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第8話「この気持ちの名前は」
カストレアでの生活
ヤバかった。
本当に歯止めが利かなくなって、無理矢理してしまうところだった。
いや、半分したような感じだが……。
「最っ低だ俺……まだ付き合ったばかりなのに……。別れるって言われたらどうしよう……」
そう思うならするなと言いたいのだが、我慢が出来なくなってしまったのだ。
こういう自分の自制心の無さがときどき本当に嫌になる。
流石にこの罪悪感だと萎えるものは萎えるし、気分もだいぶ落ち着いてきていた。
むしろ、火照った体を夜風が心地よく包み込んで涼しいくらいだ。
そういえば、ここに来てから渚と二人でこの街をゆっくり歩いたことはなかった気がする。
どうせレオからLPについて詳しい人を紹介してもらわない限り、これ以上のことはわからないだろうから、今日借りてきた本を読みつつギルドの方で生活費を稼いで適当にのんびり暮らしていくしかない。
当初ここに来たときには、LP上限を上げないといけないとLP秘境のことも念頭に入れて行動していたが、また上限が戻るのであればクリアする意味が全くない。
それならギルドの方の依頼をしっかりこなしていった方がいいのだろう。
渚のこともあるし、無駄に危険なことをする必要など何処にもないのだから。
「……て言っても、雑用だけだと生活が少し苦しくなるんだよな」
そう。
雑用は基本的に賃金が少ない。
安全な分、ただのお手伝いという扱いらしく、生活するにしても少し心許なかったりする。
なので、出来れば危険区域内にあるものを採取してくる、などのギルド依頼も受けないといけないのだが……。
そういうことに渚を関わらせたくない。
俺一人で出来るなら危険な事は俺が引き受けるべきだとも考えてはいるが、言ったら怒られそうだと心の中でため息をついた。
頭もだいぶ冷えてきて、外の風も少し肌寒く感じるようになってきた。
この世界に季節というものがあるのかわからないが、長袖でも少し肌寒いとなると冬の手前なのだろうか、などとどうでもいいことを考えながら寮に戻る。
自分の部屋の前に到着し、一度深呼吸をした。
今度こそちゃんと自制しなければ。
そして、もう一度しっかり謝ろう。
いくら恋人と言えど、していいことと悪いことはある。
「恋人……」
その単語がすごく嬉しくて、頬が緩んでしまう。
本当に、夢じゃないのだろうか。
ふと目が覚めると夢でしたなんて言われたら、暫くは塞ぎ込んでしまいそうだ。
「とりあえず謝ろう」
そのままドアを開けて中に入ると、玄関先の廊下で渚が膝を抱えて座っているのが目に入った。
俺の姿を見るや否や慌てて立ち上がり目の前まで来た瞬間、いきなりその場に膝を折って土下座する。
「ごめんなさい……っ!」
「えぇ……?! な、何してんだいきなりっ! 顔上げろってっ!」
状況がわからず、土下座したまま顔をあげようとしない渚の肩を掴んで上体をあげさせる。
眉尻を下げた渚は、申し訳なさそうな顔で言葉を発した。
「俺が嫌がったから……荒玖のこと傷つけちゃってっ……。でも……! 嫌だったんじゃなくて……っ、その……とにかく、ごめんなさい……っ!」
そう言ってまた頭を床にこすりつけようとするので、腕を引っ張って無理やり立ち上がらせた。
「俺が我慢できなかったのが悪いんであって、渚は悪くない。それに夜にって言ったのに守らなかったのは俺の方だ。本当にごめん。とにかく、土下座とかしなくていいから……っ」
「……ごめん」
しゅんと落ち込む渚の頭に手を置いて、優しく髪を梳くように撫でる。
「その、本当に嫌だったとかじゃなくて……急だったから、びっくりしちゃって……。ホント、ごめん……」
「いや、俺の方がごめん。夜、改めてちゃんと……させて欲しい」
俺のその言葉に顔を上げると、花が開くようにふわりと微笑んだ。
「うん……っ、よろしくお願いします」
その微笑みに完全に目を奪われてしまう。
今までもずっと笑顔が似合うやつだとは思っていたけれど、今まで以上に可愛くてキレイに見えた。
高鳴る鼓動がやけにうるさく聞こえて、俺は顔をそむけて頭の中で必死に四字熟語を並べ始める。
そうでもしないと今すぐ玄関先で押し倒してしまいそうだった。
「とりあえず、一緒にご飯食べようか。今日は俺が作ったんじゃないけど」
渚は困ったように頬を掻いてそう言うと、俺の手を取って居間へと引っ張る。
二人で改めて手を洗ってから、向かい合って席につきお弁当に箸をつけた。
不味いということはないのだけれど、やっぱり渚の手作りの方が贔屓目なしに何倍も美味しい。
味付けなども食べる人に気を遣っているので、薄味派な俺にはいつも少し薄めに作ってくれるのだ。
だけど薄すぎない絶妙な加減ができるのが渚の凄いところだった。
そう考えると、前々から俺の事をしっかり見てくれていたことに今更ながら気づく。
食べる度にたまに口にする感想なんかをしっかり記憶して、ちゃんと次に活かしているということで。
(あれ、これ……夫婦っぽくないか……?)
男同士なので夫婦という言い方は間違っているが、それに近い感じになっているようで、もの凄い嬉しさが込み上げてきてしまう。
「~~~……っ!!」
「ん? 荒玖、大丈夫か? 口に手当てて、吐きそう?」
「あ、いや……すまん。ちょっと鼻にきただけだから」
「鼻にくるようなものなんかあったかな?」
あまりの嬉しさに、ニヤけそうな口元を手で隠したことで渚に不審がられてしまった。
いかんいかん、落ち着け俺……。
本当に歯止めが利かなくなって、無理矢理してしまうところだった。
いや、半分したような感じだが……。
「最っ低だ俺……まだ付き合ったばかりなのに……。別れるって言われたらどうしよう……」
そう思うならするなと言いたいのだが、我慢が出来なくなってしまったのだ。
こういう自分の自制心の無さがときどき本当に嫌になる。
流石にこの罪悪感だと萎えるものは萎えるし、気分もだいぶ落ち着いてきていた。
むしろ、火照った体を夜風が心地よく包み込んで涼しいくらいだ。
そういえば、ここに来てから渚と二人でこの街をゆっくり歩いたことはなかった気がする。
どうせレオからLPについて詳しい人を紹介してもらわない限り、これ以上のことはわからないだろうから、今日借りてきた本を読みつつギルドの方で生活費を稼いで適当にのんびり暮らしていくしかない。
当初ここに来たときには、LP上限を上げないといけないとLP秘境のことも念頭に入れて行動していたが、また上限が戻るのであればクリアする意味が全くない。
それならギルドの方の依頼をしっかりこなしていった方がいいのだろう。
渚のこともあるし、無駄に危険なことをする必要など何処にもないのだから。
「……て言っても、雑用だけだと生活が少し苦しくなるんだよな」
そう。
雑用は基本的に賃金が少ない。
安全な分、ただのお手伝いという扱いらしく、生活するにしても少し心許なかったりする。
なので、出来れば危険区域内にあるものを採取してくる、などのギルド依頼も受けないといけないのだが……。
そういうことに渚を関わらせたくない。
俺一人で出来るなら危険な事は俺が引き受けるべきだとも考えてはいるが、言ったら怒られそうだと心の中でため息をついた。
頭もだいぶ冷えてきて、外の風も少し肌寒く感じるようになってきた。
この世界に季節というものがあるのかわからないが、長袖でも少し肌寒いとなると冬の手前なのだろうか、などとどうでもいいことを考えながら寮に戻る。
自分の部屋の前に到着し、一度深呼吸をした。
今度こそちゃんと自制しなければ。
そして、もう一度しっかり謝ろう。
いくら恋人と言えど、していいことと悪いことはある。
「恋人……」
その単語がすごく嬉しくて、頬が緩んでしまう。
本当に、夢じゃないのだろうか。
ふと目が覚めると夢でしたなんて言われたら、暫くは塞ぎ込んでしまいそうだ。
「とりあえず謝ろう」
そのままドアを開けて中に入ると、玄関先の廊下で渚が膝を抱えて座っているのが目に入った。
俺の姿を見るや否や慌てて立ち上がり目の前まで来た瞬間、いきなりその場に膝を折って土下座する。
「ごめんなさい……っ!」
「えぇ……?! な、何してんだいきなりっ! 顔上げろってっ!」
状況がわからず、土下座したまま顔をあげようとしない渚の肩を掴んで上体をあげさせる。
眉尻を下げた渚は、申し訳なさそうな顔で言葉を発した。
「俺が嫌がったから……荒玖のこと傷つけちゃってっ……。でも……! 嫌だったんじゃなくて……っ、その……とにかく、ごめんなさい……っ!」
そう言ってまた頭を床にこすりつけようとするので、腕を引っ張って無理やり立ち上がらせた。
「俺が我慢できなかったのが悪いんであって、渚は悪くない。それに夜にって言ったのに守らなかったのは俺の方だ。本当にごめん。とにかく、土下座とかしなくていいから……っ」
「……ごめん」
しゅんと落ち込む渚の頭に手を置いて、優しく髪を梳くように撫でる。
「その、本当に嫌だったとかじゃなくて……急だったから、びっくりしちゃって……。ホント、ごめん……」
「いや、俺の方がごめん。夜、改めてちゃんと……させて欲しい」
俺のその言葉に顔を上げると、花が開くようにふわりと微笑んだ。
「うん……っ、よろしくお願いします」
その微笑みに完全に目を奪われてしまう。
今までもずっと笑顔が似合うやつだとは思っていたけれど、今まで以上に可愛くてキレイに見えた。
高鳴る鼓動がやけにうるさく聞こえて、俺は顔をそむけて頭の中で必死に四字熟語を並べ始める。
そうでもしないと今すぐ玄関先で押し倒してしまいそうだった。
「とりあえず、一緒にご飯食べようか。今日は俺が作ったんじゃないけど」
渚は困ったように頬を掻いてそう言うと、俺の手を取って居間へと引っ張る。
二人で改めて手を洗ってから、向かい合って席につきお弁当に箸をつけた。
不味いということはないのだけれど、やっぱり渚の手作りの方が贔屓目なしに何倍も美味しい。
味付けなども食べる人に気を遣っているので、薄味派な俺にはいつも少し薄めに作ってくれるのだ。
だけど薄すぎない絶妙な加減ができるのが渚の凄いところだった。
そう考えると、前々から俺の事をしっかり見てくれていたことに今更ながら気づく。
食べる度にたまに口にする感想なんかをしっかり記憶して、ちゃんと次に活かしているということで。
(あれ、これ……夫婦っぽくないか……?)
男同士なので夫婦という言い方は間違っているが、それに近い感じになっているようで、もの凄い嬉しさが込み上げてきてしまう。
「~~~……っ!!」
「ん? 荒玖、大丈夫か? 口に手当てて、吐きそう?」
「あ、いや……すまん。ちょっと鼻にきただけだから」
「鼻にくるようなものなんかあったかな?」
あまりの嬉しさに、ニヤけそうな口元を手で隠したことで渚に不審がられてしまった。
いかんいかん、落ち着け俺……。
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