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第28話「冬季の思い」
冬李の過去
やはり冬季も、もともと二人でフィーネに飛ばされてきたらしく、そのもう一人に対して俺や渚と同じく片思いだったようだ。
ただ、俺とは違い冬季は相手に積極的にアプローチしていたらしい。
「積極的って言っても、もともと俺とあいつは幼馴染同士だし、荒玖達と同じで男同士としては普通の距離じゃなかったとは思うんだよな。だから、好きって言ってもなかなか伝わんなくてさ。軽いノリみたいな感じで言ってる俺も悪かったんだけど」
「友達としての好きだって思われてたってことか」
「たぶん、そんな感じだろうな。ただ、それだけじゃなくて、二人と同じく、恋に対して臆病なやつでもあったんだよ」
その言葉に、渚に告白することを諦めかけたときに言われた冬季の言葉を思い出した。
あの後押しがなければ今も俺と渚はこんなふうになっていたかっただろう。
だがそれと同時に、冬季はあのとき、かつてこの世界にいたであろう想い人のことを話していた。
「臆病すぎて、すれ違いばかりだった。俺も、昔はあんまグイグイ押せるタイプでもなかったからな。それでも好きな気持ちは変わらない。だからこそ、自分なりに出来る範囲で好意は伝えていたつもりだった」
「……だったって……結局、そいつとはどうなったんだよ……?」
レオが冬季の隣にいることから、ある程度は予想はついていたが、もしかしたら別れたあとにレオを好きになった可能性もあるので、一応尋ねてみる。
「……付き合うことはなかったよ。というより、俺とあいつがここに来たときに困っている俺達をレオが助けてくれてな。ずっとこの世界で色々とサポートしてくれてたんだ」
「そんなレオに惹かれたってわけか」
「うーん、半分正解で半分違うな」
ふっと口角をあげて笑った冬季は、墓碑に手を添えるとその場に屈みこんで花立に供えられている仏花をそっと指で撫でた。
ふわりと揺れた百合の花びらが光に照らされて真っ白に染まる。
「レオに好意を抱いていたところはあるけど、俺がレオを本気で意識し始めたのは……」
そこで冬季が言葉を区切った。
何かを言いあぐねるように、視線を彷徨わせる。
たぶん、この反応はLPに関する話ということなのだろう。
暫しの沈黙のあと、ようやく顔を上げた冬季が困ったように息を吐き出し口を開いた。
「……あいつが、いなくなってからなんだ。悔しさでひとり塞ぎ込んでた俺に、レオはずっと黙ってそばにいて支えてくれた。あいつのそういう優しさに絆されたっつーのは本当かもな」
肝心なところは完全に濁されたが、どのみち冬季はそいつがいなくなるまではそいつのことが好きだって気持ちはちゃんとあったってことか。
(いなくなった……)
冬季が言い淀んだ理由は、たぶん常闇の秘境のせいだ。
それに関連することを口外しないというようなことを約束させられたとアルシアからも聞いている。
「常闇の秘境で、何かがあったんだろ?」
「…………」
俺の質問に冬季は黙ったままじっとこちらを見つめる。
その瞳を見返しながら、なおも話を続けた。
「アルシアから聞いた。レオがそう話していたって。レオも冬季とその連れと一緒にあの秘境の中に入ったんだよな?」
秘境のことを口外しない、というのは、どこまでを指すのか。
入ったということも誰と入ったのかも言えないなら、これ以上冬季に質問を続けても仕方ないのだろう。
「……そうだな。三人で入った。レオは魔法を使うのが得意だったから俺たちのサポートとして」
「そうか……」
そして、口外しないという約束は冬季のみ結んだものだから、レオはアルシアに話すことが出来たってことか。
「それとこの墓がギルドセンターの地下にあることと、何が関係あるんだ?」
過去のことに関しては大方理解した。
というよりこれ以上は冬季も話せないだろうし、最悪、触れてしまって消滅なんてなったら危険すぎる。
なので、話を本筋に戻すことにした。
「俺は、あいつがここからいなくなってから、どうしてLPなんてものが出来たのか、どうしたらこのLPというものをなくせるのか、それを調べるためにとにかく手当たり次第に探しまくった。その結果、荒玖達が知る過去のことを知ったんだ」
冬季はとくに、レオがそばにいるので、俺達よりは二人の過去に辿り着くのにそこまで時間はかからなかっただろう。
アルシアに話を聞ければそこからはトントン拍子で真実に辿り着く。
「そして、このギルドセンターがある場所こそ、かつてアルノルト……アルトとリトが亡くなった場所なんだよ」
「…………え? ここが……?」
冬季の言葉に、俺は足元の地面に視線を落とした。
夢の中で見たアルトとリトの死に際。
それを思い出した瞬間にゾクリと背筋に悪寒が走る。
それはアルトやリトに限らず、あそこにギロチン台があったということは何人もの人間の血を浴びているということで……。
いま自分がいるこの場所であんな凄惨で残忍な出来事があったと思うと、その大地を踏みしめていることに恐怖を感じた。
そんな俺を無表情のまま見つめる冬季を、俺もなんとか無表情のまま見つめ返す。
「その後、ギルドセンターを設立して、その地下……いまいるこの場所に墓を作った」
「……冬季、ちょっと待ってくれ。どうしても気になったんだが、アルトさんとリトが亡くなった場所って……それって、どういう意味なんだ……?」
渚が真剣な表情で冬季にそう問いかける。
なぜそんな質問をするのか俺にはわからず、ひとまず話の成り行きを見守ることにした。
ただ、俺とは違い冬季は相手に積極的にアプローチしていたらしい。
「積極的って言っても、もともと俺とあいつは幼馴染同士だし、荒玖達と同じで男同士としては普通の距離じゃなかったとは思うんだよな。だから、好きって言ってもなかなか伝わんなくてさ。軽いノリみたいな感じで言ってる俺も悪かったんだけど」
「友達としての好きだって思われてたってことか」
「たぶん、そんな感じだろうな。ただ、それだけじゃなくて、二人と同じく、恋に対して臆病なやつでもあったんだよ」
その言葉に、渚に告白することを諦めかけたときに言われた冬季の言葉を思い出した。
あの後押しがなければ今も俺と渚はこんなふうになっていたかっただろう。
だがそれと同時に、冬季はあのとき、かつてこの世界にいたであろう想い人のことを話していた。
「臆病すぎて、すれ違いばかりだった。俺も、昔はあんまグイグイ押せるタイプでもなかったからな。それでも好きな気持ちは変わらない。だからこそ、自分なりに出来る範囲で好意は伝えていたつもりだった」
「……だったって……結局、そいつとはどうなったんだよ……?」
レオが冬季の隣にいることから、ある程度は予想はついていたが、もしかしたら別れたあとにレオを好きになった可能性もあるので、一応尋ねてみる。
「……付き合うことはなかったよ。というより、俺とあいつがここに来たときに困っている俺達をレオが助けてくれてな。ずっとこの世界で色々とサポートしてくれてたんだ」
「そんなレオに惹かれたってわけか」
「うーん、半分正解で半分違うな」
ふっと口角をあげて笑った冬季は、墓碑に手を添えるとその場に屈みこんで花立に供えられている仏花をそっと指で撫でた。
ふわりと揺れた百合の花びらが光に照らされて真っ白に染まる。
「レオに好意を抱いていたところはあるけど、俺がレオを本気で意識し始めたのは……」
そこで冬季が言葉を区切った。
何かを言いあぐねるように、視線を彷徨わせる。
たぶん、この反応はLPに関する話ということなのだろう。
暫しの沈黙のあと、ようやく顔を上げた冬季が困ったように息を吐き出し口を開いた。
「……あいつが、いなくなってからなんだ。悔しさでひとり塞ぎ込んでた俺に、レオはずっと黙ってそばにいて支えてくれた。あいつのそういう優しさに絆されたっつーのは本当かもな」
肝心なところは完全に濁されたが、どのみち冬季はそいつがいなくなるまではそいつのことが好きだって気持ちはちゃんとあったってことか。
(いなくなった……)
冬季が言い淀んだ理由は、たぶん常闇の秘境のせいだ。
それに関連することを口外しないというようなことを約束させられたとアルシアからも聞いている。
「常闇の秘境で、何かがあったんだろ?」
「…………」
俺の質問に冬季は黙ったままじっとこちらを見つめる。
その瞳を見返しながら、なおも話を続けた。
「アルシアから聞いた。レオがそう話していたって。レオも冬季とその連れと一緒にあの秘境の中に入ったんだよな?」
秘境のことを口外しない、というのは、どこまでを指すのか。
入ったということも誰と入ったのかも言えないなら、これ以上冬季に質問を続けても仕方ないのだろう。
「……そうだな。三人で入った。レオは魔法を使うのが得意だったから俺たちのサポートとして」
「そうか……」
そして、口外しないという約束は冬季のみ結んだものだから、レオはアルシアに話すことが出来たってことか。
「それとこの墓がギルドセンターの地下にあることと、何が関係あるんだ?」
過去のことに関しては大方理解した。
というよりこれ以上は冬季も話せないだろうし、最悪、触れてしまって消滅なんてなったら危険すぎる。
なので、話を本筋に戻すことにした。
「俺は、あいつがここからいなくなってから、どうしてLPなんてものが出来たのか、どうしたらこのLPというものをなくせるのか、それを調べるためにとにかく手当たり次第に探しまくった。その結果、荒玖達が知る過去のことを知ったんだ」
冬季はとくに、レオがそばにいるので、俺達よりは二人の過去に辿り着くのにそこまで時間はかからなかっただろう。
アルシアに話を聞ければそこからはトントン拍子で真実に辿り着く。
「そして、このギルドセンターがある場所こそ、かつてアルノルト……アルトとリトが亡くなった場所なんだよ」
「…………え? ここが……?」
冬季の言葉に、俺は足元の地面に視線を落とした。
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それを思い出した瞬間にゾクリと背筋に悪寒が走る。
それはアルトやリトに限らず、あそこにギロチン台があったということは何人もの人間の血を浴びているということで……。
いま自分がいるこの場所であんな凄惨で残忍な出来事があったと思うと、その大地を踏みしめていることに恐怖を感じた。
そんな俺を無表情のまま見つめる冬季を、俺もなんとか無表情のまま見つめ返す。
「その後、ギルドセンターを設立して、その地下……いまいるこの場所に墓を作った」
「……冬季、ちょっと待ってくれ。どうしても気になったんだが、アルトさんとリトが亡くなった場所って……それって、どういう意味なんだ……?」
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