏のカキタレに手を出すほど無謀ではないので、ご安心ください。ミヤコ嬢一筋ですし、そこら辺のことはわきまえています」

 猪八戒は俺の耳元でそんなことをささやいた。

「誰が……誰の……何、と言ったのかしら……」

 それを蘭華に聞きとがめられて睨まれ、それきり相原は下を向いて黙ってしまった。
 はっきり言って、連携が生まれそうなチームではない。

 相原は自分のチームのためにスペルスクロールを買いたくて、最近羽振りがいいとの噂を聞きつけて俺に連絡してきたのである。
 俺は有名になりすぎて、行動が逐一ネット上にあげられるようになってしまった。
 今日は連携を確認するためにハイゴブリンを相手にする予定だ。

 群がってくるレックスを、先頭に立った俺がなぎ倒しながら一直線に奥を目指す。
 アイテムは相原が拾ってくれるから楽でいい。
 ハイゴブリン地帯に入ったら、相原に言われた通り、俺は魔弾とアイスダガーで先制攻撃を放った。

 そうすると敵のターゲットをとれるそうだ。
 確かに相原の言う通り、敵は俺に群がってきた。
 俺は力任せに剣を振って、そいつらを真っ二つに叩き切った。

 剣の特性で、ハイゴブリンたちははじけるようにしてバラバラになる。
 返り血を浴びるが、それは黒い炭になって剥がれ落ちた。

「全部伊藤氏が倒したら、我々に獲物が来ませんよ」
「もっと奥に行こう。広いところなら敵がもっと群がってくるだろ」

 さらに奥に進み、少しだけ見晴らしがよくなっている場所を見つけた。
 敵が群れでやってくる。
 ハイゴブリンが使ってきたファイアーボールを、相原は練度の高いマジックシールドで防いだ。

 蘭華はナイフを使ってうまいこと回避している。
 ファイアーボールを食らったのは俺だけだ。
 ちゃんと戦えそうなのを確認して、俺は敵の群れの中に飛び込んだ。

 ファイアーボールで減らした体力は、剣の一振りで回復する。
 剣を振る合間を縫って掴みかかってくるゴブリンは、引き倒し、首を踏み潰して倒す。
 レベル差がありすぎて敵にもならないが、それでも楽しかった。

 まだ完全には、この重たい剣を使いこなせてはいない。
 蘭華も慣れない武器で戦っているが、倒せない奴は有坂さんがちゃんとフォローしている。
 相原は闇雲に槍を振り回していて、危なっかしい。

 それでもノーコストで撃てる魔弾で、ゴブリンのバランスを崩させるから一対一なら戦えないこともない。
 使い込んでいるから、相原の魔弾はそこらの魔法攻撃くらいには威力がある。

「こんなに敵を近くで見たのは初めてだ。凄い迫力だね」
「有坂さん、のん気なこと言ってないで、僕の方もちゃんとフォローしてくださいよ! 今のやばかったでしょう!?」

 相原も有坂さんも蘭華と何も変わらない。
 俺が動けなくなった時点で、全滅するしかない状況に、少しだけ怖くなった。
 相原も俺の真似をしてオーラの石を買ったらしいが、怖がり過ぎてて意味をなしていない。

 ただ逃げ回っているだけで攻撃出来ずに、一匹に時間をかけすぎている。
 多少はリスクを取らないと攻撃なんて不可能だ。

「回復クリスタルは持ってないのか」
「ありますよ。でも高価ですからね。使わないに越したことはないでしょう」

 ハイゴブリンを100体も倒すと、オレンジクリスタルがドロップした。
 それを相原に持たせ、蘭華と有坂さんにも俺から渡しておく。
 三人のレベルなら、一つあればなんとか急場はしのげるだろう。

 裏庭ダンジョンに行かなくなってから、クリスタルが凄い勢いで減り続けているのが心配だ。
 飯時になったら疲れて横になりたくなったので、大円天幕を出して休んだ。
 三人に目を丸くして驚かれたが、宝箱から出たのだと話したら納得してくれた。

「それって、空飛ぶ絨毯が出たのと同じものよね」
「ああ、たまにモンスターからもドロップするらしいな」
「モンスターからもって、それ以外の手に入れ方を知ってるみたいな言い方ね」
「まあ、そういうこともあるんじゃないかってことだ」

 ドロップは宝物庫や武器庫に入っていたものが、試練の遺物に取り込まれたものである。
 宝物庫は宝物、武器庫は武器防具、研究所はクリスタルや錬成素材、大神殿はスペルスクロール、厩舎は使役魔獣、溶鉄所は生産素材、練兵場はスキルストーン、倉庫は食料などだ。

 それらが試練の遺物によってドロップさせられているらしい。
 だから宝物庫や武器庫、厩舎などに行っても、何もない可能性はある。
 試練の遺物に関してもろくに資料がなくて、大図書館でもあいまいな情報しか得られない。

 使役魔獣はあまりにも数が少ないから、出たという話を聞かないのだろう。
 大神殿と研究所、主郭だけは、どうしても俺が抑えなければならない。
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