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第1章 オームの大災害
第10話 熟考せよ
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「これより国王陛下への謁見を執り行う」
場所は王都、王宮宮殿内。周りには名だたる貴族たちが押しかけ、珍しい物を見るかのようにこちらの様子を窺っている。
何だかソワソワするがそれも無理はない。なにせ平民が公式の場で国王へ謁見するのは数十年ぶりらしいからな。
「今回は賞与式も兼ねておりますので、まずはそちらから……近衛騎士団長アラン・ヴューズベルトは前へ」
「はっ」
長身の美男子、いやイケオジか?
清潔感があり過ぎて見た目だけでは年齢が量れない。
あの時は暗かったし鎧を着ていたから分からなかったが、ガタイが半端なくでかい。それに加えてなんだあの重そうな剣は。本来、近衛騎士団は戦闘要員ではなくあくまでも王家の方々を護衛、守衛する役目のはず。なので大抵の騎士は取り回しのしやすい短剣や、長くても1メートルくらいの剣を好んで使うのだ。
そんなことを考えていると賞与の授与が始まった。
彼の功績は「国民被害の事前阻止」だそうだ。僕の知っている事実とは異なるけどこの方が都合が良いのだろう。「王女誘拐犯の制圧」なんてことになったら周りの貴族連中から何を言われるか分かったものじゃないからな。
「続いて、国王陛下呼び出しの謁見を執り行う」
ついに僕の出番がきた。緊張で胸が弾け飛んでしまいそうだ。
「オーム領、領主ピグレット・オーム伯爵並びにバルト・クラストは前へ」
領主様も来ていたのか。
作法のサの字も知らない僕にとっては、領主様の真似をしておけば良いのだからありがたい。
「は、はい!」
あれ、返事をしたのは僕だけ……?
列を離れ、国王の前に立つ。前にも横にも領主様の姿は見当たらないし、この場にいる気配すらない。
僕は慌てて先程賞与を受けた近衛騎士団長のように片膝をついて頭を下げた。これで合っているのかは分からないが、何となく貴族連中がざわつくのを感じる。
「オーム伯爵はいかにおられるか!」
返事は無い。
「謁見中失礼致します。先程連絡が入り、オーム伯爵は腹痛が治らず欠席したいと――」
「……あやつめ、またサボりおって」
どうやら常習犯らしい。
改めて僕の名だけが呼ばれ、謁見が始まった。
「この者は王宮専用馬車が盗賊団に狙われていることを察し、10歳という若さで立ち向かった勇敢なる者である」
ああ、なるほどそういうテイね。
「幸いにも馬車に乗員はなかったが、警備隊が到着するまでの間、王国の大切な馬車とその御者を守ってくれた」
「バルト・クラスト、面をあげよ」
「は、はいっ!」
玉座にどっしりと腰掛け、白髪の頭に乗った王冠を見るといかにも王様といった雰囲気だ。いや、王様なんだけどさ。
「この度の功績、誠に見事であった。何か欲しいものは無いか?」
「いえ、僕……私は為すべきことを成したまでですので。国王陛下にお会い出来ただけで光栄です」
(あれ、なんでこんなこと言ったんだろう)
考えるまでもなく言葉は継いで出ていた。でもきっとこれが正しい選択なのだと思う。
「そうか。ではこれにて謁見を終了とする」
緊張したけどあっという間に終わったな。
王都に来るまでの時間の方が圧倒的に長かったじゃないか。そう考えると、やっぱり褒美は貰っておくべきだったのかもしれない。
「ごきげんよう、バルトさん」
「ああ、ごきげんよ――王女様?!!」
「シッ! 声が大きいよ!」
人の少なくなった王宮の廊下。そこで出会ったのはシュリア王女だった。
彼女は僕の手を引くと廊下の隅にある小さな部屋へ連れ込んだ。
「よく来てくれましたね。貴方に会いたかったわ」
(あれ、何だかキャラが違う? それに距離が近い……)
「いえ、王女様に呼ばれては断るものも断れませんからね」
「え? まさか、断ろうとしていたのですか?」
(しまったああああ!)
よく考えてから発言しなくては。
と、そんなことを考えていると部屋の扉がゆっくりと開いた。
「あ、お父様」
え?
王女のお父様ってことは――
「何をしている、バルト・クラスト」
あ、オワタ。
場所は王都、王宮宮殿内。周りには名だたる貴族たちが押しかけ、珍しい物を見るかのようにこちらの様子を窺っている。
何だかソワソワするがそれも無理はない。なにせ平民が公式の場で国王へ謁見するのは数十年ぶりらしいからな。
「今回は賞与式も兼ねておりますので、まずはそちらから……近衛騎士団長アラン・ヴューズベルトは前へ」
「はっ」
長身の美男子、いやイケオジか?
清潔感があり過ぎて見た目だけでは年齢が量れない。
あの時は暗かったし鎧を着ていたから分からなかったが、ガタイが半端なくでかい。それに加えてなんだあの重そうな剣は。本来、近衛騎士団は戦闘要員ではなくあくまでも王家の方々を護衛、守衛する役目のはず。なので大抵の騎士は取り回しのしやすい短剣や、長くても1メートルくらいの剣を好んで使うのだ。
そんなことを考えていると賞与の授与が始まった。
彼の功績は「国民被害の事前阻止」だそうだ。僕の知っている事実とは異なるけどこの方が都合が良いのだろう。「王女誘拐犯の制圧」なんてことになったら周りの貴族連中から何を言われるか分かったものじゃないからな。
「続いて、国王陛下呼び出しの謁見を執り行う」
ついに僕の出番がきた。緊張で胸が弾け飛んでしまいそうだ。
「オーム領、領主ピグレット・オーム伯爵並びにバルト・クラストは前へ」
領主様も来ていたのか。
作法のサの字も知らない僕にとっては、領主様の真似をしておけば良いのだからありがたい。
「は、はい!」
あれ、返事をしたのは僕だけ……?
列を離れ、国王の前に立つ。前にも横にも領主様の姿は見当たらないし、この場にいる気配すらない。
僕は慌てて先程賞与を受けた近衛騎士団長のように片膝をついて頭を下げた。これで合っているのかは分からないが、何となく貴族連中がざわつくのを感じる。
「オーム伯爵はいかにおられるか!」
返事は無い。
「謁見中失礼致します。先程連絡が入り、オーム伯爵は腹痛が治らず欠席したいと――」
「……あやつめ、またサボりおって」
どうやら常習犯らしい。
改めて僕の名だけが呼ばれ、謁見が始まった。
「この者は王宮専用馬車が盗賊団に狙われていることを察し、10歳という若さで立ち向かった勇敢なる者である」
ああ、なるほどそういうテイね。
「幸いにも馬車に乗員はなかったが、警備隊が到着するまでの間、王国の大切な馬車とその御者を守ってくれた」
「バルト・クラスト、面をあげよ」
「は、はいっ!」
玉座にどっしりと腰掛け、白髪の頭に乗った王冠を見るといかにも王様といった雰囲気だ。いや、王様なんだけどさ。
「この度の功績、誠に見事であった。何か欲しいものは無いか?」
「いえ、僕……私は為すべきことを成したまでですので。国王陛下にお会い出来ただけで光栄です」
(あれ、なんでこんなこと言ったんだろう)
考えるまでもなく言葉は継いで出ていた。でもきっとこれが正しい選択なのだと思う。
「そうか。ではこれにて謁見を終了とする」
緊張したけどあっという間に終わったな。
王都に来るまでの時間の方が圧倒的に長かったじゃないか。そう考えると、やっぱり褒美は貰っておくべきだったのかもしれない。
「ごきげんよう、バルトさん」
「ああ、ごきげんよ――王女様?!!」
「シッ! 声が大きいよ!」
人の少なくなった王宮の廊下。そこで出会ったのはシュリア王女だった。
彼女は僕の手を引くと廊下の隅にある小さな部屋へ連れ込んだ。
「よく来てくれましたね。貴方に会いたかったわ」
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「いえ、王女様に呼ばれては断るものも断れませんからね」
「え? まさか、断ろうとしていたのですか?」
(しまったああああ!)
よく考えてから発言しなくては。
と、そんなことを考えていると部屋の扉がゆっくりと開いた。
「あ、お父様」
え?
王女のお父様ってことは――
「何をしている、バルト・クラスト」
あ、オワタ。
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