エッチなデイリークエストをクリアしないと死んでしまうってどういうことですか?

浅葱さらみ

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第六章

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 昼になり、教室の外で待ち構えていた西都と共に学園長室へ向かう。
 職員室の隣にある学園長室前はあまり人は通らないけど、職員室を挟んで反対方向の先には食堂がある。
 今日は土曜で午前中しか授業は無いが、午後の部活動に参加する生徒たちで食堂前は賑わっていた。

「ここで脱いだら、バレるんじゃないか?」
「心配すんな。ここに監視カメラが無いのは確認済みだ」
「そうじゃなくて、廊下の先にいる生徒たちから丸見えじゃん」
「こっちのことなんか気にしてねぇよ」

 僕の心配を余所に、西都は廊下の窓側にある柱の出っ張りに身をひそめて着ているものを脱ぎはじめた。
 段取りとしては、僕がノックして扉が開いた瞬間に西都が透明になり、中へと突入するというものだ。
 僕がやるのはおとり役と、西都が学園長を捕まえた瞬間に中にいる連中が誰も外に逃げないように扉を塞ぐこと。
 一応、中に学園長がいるのは確認済みだと西都は言っている。

「おい、始めるぞ」
「わかった」

 振り返ると全裸になった西都。
 こいつチン毛も生えてないし、マジで小学生みたいな体つきしてんなぁ。

「おい!」
「あ、ごめんごめん」

 西都に急き立てられ僕は慌てて扉の取っ手を握ると、そのまま扉は内側に開いてしまった。

「やばっ! カギかかってないじゃん?!」
「どうしてたんだね?」
「え? いや……」

 すでに奥のデスクに座る学園長に見られてしまい、僕は扉を閉める訳にもいかず、そのまま中に入った。

「扉を閉めてくれないか?」
「あっ、すいません」

 後ろを振り返ると、すでに西都の姿は消えていた。
 多分、中に侵入したことを祈って、僕は扉をゆっくりと閉めた。

「こっちを向いたらどうなんだ猪狩君」

 はやく取り押さえろよ西都! と、心の中で叫びつつ、僕はゆっくりと振り返った。
 20畳程の学園長室は文芸部の部室と同じ広さ、手前には来客用のソファセットがあるだけで、特に奥のデスクまで障害になりそうなものは無いようだ。
 デスク後ろの低い棚の上にはトロフィやら置物が飾ってあり、透明になった西都が学園長を殴りつけるのにもってこいのモノばかり。

「どうしたんだね? こっちに来なさい」
「いえ、その……痛っ!」

 何故か後ろからふくらはぎを蹴られた感触が?
 透明になった西都の仕業なのだろうけど、扉の前を守るのが僕の役割じゃないの?

「大丈夫かね?」
「あっ、すいませんちょっと攣《つ》っただけで、もう大丈夫です」

 今度は背中を押される感触を覚え、僕は仕方なく前に進むことにする。
 たぶん西都の奴、何か罠が無いか心配しているって事なのだろうか?
 ソファセットを通り過ぎて、学園長が座るデスク前までやってきたところで、後ろから「うぎゃっ?!」という叫び声が聞こえてきた。

「え?」

 慌てて振り返ってみると、何もない空中に静止したままのまだらな黄色いペンキ……いやこれ、透明になった西都か?
 学園長はどうやって、あいつにペンキをぶっかけることが出来たんだ?!
 僕が考え込む間にも人型のまだらな黄色いシミはすぐさま扉の方へ移動していく。
 しかし、扉の方からはドアノブのガチャガチャ音だけがむなしく響いてきた。

「外側はカギが掛からないが、内側はロックする構造なのだよ」
「クソッたれ!」

 学園長の言葉を聞いて観念したのか、西都は透明人間を解除して姿を現わした。

「何で自分にはペンキが掛からなかった不思議に思っただろう猪狩君? 実は温度《サーモ》センサーとレーザー探知が連動しているんだ。普通の人間が通り抜けるときは両方が反応するが、透明人間が通り抜けようとするとサーモだけが反応し、防犯装置が作動する仕組みなのだよ」
「おい! 何で俺様を無視すんだ?!」
「ああ、姿を現わしていたのか西都君! 小さくすぎて気が付かなかったよ」
「なんだとこの野郎! おい猪狩! こうなったら二人がかりで絞めちまおうぜ!!」

 いやどう考えたって、こんな仕掛けをしているんだ。
 簡単にボコられやしないだろ?

「ホッホッホッ! 可愛い坊やの見た目に反して、口が悪いなぁ西都君。しかし、悪いけど君はもうおしまいなんだ」
「なんだとゴラァ!!」

 見た目だけじゃなくて中身も小物感がしてきた西都は、デスクを乗り越えて一直線に学園長に襲い掛かった。
 しかし、掴みかかる直前になって突然こちらにひっくり返って床に転げ落ちてきた。
 どうやら、学園長が右手に持っている先端がジリジリとスパークしているステッキにやられたようだ。

「ううぅぅ……」
「西都君は頭が切れるし行動力も有るが、すぐ頭に血が上るところが欠点だねぇ。それに協力者との信頼関係を軽視しすぎるところも問題だった」

 そう言い放った後に学園長が大きく手をパンパンと叩くと、デスク脇にある奥の扉が開いて、隣室からぞろぞろと何処かで見かけたような気がする女生徒たちが出てきた。

「お前ら、裏切りやがったな!」
「あっ! 風紀委員クラブの」

 そうだ彼女たちは三年生の風紀委員クラブ。
 西都たちに協力してライバルをおびき寄せようとしていた連中だ。
 あれ? でも彼女たちって寝取られ防止で西都とはセックスしてないんだよな?
 10人程の自称風紀委員たちは、西都を取り囲んで四方から手を伸ばした。

「おい! 何するつもりだ放せ! 来週の土曜になったらたっぷり相手してやるって言っただろ?」
「うーん、ごめんね総一郎君。なんかぁ~こうするしかないんだなぁ」
「そうそう、ここんところの君、学校にも来ないし! こっちに協力すると希望の大学に推薦貰えるって」
「だからぁ、私ら学園長側につくことにしたんだぁ」

 なるほど、三年生の彼女たちにたぶん退学などのペナルティと金銭や推薦というアメとムチを使って篭絡したということか?
 大勢の女生徒に囲まれててよく見えないけど、どうやら彼女たちは西都のチンチンをいじくってるみたいだ。

「キャハッ! 立った立った! 総ちゃんのオチンチンがオッキしたぁ!」
「あんっ! やめろよぅ……」

 傍から見ると、裸のショタが十人のJKお姉さんにもてあそばれてるみたいな?
 なんかおっぱい出して奴の顔に押し付けてる子もいるし、かなりうらやまけしからんぞ!
 やがて彼女たちは入れ代わり立ち代わり、西都の腰にまたがっていった。
 どうも、本気で射精させるまでセックスしているというより、順番に挿入だけしているみたいな感じ。

「そうか! ポイントを加算させずに所有権フラグだけ着けてるのか!」

 このまま10人を寝取れば、マイナス1000ポイント。
 確実に西都は退場になるし、学園長も最低550ポイントは獲得できる。
 しかも学園長の奴、両手に電動マッサージ機を持って待ち構えてるじゃないか!

「さぁ、終わった子からこっちに来なさい」
「ええぇぇ! もうちょっとだけ総一郎君で遊びたい~♡」
「しょうがない子たちだ。いいかね? くれぐれも中出しや口内射精してはいけないよ。彼でイってもダメだ」
「「「はーい」」」」

 能天気に返事を返す彼女たちは、西都を破滅させようとしていることに気づいているのだろうか?
 ほとんどの子たちは学園長のところに行き、機械的に電マで絶頂させられていく。
 残って、西都をおもちゃにしているのは3人程。
 もうこの時点で、たぶん西都はマイナスポイントで退場は確定的。 
 やっぱ、道具みたいに女の子を扱うのは良くないんだなと自戒しつつ、僕はポケットに手を突っ込んで事前に蜂須賀さんから預かった緊急通報装置のボタンを押した。

「雄介様!」
「早っ?!」

 ほとんど間を置かずに、扉を蹴破って現れたメイド隊の面々プラス鯨波と牡丹ちゃん。

「おやおや、思ったより遅かったじゃないかね」

 まぁ、学園長もこれくらいは想定内か。
 奴はニタニタと気色悪い笑みを漏らしながら電マをデスクに置き、受話器を掴んだ。

「おっと! それ以上近づくのは止めなさい」

 学園長に飛びかからんばかりだった蜂須賀さんが奴の言葉に従って、僕のところまで引き下がってくる。
 ん? さすがに学園長を拉致るのは不味いという判断なのだろうか?
 しかし、蜂須賀さんが引き下がったのは別の理由だった。
 学園長が何事か受話器に向かって囁いた後、またしても奥の扉が開いて新たに3人の女生徒が姿を現わした。

「真尋ちゃん?! 何やってんの……」

 隣室から現れたのは真尋ちゃんと氷室伊紫苑。
 そして、二人に両脇を抱えられ、ぐったりとしている体操着姿の歌乃ちゃん。
 その首筋には真尋ちゃんの右手に握られた鋭利な刃物が向けられていた……。
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