53 / 65
第四章・失律聖剣
6話 バフォメット
しおりを挟む
「…⁈なんだ?」
「どうしたんですか?」
「現実世界に戻れない…」
「まじすか」
「…触れてみたらわかる」
仮面の男と須郷は、森林のはずれの洞窟内にある大きな本の挿絵から出ようとしたのだが、できなかった。
「恐らくお前がティアラを盗んだからこうなったのだ」
「俺のせいはやめてくださいって!」
「いや、恐らくそうだ。気になるのは、『バフォメット』を通して契約した筈なのに、何故かアイツが契約を破ることができたという点だ」
一週間前、仮面の男は『バフォメット』という闇能力者立ち合いの元、『本の世界に入り、ティアラを取ってくる』という契約を果たした。
『バフォメット』は、この世に二人しか存在しなかった特別な闇能力者のうちの一人である。
何が特別なのかというと、闇能力者は普通多くても四、五人としか一度に契約状態を維持できないのだが、バフォメットはそのような制限もなく、多くの人と一度に契約を行えるのだ。そして彼女自身の特色として、彼女を介した契約の際は誰も嘘をつけなくなる。
多くの闇能力者達はそれを利用して自分の下僕の数を減らすことなく『嘘なし』の公平な契約を交わして生きている。
だが『桜庭』という男はバフォメットを通した、確実に嘘をつけない契約の場で、『ティアラを盗んだとしても、問題なく君たちは本の世界から出られる』となぜか嘘をつけたのだ。
「考えられる線はバフォメットのクソアマの裏切り…もしくは桜庭が能力か何かでそれを掻い潜ったという二つですかね」
「そうだな…」
バフォメット立ち合いの元で『それは本当か?』と質問された相手は、その質問されたことについて本当と信じていたとしても(例えば洗脳など)、その裏に謀略があるのならばバフォメットがそれに気づいて知らせてくれる。だが桜庭にはそれすらなかった。
「…考えていても仕方がない。ひとまず昨日会った出水露沙と合流し、あちらと情報を共有する」
「わかりました」
「…?シーズン2ってそれが終わるのっていつなの?」
「大長編になるか短編になるかなんて、俺ですらわからない」
出水達三人は、アワアワと家の中でこれからどうするかを相談していた。
「…やはり、俺がティアラを王族に返すしかあるまい」
「それで何とかなるのか?」
「元に戻せばそれでハッピーエンドと行くかもしれないだろ?」
「…うーん」
出水も明日辺も、それ以上の解決策は思いつかなかった。
「まぁ、わかったわ。絵画の中の人と触れ合えない以上限られた動きしかできないけど、手伝えることはなんだってするわ」
「…私もそうする」
「そうか。よかっ…」
瞬間、凄まじい地響きが家の外から伝わった。
「な、なに⁈」
「…⁈まさか…‼︎お前ら、逃げ」
リブラがそう叫んだ時にはもう遅く、家の屋根が何かの『鱗』のついた手で『持ち上がり』、そこから龍の顔が見えた。
その喉からはゴロゴロと雷のような音が響いている。
そして、龍の目がこちらをしかと睨んだ瞬間、出水と明日辺の身体の彩度がどんどんと上がっていき、筆で書かれたような筆致で輪郭やその色が表されていく。そして、大事な何かが抜け落ちるような感覚が二人の身体中を駆け抜けていった。
「こんな辺境で何をしている…人間」
龍の喉からそのような声が聞こえた。
「どうしたんですか?」
「現実世界に戻れない…」
「まじすか」
「…触れてみたらわかる」
仮面の男と須郷は、森林のはずれの洞窟内にある大きな本の挿絵から出ようとしたのだが、できなかった。
「恐らくお前がティアラを盗んだからこうなったのだ」
「俺のせいはやめてくださいって!」
「いや、恐らくそうだ。気になるのは、『バフォメット』を通して契約した筈なのに、何故かアイツが契約を破ることができたという点だ」
一週間前、仮面の男は『バフォメット』という闇能力者立ち合いの元、『本の世界に入り、ティアラを取ってくる』という契約を果たした。
『バフォメット』は、この世に二人しか存在しなかった特別な闇能力者のうちの一人である。
何が特別なのかというと、闇能力者は普通多くても四、五人としか一度に契約状態を維持できないのだが、バフォメットはそのような制限もなく、多くの人と一度に契約を行えるのだ。そして彼女自身の特色として、彼女を介した契約の際は誰も嘘をつけなくなる。
多くの闇能力者達はそれを利用して自分の下僕の数を減らすことなく『嘘なし』の公平な契約を交わして生きている。
だが『桜庭』という男はバフォメットを通した、確実に嘘をつけない契約の場で、『ティアラを盗んだとしても、問題なく君たちは本の世界から出られる』となぜか嘘をつけたのだ。
「考えられる線はバフォメットのクソアマの裏切り…もしくは桜庭が能力か何かでそれを掻い潜ったという二つですかね」
「そうだな…」
バフォメット立ち合いの元で『それは本当か?』と質問された相手は、その質問されたことについて本当と信じていたとしても(例えば洗脳など)、その裏に謀略があるのならばバフォメットがそれに気づいて知らせてくれる。だが桜庭にはそれすらなかった。
「…考えていても仕方がない。ひとまず昨日会った出水露沙と合流し、あちらと情報を共有する」
「わかりました」
「…?シーズン2ってそれが終わるのっていつなの?」
「大長編になるか短編になるかなんて、俺ですらわからない」
出水達三人は、アワアワと家の中でこれからどうするかを相談していた。
「…やはり、俺がティアラを王族に返すしかあるまい」
「それで何とかなるのか?」
「元に戻せばそれでハッピーエンドと行くかもしれないだろ?」
「…うーん」
出水も明日辺も、それ以上の解決策は思いつかなかった。
「まぁ、わかったわ。絵画の中の人と触れ合えない以上限られた動きしかできないけど、手伝えることはなんだってするわ」
「…私もそうする」
「そうか。よかっ…」
瞬間、凄まじい地響きが家の外から伝わった。
「な、なに⁈」
「…⁈まさか…‼︎お前ら、逃げ」
リブラがそう叫んだ時にはもう遅く、家の屋根が何かの『鱗』のついた手で『持ち上がり』、そこから龍の顔が見えた。
その喉からはゴロゴロと雷のような音が響いている。
そして、龍の目がこちらをしかと睨んだ瞬間、出水と明日辺の身体の彩度がどんどんと上がっていき、筆で書かれたような筆致で輪郭やその色が表されていく。そして、大事な何かが抜け落ちるような感覚が二人の身体中を駆け抜けていった。
「こんな辺境で何をしている…人間」
龍の喉からそのような声が聞こえた。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
セーラー服美人女子高生 ライバル同士の一騎討ち
ヒロワークス
ライト文芸
女子高の2年生まで校内一の美女でスポーツも万能だった立花美帆。しかし、3年生になってすぐ、同じ学年に、美帆と並ぶほどの美女でスポーツも万能な逢沢真凛が転校してきた。
クラスは、隣りだったが、春のスポーツ大会と夏の水泳大会でライバル関係が芽生える。
それに加えて、美帆と真凛は、隣りの男子校の俊介に恋をし、どちらが俊介と付き合えるかを競う恋敵でもあった。
そして、秋の体育祭では、美帆と真凛が走り高跳びや100メートル走、騎馬戦で対決!
その結果、放課後の体育館で一騎討ちをすることに。
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
アガルタ・クライシス ―接点―
来栖とむ
SF
神話や物語で語られる異世界は、空想上の世界ではなかった。
九州で発見され盗難された古代の石板には、異世界につながる何かが記されていた。
同時に発見された古い指輪に偶然触れた瞬間、平凡な高校生・結衣は不思議な力に目覚める。
不審な動きをする他国の艦船と怪しい組織。そんな中、異世界からの来訪者が現れる。政府の秘密組織も行動を開始する。
古代から権力者たちによって秘密にされてきた異世界との関係。地球とアガルタ、二つの世界を巻き込む陰謀の渦中で、古代の謎が解き明かされていく。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる