『無能』扱いで追放されましたが、実は『バフ』に特化していることが判明したので最強のパーティーを作ろうと思います

loba888888

文字の大きさ
2 / 5

第2話:大賢者との出会い

しおりを挟む
~あらすじ~

 リクは転生した直後に『無能』と診断され、王都から追放されてしまう。
 さらに送り込まれた辺境の田舎町でも、いきなりお金をだまし取られるという仕打ちを受けることに。

 リクは同じような境遇の少女、ミアと出会い泥棒を捕まえることを決める。
 弱い二人では敵わずピンチに陥るが、突然泥棒がぶっ飛び撃退に成功したのだった。


*****


「状況を整理しよう……この泥棒は元C級の流れ者」
「元って言うなよ」

「それからこっちが『無能』の少年と『ファイアボール』の少女でどっちもE級……」
「……この子たちが、そっちの泥棒をパンチ1つで吹き飛ばした……木々を薙ぎ倒すほどの勢いで」

「「信じられない……」」

 この町唯一のギルドに勤める、用心棒と受付嬢。
 その二人はいま、揃って僕たちを疑いの目で見ていた。

「信じてくださいよ! 本当なんですってば!」
「ぽーんって飛んでったのよ! ぽーんって!」

 僕とミアは必死で状況を伝えようとする。
 確かに信じがたいことだけど、この目で見たものは本当だ。
 ミアはあの時、泥棒に乱暴されそうになって抵抗していた。
 そこでパンチを打ったら、泥棒が吹き飛んだんだ。
 救助が来て治療してくれるまで、ほんとに人を殺しちゃったかと思ってビクビクした。

「いやね、たま~に居るのよ。そういうウソをつく子が」

 受付嬢さんは右肘を左手で支えながら、悩ましそうに頬へ手を突いた。

「ひどい! ウソじゃないですよ!」
「皆そう言うのよね……。
 精巧に現場を偽装工作して……自作自演で手柄とか力を見せつけて、
 前払いの依頼で稼いだらトンズラ……そんなの何度も見てきたわ」

「よく分かってんじゃねぇか、嬢ちゃん。
 オレもそれで追放されてきたクチだからな」

 泥棒は不敵な態度を崩さず、ニヤニヤしながら口を挟んでくる。
 こいつ、ウソついてでも僕らに手柄を作らせない気なのか!?

「偉そうにするんじゃないわよこの変態!」
「しょうがねーよ、カネ無かったんだもん。
 真面目に鍛えるより早くて確実だろうが」

 泥棒はクククッと笑った。
 だけど、その笑いはすぐに引き攣った笑いへと変わった。


「あ……あ……『大賢者』……?」


 異変に気が付いた僕たちは、一斉にギルドの入口を見る。
 僕らに構わず、自分たちの用事に取り組んでいた冒険者や職員たちも同じだ。

「そうジジイを見つめるものではない。
 照れてしまうぞ」

 そこに立っていたのは一人の老人だった。
 白く長い髭と髪、そして紫色のローブと帽子からのぞく顔はしわしわになっていたけれど、彼の足取りは決して年相応の鈍さを感じさせなかった。

「S級冒険者のアルガス様がなぜこんなところに……」
「ああ! 名乗る前に言われてしもうた。
 なに、ちょっとした旅の途中でのう。
 驚くべき番狂わせが起こったと聞き、好奇心をそそられたわけじゃ」

 アルガスさんは不思議な人だった。
 身にまとう雰囲気は只者でないのに、口調や仕草からはご近所に住むおしゃべりさんのような親しみやすさが感じられる。

「さて……キミたちが件の二人じゃの」
「はっ、ひゃいっ」
「ふぁい!」

「ほほほ、そう怯えるでない。
 ギルドの可愛いお嬢さんや、彼らに『鑑定器』は試したかね?
 特別なスキルやステータスがあるなら、それで分かるはずじゃが」
「はい……ですがこれといったことは分かりませんでした。
 元C級、スキルなし、『ファイアボール』。彼らが持っている特徴はただそれだけです」
「ふむ……」

 大賢者さんは豊かなあごひげを撫で、思案すると空中に手をかざした。
 そして何処からともなく、僕が神殿で付けさせられたのと同じようなリストバンドが現れる。

「すげぇ、あの『魔法蔵』を使いこなしてるのか……」

 ギルドの人達が感嘆の声を上げる。
 まるで手品みたいなことをこの人は簡単にやってのけるんだ……。

「流石だわ……でもそれは『鑑定器』ですよね?」

 受付嬢さんが声をかけると、アルガスさんは丁寧に説明してくれた。

「うむ。しかしこれは転生の神殿が製造し、流通させているものとは異なる。
 言わば自家製、ワシ自身が改良を施しながら利用しているものじゃ。
 これならば或いは……」

 僕たちは、その大賢者特製の『鑑定器』を恐る恐る身につけた。
 今度こそなにかわかるんだろうか?

「怖がらせてすまぬのう。
 不安なら手を握っていてもよいぞ、子どもたちよ」

 結果を待ちながら、アルガスさんは優しく声をかけてくれる。
 ちょっと恥ずかしかったけれど、結局ミアの方から手を握ってきた。

「うぅ……あ、アンタが暗い顔してるから……。
 ほら、手握ってなさいよ……」

 顔を真っ赤にしているのが可愛い。
 そうやって待っていると、アルガスさんの顔を一筋の汗が伝う。
 今日ってそんなに暑かったっけ?

「あ~……大変言いにくいのじゃが……いや……こほん」
「え?」

 さっきまでの優しい顔はどこへやら。
 アルガスさんは、S級冒険者の格を感じさせる鋭い眼差しで言った。


「キミたち、やはり大した『スキル』は持たされておらぬな。
 大人を騙そうという度胸だけは人並み外れておるがのう。
 ちとお灸を据えてやらねばならぬ……ギルドのお二人よ、どこか部屋を貸してくれい」


「……! アルガス様が言うのであれば、間違いありませんね。
 さぁ、こっちへ来なさい!」
「ったく、とんでもねぇガキだぜ……!」

 僕とミアは、受付嬢さんたちに引っ張られて無理やり連れられていってしまう。
 振り返れば、他の人たちの冷たい視線と泥棒のきょとんとした顔が僕らを見送っていた……。

「はぁ……? じゃあオレが死にかけたの、何だったんだよぉ……」

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

魔力ゼロで出来損ないと追放された俺、前世の物理学知識を魔法代わりに使ったら、天才ドワーフや魔王に懐かれて最強になっていた

黒崎隼人
ファンタジー
「お前は我が家の恥だ」――。 名門貴族の三男アレンは、魔力を持たずに生まれたというだけで家族に虐げられ、18歳の誕生日にすべてを奪われ追放された。 絶望の中、彼が死の淵で思い出したのは、物理学者として生きた前世の記憶。そして覚醒したのは、魔法とは全く異なる、世界の理そのものを操る力――【概念置換(コンセプト・シフト)】。 運動エネルギーの法則【E = 1/2mv²】で、小石は音速の弾丸と化す。 熱力学第二法則で、敵軍は絶対零度の世界に沈む。 そして、相対性理論【E = mc²】は、神をも打ち砕く一撃となる。 これは、魔力ゼロの少年が、科学という名の「本当の魔法」で理不尽な運命を覆し、心優しき仲間たちと共に、偽りの正義に支配された世界の真実を解き明かす物語。 「君の信じる常識は、本当に正しいのか?」 知的好奇心が、あなたの胸を熱くする。新時代のサイエンス・ファンタジーが、今、幕を開ける。

「お前は無能だ」と追放した勇者パーティ、俺が抜けた3秒後に全滅したらしい

夏見ナイ
ファンタジー
【荷物持ち】のアッシュは、勇者パーティで「無能」と罵られ、ダンジョン攻略の直前に追放されてしまう。だが彼がいなくなった3秒後、勇者パーティは罠と奇襲で一瞬にして全滅した。 彼らは知らなかったのだ。アッシュのスキル【運命肩代わり】が、パーティに降りかかる全ての不運や即死攻撃を、彼の些細なドジに変換して無効化していたことを。 そんなこととは露知らず、念願の自由を手にしたアッシュは辺境の村で穏やかなスローライフを開始。心優しいエルフやドワーフの仲間にも恵まれ、幸せな日々を送る。 しかし、勇者を失った王国に魔族と内通する宰相の陰謀が迫る。大切な居場所を守るため、無能と蔑まれた男は、その規格外の“幸運”で理不尽な運命に立ち向かう!

【状態異常無効】の俺、呪われた秘境に捨てられたけど、毒沼はただの温泉だし、呪いの果実は極上の美味でした

夏見ナイ
ファンタジー
支援術師ルインは【状態異常無効】という地味なスキルしか持たないことから、パーティを追放され、生きては帰れない『魔瘴の森』に捨てられてしまう。 しかし、彼にとってそこは楽園だった!致死性の毒沼は極上の温泉に、呪いの果実は栄養満点の美味に。唯一無二のスキルで死の土地を快適な拠点に変え、自由気ままなスローライフを満喫する。 やがて呪いで石化したエルフの少女を救い、もふもふの神獣を仲間に加え、彼の楽園はさらに賑やかになっていく。 一方、ルインを捨てた元パーティは崩壊寸前で……。 これは、追放された青年が、意図せず世界を救う拠点を作り上げてしまう、勘違い無自覚スローライフ・ファンタジー!

「お前の代わりはいる」と追放された俺の【万物鑑定】は、実は世界の真実を見抜く【真理の瞳】でした。最高の仲間と辺境で理想郷を創ります

黒崎隼人
ファンタジー
「お前の代わりはいくらでもいる。もう用済みだ」――勇者パーティーで【万物鑑定】のスキルを持つリアムは、戦闘に役立たないという理由で装備も金もすべて奪われ追放された。 しかし仲間たちは知らなかった。彼のスキルが、物の価値から人の秘めたる才能、土地の未来までも見通す超絶チート能力【真理の瞳】であったことを。 絶望の淵で己の力の真価に気づいたリアムは、辺境の寂れた街で再起を決意する。気弱なヒーラー、臆病な獣人の射手……世間から「無能」の烙印を押された者たちに眠る才能の原石を次々と見出し、最高の仲間たちと共にギルド「方舟(アーク)」を設立。彼らが輝ける理想郷をその手で創り上げていく。 一方、有能な鑑定士を失った元パーティーは急速に凋落の一途を辿り……。 これは不遇職と蔑まれた一人の男が最高の仲間と出会い、世界で一番幸福な場所を創り上げる、爽快な逆転成り上がりファンタジー!

大器晩成エンチャンター~Sランク冒険者パーティから追放されてしまったが、追放後の成長度合いが凄くて世界最強になる

遠野紫
ファンタジー
「な、なんでだよ……今まで一緒に頑張って来たろ……?」 「頑張って来たのは俺たちだよ……お前はお荷物だ。サザン、お前にはパーティから抜けてもらう」 S級冒険者パーティのエンチャンターであるサザンは或る時、パーティリーダーから追放を言い渡されてしまう。 村の仲良し四人で結成したパーティだったが、サザンだけはなぜか実力が伸びなかったのだ。他のメンバーに追いつくために日々努力を重ねたサザンだったが結局報われることは無く追放されてしまった。 しかしサザンはレアスキル『大器晩成』を持っていたため、ある時突然その強さが解放されたのだった。 とてつもない成長率を手にしたサザンの最強エンチャンターへの道が今始まる。

防御力ゼロと追放された盾使い、実は受けたダメージを100倍で反射する最強スキルを持ってました

黒崎隼人
ファンタジー
どんな攻撃も防げない【盾使い】のアッシュは、仲間から「歩く的」と罵られ、理不尽の限りを尽くされてパーティーを追放される。長年想いを寄せた少女にも裏切られ、全てを失った彼が死の淵で目覚めたのは、受けたダメージを百倍にして反射する攻防一体の最強スキルだった! これは、無能と蔑まれた心優しき盾使いが、真の力に目覚め、最高の仲間と出会い、自分を虐げた者たちに鮮やかな鉄槌を下す、痛快な成り上がり英雄譚! 「もうお前たちの壁にはならない」――絶望の底から這い上がった男の、爽快な逆転劇が今、始まる。

この聖水、泥の味がする ~まずいと追放された俺の作るポーションが、実は神々も欲しがる奇跡の霊薬だった件~

夏見ナイ
ファンタジー
「泥水神官」と蔑まれる下級神官ルーク。彼が作る聖水はなぜか茶色く濁り、ひどい泥の味がした。そのせいで無能扱いされ、ある日、無実の罪で神殿から追放されてしまう。 全てを失い流れ着いた辺境の村で、彼は自らの聖水が持つ真の力に気づく。それは浄化ではなく、あらゆる傷や病、呪いすら癒す奇跡の【創生】の力だった! ルークは小さなポーション屋を開き、まずいけどすごい聖水で村人たちを救っていく。その噂は広まり、呪われた女騎士やエルフの薬師など、訳ありな仲間たちが次々と集結。辺境の村はいつしか「癒しの郷」へと発展していく。 一方、ルークを追放した王都では聖女が謎の病に倒れ……。 落ちこぼれ神官の、痛快な逆転スローライフ、ここに開幕!

無能扱いされ、パーティーを追放されたおっさん、実はチートスキル持ちでした。戻ってきてくれ、と言ってももう遅い。田舎でゆったりスローライフ。

さら
ファンタジー
かつて勇者パーティーに所属していたジル。 だが「無能」と嘲られ、役立たずと追放されてしまう。 行くあてもなく田舎の村へ流れ着いた彼は、鍬を振るい畑を耕し、のんびり暮らすつもりだった。 ――だが、誰も知らなかった。 ジルには“世界を覆すほどのチートスキル”が隠されていたのだ。 襲いかかる魔物を一撃で粉砕し、村を脅かす街の圧力をはねのけ、いつしか彼は「英雄」と呼ばれる存在に。 「戻ってきてくれ」と泣きつく元仲間? もう遅い。 俺はこの村で、仲間と共に、気ままにスローライフを楽しむ――そう決めたんだ。 無能扱いされたおっさんが、実は最強チートで世界を揺るがす!? のんびり田舎暮らし×無双ファンタジー、ここに開幕!

処理中です...