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騎士学校編
第26話 準備
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騎士学校へ入学して早くも2週間が経った。学校や寮での生活はなかなか厳しいものがあったが、慣れてくれば賑やかで楽しい毎日となる。
「バルトくううん」
どちらかというとダリオンは賑やかというより騒がしいというのが適切だろう。しかも、男子寮で同室になってしまったことにより、益々うるさいのだが。
「今日はどうするんだい?」
「せっかくの休みだから外出しようかと思っているよ」
「じゃあボクも」
「ひとりで行く」
赤ん坊のように駄々をこねるダリオン。なぜここまで懐かれてしまったのか謎だけど、友達は多い方が良いよな。うん、そう思っておこう。
「騒ぐなら外に行ってくれないか」
同じく同室になったこのクール系男子はカイエルという。
「なんだよカイちゃん。君もバルトくんとイチャイチャしたいのかあ?」
イチャイチャって……
「その呼び方はやめろ、キモイ」
「いいじゃんかカイちゃあん」
そろそろカイエルが怒って喧嘩が始まりそうなので僕は退散することにした。
学校の周りには商店街が建ち並び、飲食店や雑貨屋など生活に必要不可欠なものが揃っている。領地としては王国の帰属になるのだが、正式な町名は無く便宜上【学園都市】などと呼ばれている。
騎士学校で学んでいる間、多少の給金は出るので、今日のような休日は町が学生で溢れかえるのだ。皆厳しい訓練から少しでも抜け出して息抜きをしたいのだろう。
「ば、バルト……」
「イシュクルテさん! 今日もどこかへお出かけですか?」
同クラスでもあるイシュクルテとは外出をする度に出会う。まあ、狭いから当たり前か。
「今日は喫茶店《カフェ》に行こうと思っています。それで、よければバルトも……」
「見つけたぞ、ばああああるううとおおお!」
大声を出しながら通りを駆けてきたのはもちろんダリオンだ。ここまでは日常茶飯事なのだが、今回は珍しいお供付きだった。
僕はダリオンの突進を鮮やかに避けると、彼の背後から歩いてきた女性に目を向けた。
「そちらの方は?」
「初めまして、次席さん。私はAクラスのアストリッドと申します」
「あ、もしかして女性主席の?」
「ええ、まあ」
なんだか不服そうだけど、きっと真面目な人なんだろうな。
たぶん、知らんけど。
「それで、なんでダリオンと居るんです?」
「それは――」
「アスっちとはちょっと前に仕事でお世話になってね。これでも彼女は傭兵ギルドでパーティのリーダーをやっているんだ」
傭兵ギルドか、あまり良い噂は聞かないけど。それはともかく、彼女は仕事柄、顔を広く売っておきたいらしく僕に挨拶をしてくれたようだ。
「“うち”は情報収集から暗殺まで対応していますので、何かご依頼がありましたらここまで」
「は、はあ……」
「それではこれにて――」
この世界に来て初めて名刺を貰った。そこにはアストリッドのフルネームと〈血の満月花〉というパーティ名と思われるものが書いてあった。何だか物騒な響きだが、僕が彼女らに依頼することは一生無いだろう。
「さて、ボクも帰ろうかな」
ダリオンにしては珍しいことだ。別に引き留めたくはないが、聞いて欲しそうにしていたので一応理由を聞くと。
「え、まさか忘れてないよね?」
「何を?」
彼は聞こえよがしのため息を吐くと「2日後に実戦参加があるから準備しとけって言われてたよね」と呆れるように笑いながら寮へと戻って行く。
忘れていた――いや、忘れていた訳ではないけど心のどこかで「大丈夫だろう」という気持ちがあった。スキルに頼っていれば死にはしないと。でも、他の学生と行動を共にするということは、生死も共にするということになる。
「……準備しなきゃな」
「あ、あのバルト……」
「あっ! ごめん!」
すっかりイシュクルテの存在を忘れていた。
「良いわ、もう慣れたから……」
あれ、怒ってる?
「バルトくううん」
どちらかというとダリオンは賑やかというより騒がしいというのが適切だろう。しかも、男子寮で同室になってしまったことにより、益々うるさいのだが。
「今日はどうするんだい?」
「せっかくの休みだから外出しようかと思っているよ」
「じゃあボクも」
「ひとりで行く」
赤ん坊のように駄々をこねるダリオン。なぜここまで懐かれてしまったのか謎だけど、友達は多い方が良いよな。うん、そう思っておこう。
「騒ぐなら外に行ってくれないか」
同じく同室になったこのクール系男子はカイエルという。
「なんだよカイちゃん。君もバルトくんとイチャイチャしたいのかあ?」
イチャイチャって……
「その呼び方はやめろ、キモイ」
「いいじゃんかカイちゃあん」
そろそろカイエルが怒って喧嘩が始まりそうなので僕は退散することにした。
学校の周りには商店街が建ち並び、飲食店や雑貨屋など生活に必要不可欠なものが揃っている。領地としては王国の帰属になるのだが、正式な町名は無く便宜上【学園都市】などと呼ばれている。
騎士学校で学んでいる間、多少の給金は出るので、今日のような休日は町が学生で溢れかえるのだ。皆厳しい訓練から少しでも抜け出して息抜きをしたいのだろう。
「ば、バルト……」
「イシュクルテさん! 今日もどこかへお出かけですか?」
同クラスでもあるイシュクルテとは外出をする度に出会う。まあ、狭いから当たり前か。
「今日は喫茶店《カフェ》に行こうと思っています。それで、よければバルトも……」
「見つけたぞ、ばああああるううとおおお!」
大声を出しながら通りを駆けてきたのはもちろんダリオンだ。ここまでは日常茶飯事なのだが、今回は珍しいお供付きだった。
僕はダリオンの突進を鮮やかに避けると、彼の背後から歩いてきた女性に目を向けた。
「そちらの方は?」
「初めまして、次席さん。私はAクラスのアストリッドと申します」
「あ、もしかして女性主席の?」
「ええ、まあ」
なんだか不服そうだけど、きっと真面目な人なんだろうな。
たぶん、知らんけど。
「それで、なんでダリオンと居るんです?」
「それは――」
「アスっちとはちょっと前に仕事でお世話になってね。これでも彼女は傭兵ギルドでパーティのリーダーをやっているんだ」
傭兵ギルドか、あまり良い噂は聞かないけど。それはともかく、彼女は仕事柄、顔を広く売っておきたいらしく僕に挨拶をしてくれたようだ。
「“うち”は情報収集から暗殺まで対応していますので、何かご依頼がありましたらここまで」
「は、はあ……」
「それではこれにて――」
この世界に来て初めて名刺を貰った。そこにはアストリッドのフルネームと〈血の満月花〉というパーティ名と思われるものが書いてあった。何だか物騒な響きだが、僕が彼女らに依頼することは一生無いだろう。
「さて、ボクも帰ろうかな」
ダリオンにしては珍しいことだ。別に引き留めたくはないが、聞いて欲しそうにしていたので一応理由を聞くと。
「え、まさか忘れてないよね?」
「何を?」
彼は聞こえよがしのため息を吐くと「2日後に実戦参加があるから準備しとけって言われてたよね」と呆れるように笑いながら寮へと戻って行く。
忘れていた――いや、忘れていた訳ではないけど心のどこかで「大丈夫だろう」という気持ちがあった。スキルに頼っていれば死にはしないと。でも、他の学生と行動を共にするということは、生死も共にするということになる。
「……準備しなきゃな」
「あ、あのバルト……」
「あっ! ごめん!」
すっかりイシュクルテの存在を忘れていた。
「良いわ、もう慣れたから……」
あれ、怒ってる?
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