【怖い話】さしかけ怪談

色白ゆうじろう

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冬休みと夜更かしと

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冬休みが終わり、新学期が始まったこのころ……
とある小学生が寄せてくれた怪談を紹介しよう。

小学生Yくん兄弟の話。
彼と弟は、冬休みを堪能した。
毎日夜更かしして、携帯ゲームで遊び、動画や漫画を見て過ごしたそうだ。
親は仕事納めや掃除、親戚づきあいに忙しく、兄弟を見ている暇もなかったらしい。

年末も間近の夜……
Yくん兄弟は、夜遅く子供部屋でゲームをしていた。
何時を回ったかもわからない。
日付は変わっているかもしれない。
両親は疲れたようで、とっくに寝室に引っ込んで寝ている。
数時間前に「寝なさい」とは言われたが、もはや兄弟の記憶には無かった。

ゲームに熱中していたが、Yくんはふと、弟以外の人の気配を感じた。
顔を上げて見回すが、六畳の子供部屋には自分と弟以外はいない。
「どうしたの?」弟が聞く。
「なにか感じない?」
「なにが?」弟はぽかんとして、またすぐゲーム画面に視線を戻した。

気のせいだろう。
Yくんはそう思って、ゲームを再開した。
直後だった。
部屋の隅で
「たたた」
と小走りする音がした。
直ぐに顔を上げるYくん。
弟も音を聞いたようで顔を上げた。

二人は見回すが誰もいない。
「気のせいだよね」
Yくんはつぶやく。
その瞬間、がたんとふすまが音を立てて閉まった。
Yくんと弟は顔を見合わせた。
ゆっくりとふすまに近づき、二人はふすまを開けた。

暗い押し入れの中に、目が異様に大きな子どもがいた。
押し入れの隅に膝を抱えて座り、二人を光のない目で見据えている。
「かくれんぼする?」
男の子が低い声で言った。

Y兄弟は叫び声をあげて、押し入れから飛びのいた。
そして、お互い抱き合うと、さらに悲鳴を上げた。

押し入れの子は、ふすまに手を掛けて押し入れから出てこようとしていた。

「うるさい!何時だと思ってる」
突然、子供部屋のドアが開け放たれ、父親が怒鳴り込んできた。
「お父さん!あれ!」
Yくんが父の顔を見ながら、押し入れを指さした。
「あれって何がだ」
父はつっけんどんに言う。
Yくんと弟が押し入れを見やると、そこには何もいなかった。

怒る父に、Y兄弟は目にしたものを話した。
父は一層険しい顔をして「ゲームばかりやってるから、変なものを見るのだ」と取り合ってくれなかった。

「なんかね、幽霊に詳しい先生に聞いたら、押し入れとか、洋服入れに隠れて子どもを襲う化け物がいるらしいんだ……ブギーマンっていう、外国の妖怪らしいけどね……」Yくんは深刻な面持ちで説明してくれた。

ブギーマンは有名だが、日本国内にも夜更かしをするものを襲う妖怪は多数知られている。
私はYくんに小学生らしく早寝早起きをすすめた。

以来、Yくんと弟はできるだけ早く寝るようになったそうだ。

【おわり】
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