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第1章 オームの大災害
第2話 新たな人生
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「生まれましたよ! 元気な男の子です」
場所はビスコール大陸の東側インヒター王国。僕は王国の更に東側に位置する港町オーム領で、漁師で愛妻家の父ジョイト・クラストと美人で優しい母サランの間に生を受け、バルトと名付けられた。
いくら記憶を残したままの転生とはいえ、残念ながら物心つくまでは物事の認識があやふやで度々両親を困らせていた。そんな普通以上に暴れん坊だった幼少期から数年が経過し、ようやく今日10歳の誕生日を迎えた。
「おめでとうバルト」
「おめでとう」
「ありがとう、お父さんお母さん!」
僕の家にしては豪華な夕食だ。目の前に盛られた刺身のケーキを頬張りながら視線を横に移す。家族団欒の食卓とは別にひとり黙々と料理を食べすすめているのはこの家の長男であり、僕より3つ歳上の兄ボルトだ。
「ボルト兄さんもこっちで一緒に――」
「うるさいな!」
彼は今、思春期真っ盛りであり俗に云う反抗期である。
そんな兄を父は幾度も叱ろうとしたが、その度に僕が止めていた。なぜかというと、普段は温厚な父だが一度頭に血が昇ってしまうと口より手が先に出るという、短期な父だったからだ。僕は前世の記憶から「手を上げたところで変わらない」ということを知っている。多少イライラするのは分かるが暴力に訴えたとて意味はない。
今回もまた、悪態をつく場ボルトにイライラする父を止める。
「父さん、いいんだ。実は兄さんにプレゼント貰ったからさ」
「おまっ……言うなって言っただろう!」
「なんだそうだったのか。ちゃんと兄貴らしいことしてるんじゃないか」
ああ、本当はとても優しくて良い兄貴なのだ。
子供は親の前で格好をつけたがる時期がある。世の大人は何故かそれを忘れ、成長の杭を打ち続けてしまう。それでは子育てとは言えないだろう。
「明日は教会に行かなくちゃね」
「バルトもついに神託の儀を受けるんだなあ」
「うん! とっても楽しみ」
この世界には剣や魔法の才を表すステータスというものがある。それを可視化できるようにるための儀式が神託の儀なのだ。
あと、もうひとつ忘れてはならないのが――。
「父さんと母さんはスキルが無いが、ボルトは『調教師』のスキルを持っている。お前にもきっと良いスキルが現れるさ」
スキルは必ず現れるステータスとは別の、いわゆる「神からのギフト」のようなもの。それは人によっては大きな力を得たり、はたまたなんの意味も持たないスキルなんかも存在する。
「どうだろう。僕、普通だからな」
「はっはっはっ、お前は普通じゃないくらい普通だもんな」
誉めているのか貶しているのか。実の子にもっと優しくあるべきじゃないか?
「兄さんは行かないの?」
「……ああ。俺は忙しいんだ」
「じゃあ報告楽しみにしててよ!」
「ああ。気をつけてな」
翌日、僕と父と母は兄ボルトを残して教会へ向かった。歩くには遠いけど馬車だと近いという田舎あるあるな苦渋の選択を迫られつつ、結局「疲れるから」という母のひと言で乗合馬車に決定された。この世界でも母は強しである。
馬車には僕と同い年くらいの少年少女も乗っており、皆、父や母などと一緒に来ていたようだったが、その中にひとりだけ親も友達も居ないような白髪の少女が俯き加減に揺られていた。ちらりと見えた透き通るような空色の瞳がグッと胸を刺すような気分にさせる。
「ねえ、父さん。あの子って」
「あの娘は竜人族といってな、ドラゴンの子なんだよ」
ドラゴンか。いかにもな感じだけど、どうして父は子んなにも怪訝な顔をするのだろうか。
この世界の歴史はなんとなくだが分かってきた。だからこそドラゴンの子が嫌われる理由が分からない。
答えは出ないまま僕たちは教会に到着した。
場所はビスコール大陸の東側インヒター王国。僕は王国の更に東側に位置する港町オーム領で、漁師で愛妻家の父ジョイト・クラストと美人で優しい母サランの間に生を受け、バルトと名付けられた。
いくら記憶を残したままの転生とはいえ、残念ながら物心つくまでは物事の認識があやふやで度々両親を困らせていた。そんな普通以上に暴れん坊だった幼少期から数年が経過し、ようやく今日10歳の誕生日を迎えた。
「おめでとうバルト」
「おめでとう」
「ありがとう、お父さんお母さん!」
僕の家にしては豪華な夕食だ。目の前に盛られた刺身のケーキを頬張りながら視線を横に移す。家族団欒の食卓とは別にひとり黙々と料理を食べすすめているのはこの家の長男であり、僕より3つ歳上の兄ボルトだ。
「ボルト兄さんもこっちで一緒に――」
「うるさいな!」
彼は今、思春期真っ盛りであり俗に云う反抗期である。
そんな兄を父は幾度も叱ろうとしたが、その度に僕が止めていた。なぜかというと、普段は温厚な父だが一度頭に血が昇ってしまうと口より手が先に出るという、短期な父だったからだ。僕は前世の記憶から「手を上げたところで変わらない」ということを知っている。多少イライラするのは分かるが暴力に訴えたとて意味はない。
今回もまた、悪態をつく場ボルトにイライラする父を止める。
「父さん、いいんだ。実は兄さんにプレゼント貰ったからさ」
「おまっ……言うなって言っただろう!」
「なんだそうだったのか。ちゃんと兄貴らしいことしてるんじゃないか」
ああ、本当はとても優しくて良い兄貴なのだ。
子供は親の前で格好をつけたがる時期がある。世の大人は何故かそれを忘れ、成長の杭を打ち続けてしまう。それでは子育てとは言えないだろう。
「明日は教会に行かなくちゃね」
「バルトもついに神託の儀を受けるんだなあ」
「うん! とっても楽しみ」
この世界には剣や魔法の才を表すステータスというものがある。それを可視化できるようにるための儀式が神託の儀なのだ。
あと、もうひとつ忘れてはならないのが――。
「父さんと母さんはスキルが無いが、ボルトは『調教師』のスキルを持っている。お前にもきっと良いスキルが現れるさ」
スキルは必ず現れるステータスとは別の、いわゆる「神からのギフト」のようなもの。それは人によっては大きな力を得たり、はたまたなんの意味も持たないスキルなんかも存在する。
「どうだろう。僕、普通だからな」
「はっはっはっ、お前は普通じゃないくらい普通だもんな」
誉めているのか貶しているのか。実の子にもっと優しくあるべきじゃないか?
「兄さんは行かないの?」
「……ああ。俺は忙しいんだ」
「じゃあ報告楽しみにしててよ!」
「ああ。気をつけてな」
翌日、僕と父と母は兄ボルトを残して教会へ向かった。歩くには遠いけど馬車だと近いという田舎あるあるな苦渋の選択を迫られつつ、結局「疲れるから」という母のひと言で乗合馬車に決定された。この世界でも母は強しである。
馬車には僕と同い年くらいの少年少女も乗っており、皆、父や母などと一緒に来ていたようだったが、その中にひとりだけ親も友達も居ないような白髪の少女が俯き加減に揺られていた。ちらりと見えた透き通るような空色の瞳がグッと胸を刺すような気分にさせる。
「ねえ、父さん。あの子って」
「あの娘は竜人族といってな、ドラゴンの子なんだよ」
ドラゴンか。いかにもな感じだけど、どうして父は子んなにも怪訝な顔をするのだろうか。
この世界の歴史はなんとなくだが分かってきた。だからこそドラゴンの子が嫌われる理由が分からない。
答えは出ないまま僕たちは教会に到着した。
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