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非日常の始まり編
第36話 創世者
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「やっぱり……」
「予想通りだったか?」
「はい、なんとなく似てるので」
「時計というものは、魔術と大きな関わりがあるんだ」
「関わり?」
ソルボンは、目を細めながら語り始めた。
古来から人間と時間は切っても切り離せない関係にあった。日が昇り、人々はそれぞれの日課をこなす。やがて時間が経てば食事を摂り、1日を終える。僕たちにとっては何気ないものであっても、それは生きていく上でとても重要なキーとなっている。
そういった面では魔術も同じだ。今でこそ魔術というものは明るみに出ることは少ないが、人類が生きていく中で、魔術や魔術師は無くてはならない存在なのだ。それが善であっても、悪であってもだ。
「じゃあ、魔術師がこの世界を作ってきたってこと?」
「そう言っても過言では無いだろう。度々魔術師は人々を救い、人々を苦しめてきたのだ」
「それなのになんで人間は魔術師の存在を知らないの?」
「信じられないからだ。古来の人々は、魔術師やその不思議な力の存在を信仰していた。だが、ある日を境にそういった類のものは在ってはならないモノとされた。
「ある日って?」
ソルボンは、待ってましたと言わんばかりに、不敵な笑みを溢す。
「それはふたつある。まずは、魔女裁判だ。この歴史上最悪の虐殺事件により多くの人々に不信感が生まれた。そして、大魔女ラドヤーガによる大虐殺だ」
「ラドヤーガ……? 」
「彼女は天候や時間までも操れるほどの強大な魔力を持ち、自然災害や事故に見せかけて、多くの人々の命を奪ってきた史上最悪の魔女だ。彼女によってさらに不信感は広まり、人間と魔術師の関係は崩れ去ってしまった」
「でも、ラドヤーガ1人がいなくなれば関係は取り戻せるんじゃ……」
「ナイスアイデアだが、彼女に賛同する輩も少なからずいたのだ。その者たち全員を殺すには何百年とかかってしまう。それに……」
ソルボンは睨みつけるような鋭い視線を僕に向けた。
「彼女は今も生きている」
「そんな、まさか……」
「まさかと思いたくなるのも無理はないだろうが、これは事実だ」
僕は生唾を飲み込んだ。そんな最悪の魔女がまだ生きている。もし今、目の前に現れたら一体僕はどうしたら良いのだろうか。恐らく何も出来ずに死を待つしか無い。僕が生きている世界は、これほどまでに危機的状況にあるとはほんの一ヶ月前までは夢にも見なかった。
「ここまで話したなら次に話すべきは、力の弱体化だ。魔術はそれを信じる力が大きいか小さいかに比例して魔力の増減が変化するのだ。信じる力が少なくなれば、やがて魔力は衰退化する」
「そ、それなら悪い魔術師の力も弱くなるんじゃ……」
「いいや、残念ながらそうはいかない。君の言う悪い魔術師は、恐怖によってその力を増大させる。恐怖は生きていく中で必ずその者の思考に付き纏うもので、完全に消すことはできない」
それではこちらに勝ち目は無いじゃないかとも思ったが、これはある意味で弱点とも言える。
「とりあえず長話はこれくらいにして、明日の17時に出発だ。準備しておくんだぞ」
「僕学校があるんですけど……」
「心配は要らない。日帰りの予定だからな」
(日帰りか……)
僕は、折角なら観光ぐらいしたいと呑気な事を考えていた。
「予想通りだったか?」
「はい、なんとなく似てるので」
「時計というものは、魔術と大きな関わりがあるんだ」
「関わり?」
ソルボンは、目を細めながら語り始めた。
古来から人間と時間は切っても切り離せない関係にあった。日が昇り、人々はそれぞれの日課をこなす。やがて時間が経てば食事を摂り、1日を終える。僕たちにとっては何気ないものであっても、それは生きていく上でとても重要なキーとなっている。
そういった面では魔術も同じだ。今でこそ魔術というものは明るみに出ることは少ないが、人類が生きていく中で、魔術や魔術師は無くてはならない存在なのだ。それが善であっても、悪であってもだ。
「じゃあ、魔術師がこの世界を作ってきたってこと?」
「そう言っても過言では無いだろう。度々魔術師は人々を救い、人々を苦しめてきたのだ」
「それなのになんで人間は魔術師の存在を知らないの?」
「信じられないからだ。古来の人々は、魔術師やその不思議な力の存在を信仰していた。だが、ある日を境にそういった類のものは在ってはならないモノとされた。
「ある日って?」
ソルボンは、待ってましたと言わんばかりに、不敵な笑みを溢す。
「それはふたつある。まずは、魔女裁判だ。この歴史上最悪の虐殺事件により多くの人々に不信感が生まれた。そして、大魔女ラドヤーガによる大虐殺だ」
「ラドヤーガ……? 」
「彼女は天候や時間までも操れるほどの強大な魔力を持ち、自然災害や事故に見せかけて、多くの人々の命を奪ってきた史上最悪の魔女だ。彼女によってさらに不信感は広まり、人間と魔術師の関係は崩れ去ってしまった」
「でも、ラドヤーガ1人がいなくなれば関係は取り戻せるんじゃ……」
「ナイスアイデアだが、彼女に賛同する輩も少なからずいたのだ。その者たち全員を殺すには何百年とかかってしまう。それに……」
ソルボンは睨みつけるような鋭い視線を僕に向けた。
「彼女は今も生きている」
「そんな、まさか……」
「まさかと思いたくなるのも無理はないだろうが、これは事実だ」
僕は生唾を飲み込んだ。そんな最悪の魔女がまだ生きている。もし今、目の前に現れたら一体僕はどうしたら良いのだろうか。恐らく何も出来ずに死を待つしか無い。僕が生きている世界は、これほどまでに危機的状況にあるとはほんの一ヶ月前までは夢にも見なかった。
「ここまで話したなら次に話すべきは、力の弱体化だ。魔術はそれを信じる力が大きいか小さいかに比例して魔力の増減が変化するのだ。信じる力が少なくなれば、やがて魔力は衰退化する」
「そ、それなら悪い魔術師の力も弱くなるんじゃ……」
「いいや、残念ながらそうはいかない。君の言う悪い魔術師は、恐怖によってその力を増大させる。恐怖は生きていく中で必ずその者の思考に付き纏うもので、完全に消すことはできない」
それではこちらに勝ち目は無いじゃないかとも思ったが、これはある意味で弱点とも言える。
「とりあえず長話はこれくらいにして、明日の17時に出発だ。準備しておくんだぞ」
「僕学校があるんですけど……」
「心配は要らない。日帰りの予定だからな」
(日帰りか……)
僕は、折角なら観光ぐらいしたいと呑気な事を考えていた。
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