9 / 14
第9話 逆転
しおりを挟む
それからしばらくはカリンの看病をする毎日だった。彼女の容体も快方に向かっていたが、まだ出歩けるほどではない。しかし……。
「今日はなに?」
「あ、まだ起き上がっちゃダメですって!」
「もう大丈夫よ。寝てばっかりいたってダメでしょ」
彼女はベッド生活に飽きたようで、キッチンまで出てきてしまった。
「それはそうかも知れませんけど、ジルさんからあと一週間は安静にしてと言われたでしょう?」
「あんなジジイの言うことなんて聞かなくてもいいわ」
「よくありません!」
僕が一喝すると、悲しそうな表情をしてトボトボと寝室に帰って行った
ここ最近は立場が逆転しているように思う。他の人間が見たら驚愕する風景だろうが、彼女は案外素直に受け入れている。
「はい、出来ましたよ」
「あーん、は?」
「ええ?!」
素直なのは良い事だが、その代わり甘え方もストレートになっていた。
「なによ」
「もう歩けるくらいなんですから、そろそろ自分で食べられるんじゃ……?」
「いいえ、無理です」
頑固さは変わらない。
「分かりましたよ。はい、あーん」
「あーん」
牛丼をもぐもぐしながら僕を見つめた彼女はとてもご機嫌だ。
そんな時、玄関から声がした。
「御免くださーい」
「はーい、ただいま!」
タイミングが悪いと怒る彼女を置いて玄関に向かった。
「やあ、元気か?」
「に、兄さん?!」
「そんなに驚くかね」
声の主は兄のタッグだった。頭をポリポリ掻きながら苦笑いを浮かべる。
「今日はなんの用です?」
「そうそう、今日はカリン殿に話があってね」
「カリン様に……?」
あの怪我といい、このタイミングでの訪問は何故だかとても嫌な予感がする。
「最近、大きな怪我をしてしまったので面会はできないんです」
「それは知っている」
やはり反乱軍が関わっているのだろうか。
僕は実の兄に警戒心を持っていたし、タッグもそれに気がついていた。
「言わんとすることは分かるが、大事な用なんだ。通してくれ」
「でもっ……!」
「良いのよ」
カリンが布団を引き摺りながら玄関まで出てきた。
「理解があるのは嬉しいな」
「それで、私に何の用です」
「今日は他でも無い、お願いがあって参上した」
「お願い……?」
兄はなにを言おうとしているのか、カリンはそのお願いにどう答えるのか。僕は2人の様子をただただ見守っていた。
「テュールフ領に反乱軍を受け入れて欲しい!」
地べたに額をつける程土下座をしている兄からは、その言葉が嘘だとは感じ取れない。僕は生唾を飲み込んで彼女の返答を待った。
――――――――――――――――――――――――――――――
お読み頂きありがとうございました!
この作品が面白い、続きが読みたいと感じて頂けましたら、お気に入り登録とエールよろしくお願いします。
それでは、またお会いしましょう。
「今日はなに?」
「あ、まだ起き上がっちゃダメですって!」
「もう大丈夫よ。寝てばっかりいたってダメでしょ」
彼女はベッド生活に飽きたようで、キッチンまで出てきてしまった。
「それはそうかも知れませんけど、ジルさんからあと一週間は安静にしてと言われたでしょう?」
「あんなジジイの言うことなんて聞かなくてもいいわ」
「よくありません!」
僕が一喝すると、悲しそうな表情をしてトボトボと寝室に帰って行った
ここ最近は立場が逆転しているように思う。他の人間が見たら驚愕する風景だろうが、彼女は案外素直に受け入れている。
「はい、出来ましたよ」
「あーん、は?」
「ええ?!」
素直なのは良い事だが、その代わり甘え方もストレートになっていた。
「なによ」
「もう歩けるくらいなんですから、そろそろ自分で食べられるんじゃ……?」
「いいえ、無理です」
頑固さは変わらない。
「分かりましたよ。はい、あーん」
「あーん」
牛丼をもぐもぐしながら僕を見つめた彼女はとてもご機嫌だ。
そんな時、玄関から声がした。
「御免くださーい」
「はーい、ただいま!」
タイミングが悪いと怒る彼女を置いて玄関に向かった。
「やあ、元気か?」
「に、兄さん?!」
「そんなに驚くかね」
声の主は兄のタッグだった。頭をポリポリ掻きながら苦笑いを浮かべる。
「今日はなんの用です?」
「そうそう、今日はカリン殿に話があってね」
「カリン様に……?」
あの怪我といい、このタイミングでの訪問は何故だかとても嫌な予感がする。
「最近、大きな怪我をしてしまったので面会はできないんです」
「それは知っている」
やはり反乱軍が関わっているのだろうか。
僕は実の兄に警戒心を持っていたし、タッグもそれに気がついていた。
「言わんとすることは分かるが、大事な用なんだ。通してくれ」
「でもっ……!」
「良いのよ」
カリンが布団を引き摺りながら玄関まで出てきた。
「理解があるのは嬉しいな」
「それで、私に何の用です」
「今日は他でも無い、お願いがあって参上した」
「お願い……?」
兄はなにを言おうとしているのか、カリンはそのお願いにどう答えるのか。僕は2人の様子をただただ見守っていた。
「テュールフ領に反乱軍を受け入れて欲しい!」
地べたに額をつける程土下座をしている兄からは、その言葉が嘘だとは感じ取れない。僕は生唾を飲み込んで彼女の返答を待った。
――――――――――――――――――――――――――――――
お読み頂きありがとうございました!
この作品が面白い、続きが読みたいと感じて頂けましたら、お気に入り登録とエールよろしくお願いします。
それでは、またお会いしましょう。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
8
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる