89 / 149
剛輪禍工業革命-2:工業地帯奪還
考えるより先に手が出るタイプのJK
しおりを挟む
*「報告であります!」*
皆ですっごい簡易的な拠点を作ったすぐ後"兵士"部隊のプレイヤーから連絡が入った。
*「敵勢エネミーの大まかな配置と建造物の配置をマッピングしました!」*
*「よろしい、被害報告をせよー」*
*「全滅であります!」*
*「えっ」*
じゃあお前は誰なんだ、と思ってメンバーの状態をシステム画面から確認する。普通に半分ぐらい生き残ってるじゃん。
そういえば軍隊だと半数が死亡したら事実上の全滅だみたいなのをどこかで読んだ気がするからそう言う基準なのかな。
*「入り口に簡単な防衛陣地があるから、再編成後に周囲を警戒せよー」*
*「イエス! マム!」*
「さて、そろそろ行こうか」
"兵士"部隊は面倒で退屈な事も喜んでやってくれるから本当に便利だ。だけど純粋戦力としてみると"レッドバロン"や"シュクレ教"には敵わない。
「うん、情報通りだね」
雲の切れ間から体表の光が微かに地面を照らす中、私たちは工業地帯へと足を踏み入れる。錆びついた鉄骨が剥き出しになった建物の間に、彷徨う人型の鎧"リビングアーマー"と金属質な甲殻を携えた蠍の様なモンスター"カリブスコープ"が鎮座していた。
「さぁ始めようか」
それまでただのオブジェの様に佇んでいたモンスター達が、私たちの接近に反応して動き始める。
「暴君、作戦は?」
レッドバロンの1人が私に話しかけてくる。
「シュクレ教は近づかれたら逃げて、レッドバロンはシュクレ教に近づくモンスターはなるべく排除して上げて」
「俺たちは盾になれってことか?」
「いや、ダメそうなら普通に見捨てて良い。シュクレ教の人も助けてもらえる事を前提の立ち回りはしないでねー」
日常的にPKをやっているレッドバロンはそもそもレベルやPSが高い上に、今ここにいるのはその中でも上位のプレイヤー達だ。シュクレ教の盾に使うには勿体なさすぎる。
「陣形とかは良いのか?」
「"兵士"の話しだと遠距離から範囲攻撃が飛んでくるらしいから、方陣はもう無意味だよ。あとはマップ見ながら見敵必殺して!」
私の掛け声に、各々が答えた。
「しゃぁ! やっと戦えるぜ!」
「やるぞー!」
「汚物は消毒じゃー!」
私たちが近づくと、モンスター達の関節が赤く光り、金属同士が擦れ合う様な音と共に動き出す。
「「セット・リボルビングパイル」」
発声によってスキルが発動し、トンファー型の釘打ち機が両腕へ装着された。そのまま勢いよく駆け出す。
「キヒヒヒ!」
杖を構えようとするとリビングメイルへ突撃し、勢いそのままに右腕を叩き込む。インパクトのタイミングに合わせてトリガーを引き、魔力で形成された釘を叩き込んだ。
ガシャン! 金属が砕けると音と共に、リビングメイルが膝をつく。手には反作用による衝撃の感触が伝わってくる。
「っと!」
その黒光りする体から金属の擦れるような音を発しながらカリブスコープが私の方へ向かってくる。
8本の足をガシャガシャと流れるように動かし一瞬で眼前まで迫ると、その尻尾が風を切り裂いて突き出された。
「えぇえい!」
目で追う事すらできない高速の一撃、だけど私は考えるより先に手が出るタイプだ。ほぼ無意識の領域でその一閃をガントレットで弾く。
そのまま一歩前へ、左手の釘打ち機をカリブスコープの顔面へ押し当てて、トリガーを引く。
「ギィイイ!」
カリブスコープが断末魔のような音を発し、その場へ崩れ落ちる。チラリと周囲へ視線を向けると、皆も苦戦しつつも順調にモンスターを排除して回っていた。この調子なら、このエリアは解放できるだろう。
妙に連携をとって戦ってきたり、逃げ出そうとする個体がいたりと若干の違和感はありつつも、次々とモンスターを倒していく。
「"暴君"このドロップが何だか分かるか?」
戦闘が落ち着いてきた頃、レッドバロンの1人が私に話しかけてきた。彼の手には、水晶みたいな石が握られていた。
そのアイテムには見覚えがある。さっきから戦っているこのエリアのモンスターを倒すと度々ドロップしているやつだ。
「わかんない、私もそれ気になってるんだよねー」
改めて水晶を見ながら、ふと気になった事を口にしてみた。
「そういえばこれ、私達が街へきた時に乗ってた蒸気機関車の制御システムにも似たようなのがあったんだよね」
「ああ、お前がぶっ壊して機関車が制御不能になった挙句、街に突っ込んで盛大に破壊した時の」
「うるさい! ていうかそっちだって面白がってたじゃん! 同じクランなんだから同罪だよ!!」
「横暴だなぁ。さすが暴君だ」
「ガルルルル」
私が半眼で睨みながら威嚇すると、レッドバロンの男は半笑いで両手を前にして私を制する。
なんか私、動物扱いされてない?
「まぁまぁ、落ち着けって。じゃあとりあえずこれは、あの時の機関車みたいな魔力で動く機械を作るのに使う素材ってことか?」
「あー、その可能性はあるかもね。工場を獲得したら色々作れるみたいだし、その時に使うのかも」
「じゃあまぁ、一応集めておくか」
「そうだねー」
皆ですっごい簡易的な拠点を作ったすぐ後"兵士"部隊のプレイヤーから連絡が入った。
*「敵勢エネミーの大まかな配置と建造物の配置をマッピングしました!」*
*「よろしい、被害報告をせよー」*
*「全滅であります!」*
*「えっ」*
じゃあお前は誰なんだ、と思ってメンバーの状態をシステム画面から確認する。普通に半分ぐらい生き残ってるじゃん。
そういえば軍隊だと半数が死亡したら事実上の全滅だみたいなのをどこかで読んだ気がするからそう言う基準なのかな。
*「入り口に簡単な防衛陣地があるから、再編成後に周囲を警戒せよー」*
*「イエス! マム!」*
「さて、そろそろ行こうか」
"兵士"部隊は面倒で退屈な事も喜んでやってくれるから本当に便利だ。だけど純粋戦力としてみると"レッドバロン"や"シュクレ教"には敵わない。
「うん、情報通りだね」
雲の切れ間から体表の光が微かに地面を照らす中、私たちは工業地帯へと足を踏み入れる。錆びついた鉄骨が剥き出しになった建物の間に、彷徨う人型の鎧"リビングアーマー"と金属質な甲殻を携えた蠍の様なモンスター"カリブスコープ"が鎮座していた。
「さぁ始めようか」
それまでただのオブジェの様に佇んでいたモンスター達が、私たちの接近に反応して動き始める。
「暴君、作戦は?」
レッドバロンの1人が私に話しかけてくる。
「シュクレ教は近づかれたら逃げて、レッドバロンはシュクレ教に近づくモンスターはなるべく排除して上げて」
「俺たちは盾になれってことか?」
「いや、ダメそうなら普通に見捨てて良い。シュクレ教の人も助けてもらえる事を前提の立ち回りはしないでねー」
日常的にPKをやっているレッドバロンはそもそもレベルやPSが高い上に、今ここにいるのはその中でも上位のプレイヤー達だ。シュクレ教の盾に使うには勿体なさすぎる。
「陣形とかは良いのか?」
「"兵士"の話しだと遠距離から範囲攻撃が飛んでくるらしいから、方陣はもう無意味だよ。あとはマップ見ながら見敵必殺して!」
私の掛け声に、各々が答えた。
「しゃぁ! やっと戦えるぜ!」
「やるぞー!」
「汚物は消毒じゃー!」
私たちが近づくと、モンスター達の関節が赤く光り、金属同士が擦れ合う様な音と共に動き出す。
「「セット・リボルビングパイル」」
発声によってスキルが発動し、トンファー型の釘打ち機が両腕へ装着された。そのまま勢いよく駆け出す。
「キヒヒヒ!」
杖を構えようとするとリビングメイルへ突撃し、勢いそのままに右腕を叩き込む。インパクトのタイミングに合わせてトリガーを引き、魔力で形成された釘を叩き込んだ。
ガシャン! 金属が砕けると音と共に、リビングメイルが膝をつく。手には反作用による衝撃の感触が伝わってくる。
「っと!」
その黒光りする体から金属の擦れるような音を発しながらカリブスコープが私の方へ向かってくる。
8本の足をガシャガシャと流れるように動かし一瞬で眼前まで迫ると、その尻尾が風を切り裂いて突き出された。
「えぇえい!」
目で追う事すらできない高速の一撃、だけど私は考えるより先に手が出るタイプだ。ほぼ無意識の領域でその一閃をガントレットで弾く。
そのまま一歩前へ、左手の釘打ち機をカリブスコープの顔面へ押し当てて、トリガーを引く。
「ギィイイ!」
カリブスコープが断末魔のような音を発し、その場へ崩れ落ちる。チラリと周囲へ視線を向けると、皆も苦戦しつつも順調にモンスターを排除して回っていた。この調子なら、このエリアは解放できるだろう。
妙に連携をとって戦ってきたり、逃げ出そうとする個体がいたりと若干の違和感はありつつも、次々とモンスターを倒していく。
「"暴君"このドロップが何だか分かるか?」
戦闘が落ち着いてきた頃、レッドバロンの1人が私に話しかけてきた。彼の手には、水晶みたいな石が握られていた。
そのアイテムには見覚えがある。さっきから戦っているこのエリアのモンスターを倒すと度々ドロップしているやつだ。
「わかんない、私もそれ気になってるんだよねー」
改めて水晶を見ながら、ふと気になった事を口にしてみた。
「そういえばこれ、私達が街へきた時に乗ってた蒸気機関車の制御システムにも似たようなのがあったんだよね」
「ああ、お前がぶっ壊して機関車が制御不能になった挙句、街に突っ込んで盛大に破壊した時の」
「うるさい! ていうかそっちだって面白がってたじゃん! 同じクランなんだから同罪だよ!!」
「横暴だなぁ。さすが暴君だ」
「ガルルルル」
私が半眼で睨みながら威嚇すると、レッドバロンの男は半笑いで両手を前にして私を制する。
なんか私、動物扱いされてない?
「まぁまぁ、落ち着けって。じゃあとりあえずこれは、あの時の機関車みたいな魔力で動く機械を作るのに使う素材ってことか?」
「あー、その可能性はあるかもね。工場を獲得したら色々作れるみたいだし、その時に使うのかも」
「じゃあまぁ、一応集めておくか」
「そうだねー」
10
あなたにおすすめの小説
異世界召喚に条件を付けたのに、女神様に呼ばれた
りゅう
ファンタジー
異世界召喚。サラリーマンだって、そんな空想をする。
いや、さすがに大人なので空想する内容も大人だ。少年の心が残っていても、現実社会でもまれた人間はまた別の空想をするのだ。
その日の神岡龍二も、日々の生活から離れ異世界を想像して遊んでいるだけのハズだった。そこには何の問題もないハズだった。だが、そんなお気楽な日々は、この日が最後となってしまった。
スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜
かの
ファンタジー
世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。
スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。
偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。
スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!
冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!
間違い召喚! 追い出されたけど上位互換スキルでらくらく生活
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕は20歳独身、名は小日向 連(こひなた れん)うだつの上がらないダメ男だ
ひょんなことから異世界に召喚されてしまいました。
間違いで召喚された為にステータスは最初見えない状態だったけどネットのネタバレ防止のように背景をぼかせば見えるようになりました。
多分不具合だとおもう。
召喚した女と王様っぽいのは何も持っていないと言って僕をポイ捨て、なんて世界だ。それも元の世界には戻せないらしい、というか戻さないみたいだ。
そんな僕はこの世界で苦労すると思ったら大間違い、王シリーズのスキルでウハウハ、製作で人助け生活していきます
◇
四巻が販売されました!
今日から四巻の範囲がレンタルとなります
書籍化に伴い一部ウェブ版と違う箇所がございます
追加場面もあります
よろしくお願いします!
一応191話で終わりとなります
最後まで見ていただきありがとうございました
コミカライズもスタートしています
毎月最初の金曜日に更新です
お楽しみください!
病弱少年が怪我した小鳥を偶然テイムして、冒険者ギルドの採取系クエストをやらせていたら、知らないうちにLV99になってました。
もう書かないって言ったよね?
ファンタジー
ベッドで寝たきりだった少年が、ある日、家の外で怪我している青い小鳥『ピーちゃん』を助けたことから二人の大冒険の日々が始まった。
癒し目的で始めたVRMMO、なぜか最強になっていた。
branche_noir
SF
<カクヨムSFジャンル週間1位>
<カクヨム週間総合ランキング最高3位>
<小説家になろうVRゲーム日間・週間1位>
現実に疲れたサラリーマン・ユウが始めたのは、超自由度の高いVRMMO《Everdawn Online》。
目的は“癒し”ただそれだけ。焚き火をし、魚を焼き、草の上で昼寝する。
モンスター討伐? レベル上げ? 知らん。俺はキャンプがしたいんだ。
ところが偶然懐いた“仔竜ルゥ”との出会いが、運命を変える。
テイムスキルなし、戦闘ログ0。それでもルゥは俺から離れない。
そして気づけば、森で焚き火してただけの俺が――
「魔物の軍勢を率いた魔王」と呼ばれていた……!?
癒し系VRMMO生活、誤認されながら進行中!
本人その気なし、でも周囲は大騒ぎ!
▶モフモフと焚き火と、ちょっとの冒険。
▶のんびり系異色VRMMOファンタジー、ここに開幕!
カクヨムで先行配信してます!
「キヅイセ。」 ~気づいたら異世界にいた。おまけに目の前にはATMがあった。異世界転移、通算一万人目の冒険者~
あめの みかな
ファンタジー
秋月レンジ。高校2年生。
彼は気づいたら異世界にいた。
その世界は、彼が元いた世界とのゲート開通から100周年を迎え、彼は通算一万人目の冒険者だった。
科学ではなく魔法が発達した、もうひとつの地球を舞台に、秋月レンジとふたりの巫女ステラ・リヴァイアサンとピノア・カーバンクルの冒険が今始まる。
異世界召喚された俺の料理が美味すぎて魔王軍が侵略やめた件
さかーん
ファンタジー
魔王様、世界征服より晩ご飯ですよ!
食品メーカー勤務の平凡な社会人・橘陽人(たちばな はると)は、ある日突然異世界に召喚されてしまった。剣も魔法もない陽人が頼れるのは唯一の特技――料理の腕だけ。
侵略の真っ最中だった魔王ゼファーとその部下たちに、試しに料理を振る舞ったところ、まさかの大絶賛。
「なにこれ美味い!」「もう戦争どころじゃない!」
気づけば魔王軍は侵略作戦を完全放棄。陽人の料理に夢中になり、次々と餌付けされてしまった。
いつの間にか『魔王専属料理人』として雇われてしまった陽人は、料理の腕一本で人間世界と魔族の架け橋となってしまう――。
料理と異世界が織りなす、ほのぼのグルメ・ファンタジー開幕!
俺得リターン!異世界から地球に戻っても魔法使えるし?アイテムボックスあるし?地球が大変な事になっても俺得なんですが!
くまの香
ファンタジー
鹿野香(かのかおる)男49歳未婚の派遣が、ある日突然仕事中に異世界へ飛ばされた。(←前作)
異世界でようやく平和な日常を掴んだが、今度は地球へ戻る事に。隕石落下で大混乱中の地球でも相変わらず呑気に頑張るおじさんの日常。「大丈夫、俺、ラッキーだから」
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる