【野生の暴君が現れた!】忍者令嬢はファンタジーVRMMOで無双する【慈悲はない】《殺戮のパイルバンカー》

オモチモチモチモチモチオモチ

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フォートシュウロフ防衛戦

黒煙の暴君、現る

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 頭からローブを被って、テントから出る。私と同じ様な格好のカオスルーラーの子達……私の所有物へなったNPCに囲まれながら、大広間に設置された作戦本部へ向かう。

「あれ……」

 ローブを被っていても尻尾だったり、突き出したりした角から私たちがカオスルーラーだと言う事は一目瞭然だ。異様な空気に周囲のプレイヤーやNPCが道を開けていく。

 まるでモーセの奇跡だ。

「おい、何のよ……う」

 やがて大広間へとたどり着いて、プレイヤーの1人が声をかけようとして言葉を失う。

「まさか……」

 広間の中央、この町のトッププレイヤー達が私の方へ視線を向けた。カオスルーラーの子達が左右二列に分かれて片膝を着き、私の道を作る。私は彼女達が作った道をゆっくりと歩いて一団の前まで歩み寄った。

「……来たのか」

 その言葉と共に、周囲を静まり返る様な緊張きんちょうおおい尽くした。私はゆっくりとローブを肩から滑らせ、彼ら全員の視線を浴びて立つ。空気は暑く、息をすることすら難しいようだった。

 そして、その場の全ての緊張を一身に引き受ける様に、私は深呼吸を1つしてから両手を広げて名乗った。

「じゃーん。私はアニー・キャノン、皆がいう所の"黒煙の暴君"……ヨイニに言われた通り、遊びに来たよ?」

 一団の先頭にいたヨイニが強張った表情で私の方を凝視する。

「あ、アニー?」

「ヘヘッ……黙っていてごめんね? ヨイニ」

「うっわ、マジか!」

 ヨイニが驚きのあまり頭を抱えて天をあおぐ。その様子を見て、周囲はさらにざわつき出した。

 当然だよね。だって、大規模クランのマスターが、まさか"黒煙の暴君"と知り合いだなんて。大事件だよ。

「……軽蔑けいべつした?」

 心が喉元まで上がり、息苦しさを感じつつも、私はその疑問を口に出した。対して、ヨイニは驚いた様子でそれを否定する。

「いやいや、何でだよ!?」

「だって私、悪逆非道あくぎゃくひどう冷酷無比れいこくむひ、勝利への執念が反則、暴虐、恐人の……あの”黒煙の暴君”だよ?」

「まさかアニーだとは思ってなかったけど、さっきも言っただろ? この世界は自由に楽しめるゲームの中だ。現実と混同したりしないよ」

「うん……そうだよね。へへっ私、何を怖がってたんだろ」

「ん? 何か言った?」

 与一よいち君はあれかな?
 もしかして突発性難聴とっぱつせいなんちょうわずらうタイプの主人公なのかな?

「んーん、何でも無い!」

 ヨイニと話していると、後方の大柄な男性が声をかけてきた。白を基調とした日本武者みたいな鎧に、腰には日本刀が差してある。

「おいおい、2人でイチャイチャしてないで俺たちにも事情を説明してくれよ! そこのお嬢さんがあの"黒煙の暴君"って事で良いのか?」

「「いちゃいちゃしてない!」」

 突如として場の空気が和んだ。ヨイニと視線が交差した瞬間、お互いに何を言うべきか理解した。

 私はステータス画面を呼び出してその場の全員に公開した。

名前:アニー・キャノンLv24
種族:カオスルーラーLv16
HP:245/245
MP:120/120
 【STR:70】(+35) 
 【VIT:10】
 【DEX:20】(+10)
 【AGI:115】(+60)
 【INT:45】(+5)
装備
 頭【蛮王のサークレット】(防御力+5、STR+5、AGI+5)
 肩【蛮王のマント】(防御力+10、STR+5、AGI+10)
 体【蛮王の粗鉄鎧】(防御力+30、STR+5)
 右手【鉄の手甲(雷属性強化)】(物理攻撃力+15、防御力+15)
 左手【鉄の手甲(雷属性強化)】(物理攻撃力+15、防御力+15)
 尻尾【小鬼将軍のバンクル】(AGI+20、STR+10)
 腰【蛮王の腰布】(防御力+10、AGI+10)
 足【踊り子のバングル】(AGI+20、DEX+10)
 靴【蛮王の靴】(防御力+10、AGI+10、STR+5)
ファーストジョブ:アウトローLv5
セカンドジョブ:マジックユーザーLv5(up)
スキル
 【鼓舞】
 【パンチャー】
 【暗視】
 【黒煙】
 【トンズラ】
 【パイルバンカー】(ベース:ロックショット)
 【アトラクトボール】(ベース:スパークボール) (new)
 【属性付与(雷)】(new)
 【属性攻撃強化(雷)】(new)
 【アンチライトニング】(new)
称号
 【無慈悲なる者】
 【悪の先導者】
 【外道】
 【大物狙い】
 【キラー】
 【サイコキラー】
 【シリアルキラー】(new)
 【マス・マーダー】(new)
 【プレデター】(new)
ステータスポイント6
レベルポイント1

「ひえっ……このレアドロップのオンパレード、この不穏な称号の数々……間違いない"黒煙の暴君"だ」

「ビルドを見せちゃってよかったんですか?」

 他のメンバーの質問に恥ずかしさを紛らわす様にちょっと頬を掻いて答える。

「全然良くないけど、全力で挑むならもうしょうがないよね」

 私の言葉に白武者がガハハと笑う。

「ヨイニの言った通り"黒煙の暴君"は立派なゲーマーだった訳だ。俺らも情報共有しようぜ!」

 白武者……改め、シマーズさんの音頭で他のトッププレイヤーともステータスを共有してフレンド登録も済ませる。

 おお、やっぱり皆レベルが高い……。それになんだか、胸に温かい物が広がるな。アニー・キャノンも、風間奏音かざまかのんも、こんな風に他人と打ち解けた事はなかったから。

「あれ? あっさっきの!」

 一人だけ一段レベルの低いレベル19プレイヤーが気になって見てみると、さっき M P回復料理を受け取っていた幼女エルフだった。

「シュクレ・ロベルタって言います、よろしくお願いします。お、お料理、ありがとうございました」

 シュクレと名乗った幼女エルフはペコリと深く頭を下げた。料理、気に入ってくれたみたいで良かった。

「わぁい! じゃあ今度はもっと辛い効果が高いの作るね!」

「ひうっ……い、今のままで良いです……」

 遠慮してるのかな、なんだかこの子はいつも涙目だね? 何か悲しい事でもあったのかな。シュクレちゃんと楽しくおしゃべりしているとヨイニが彼女の説明をしてくれた。

「シュクレはこのイベントで頭角を表したプレイヤーだ。今この街に彼女以上の範囲攻撃魔法を扱える人間はいない」

「おおー、すごい!! じゃあ沢山辛い料理が必要だね!」

「うぅ……はぃ……」

 やだ、どうしよう。
 小さい女の子が泣いている顔ってすごく可愛い。

「な、何を笑っているんですか!」

「んー? 別に笑ってないけど?」

「嘘です! 口元がニコーってしてます!」

「私の料理を泣いて喜んでくれるなんて。嬉しくって!」

「うぅっ……」

 あーあー、もっと泣いちゃった。
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