【怖い話】さしかけ怪談

色白ゆうじろう

文字の大きさ
71 / 104

非常招集

しおりを挟む
小さな町の警察署に勤めるCさんの話。
深夜、自宅で就寝していたCさんは呼び出しの電話に起こされた。
夢か現実か曖昧な中、電話の内容に傾聴する。

「A島で人が何人も死んでいるという通報が入りまして、島を封鎖して鑑識や捜索をしますので参集願います」

A島は町から数キロ離れた小島だ。
島民は100人弱しかおらず、駐在所のような警察施設もない。
島民皆仲の良い平和な世界のはずだが、何があったんだろう。
むしろ、孤島だからこそ、事件が起きれば無法地帯と化してしまうのかもしれない。

Cさんは電話を切ると、布団から出る。
寝ぼけ眼で起き上がる妻に
「呼び出されたから行ってくるよ」
と告げ、洗面して着替えた。

夢か現実か区別のつかないほど、頭はぼんやりとしている。
冷たい水で洗面すると、眠気も冷め頭も冴えてくる。

Cさんは車で、警察署に向かいながら自分の仕事を考えていた。
地域課のおれは、鑑識活動の補助だろうか。それとも島中をローラー作戦して被疑者を探すのだろうか。

警察署に到着した。
ロビーではCさんと同じく、呼び出された署員たちが立っていた。
やる気のあるものは出動服をすでに着ていたりする。

だが、皆ぽかんとして狐につままれたような顔をしている。
緊迫したムードもない。

Cさんは当直の署員に到着時間を告げた。
なぜか当直勤務員は顔が青ざめている。
彼は上ずった声で言った。
「いや、全く呼び出した事実はないんですよ。誰にも呼び出しの電話をかけていません。初めは若手署員が慌てて来たものですから、『何を寝ぼけてる』と笑っていたんですけど……。皆さん続々と参集されるから、気味が悪くて」

Cさんは言われて「そんな馬鹿な」と携帯電話の履歴を見た。
確かに、警察署からの着信履歴は存在しなかった。

Cさんもロビーに集まる他の署員と同様、狐につままれたようにぽかんとしてしまったという。

後に、この件が気になった署員が調べたところ妙な事実が判明した。

A島ではかつて、島民の半数が行方不明となる集団失踪事件が起きていた。
事件は未解決のままだが、奇妙な呼び出しがあったその日はちょうど100年目を迎える日だったそうだ。


【おわり】


しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

意味が分かると怖い話(解説付き)

彦彦炎
ホラー
一見普通のよくある話ですが、矛盾に気づけばゾッとするはずです 読みながら話に潜む違和感を探してみてください 最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください 実話も混ざっております

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

だんだんおかしくなった姉の話

暗黒神ゼブラ
ホラー
弟が死んだことでおかしくなった姉の話

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

処理中です...