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第5話 デート
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「カリン様これを」
「おふたりとも是非こちらへ」
「カリン様!」
町は突然の巡邏に大騒ぎだった。相変わらずの人気を誇るカリンだったが、いつも通りツンとしている。
「こんなに貰っちゃいました」
「そう」
「一旦馬車に戻ります」
「そうね。私も行くわ」
領民からの手土産を馬車に積んだ僕たちは、初の外食を取ることにした。
「良い店知ってる?」
「ええ、先ほど領民の方に聞きました」
そこは毎日行列ができるほどの名店らしく、予約を取るのにも一苦労だそう。
「カリン様! エンタ様も!」
店主は大層驚いていたが、快く個室を用意してくれた。店内はとても綺麗で賑わっており、料理の良い匂いが鼻を刺激した。
「何だか嬉しそうね」
「はい、とても楽しいです」
「浮かれるのも良いけど、目的は巡邏よ」
外ではいつも厳しいんだよな……。
「お待たせ致しました」
そんなツンツンの彼女だったが、料理が到着すると今にも食いつきそうなほど目をギラギラと輝かせていた。今までこんな食事は食べたことがないのだろう。それは、僕も同じだったが。
「それじゃあ、頂きましょう」
「はい」
鶏肉の出汁が効いたスープと分厚いステーキ。僕たちは無言のまま頬張り、あっという間に完食した。
「美味しかったわね……」
「はい、とても!」
完食して間も無く店主が入ってきた。
「こちらよろしければ」
「頼んでないわ」
「サービスです。1番人気なのでひとつしかできませんでしたが……」
「そう、ありがとう」
テーブルに置かれたパフェは、カリンの顔が隠れるほどの大きさがあった。
「僕は大丈夫なので食べてください」
「え、良いの……?」
「せっかくなので」
「そう、それじゃあ……」
彼女はスプーンでひと口分掬うと、僕の顔の前に差し出した。
「え……こ、これは」
「毒味よ、毒味!」
「は、はい!」
所謂、アーンをしてもらって食べたパフェは、アイスの甘さと苺の適度な酸っぱさがマッチして最高に美味しかった。
「とても美味しいです」
「そ、そう」
耳が赤くなっている彼女を見て、心底個室で良かったと感じた。
パフェもあっという間に完食してしまった僕たち(ほとんどカリン)は馬車に揺られていた。
「美味しかったわね」
「そうですね」
「また行きたいわね」
「そう、ですね……」
「なに? 嫌なの?」
「いえ……」
「じゃあなに?」
「ちょっとくっつき過ぎじゃ……」
僕の腕にカリンの腕が絡み、手はしっかりと握られている。先ほどまでの態度とのギャップに些か混乱していた。
「嫌なら突き放しても良いわよ」
「いえ、そんなことは」
「それは私が魔女だから?」
「そんなんじゃないです!」
思わず大きな声を出してしまった。
カリンも驚いていたが、すぐにニヤニヤし始めた。
「どうしてくっ付いちゃダメなの?」
「そ、それは」
ちょうどその時、馬車が到着した。
僕はこの機を逃すまいと、飛び出すように馬車から降りた。
「まだ話は終わってないわよ」
「勘弁してください!」
彼女は寝室まで追いかけてきた。
僕が彼女を思うことはあってはならない。何故なら彼女は魔女で、僕は人間なのだから。
「早く答え無いと――って」
「「うわあ!」」
寝室の扉越しに押し問答をしているうちに扉が外れ、彼女が僕に覆い被さる形で倒れ込んだ。
「す、すみません」
「いや私が悪いのよ……」
この状況はかなりヤバい。彼女の紅潮した頬に心拍数が上昇し続ける。
「はっ! 重いよね、ごめんごめん」
「い、いえ……」
非常に気まずい。
「おふたりとも是非こちらへ」
「カリン様!」
町は突然の巡邏に大騒ぎだった。相変わらずの人気を誇るカリンだったが、いつも通りツンとしている。
「こんなに貰っちゃいました」
「そう」
「一旦馬車に戻ります」
「そうね。私も行くわ」
領民からの手土産を馬車に積んだ僕たちは、初の外食を取ることにした。
「良い店知ってる?」
「ええ、先ほど領民の方に聞きました」
そこは毎日行列ができるほどの名店らしく、予約を取るのにも一苦労だそう。
「カリン様! エンタ様も!」
店主は大層驚いていたが、快く個室を用意してくれた。店内はとても綺麗で賑わっており、料理の良い匂いが鼻を刺激した。
「何だか嬉しそうね」
「はい、とても楽しいです」
「浮かれるのも良いけど、目的は巡邏よ」
外ではいつも厳しいんだよな……。
「お待たせ致しました」
そんなツンツンの彼女だったが、料理が到着すると今にも食いつきそうなほど目をギラギラと輝かせていた。今までこんな食事は食べたことがないのだろう。それは、僕も同じだったが。
「それじゃあ、頂きましょう」
「はい」
鶏肉の出汁が効いたスープと分厚いステーキ。僕たちは無言のまま頬張り、あっという間に完食した。
「美味しかったわね……」
「はい、とても!」
完食して間も無く店主が入ってきた。
「こちらよろしければ」
「頼んでないわ」
「サービスです。1番人気なのでひとつしかできませんでしたが……」
「そう、ありがとう」
テーブルに置かれたパフェは、カリンの顔が隠れるほどの大きさがあった。
「僕は大丈夫なので食べてください」
「え、良いの……?」
「せっかくなので」
「そう、それじゃあ……」
彼女はスプーンでひと口分掬うと、僕の顔の前に差し出した。
「え……こ、これは」
「毒味よ、毒味!」
「は、はい!」
所謂、アーンをしてもらって食べたパフェは、アイスの甘さと苺の適度な酸っぱさがマッチして最高に美味しかった。
「とても美味しいです」
「そ、そう」
耳が赤くなっている彼女を見て、心底個室で良かったと感じた。
パフェもあっという間に完食してしまった僕たち(ほとんどカリン)は馬車に揺られていた。
「美味しかったわね」
「そうですね」
「また行きたいわね」
「そう、ですね……」
「なに? 嫌なの?」
「いえ……」
「じゃあなに?」
「ちょっとくっつき過ぎじゃ……」
僕の腕にカリンの腕が絡み、手はしっかりと握られている。先ほどまでの態度とのギャップに些か混乱していた。
「嫌なら突き放しても良いわよ」
「いえ、そんなことは」
「それは私が魔女だから?」
「そんなんじゃないです!」
思わず大きな声を出してしまった。
カリンも驚いていたが、すぐにニヤニヤし始めた。
「どうしてくっ付いちゃダメなの?」
「そ、それは」
ちょうどその時、馬車が到着した。
僕はこの機を逃すまいと、飛び出すように馬車から降りた。
「まだ話は終わってないわよ」
「勘弁してください!」
彼女は寝室まで追いかけてきた。
僕が彼女を思うことはあってはならない。何故なら彼女は魔女で、僕は人間なのだから。
「早く答え無いと――って」
「「うわあ!」」
寝室の扉越しに押し問答をしているうちに扉が外れ、彼女が僕に覆い被さる形で倒れ込んだ。
「す、すみません」
「いや私が悪いのよ……」
この状況はかなりヤバい。彼女の紅潮した頬に心拍数が上昇し続ける。
「はっ! 重いよね、ごめんごめん」
「い、いえ……」
非常に気まずい。
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