出水探偵事務所の受難

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第四章・失律聖剣

4話 姫様の部屋

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リブラと明日辺の元に戻り、先ほどの話を伝えると、二人とも驚いた。
「…⁈ここに俺達以外の人間が…いるだと⁈」
「ああ。そいつの話によると、そいつらの雇い主もいるかもしれないらしい」
「…三人…か」
「へぇ~あんたの能力ってあの『開け』って言わないと発動しないかと思ったけど、違うのね」
 明日辺がそう言うと、リブラは頭を振りながらそれを否定した。
「いや、その筈だ。俺以外に本の世界を開ける者など、いない筈だ」
「じゃあどうやって二人は入れたのよ。意味わかんないわ」
「…謎が増えたな。取り敢えずその理由も調査したい」

「ふむ…やはり、ここには大勢が住んでいるな」
 仮面の男は眼下に広がる街を見下ろしながらそう言った。
「そりゃ街ですもん。人が住んでいるに決まって」
「下僕が俺に意見するな。お前は俺がさっき言った通り、この『話』の流れを乱せばいい。」
 そう言うと、仮面の男はそこから去っていった。
「ったく。前よりはマシなものの、今度の上司はコミュニケーションが面倒だな」
 須郷はそう独り言を呟きながら、街を迂回しつつ、その先にある『王城』へと向かった。

 夜、街の光が消えた頃、須郷は動き出した。今目の前にある王城は周りが水で埋まった堀で囲まれており、唯一の入り口である吊り橋はしまわれている。

 須郷は脇に差してある剣を手に取ると、その柄の先にある輪っかに糸を通した。
「さて、と」
 そして糸の端だけを持つと、須郷はそれを軽く振り回し始めた。
「俺、『軽くなれ』。剣よ、『軽くなれ』」
 須郷がそう言うと、鎖の先の剣の回るスピードが凄まじく上がった。
「よし。そんじゃ後は…」
 今や、須郷が適当に振り回している糸付きの剣の早さは目測では測りきれないほどになっていた。後は…これを投げるだけである。
「よい…しょっとォ‼︎」
 須郷が放った剣は見事に王城の内側まで落ちていき、カラカランと、王城の壁に当たる音が聞こえた。
 現在、長い糸に繋がれた須郷の剣は『軽すぎて地面に
落ちず』、王城の壁の上から糸に吊るされて宙ぶらりんになっている状況である。
「剣よ、『重くなれ』」
 瞬間、剣だけ凄まじく重さが増した。結果、須郷の軽い身体はその重さに引っ張られ、するすると引き上げられていった。
「『シーソー作戦』…思いつきだったんだが上手くいってよかったな」
 須郷は今自分が掴んでいる頼りない細さの糸を見ながらそう呟いた。

 王城に侵入した須郷は、衛兵たちが歩く合間を縫って屋内に侵入した。
「…ふぅ…少々危ないがなんとか行けるか」
 見つかっても口封じに殺すか適当に縛っておけばいい現実とは違い、見つかったらその時点で物語に組み込まれて脱出不可になってしまうこの任務は危険すぎる。だから俺を選んだのだろうが…正直つらい。
 これから、姫様の部屋に突入しなければならないのだが、問題はその部屋の扉の前に陣取っている二人の守衛だ。そいつらに見つからないように侵入するには…
「窓しかない、か…」
 須郷はそっと物陰に隠れながら二階に行くと、キョロキョロと目的への入り口を探した。
「やはり情報通り…あそこから行けそうだな」
 それは、固定されている窓だった。そこまで寄った須郷は、そこに向かって剣を突き立てて割ると、そこから外に出て壁に張り付いた。今から、巡回している警吏が来るまでは一分はかかる。それまでになんとか、遥か上にある姫様の部屋に侵入しなければ、割れた窓から警吏に覗かれて見つかり、本の世界に引き込まれる可能性がある。
「といっても楽勝なんだがな…」
 須郷はまた剣を羽のように軽くさせ、それを紙飛行機のように姫が住む尖塔の先に投げた。そして、剣はそこを通り過ぎ、上手いこと剣の柄に括られた糸がそこに絡まった。
「よし、『俺よ、軽くなれ』、『剣よ重くなれ』」
 須郷がそういった瞬間、剣の重さが増し、尖塔の先を支点にして須郷は壁から尖塔の先へと、先ほどのような『シーソー作戦』で飛び移つることに成功した。
「『剣よ軽くなれ』、『俺よ重くなれ』…さて、と」
 須郷は腰の帯に、元の重さに戻った剣を差すと、壁を掴み、地上から30メートルはある尖塔の壁の側面を虫のように這って移動し始めた。そして、窓を静かに剣で切り裂くと姫の部屋へ侵入した。
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