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第四章・失律聖剣
6話 バフォメット
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「…⁈なんだ?」
「どうしたんですか?」
「現実世界に戻れない…」
「まじすか」
「…触れてみたらわかる」
仮面の男と須郷は、森林のはずれの洞窟内にある大きな本の挿絵から出ようとしたのだが、できなかった。
「恐らくお前がティアラを盗んだからこうなったのだ」
「俺のせいはやめてくださいって!」
「いや、恐らくそうだ。気になるのは、『バフォメット』を通して契約した筈なのに、何故かアイツが契約を破ることができたという点だ」
一週間前、仮面の男は『バフォメット』という闇能力者立ち合いの元、『本の世界に入り、ティアラを取ってくる』という契約を果たした。
『バフォメット』は、この世に二人しか存在しなかった特別な闇能力者のうちの一人である。
何が特別なのかというと、闇能力者は普通多くても四、五人としか一度に契約状態を維持できないのだが、バフォメットはそのような制限もなく、多くの人と一度に契約を行えるのだ。そして彼女自身の特色として、彼女を介した契約の際は誰も嘘をつけなくなる。
多くの闇能力者達はそれを利用して自分の下僕の数を減らすことなく『嘘なし』の公平な契約を交わして生きている。
だが『桜庭』という男はバフォメットを通した、確実に嘘をつけない契約の場で、『ティアラを盗んだとしても、問題なく君たちは本の世界から出られる』となぜか嘘をつけたのだ。
「考えられる線はバフォメットのクソアマの裏切り…もしくは桜庭が能力か何かでそれを掻い潜ったという二つですかね」
「そうだな…」
バフォメット立ち合いの元で『それは本当か?』と質問された相手は、その質問されたことについて本当と信じていたとしても(例えば洗脳など)、その裏に謀略があるのならばバフォメットがそれに気づいて知らせてくれる。だが桜庭にはそれすらなかった。
「…考えていても仕方がない。ひとまず昨日会った出水露沙と合流し、あちらと情報を共有する」
「わかりました」
「…?シーズン2ってそれが終わるのっていつなの?」
「大長編になるか短編になるかなんて、俺ですらわからない」
出水達三人は、アワアワと家の中でこれからどうするかを相談していた。
「…やはり、俺がティアラを王族に返すしかあるまい」
「それで何とかなるのか?」
「元に戻せばそれでハッピーエンドと行くかもしれないだろ?」
「…うーん」
出水も明日辺も、それ以上の解決策は思いつかなかった。
「まぁ、わかったわ。絵画の中の人と触れ合えない以上限られた動きしかできないけど、手伝えることはなんだってするわ」
「…私もそうする」
「そうか。よかっ…」
瞬間、凄まじい地響きが家の外から伝わった。
「な、なに⁈」
「…⁈まさか…‼︎お前ら、逃げ」
リブラがそう叫んだ時にはもう遅く、家の屋根が何かの『鱗』のついた手で『持ち上がり』、そこから龍の顔が見えた。
その喉からはゴロゴロと雷のような音が響いている。
そして、龍の目がこちらをしかと睨んだ瞬間、出水と明日辺の身体の彩度がどんどんと上がっていき、筆で書かれたような筆致で輪郭やその色が表されていく。そして、大事な何かが抜け落ちるような感覚が二人の身体中を駆け抜けていった。
「こんな辺境で何をしている…人間」
龍の喉からそのような声が聞こえた。
「どうしたんですか?」
「現実世界に戻れない…」
「まじすか」
「…触れてみたらわかる」
仮面の男と須郷は、森林のはずれの洞窟内にある大きな本の挿絵から出ようとしたのだが、できなかった。
「恐らくお前がティアラを盗んだからこうなったのだ」
「俺のせいはやめてくださいって!」
「いや、恐らくそうだ。気になるのは、『バフォメット』を通して契約した筈なのに、何故かアイツが契約を破ることができたという点だ」
一週間前、仮面の男は『バフォメット』という闇能力者立ち合いの元、『本の世界に入り、ティアラを取ってくる』という契約を果たした。
『バフォメット』は、この世に二人しか存在しなかった特別な闇能力者のうちの一人である。
何が特別なのかというと、闇能力者は普通多くても四、五人としか一度に契約状態を維持できないのだが、バフォメットはそのような制限もなく、多くの人と一度に契約を行えるのだ。そして彼女自身の特色として、彼女を介した契約の際は誰も嘘をつけなくなる。
多くの闇能力者達はそれを利用して自分の下僕の数を減らすことなく『嘘なし』の公平な契約を交わして生きている。
だが『桜庭』という男はバフォメットを通した、確実に嘘をつけない契約の場で、『ティアラを盗んだとしても、問題なく君たちは本の世界から出られる』となぜか嘘をつけたのだ。
「考えられる線はバフォメットのクソアマの裏切り…もしくは桜庭が能力か何かでそれを掻い潜ったという二つですかね」
「そうだな…」
バフォメット立ち合いの元で『それは本当か?』と質問された相手は、その質問されたことについて本当と信じていたとしても(例えば洗脳など)、その裏に謀略があるのならばバフォメットがそれに気づいて知らせてくれる。だが桜庭にはそれすらなかった。
「…考えていても仕方がない。ひとまず昨日会った出水露沙と合流し、あちらと情報を共有する」
「わかりました」
「…?シーズン2ってそれが終わるのっていつなの?」
「大長編になるか短編になるかなんて、俺ですらわからない」
出水達三人は、アワアワと家の中でこれからどうするかを相談していた。
「…やはり、俺がティアラを王族に返すしかあるまい」
「それで何とかなるのか?」
「元に戻せばそれでハッピーエンドと行くかもしれないだろ?」
「…うーん」
出水も明日辺も、それ以上の解決策は思いつかなかった。
「まぁ、わかったわ。絵画の中の人と触れ合えない以上限られた動きしかできないけど、手伝えることはなんだってするわ」
「…私もそうする」
「そうか。よかっ…」
瞬間、凄まじい地響きが家の外から伝わった。
「な、なに⁈」
「…⁈まさか…‼︎お前ら、逃げ」
リブラがそう叫んだ時にはもう遅く、家の屋根が何かの『鱗』のついた手で『持ち上がり』、そこから龍の顔が見えた。
その喉からはゴロゴロと雷のような音が響いている。
そして、龍の目がこちらをしかと睨んだ瞬間、出水と明日辺の身体の彩度がどんどんと上がっていき、筆で書かれたような筆致で輪郭やその色が表されていく。そして、大事な何かが抜け落ちるような感覚が二人の身体中を駆け抜けていった。
「こんな辺境で何をしている…人間」
龍の喉からそのような声が聞こえた。
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