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第四章・失律聖剣
7話 殺し殺され
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本の中のリブラ家『跡地』では静寂が広がっていた。
「…何をしている、と聞いている」
「…ちょっとお茶を飲んでいただけだが」
龍の質問に、出水がそう答える。
「こんな辺境の土地でコソコソと…くれぐれも我、赤のドラゴンの兄である黒のドラゴンを殺す、などということは考えないことだ…」
そう言うと、黒の龍は羽を広げ、空に羽ばたいて行った。
「…もしかして、私たちって、本の世界に囚われてる状態か?」
「…あぁ。しっかりと挿絵みたいになっている」
「どうすんのこれ?あの通り魔ドラゴンのせいでこれじゃ現世に帰れるようになっても、本の世界に囚われたままになるじゃない‼︎」
「明日辺落ち着け。…本の世界に生きる知性ある者と出会ったら、俺以外はこの本の世界に囚われる…というのは、話した通りだな。そこから戻るには、まず、物語の主要人物と会う必要がある」
「主要人物?」
「眠れる森の美女で言うオーロラ姫、マレフィセント、フィリップ王子みたいなヤツだ。この世界で言えば『マリアンヌ王女』、『赤のドラゴン』、『黒のドラゴン』『エドワード王子』、『マリアンヌ王女の親』、『不死鳥』…あたりか。そいつらのうち、誰ででもいいから一人選んで『殺されろ』」
「殺されろ、て…」
「頭を殴られたり、刃物で突き刺されたりしろ」
「えぇ…」
「殺されればこちらの命があちらに回帰する。だが、どこの誰とも知らないモブに殺されると確実にそのままだ。あと一つ注意事項だが、この世界の外のことも、能力のことも絶対に話すな。話したらそいつらは廃人になってしまう」
「…?何故だ?」
「この世界の理の外の情報だ。理解できないバグはここの住人の頭を壊す」
「…そうか」
出水はじっとリブラの顔を見た。
「一応、お前たちはもう絵になってるからモブと会っても何も起こらない」
「明らかにアイツ、嘘ついてるよな」
リブラが自分達に背を向けて離れた距離を歩いている時を見計らって、二人は話し合っていた。
「いや、明らかは言い過ぎだな。五、六割ってところだな」
「そうね。私たちの行動を制限するような言い草だった」
リブラが話した自分の能力について、全てが嘘というわけでは無いだろうが、何個かブラフが挟まっていると出水と明日辺は考えていた。
人を操ろうとする奴は、決まって『選択肢』を削り、さも自分が歩いていける道は『一本道』しかないと誤解させようとする。無論、リブラがそれに当てはまらない可能性もあるが、疑うに越したことはない。
そして、最も疑う理由が賞金稼ぎの界隈で有名な『誘い出し』である。それは、依頼をしたと見せかけて、それを餌に自分の術中にはめ、何もできないようにして封殺するというもので、今はまさに自分がそれにハマっているのかもしれないと出水達は思わずにはいられなかった。
王都から数キロ離れたとある洞窟の中で、男は自分の剣を抜いていた。そして、天井の穴から微かに漏れる光を刃に当てて、その鋭さを確かめていた。
「…!来たか」
男がそう呟いたそのすぐ後、全身を赤く輝く炎に包んでいる、体長五メートルはある大きな鳥が、洞窟の中に入ってきた。その燃える体表からはメラメラと炎が弾ける音が響いている。
「ルイン…首尾はどうだ」
「上々よ。黒の龍はあの家の二人を絵にしたわ…他の二人はしっかりと仕事をしてくれたみたい。今から彼らも絵にしてくるわ…」
「よし。これで俺の計画の第一歩が始まったというわけだ…というか、何故それをわざわざ俺に報告しにくるんだ?」
「貴方の成分を補給したいからに決まってるじゃない…」
そう言うとルインは熱っぽい視線を男に向けた。
それを無視しつつ、男は剣を片手で振ると、その勢いを保ったまま、スッと自らの腰の鞘にそれを収めた。
「じゃあ計画通りに奴らを封印しろ…」
「わかったわダーリン」
「そうやって俺を二度と呼ぶなよ。…計画のためには奴らのを利用するしかない。くれぐれも抜かるな」
そう言うと、男は背後に視線を向けた。そこには、微かな光で照らされた巨大な竜の死骸があった。
「…何をしている、と聞いている」
「…ちょっとお茶を飲んでいただけだが」
龍の質問に、出水がそう答える。
「こんな辺境の土地でコソコソと…くれぐれも我、赤のドラゴンの兄である黒のドラゴンを殺す、などということは考えないことだ…」
そう言うと、黒の龍は羽を広げ、空に羽ばたいて行った。
「…もしかして、私たちって、本の世界に囚われてる状態か?」
「…あぁ。しっかりと挿絵みたいになっている」
「どうすんのこれ?あの通り魔ドラゴンのせいでこれじゃ現世に帰れるようになっても、本の世界に囚われたままになるじゃない‼︎」
「明日辺落ち着け。…本の世界に生きる知性ある者と出会ったら、俺以外はこの本の世界に囚われる…というのは、話した通りだな。そこから戻るには、まず、物語の主要人物と会う必要がある」
「主要人物?」
「眠れる森の美女で言うオーロラ姫、マレフィセント、フィリップ王子みたいなヤツだ。この世界で言えば『マリアンヌ王女』、『赤のドラゴン』、『黒のドラゴン』『エドワード王子』、『マリアンヌ王女の親』、『不死鳥』…あたりか。そいつらのうち、誰ででもいいから一人選んで『殺されろ』」
「殺されろ、て…」
「頭を殴られたり、刃物で突き刺されたりしろ」
「えぇ…」
「殺されればこちらの命があちらに回帰する。だが、どこの誰とも知らないモブに殺されると確実にそのままだ。あと一つ注意事項だが、この世界の外のことも、能力のことも絶対に話すな。話したらそいつらは廃人になってしまう」
「…?何故だ?」
「この世界の理の外の情報だ。理解できないバグはここの住人の頭を壊す」
「…そうか」
出水はじっとリブラの顔を見た。
「一応、お前たちはもう絵になってるからモブと会っても何も起こらない」
「明らかにアイツ、嘘ついてるよな」
リブラが自分達に背を向けて離れた距離を歩いている時を見計らって、二人は話し合っていた。
「いや、明らかは言い過ぎだな。五、六割ってところだな」
「そうね。私たちの行動を制限するような言い草だった」
リブラが話した自分の能力について、全てが嘘というわけでは無いだろうが、何個かブラフが挟まっていると出水と明日辺は考えていた。
人を操ろうとする奴は、決まって『選択肢』を削り、さも自分が歩いていける道は『一本道』しかないと誤解させようとする。無論、リブラがそれに当てはまらない可能性もあるが、疑うに越したことはない。
そして、最も疑う理由が賞金稼ぎの界隈で有名な『誘い出し』である。それは、依頼をしたと見せかけて、それを餌に自分の術中にはめ、何もできないようにして封殺するというもので、今はまさに自分がそれにハマっているのかもしれないと出水達は思わずにはいられなかった。
王都から数キロ離れたとある洞窟の中で、男は自分の剣を抜いていた。そして、天井の穴から微かに漏れる光を刃に当てて、その鋭さを確かめていた。
「…!来たか」
男がそう呟いたそのすぐ後、全身を赤く輝く炎に包んでいる、体長五メートルはある大きな鳥が、洞窟の中に入ってきた。その燃える体表からはメラメラと炎が弾ける音が響いている。
「ルイン…首尾はどうだ」
「上々よ。黒の龍はあの家の二人を絵にしたわ…他の二人はしっかりと仕事をしてくれたみたい。今から彼らも絵にしてくるわ…」
「よし。これで俺の計画の第一歩が始まったというわけだ…というか、何故それをわざわざ俺に報告しにくるんだ?」
「貴方の成分を補給したいからに決まってるじゃない…」
そう言うとルインは熱っぽい視線を男に向けた。
それを無視しつつ、男は剣を片手で振ると、その勢いを保ったまま、スッと自らの腰の鞘にそれを収めた。
「じゃあ計画通りに奴らを封印しろ…」
「わかったわダーリン」
「そうやって俺を二度と呼ぶなよ。…計画のためには奴らのを利用するしかない。くれぐれも抜かるな」
そう言うと、男は背後に視線を向けた。そこには、微かな光で照らされた巨大な竜の死骸があった。
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