【野生の暴君が現れた!】忍者令嬢はファンタジーVRMMOで無双する【慈悲はない】《殺戮のパイルバンカー》

オモチモチモチモチモチオモチ

文字の大きさ
93 / 149
剛輪禍工業革命-2:工業地帯奪還

正々堂々と最後まで戦うタイプの筋肉ゴリラ

しおりを挟む
 アニーちゃん達を見送って、俺たちも指定されたゲートを潜る。一瞬の暗転の後、すぐに視界が開ける。

「さて、俺らも始めるか」

 俺たちがアニーちゃんから攻略を託されたエリアは、この海辺に面した工業地帯だ。

 眼前に広がるのは、錆び付いた鉄塔とコンクリート建物が交互に立ち並ぶ、鉄とコンクリートの森だ。そのダークグレイの姿が海の水面に映り込むと、不気味ながらも幻想的な雰囲気を醸し出していた。

「それじゃあまぁ、とりあえず全員で周りを警戒しながらゆっくり進もうぜ」

 俺に預けられた部隊"ブルーバロン"は、PVPを志向するプレイヤー達で構成されている。レッドバロンとの違いは、彼らがPKその物を目的にしているのに対して、俺たちは"真剣勝負"を目的にPKをする所だ。

 何でもありの戦いならレッドバロンの方が優勢だろうが、純粋な戦闘能力で言えばブルーバロンの方が有利だ。

「ゴングマンさん! モンスターが動き出しました!」

 ブルーバロンの1人が声を上げた。眉をひそめて警戒する彼の指差す方向へ視線を向ける。

「ウッキィ!」

 そこには、全身が流線型の黒い金属で覆われた機械仕掛けの猿の様なモンスターが赤い目を輝かせて薙刀を構えていた。頭上に表示された明朝フォントの文字を読み上げる。

「メカエイプ……安直な名前だな」

 だが、ここは最高難易度エリアだ。
 名前は安くても敵は安く無い。

「うおらぁ!」

 メカエイプから放たれた薙刀による一閃に対して金属製のリングで武装した腕の手刀で刃の腹を捉えて弾く。

 風間流の技の1つ"白刃弾き"だ。

「こいつ……!」

 俺がお返しに回し蹴りを放つと、メカエイプは逸らされた薙刀を地面に刺しながらその薙刀へ飛び乗った。

 猿みたいな動きしやがって!

「ウキキャァア!」

 メカエイプが薙刀の上から九環刀の様な武器で連撃を放ってくる。ガシャガシャと言う金属音がその場に響いた。

「こんにゃろ!」

 斬撃を受けながら殴りかかる。

 しかし、メカエイプは巧みに重心を操り攻撃を避け、そのままバク転をする様に薙刀を地面から引き抜きながら掬い上げる様な斬撃を放つ。

「くっそ!」

 普通では考えられない様なトリッキーな動きに完全に意表を突かれてもろに攻撃を喰らってしまう。

 視線の端に映る自分のHPバーが6割以上、一気に削れた。一度バックステップで距離を取る。

「強い……! いや、まだ有情な方か」

 このゲームは、序盤の街を除いてプレイヤーへの配慮をまるで感じない。ダンジョン攻略なんかは何度も死んで覚える事を前提にしている様なバランスをしている。

 いや、最初からバランス何て取る気は無いのか。そんな中、最高難易度のダンジョンで直撃を喰らっても即死じゃ無いのはむしろ優しいまであるな。

「やっぱり、俺じゃアニーちゃんの様にはいかねぇよなぁ!」

 幻夢境街の闘技場でチャンピオンをやっていた、一応は上位プレイヤーにカウントされる俺ですらこんな感じだ。

 普段からまるで無双ゲームでもやっている見たいに初見で攻撃を完璧に回避しつつ致命的な一撃でモンスターとプレイヤーを吹き飛ばすアニーちゃんがいかに化け物なのかヒシヒシと感じる。

 これそう言うゲームじゃねぇから!
 って言ってやりたい。

「ゴングマンさん! やばいっす!」

 ブルーバロンの1人が焦った様子で声を上げる。周囲を見渡すと、次々とメカモンキーが集まってきていた。

「畜生! 容赦ねぇなぁ!」

「ウキャウッキャ!」

 眼前のメカモンキーが嬉しそうに九環刀を振り回してガシャガシャと音を立てる。それかぁ!

「どうするっすか?」

「大丈夫だ、こう言う時の為にとっておきの作戦がある」

 動揺するブルーバロンのメンバーへ、俺は落ち着いた様子でニヤリと微笑んで彼の肩を優しく叩く。

「さ、流石はゴングマンさんです!」

 肩を叩かれた彼は目を輝かせて俺の方を見上げてきた。俺は彼に背中を向けて、作戦を実行に移すべくクラウチングスタートの構えを取った。

「そ、それで作戦って言うのは?」

「……」

「ゴングマンさん?」

 俺の意図に気が付かず声をかけるブルーバロンの男を他所に、大きく深呼吸をして、呼吸を整える。

「にぃぃげるんだよぉぉぉぉぉおお!!!」

 そのまま脇目も振らずに戦場を駆け抜け、転移したスタート地点へと駆け出していく。

「えぇぇぇぇえええええーー!?!?!!!」

 驚きのあまり奇声を上げるブルーバロンの男の声がドップラー効果で変化するのを感じる。

「お前らも一時撤退だー! 逃げろー!!」

 周囲からツッコミが入るも、彼らも一目散で逃げ出した。

「おいぃぃいいいいいいー!」

 そもそもデフォルトでモンスターの方がHPや身体能力も高い様なゲームで、周囲を囲まれながら戦って勝てるのはもうモンスターの配置や攻略法が魂に刻まれるレベルでやりこんだ2周目主人公とか何だよ!

 そんで俺は2周目のゲーム主人公じゃ無い!!

「ウッキャァアア!」

 進行を阻む様にメカエイプが俺の行くてを阻む様に立ち塞がった。この場で倒せと言われた全然、余裕で無理だが、通り抜けるだけなら何とかなる。

「トンズラァ!」

 発声によってスキルを発動する。プレイヤーの敏捷値に比例する距離を急速に移動する逃走用のスキルだ。移動距離を調整できない上に発動後は慣性が消えるからマジで逃げる時ぐらいにしか使えない。

 これを強襲用スキルとして使っているアニーちゃんはやっぱり頭おかしいよな。いや別にこのスキルとか関係なく頭はおかしいんだけど。
しおりを挟む
感想 13

あなたにおすすめの小説

異世界召喚に条件を付けたのに、女神様に呼ばれた

りゅう
ファンタジー
 異世界召喚。サラリーマンだって、そんな空想をする。  いや、さすがに大人なので空想する内容も大人だ。少年の心が残っていても、現実社会でもまれた人間はまた別の空想をするのだ。  その日の神岡龍二も、日々の生活から離れ異世界を想像して遊んでいるだけのハズだった。そこには何の問題もないハズだった。だが、そんなお気楽な日々は、この日が最後となってしまった。

スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

間違い召喚! 追い出されたけど上位互換スキルでらくらく生活

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕は20歳独身、名は小日向 連(こひなた れん)うだつの上がらないダメ男だ ひょんなことから異世界に召喚されてしまいました。 間違いで召喚された為にステータスは最初見えない状態だったけどネットのネタバレ防止のように背景をぼかせば見えるようになりました。 多分不具合だとおもう。 召喚した女と王様っぽいのは何も持っていないと言って僕をポイ捨て、なんて世界だ。それも元の世界には戻せないらしい、というか戻さないみたいだ。 そんな僕はこの世界で苦労すると思ったら大間違い、王シリーズのスキルでウハウハ、製作で人助け生活していきます ◇ 四巻が販売されました! 今日から四巻の範囲がレンタルとなります 書籍化に伴い一部ウェブ版と違う箇所がございます 追加場面もあります よろしくお願いします! 一応191話で終わりとなります 最後まで見ていただきありがとうございました コミカライズもスタートしています 毎月最初の金曜日に更新です お楽しみください!

病弱少年が怪我した小鳥を偶然テイムして、冒険者ギルドの採取系クエストをやらせていたら、知らないうちにLV99になってました。

もう書かないって言ったよね?
ファンタジー
 ベッドで寝たきりだった少年が、ある日、家の外で怪我している青い小鳥『ピーちゃん』を助けたことから二人の大冒険の日々が始まった。

癒し目的で始めたVRMMO、なぜか最強になっていた。

branche_noir
SF
<カクヨムSFジャンル週間1位> <カクヨム週間総合ランキング最高3位> <小説家になろうVRゲーム日間・週間1位> 現実に疲れたサラリーマン・ユウが始めたのは、超自由度の高いVRMMO《Everdawn Online》。 目的は“癒し”ただそれだけ。焚き火をし、魚を焼き、草の上で昼寝する。 モンスター討伐? レベル上げ? 知らん。俺はキャンプがしたいんだ。 ところが偶然懐いた“仔竜ルゥ”との出会いが、運命を変える。 テイムスキルなし、戦闘ログ0。それでもルゥは俺から離れない。 そして気づけば、森で焚き火してただけの俺が―― 「魔物の軍勢を率いた魔王」と呼ばれていた……!? 癒し系VRMMO生活、誤認されながら進行中! 本人その気なし、でも周囲は大騒ぎ! ▶モフモフと焚き火と、ちょっとの冒険。 ▶のんびり系異色VRMMOファンタジー、ここに開幕! カクヨムで先行配信してます!

「キヅイセ。」 ~気づいたら異世界にいた。おまけに目の前にはATMがあった。異世界転移、通算一万人目の冒険者~

あめの みかな
ファンタジー
秋月レンジ。高校2年生。 彼は気づいたら異世界にいた。 その世界は、彼が元いた世界とのゲート開通から100周年を迎え、彼は通算一万人目の冒険者だった。 科学ではなく魔法が発達した、もうひとつの地球を舞台に、秋月レンジとふたりの巫女ステラ・リヴァイアサンとピノア・カーバンクルの冒険が今始まる。

異世界召喚された俺の料理が美味すぎて魔王軍が侵略やめた件

さかーん
ファンタジー
魔王様、世界征服より晩ご飯ですよ! 食品メーカー勤務の平凡な社会人・橘陽人(たちばな はると)は、ある日突然異世界に召喚されてしまった。剣も魔法もない陽人が頼れるのは唯一の特技――料理の腕だけ。 侵略の真っ最中だった魔王ゼファーとその部下たちに、試しに料理を振る舞ったところ、まさかの大絶賛。 「なにこれ美味い!」「もう戦争どころじゃない!」 気づけば魔王軍は侵略作戦を完全放棄。陽人の料理に夢中になり、次々と餌付けされてしまった。 いつの間にか『魔王専属料理人』として雇われてしまった陽人は、料理の腕一本で人間世界と魔族の架け橋となってしまう――。 料理と異世界が織りなす、ほのぼのグルメ・ファンタジー開幕!

俺得リターン!異世界から地球に戻っても魔法使えるし?アイテムボックスあるし?地球が大変な事になっても俺得なんですが!

くまの香
ファンタジー
鹿野香(かのかおる)男49歳未婚の派遣が、ある日突然仕事中に異世界へ飛ばされた。(←前作) 異世界でようやく平和な日常を掴んだが、今度は地球へ戻る事に。隕石落下で大混乱中の地球でも相変わらず呑気に頑張るおじさんの日常。「大丈夫、俺、ラッキーだから」

処理中です...