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運命の欠片
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しおりを挟む森から城まではそれなりに時間がかかるものの、間にある街までは草原の一本道を駆け抜けるだけだった。
本当なら街で休憩を取るつもりだったのだが、それはクランがなれない馬に乗って疲れてしまうだろうという前提の話である。実際のところ、クランは驚くほどに馬を操るのがうまく、一本道なのをいいことにジークフリート達を抜いて1番先頭をぶっちぎりで走っていた。
そんな様子をみたジークフリートが、「これは休憩など要らないな。街は通過するだけでさっさと城に行く」と予定を変更したわけである。
ちなみにクランはというと、
「え?街通るだけなの!?ちょっとだけでも見たいのだけれど!?」
と年長者らしく、なおかつ魔女らしく(?)取り繕っていた最初の頃の振る舞いは見る影もなく不貞腐れていた。
そんなクランも街を抜けてからは大人しくジークフリートとその側近2人に挟まれて馬を走らせている。道が先程までと違い一本道ではなくなったからだ。いくら千里眼が使えるとはいえ森からずっと出ていなかったことに違いのない彼女は城へ向かうための道など知らない。
しばらくすると、小さな森の向こうに白亜の白が見えてきた。天高く伸びる塔の屋根は水色に塗られ、そのてっぺんにはこの国の国旗がはためいている。
「後どのくらいなの?」
「目の前の森を抜ければすぐに城の裏門だからもう少しだ」
その言葉の通り、城にはそれからすぐ到着した。裏門から入ったせいかほとんど人はおらず、初老の男が1人待っているだけだった。
「お帰りなさいませ陛下。馬が一頭増えたようですが、そちらもこちらでお預かりしてよろしいでしょか?」
「ああ、頼む。」
「かしこまりました。魔女様、手網をこちらにお渡し願えますかな?」
「えっ?あ、はい」
まさか自分が様付けで呼ばれるとは思ってもみなかったクランは思わず返事が詰まってしまった。それから男はジークフリートたちの馬の手網も全て受け取ると、馬小屋の方へと去っていく。それを見計らって、ボンッという音と共にギンが人型をとった。
「魔女って恐れられてるんじゃなかったのか?」
「大抵はな。だが、例外もある」
ジークフリートはそれだけ言うと、着いてこいとでも言うようにさっさと歩き始めてしまった。仕方なくその後ろに続いて城内へと入ると、今度は大勢の侍女たちが待ち構えている。その中から一番年齢が上であろう中年女性が1歩前に出て軽く膝を降り、頭を下げた。
「お帰りなさいませ陛下」
「ああ。先に話してあった通り、魔女を頼む。それから予定外ではあるがもう一人側仕えの者を連れ帰ったからそちらにも部屋を与えて着替えさせてやれ」
「かしこまりました。では皆さん、取り掛かりますよ」
パンパンと2回程その女性が手を鳴らし、それを合図に一斉に侍女たちはクランの周りを取り囲んだ。
両サイドに至ってはガッチリとクランの腕に自分の腕を組ませて固められている。
「ちょっと??何するきなの!?」
それに答える声はなく、驚いてジタバタと暴れるクランを侍女たちは容赦なく客間へと引きずり込んで彼女が纏っていた服をベリっと剥ぐと、そのまま浴室へと放り込んだ。
「陛下がやっと連れてきた女性です。これでもかという程磨きあげますよ」
「「「「はい!!」」」」
なんだかよく分からないまま侍女たちの気迫に気圧され、結局終わるまでクランがされるがままだったのは言うまでもない。
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