95 / 149
剛輪禍工業革命-2:工業地帯奪還
ボスに余裕で圧勝するタイプの筋肉ゴリラ
しおりを挟む
どうやら俺達が担当したエリアは、メカエイプだけで構成されているらしい。モンスターの種類が増えると対処の難易度が倍増するから、これはありがたい。
「最初はどうなるかと思ったが、何とかなったな」
全員で連携を取りながら、エリア内のモンスターを倒していく。戦術とパターンが分かった今となっては、最初に会敵した時の様な絶望感は無い。
この戦いを通して、俺やブルーバロンのメンバーも一段、プレイヤースキルが上がった。
「何だかんだ2時間ぐらいか、ちょうど良いペース……」
安全になりつつあるエリアの十字路を通りかかった時に、一瞬だけ違和感を覚える。試しに数歩戻って、通路の右手を確認した。
「ウホ?」
機械的な赤い光を放つ2つの目が、俺との視線と交差する。そこにいたのは、全身が鈍い銀色の光を放つ装甲で覆われたゴリラの怪物だった。
「猿の次はゴリラかよ……!」
3メートルはある巨体が機械の体とは思えない程、滑らかな動きで不思議そうに首を傾げ、片腕で頭をポリポリと掻いている。
「アルゴノトス・メタリウム……!」
ゴリラの怪物の頭上に、源界フォントの赤文字でモンスターの名前が表示される。ボスモンスターだ!
「ウホ! ウホ! ウホ!」
メタリウムが体を持ち上げ、ドラミングを始める。周囲へドコドコと威圧的な音が広がり、自然と緊張感が高まっていった。
「来るぞ!!」
次の瞬間、巨獣がジャンプした。まだ10メートルはあった距離を一度の跳躍で飛び越え、その大きな右腕を振りかぶる。
ズガダン! 巨腕から繰り出された隕石の様な一撃は大地を粉々に粉砕する。脅威的なスピード、パワー、そして装甲。
まじでこのゲーム、プレイヤーへの遠慮が無さすぎる。だけど、それこそがこのゲームが面白い理由でもあった。
「おーしお前ら! ボス戦だ! 出し惜しみは必要ないぞ!」
「おう!」
「やってやるぜ!」
俺の声に、ブルーバロンとシュクレ教の面々もそれぞれの表情で応える。シュクレ教の魔法使いは緊張しているが、意を決した表情で自慢の詠唱を始め、ブルーバロンの戦士たちは勇気を振り絞って武器を構えた。
「攻撃の後には隙があるはずだ! なるべく包囲を崩さない用にして、自分が攻撃されてない時だけその隙を付いて攻撃するんだ!」
「了解!」
全員がメタリウムを取り囲む形で広がった。シュクレ教の魔法使いは後方から攻撃魔法を唱え始め、ブルーバロンの戦士達は前線で盾や武器を構える。俺はその隙間を縫って攻撃のチャンスを窺っていた。
「グルグル……!」
メタリウムが周囲へ視線を向け、獰猛な顔つきで包囲の一方、シュクレ今日の魔法使いの方向へ突撃する。その巨大な拳が空気を切り裂き、目の前の魔法使いを吹き飛ばした。
「今だ!」
吹き飛ばされたプレイヤーには構わず、モーション後の硬直を狙って攻撃を仕掛ける。
「グルルァア!」
しかし、メタリウムは生物的な滑らかな動きで直ぐに身を翻して、俺の飛び蹴りを片腕で受ける。
「やっ……トンズラ!」
凄まじい力を感じさせる真紅の目と視線が合い、背筋が凍る。咄嗟にスキルを発動して、距離を取った。
「こりゃヤベェぞ……!」
数秒前まで俺が居た位置を、衝撃波が突き抜けていく。空気の破裂する様な音が響いた。
メタリウムとの戦闘が始まってから徐々に、俺たちの舞台は追い詰められていく。強力な衝撃は攻撃で1人、また1人と仲間が倒れ、30分後、とうとう俺たちの部隊は壊滅状態にあった。
もしかして、敗北が前提の負けイベント的な何かじゃ無いだろうか。そんな思いが脳裏にチラリと浮かび、それを首を振って振り払う。
「ゴングマンさん、でもこれは流石に……!」
「このゲームに、あらかじめ勝敗が決まっている戦いなんてねぇ!」
生き残った数少ないブルーバロンの1人が、絶望的な表情で口を開いた。確かに、メタリウムのHPはまだ7割以上、残っている。
対して俺達は満身創痍で、生き残りも10人かそこらだ。
「あのアニーちゃんが、俺達にこのエリアの攻略を任せたんだ。やっと変わり始めたあの子の期待に応えられなくて、何が大人だ!」
そうは言うが、状況は如何ともし難い。もし、彼女がここにいればこの状況をどうやって解決するだろうか。
「おーい!」
「あはは、ヤバイ、幻聴が聞こえて来た」
「ゴングマンさん?」
小さく笑う俺に、ブルーバロンの男が首を傾げる。
「ここにアニーちゃんがいたらどんなに頼もしいかって思ったら、アニーちゃんの声が聞こえて来たよ」
「おーーーい!!」
「……」
幻聴だと思った声が、いよいよ無視できないレベルで聞こえて来て、ブルーバロンの男と2人で顔を見合わせる。
「ゴリラマンさーーーん!!」
「ゴリラじゃねぇゴングだこらぁああ!!!」
声のする方、遥か上空を見上げならすでにお決まりとなったやり取りを反射的に返してしまう。
「ってマジかよ……!」
視線の先には、曇天を突き破り、俺達の方へ急降下してくる我らがクラン"メメントモリ"のクランマスター。
フォートシュロフ13騎士の1人にして"暴君"の異名を持つ最上位プレイヤー、アニー・キャノンの姿があった。
「最初はどうなるかと思ったが、何とかなったな」
全員で連携を取りながら、エリア内のモンスターを倒していく。戦術とパターンが分かった今となっては、最初に会敵した時の様な絶望感は無い。
この戦いを通して、俺やブルーバロンのメンバーも一段、プレイヤースキルが上がった。
「何だかんだ2時間ぐらいか、ちょうど良いペース……」
安全になりつつあるエリアの十字路を通りかかった時に、一瞬だけ違和感を覚える。試しに数歩戻って、通路の右手を確認した。
「ウホ?」
機械的な赤い光を放つ2つの目が、俺との視線と交差する。そこにいたのは、全身が鈍い銀色の光を放つ装甲で覆われたゴリラの怪物だった。
「猿の次はゴリラかよ……!」
3メートルはある巨体が機械の体とは思えない程、滑らかな動きで不思議そうに首を傾げ、片腕で頭をポリポリと掻いている。
「アルゴノトス・メタリウム……!」
ゴリラの怪物の頭上に、源界フォントの赤文字でモンスターの名前が表示される。ボスモンスターだ!
「ウホ! ウホ! ウホ!」
メタリウムが体を持ち上げ、ドラミングを始める。周囲へドコドコと威圧的な音が広がり、自然と緊張感が高まっていった。
「来るぞ!!」
次の瞬間、巨獣がジャンプした。まだ10メートルはあった距離を一度の跳躍で飛び越え、その大きな右腕を振りかぶる。
ズガダン! 巨腕から繰り出された隕石の様な一撃は大地を粉々に粉砕する。脅威的なスピード、パワー、そして装甲。
まじでこのゲーム、プレイヤーへの遠慮が無さすぎる。だけど、それこそがこのゲームが面白い理由でもあった。
「おーしお前ら! ボス戦だ! 出し惜しみは必要ないぞ!」
「おう!」
「やってやるぜ!」
俺の声に、ブルーバロンとシュクレ教の面々もそれぞれの表情で応える。シュクレ教の魔法使いは緊張しているが、意を決した表情で自慢の詠唱を始め、ブルーバロンの戦士たちは勇気を振り絞って武器を構えた。
「攻撃の後には隙があるはずだ! なるべく包囲を崩さない用にして、自分が攻撃されてない時だけその隙を付いて攻撃するんだ!」
「了解!」
全員がメタリウムを取り囲む形で広がった。シュクレ教の魔法使いは後方から攻撃魔法を唱え始め、ブルーバロンの戦士達は前線で盾や武器を構える。俺はその隙間を縫って攻撃のチャンスを窺っていた。
「グルグル……!」
メタリウムが周囲へ視線を向け、獰猛な顔つきで包囲の一方、シュクレ今日の魔法使いの方向へ突撃する。その巨大な拳が空気を切り裂き、目の前の魔法使いを吹き飛ばした。
「今だ!」
吹き飛ばされたプレイヤーには構わず、モーション後の硬直を狙って攻撃を仕掛ける。
「グルルァア!」
しかし、メタリウムは生物的な滑らかな動きで直ぐに身を翻して、俺の飛び蹴りを片腕で受ける。
「やっ……トンズラ!」
凄まじい力を感じさせる真紅の目と視線が合い、背筋が凍る。咄嗟にスキルを発動して、距離を取った。
「こりゃヤベェぞ……!」
数秒前まで俺が居た位置を、衝撃波が突き抜けていく。空気の破裂する様な音が響いた。
メタリウムとの戦闘が始まってから徐々に、俺たちの舞台は追い詰められていく。強力な衝撃は攻撃で1人、また1人と仲間が倒れ、30分後、とうとう俺たちの部隊は壊滅状態にあった。
もしかして、敗北が前提の負けイベント的な何かじゃ無いだろうか。そんな思いが脳裏にチラリと浮かび、それを首を振って振り払う。
「ゴングマンさん、でもこれは流石に……!」
「このゲームに、あらかじめ勝敗が決まっている戦いなんてねぇ!」
生き残った数少ないブルーバロンの1人が、絶望的な表情で口を開いた。確かに、メタリウムのHPはまだ7割以上、残っている。
対して俺達は満身創痍で、生き残りも10人かそこらだ。
「あのアニーちゃんが、俺達にこのエリアの攻略を任せたんだ。やっと変わり始めたあの子の期待に応えられなくて、何が大人だ!」
そうは言うが、状況は如何ともし難い。もし、彼女がここにいればこの状況をどうやって解決するだろうか。
「おーい!」
「あはは、ヤバイ、幻聴が聞こえて来た」
「ゴングマンさん?」
小さく笑う俺に、ブルーバロンの男が首を傾げる。
「ここにアニーちゃんがいたらどんなに頼もしいかって思ったら、アニーちゃんの声が聞こえて来たよ」
「おーーーい!!」
「……」
幻聴だと思った声が、いよいよ無視できないレベルで聞こえて来て、ブルーバロンの男と2人で顔を見合わせる。
「ゴリラマンさーーーん!!」
「ゴリラじゃねぇゴングだこらぁああ!!!」
声のする方、遥か上空を見上げならすでにお決まりとなったやり取りを反射的に返してしまう。
「ってマジかよ……!」
視線の先には、曇天を突き破り、俺達の方へ急降下してくる我らがクラン"メメントモリ"のクランマスター。
フォートシュロフ13騎士の1人にして"暴君"の異名を持つ最上位プレイヤー、アニー・キャノンの姿があった。
10
あなたにおすすめの小説
異世界召喚に条件を付けたのに、女神様に呼ばれた
りゅう
ファンタジー
異世界召喚。サラリーマンだって、そんな空想をする。
いや、さすがに大人なので空想する内容も大人だ。少年の心が残っていても、現実社会でもまれた人間はまた別の空想をするのだ。
その日の神岡龍二も、日々の生活から離れ異世界を想像して遊んでいるだけのハズだった。そこには何の問題もないハズだった。だが、そんなお気楽な日々は、この日が最後となってしまった。
スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜
かの
ファンタジー
世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。
スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。
偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。
スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!
冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!
間違い召喚! 追い出されたけど上位互換スキルでらくらく生活
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕は20歳独身、名は小日向 連(こひなた れん)うだつの上がらないダメ男だ
ひょんなことから異世界に召喚されてしまいました。
間違いで召喚された為にステータスは最初見えない状態だったけどネットのネタバレ防止のように背景をぼかせば見えるようになりました。
多分不具合だとおもう。
召喚した女と王様っぽいのは何も持っていないと言って僕をポイ捨て、なんて世界だ。それも元の世界には戻せないらしい、というか戻さないみたいだ。
そんな僕はこの世界で苦労すると思ったら大間違い、王シリーズのスキルでウハウハ、製作で人助け生活していきます
◇
四巻が販売されました!
今日から四巻の範囲がレンタルとなります
書籍化に伴い一部ウェブ版と違う箇所がございます
追加場面もあります
よろしくお願いします!
一応191話で終わりとなります
最後まで見ていただきありがとうございました
コミカライズもスタートしています
毎月最初の金曜日に更新です
お楽しみください!
病弱少年が怪我した小鳥を偶然テイムして、冒険者ギルドの採取系クエストをやらせていたら、知らないうちにLV99になってました。
もう書かないって言ったよね?
ファンタジー
ベッドで寝たきりだった少年が、ある日、家の外で怪我している青い小鳥『ピーちゃん』を助けたことから二人の大冒険の日々が始まった。
癒し目的で始めたVRMMO、なぜか最強になっていた。
branche_noir
SF
<カクヨムSFジャンル週間1位>
<カクヨム週間総合ランキング最高3位>
<小説家になろうVRゲーム日間・週間1位>
現実に疲れたサラリーマン・ユウが始めたのは、超自由度の高いVRMMO《Everdawn Online》。
目的は“癒し”ただそれだけ。焚き火をし、魚を焼き、草の上で昼寝する。
モンスター討伐? レベル上げ? 知らん。俺はキャンプがしたいんだ。
ところが偶然懐いた“仔竜ルゥ”との出会いが、運命を変える。
テイムスキルなし、戦闘ログ0。それでもルゥは俺から離れない。
そして気づけば、森で焚き火してただけの俺が――
「魔物の軍勢を率いた魔王」と呼ばれていた……!?
癒し系VRMMO生活、誤認されながら進行中!
本人その気なし、でも周囲は大騒ぎ!
▶モフモフと焚き火と、ちょっとの冒険。
▶のんびり系異色VRMMOファンタジー、ここに開幕!
カクヨムで先行配信してます!
「キヅイセ。」 ~気づいたら異世界にいた。おまけに目の前にはATMがあった。異世界転移、通算一万人目の冒険者~
あめの みかな
ファンタジー
秋月レンジ。高校2年生。
彼は気づいたら異世界にいた。
その世界は、彼が元いた世界とのゲート開通から100周年を迎え、彼は通算一万人目の冒険者だった。
科学ではなく魔法が発達した、もうひとつの地球を舞台に、秋月レンジとふたりの巫女ステラ・リヴァイアサンとピノア・カーバンクルの冒険が今始まる。
異世界召喚された俺の料理が美味すぎて魔王軍が侵略やめた件
さかーん
ファンタジー
魔王様、世界征服より晩ご飯ですよ!
食品メーカー勤務の平凡な社会人・橘陽人(たちばな はると)は、ある日突然異世界に召喚されてしまった。剣も魔法もない陽人が頼れるのは唯一の特技――料理の腕だけ。
侵略の真っ最中だった魔王ゼファーとその部下たちに、試しに料理を振る舞ったところ、まさかの大絶賛。
「なにこれ美味い!」「もう戦争どころじゃない!」
気づけば魔王軍は侵略作戦を完全放棄。陽人の料理に夢中になり、次々と餌付けされてしまった。
いつの間にか『魔王専属料理人』として雇われてしまった陽人は、料理の腕一本で人間世界と魔族の架け橋となってしまう――。
料理と異世界が織りなす、ほのぼのグルメ・ファンタジー開幕!
俺得リターン!異世界から地球に戻っても魔法使えるし?アイテムボックスあるし?地球が大変な事になっても俺得なんですが!
くまの香
ファンタジー
鹿野香(かのかおる)男49歳未婚の派遣が、ある日突然仕事中に異世界へ飛ばされた。(←前作)
異世界でようやく平和な日常を掴んだが、今度は地球へ戻る事に。隕石落下で大混乱中の地球でも相変わらず呑気に頑張るおじさんの日常。「大丈夫、俺、ラッキーだから」
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる