ヴァンパイア陛下は森の中に住む女性に恋に落ちる。

五章

02

「……一月終わりから来ていません」

「では、先月とかに少しだけ来たとかはないか？」

　ラディウスに質問されてアネシーは一つずつ答えていく。

「確か二月の半ばに不正出血が二、三日で終わりました」

　ラディウスはアネシーに紙コップを渡した。

「アネシー、今からちょっとした検査をする。 トイレに行って紙コップに尿を入れて持ってきておくれ」

「わかりました」

　アネシーは紙コップを持って医務室を出てお手洗いへ向かった。  紙コップの中に尿を入れて医務室へ戻ると、ラディウスは紙コップを持って別の部屋へと行ってしまった。

　少ししてからラディウスが戻ってきてアネシーに指示を出した。

「アネシー、ベットで横になってくれんか」

「はい」

　ラディウスに紙コップを渡してなにか検査をしている。 そして言われた通りに診察ベッドに横になった。

　するとラディウスはアネシーの服の上から下腹部を優しくゆっくりと触診をしていく。

「やはりーー」

「あの、なにかの病気とかでしょうか」

「いや、病気では無い。 子を授かっておるんじゃよ」

「……え、今なんてーー」

　アネシーはラディウス医師の言葉がうまく聞き取れなかった。 ラディウス医師はもう一度アネシーに伝えた。

「アネシー侍女長は懐妊をしておるんじゃよ」

「かい、にん……ですか」

「触診をして診て何ヶ月とかまでは分からないが最近になって気持ち悪くなる時は？」

「あります。 さっきオウラ料理長と話し合いをしてる時にも急に気持ち悪くなってしまって」

「気持ち悪くなるのは悪阻じゃ」

「悪阻ですか」

　初めて聞く言葉にアネシーは上手く頭がついていけないでいた。ラディウス医師はアネシーに分かるように説明をした。

「悪阻とはつわりのことじゃよ。  妊娠にも種類がある。  例えば食べて気持ち悪くなったり、逆に食べないと気持ち悪くなる人や眠気があったり、匂いで気持ち悪くなる人がおる」

「そうなんですか」

　アネシーの頭の中では嬉しい気持ちよりも罪悪感の気持ちの方が大きかった。

「それで、子供を産むのかね。 もちろんお相手の方と二人で考えるのもいい」

　アネシーはラディウスの言葉に何故か涙が零れた。

「アネシー侍女長、どうして泣いておる」

　アネシーは隠してる気持ちが抑えきれなくなり涙が止まらない。

「……私は王国での禁止事項を破りました」

「それはどうゆうことじゃ？」

「ラディウス医師、オウラ料理長を呼んできて貰えますか」

「まさか……!?」

　ラディウスは驚きながらもオウラを呼びに行った。すぐにラディウスはオウラを連れて戻ってきた。

　アネシーはオウラの顔を見るとまた涙が止まらない。

「ごめん……なさい。 オウラ」

「あの、一体何が!?」

　オウラはなぜアネシーが泣いているのか、誤っているのかが状況が分かっておらずラディウスはオウラに説明をした。

「アネシー侍女長のお腹の中に新しい命が宿っている。 現在三ヶ月ってところでの」

「新しい……命、三ヶ月……？」

「お二人は心当たりはあるんじゃろ？」

　ラディウスに言われたアネシーとオウラはすぐに冬の休暇の四日目の夜のことを思い出した。