9 / 10
第8話
しおりを挟む
ソワの話を聞いたミユキは耳を疑った。
「でも、公園に居たならサクラを見ているはずだよね? 」
「もしかしたらだけど、サクラの事件に関わってるのかも」
「まさか……」
イシダ先生はあの日、森の近くにいた。しかし、小学生1人だけの証言は証拠としてはかなり薄い。警察に相談したところでおそらく何も変わらないだろう。事件解決の一番の近道は、本人の自白だ。
「ソワ、ちょっと今日の放課後付き合ってくれる? 」
「良いけど……」
放課後、皆が下校したところで、ミユキは職員室へと行った。
「イシダ先生。聞きたいことがあるんで すけど」
「お、ミユキ。プリントのことか? 」
イシダ先生は立ち上がり、2人で教室に向かう。
「ソワも居たのか。優しいなあ」
「先生、ここなんですけど。」
ミユキは警戒されないように、まずはプリントの話をした。
「わかりました。ありがとうございます」
「そうか、頑張ってな」
「もう一つ聞きたいことがあります」
ミユキは、頭を撫でようとしたイシダ先生の手を避け、本題に入った。
「なんだ? 」
「サクラのことなんですが」
イシダ先生の顔が曇った。
「ああ、仲良かったもんな」
「ソワがあの日、公園に居る先生を見たと言っているんですが」
「何だと?! 」
明らかに動揺を見せた先生に、ソワが更に追い討ちをかける。
「先生はあそこで何をしていたんですか? サクラに会ったんじゃないですか? 」
「会っていない! 」
「じゃあ、公園で何をしていたんですか? 」
「さ、散歩をしていた」
「どうして学校も無いあの日に、しかも、先生の家から遠いあの場所で散歩を? 」
「えっと、それはだな……」
ここまで問い詰めても、まだ口を割らなかった。
「先生、サクラの靴を最初に見つけたのは、あたしなんです」
「ああ、聞いているよ。赤い靴だったか……」
ミユキが尋問しようとした時、ソワが泣き出してしまった。
「その靴はお母さんに貰ったばかりだったんですよ?! それなのに、あんなことをするなんて! 」
「俺は知らない! 本当に見ていないんだ! 」
その姿を見てミユキは確信した。
(こいつが、サクラを襲ったんだ)
「思い当たる事があるなら、自首してください」
ミユキはそう言って、小型のカメラを見せつけた。
「そ、それは! 」
「女子トイレにありました。その反応をしたってことは先生の物ですよね? 」
「返せ! 」
カメラを奪おうとしたその時、教室の扉が開いた。
「何してるんだ! 」
イシダ先生を取り押さえたのは、見回りをしていた用務員さんだった。
「全部聞いたぞ! お前に教師の自覚はないのか! 」
「くっ……」
暴れていたイシダ先生は、用務員さんの言葉を聞き、諦めたようだった。後にサイレンの音が鳴り、イシダ先生は連行されて行った。
去っていくパトカーを見ながら、ソワが隣で呟いた。
「これで一安心だね」
「いや、盗撮の犯人を捕まえたかったんじゃない」
「でもきっと、サクラの事件も認めるよ」
「認めないでしょ」
「え? どういうこと? 」
「だって、サクラを殺したのはあんたじゃん」
ソワは驚いてミユキの顔を見る。ミユキの目は赤く、今にも涙が溢れそうだった。
「急に何言ってるの?! 」
「もう良いよ、全部知ってるから」
「あたしが殺したっていう証拠でもあんの?! 」
「靴」
「靴……? 」
「赤い靴っていうのは居なくなった時に言われてたから知ってて当たり前だけど、新品の靴を履いたのはあの日が初めて。それを知ってるのはサクラの両親とあたしだけ。それに、たまたまあんたが公園に居たって言うのもおかしいでしょ」
そこまで言ったところでソワは不気味に笑い出した。
「あははははははははははは! 」
「何なの、あんた」
「だって、あの子が邪魔だったんだもん」
「は……? 」
「あたしがずっと1人だったのを助けてくれたのはミユキでしょ? だから、あたしがミユキの隣に居ないのなんておかしい」
「それだけで、殺したの……? 」
「ミユキの隣に居るべきなのはあたしなのに、あいつはずっとあんたの側を離れようともしないし、ミユキもあたしよりあいつを選んだ。だから、あの子が居なくなればあたしが親友になれる。殺すには十分な理由でしょ? 」
怒りと悔しさが溢れ出したミユキは、ポケットから死神のペンを取り出し、ソワの額に当てた。
ソワは死んではいない。魂が抜かれただけで、辛うじて意識はあった。ミユキは、倒れ込んだソワの髪を引っ張り、ペンを喉元に当てがう。
「生きたい? 」
「あんたに、出来んの? 」
「残念ね」
「やめっ……」
ミユキは立ち上がり、赤黒い血溜まりをまたいでから学校を後にした。
「でも、公園に居たならサクラを見ているはずだよね? 」
「もしかしたらだけど、サクラの事件に関わってるのかも」
「まさか……」
イシダ先生はあの日、森の近くにいた。しかし、小学生1人だけの証言は証拠としてはかなり薄い。警察に相談したところでおそらく何も変わらないだろう。事件解決の一番の近道は、本人の自白だ。
「ソワ、ちょっと今日の放課後付き合ってくれる? 」
「良いけど……」
放課後、皆が下校したところで、ミユキは職員室へと行った。
「イシダ先生。聞きたいことがあるんで すけど」
「お、ミユキ。プリントのことか? 」
イシダ先生は立ち上がり、2人で教室に向かう。
「ソワも居たのか。優しいなあ」
「先生、ここなんですけど。」
ミユキは警戒されないように、まずはプリントの話をした。
「わかりました。ありがとうございます」
「そうか、頑張ってな」
「もう一つ聞きたいことがあります」
ミユキは、頭を撫でようとしたイシダ先生の手を避け、本題に入った。
「なんだ? 」
「サクラのことなんですが」
イシダ先生の顔が曇った。
「ああ、仲良かったもんな」
「ソワがあの日、公園に居る先生を見たと言っているんですが」
「何だと?! 」
明らかに動揺を見せた先生に、ソワが更に追い討ちをかける。
「先生はあそこで何をしていたんですか? サクラに会ったんじゃないですか? 」
「会っていない! 」
「じゃあ、公園で何をしていたんですか? 」
「さ、散歩をしていた」
「どうして学校も無いあの日に、しかも、先生の家から遠いあの場所で散歩を? 」
「えっと、それはだな……」
ここまで問い詰めても、まだ口を割らなかった。
「先生、サクラの靴を最初に見つけたのは、あたしなんです」
「ああ、聞いているよ。赤い靴だったか……」
ミユキが尋問しようとした時、ソワが泣き出してしまった。
「その靴はお母さんに貰ったばかりだったんですよ?! それなのに、あんなことをするなんて! 」
「俺は知らない! 本当に見ていないんだ! 」
その姿を見てミユキは確信した。
(こいつが、サクラを襲ったんだ)
「思い当たる事があるなら、自首してください」
ミユキはそう言って、小型のカメラを見せつけた。
「そ、それは! 」
「女子トイレにありました。その反応をしたってことは先生の物ですよね? 」
「返せ! 」
カメラを奪おうとしたその時、教室の扉が開いた。
「何してるんだ! 」
イシダ先生を取り押さえたのは、見回りをしていた用務員さんだった。
「全部聞いたぞ! お前に教師の自覚はないのか! 」
「くっ……」
暴れていたイシダ先生は、用務員さんの言葉を聞き、諦めたようだった。後にサイレンの音が鳴り、イシダ先生は連行されて行った。
去っていくパトカーを見ながら、ソワが隣で呟いた。
「これで一安心だね」
「いや、盗撮の犯人を捕まえたかったんじゃない」
「でもきっと、サクラの事件も認めるよ」
「認めないでしょ」
「え? どういうこと? 」
「だって、サクラを殺したのはあんたじゃん」
ソワは驚いてミユキの顔を見る。ミユキの目は赤く、今にも涙が溢れそうだった。
「急に何言ってるの?! 」
「もう良いよ、全部知ってるから」
「あたしが殺したっていう証拠でもあんの?! 」
「靴」
「靴……? 」
「赤い靴っていうのは居なくなった時に言われてたから知ってて当たり前だけど、新品の靴を履いたのはあの日が初めて。それを知ってるのはサクラの両親とあたしだけ。それに、たまたまあんたが公園に居たって言うのもおかしいでしょ」
そこまで言ったところでソワは不気味に笑い出した。
「あははははははははははは! 」
「何なの、あんた」
「だって、あの子が邪魔だったんだもん」
「は……? 」
「あたしがずっと1人だったのを助けてくれたのはミユキでしょ? だから、あたしがミユキの隣に居ないのなんておかしい」
「それだけで、殺したの……? 」
「ミユキの隣に居るべきなのはあたしなのに、あいつはずっとあんたの側を離れようともしないし、ミユキもあたしよりあいつを選んだ。だから、あの子が居なくなればあたしが親友になれる。殺すには十分な理由でしょ? 」
怒りと悔しさが溢れ出したミユキは、ポケットから死神のペンを取り出し、ソワの額に当てた。
ソワは死んではいない。魂が抜かれただけで、辛うじて意識はあった。ミユキは、倒れ込んだソワの髪を引っ張り、ペンを喉元に当てがう。
「生きたい? 」
「あんたに、出来んの? 」
「残念ね」
「やめっ……」
ミユキは立ち上がり、赤黒い血溜まりをまたいでから学校を後にした。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
8
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる