この異世界は絶対にゆるふわVRMMOなんかじゃない!

もやもや、もやしん

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第一章この章の後半を読んではいけない。

第4話 彼と彼女のオープニング4

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 街は石造りの建物が広がり、高台に登れば街と山、平地と海の境目が見える素晴らしい景色が広がっている。
 そして今から向かう市場は山側のゲートにあり討伐受付やアイテム交換所など色々な施設が集まっている。
 街中も本来の文献や史実とは少し違いとても綺麗で客観的に見れば平穏な街だ。
 これも何かしらの違和感の一つになっているのだが、今の所まだ探る必要は無いだろう。

「ナフィ、長閑で良い雰囲気の街だね」
「はい、マスター綺麗な街です。ゆく人々はみんな笑顔で」

 そんな中、僕は反対側を歩く人々に目をやった時一人の同い年くらいの女の子に目が止まった。
 そこにはショートボブに一癖ついた青髪で眼力の強い一際目立つ美人?可愛い女の子が歩いていた。
 ただし着ている装備でかなりカッコイイ仕上がりになっていた。しかも、どこかで見た事ある様な気がした。

「あれっ、どこかで見た事ある様な・・・・・・」
 
 やはりあそこまで目立って可愛いと印象には残る。

「か、神崎さん!」

 彼女は学校でも有名人だった。
 学業優秀、スタイル抜群、運動神経抜群、顔も可愛く友人の多い性格で男女問わず崇拝する者まで現れるほどだった。

 彼女なら何か知っているんじゃないか?そんな気持ちで声を掛けようと思った。
 そして、反対側でも気付けるぐらい大きめの声で名前を呼んだ。
 すると彼女は僕の声に反応したのかこちらと目が合った。
 正確に言うと彼女は僕を睨んでいた。

 えっ?

「ねぇ、あなたさっき私の名前を呼ばなかった?」

 睨む事によって攻撃ができるのか?と言う程に目線が彼を貫く。

「なに? 返事出来ないの? 聞き間違いだったかしら」

 彼は睨みの強さに一歩退いてしまったがやっとの事で言葉が出た。

「神崎麗華さん、ですよね?」
「ひ、人違いよ・・・・・・多分」

 下の名前が出た瞬間少しギクッとしたように見えた。

「覚えてませんか? 一年生の時クラスで一緒だったクラスで一番身長がちっさかった奴。葛城桃李って言うんですけど」
「人違いって言ってるの聞こえてない? あんたなんか知らないし覚えてない」
「すみませんやっぱり人違いでしたか」

 彼女の目線を怖がった為にふとカバンの方へ目をやるとある物を見つけたのでトウリは話を続けた。

「すみませんがお名前聞いてもよろしいですか?」
「なっ名前? 凜音よ」

 リンネ!?

「凜音? ユーザー名ですか?」
「そうよ、それが何か?」
「カバンに神裂麗華って刺繍が縫ってありますよ」

 本人は気づかないとでも思ったのだろうか。

「なっ! 違うわこれは友達から」
「やっぱり神崎さんですよね。別に隠す程の事でもないと思いますよ」
「もうそれでいいわ。で私に喋りかけたってことは何かあるから話しかけたのよね? もし何も無いなら裂くわよ」
「それなんですけど何か違和感って感じませんか?」
「違和感? 別に感じないけど」
「でもリアル過ぎませんか?」
「そう言えば確かにスキンが剥がれることなんてバグとかしか有り得ない・・・・・・ねぇ、あなた学校で私がこのゲームしてるって言ったら殺すからね」

 彼女の雰囲気からはただならぬ殺気が込められ冗談で言ってる様では無かった。

「な、何でですか?」
「決まってるじゃない。女の子がましてや私がこんなゲームしてたら変に見られるわ」
「別に大丈夫だと」
「とにかく、噂が流れて来たらあんたを呼び出す」
「そ、そんなぁ」

 気づけば裏路地辺りまでトウリは後退していた。レイカに間合いを詰められては下がっていたからだ。
 神崎さんってこんなに怖かったっけ? 僕が喋ってないだけだからかな? 調子がどうも狂ってしまう。

「今少し急いでるからこの話はまた今度しましょう。今の時間当たりに私が入ってるギルドに行けば会えるはずよ」 
「場所は・・・・・・どこですか?」

 トウリはそこら辺をきょろきょろしながら聞いてみる。

「この先すぐにある酒場よ。余計な事は喋りにこないでね」

 そう言ってレイカはすぐに立ち去って行った。
 タイミングを見計らって先程まで一歩引いていたナフィが話しかけてきた。

「棘のある人でしたね」

 元々学校じゃあんな性格じゃなかったと思うんだけどな。
 こんなこともあるんだ。
 何故なら僕は別人だと思っていたゲームの世界の彼女を知っているからだ。
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