エッチなデイリークエストをクリアしないと死んでしまうってどういうことですか?

浅葱さらみ

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七日目

第35話

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「これにてオールアップ! みんなお疲れ――!!」
「お疲れっした!」「……した!」

 パチパチとまばらな拍手とともにAV撮影が終わった。
 スマホをチェックすると、今日が終わるまであと10分しかない。
 僕は慌ててステータスを表示し、アイテムストアを開く。

「よし! クエストスルーと交換して即適用っと!」
――デイリークエスト3を変更します――
――変更されたクエストは翌日も有効です――
――新たなクエストを選択してください――
「え、どういうこと?」

 どうやらクエストスルーした後に、今まで経験してきたクエストの中から任意の一つを選んで代用するみたい。
 しかも、その代用クエストは翌日いっぱいまで有効なんだそうだ。

「うーんどうしようかな? 楽なのは初期の褒めるとかタッチするとかだけど」

 今更1ポイントだけしか入らないクエストはうまみが無いしなぁ、かといって難しいのもクリア出来ない危険性が……。
 などと、なかなか決めきれずに悩んでいると、ベッドの方から監督の甲高い声が響いてきた。

「こらっ! ちゃんと綺麗に片付けなきゃダメじゃない? 使用済みのコンドームもベッドにおきっぱじゃ、清掃の人が嫌な思いするわよ! って、あら? 生きのよさそうなスペルマちゃんじゃないの!」

――クエスト2 ポイント追加されました――
「え? どゆこと?!」
――性的対象レーダーでご確認ください――

 レーダーを確認すると、新たに複数のドットが増えていた。
 僕は直ぐ近くにある二名をチェックしてみる。

「えっと、こっちは米子さん……こっちは……ゲッ?!」

 僕は信じられぬ思いで、プロフィールカードに現れた裸体の持ち主の方へと振り返った。
 視線の先では、監督さんが僕の使用済みコンドームに指を突っ込み、中の精液をコネコネ掻き混ぜていた。

「な、何してるんですか監督?!」
「ん、ちょっとねぇ~」

 と、言いつつコンドームに漬けた指先をペロリと自らの口に。

「人の精子を勝手に舐めないでください!」
「あら、良いじゃない! 減るもんじゃなし」

 その後も、ペロペロ指をしゃぶる変態監督。
 僕は何だか背筋の凍る感じがして、全身がブルブル震えざる負えなかった。

「って、そんなことより! 一応は男な監督が何で性的対象に入ってんだ?」
――接触時に性的対象に認定されない相手でも、性的接触をした場合は性的対象として登録されます――
「つうことは、僕の精液に触れたからクエスト2の対象になったということか? じゃあ、射精時だけじゃなくても保存しておけば再利用も可能ということか!」
――その通りです。ただし、生命活動が停止した精子は対象にはなりません――

 要は生きのいい精子ならまだ大丈夫ということか。

「よし! クエストスルーの変更先は今日のクエスト2と同じ――これまで未接触の対象にプレイヤーの精液を接触させる――にする!」
――クエスト3が変更されました――

 クエストの変更を確認した僕は、急いでベッドへと向かう。

「監督、それ返してください!」
「なによぅ! ケチねぇ」

 僕は監督からコンドームを奪い返し、先っぽを片結びにして上着のポケットにしまい込んだ。
 さて、後は出演料を貰わなきゃというところで、突然、背中を大きく叩《はた》かれた。

「よーっ! 頑張ってるぅみたいじゃんイガグリくん!」
「痛てっ……、イガグリじゃないです猪狩です! てか、どうしてここに?」

 叩いてきたのは、昼間よりさらにアブラギッシュに黒光りする制作のエライ人滑川さんだった。

「何言ってんの? 君の出演料を持ってきてやったんだ。ほい一万円!」
「あ、ありがとう……ございます」
「あぁ、僕の価値ってそんなもん? とか、思ってんの?」
「いえ、そんなことは~」

 思ってますよ! 新人だからって本番やって一万は安すぎでしょ!
 とか、言えるわけないじゃないですか。

「まぁまぁ、そう気ぃ落とすな! パーッと奢ってやっから! ガハハハッ!!」

 奢ってくれるなら、その分お金で貰う方が嬉しいんですけど。
 と、頭の中でぼやいていたら、0時を過ぎたようでクエストが新しいものに更新された。

・クエスト1 口膣アナルのどれかに陰茎を挿入して中出しする。回数ごとに2ポイント。
・クエスト2 舌のみで絶頂させる。対象者一人につき部位ごとに4ポイント一回のみ加点。
・クエスト3 これまで未接触の対象に……

 僕はここでちょっとさっき思いついたばかりのアイデアを試してみることにした。

「あの滑川さん! その時計カッコイイですね。ちょっと見せてもらえませんか?」
「おっ? やっぱ判る? これデイトナなんざ目じゃねぇスイス製の超ヴィンテージもんよー!」
「へぇー! やっぱ滑川さんクラスになると、希少な時計をつけてるんですね!」

 と、僕はポケットの中でコンドームの結び目の先に付着している僅かな精液を指先つけてから、オスゴリラの腕へと伸ばした。

「おっと! 触っちゃダメよ?」
「違いますよ! 腕の角度によって見え方どうかなって!」
「なら、ほら!」
「失礼します!」

 時計を見るふりをして、滑川さんの手首に僅かな精液をこすりつけた。

――クエスト3 クリアしました――

「やっぱ、よくわかんなや」
「はは、そうかそうか! もっと、男として経験積まないとな!」

 そう言いながらバシバシと肩を叩いてきた滑川さん。
 なんか苦手だなこの人は、まぁ、クエストクリアの条件を確認できたからよしとするか。

「んじゃ、行くとすっか!」

 滑川さんはスタッフに声を掛けて回ったあと、遠慮する僕を強引に連れ出し、一緒に路上に止めてあったアルファードの後部座席へ。

「いいぞ、出せ!」
「へい」

 運転席に座るスキンヘッドの男が返事をして車は動き出した。

「あの何処へ行くんですか? 僕、お酒は飲めないんですけど」
「なんだ? キャバクラにでも連れてくと思ったんか?」
「は、はぁ」
「ガハハッ! 君みたいな若い子連れてってもつまらんだろ? クラブはクラブでもあっちのクラブ↑な?」

 車はネオン輝く夜の東京を走り抜け、やがて真夜中過ぎにそこだけ人が並んでいる大きな建物の前にたどり着いた。

「STUDIO69? ココって……」

 陰キャの僕ですら知ってるパリピ・ウェーイ系の総本山、超有名な六本木のEDMクラブじゃないですか!
 奏に「一緒に行こうぜ!」とか誘われたことがあったけど、「僕には絶対ムリムリだ!」と言って断った記憶がある。
 だって、中では危ないお薬が売られていたり、トイレで普通にハメハメしているんでしょう? そういう半グレの巣窟だってネットで見たもん!
 てか、滑川さん自体が半グレ? もっというと本職みたいな?
 運転手さんも目つきが鋭すぎて一般人には見えないし。

「いざとなったら、時間停止して逃げるしか……」
「何か言ったか?」
「いえいえいえいえ! こんなに行列してて入れるのかなぁっと!」
「はっはっ! ついてくりゃ判るよ」

 入場口前で車を降り、滑川さんの後ろをついていく。
 セキュリティの立つエントランス前までくると、何を考えているのか?!
 滑川さんはいきなり自身より頭一つデカイ、セキュリティのイカついゴリマッチョ黒人の肩をおもいっきり殴りつけたのだ!

「Hey!」

 人喰いオーガみたいな形相で振り返る鬼マッチョ黒人。
 このままじゃ滑川さんが殺される! と思ったのも束の間。

「Yo! ナメナメチャ~ン! ゲンキー?」
「おー! げんきげんき!」

 と、腕相撲するみたいに手をがっしり握りあう二人。
 なんなのこの人たち、怖ぇ~よ!
 僕が童貞のままだったら、オシッコをちびっていたかもしんない。
 しかし、僕も以前までの陰キャ童貞大学生ではない。

「Hi! I‘m ユウスケ!」
「あ゛っ?」

 僕の挨拶に対して、殺気の籠った視線で返答する黒人男性。

「ハハハッ! 面白いな奴だな猪狩くん!」

 その後、滑川さんのツレだと分かってがっちりと握手。
 すごい握力で手が潰されそうになったけどね。

――クエスト3 ポイントを追加しました――

 そう、僕は事前にポケットの中の精液をつけてから握手をかましてやったのだ!
 チョットだけパンツの中を濡らしちゃったけど、これだけ大胆なことが出来るんだから、中に入っても大丈夫だろうと僕は高を括っていたのだけれど……。
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