28 / 149
万年寒鉄を求めて
専用装備を作ろうとするタイプのJK
しおりを挟む
NPCの女性に案内されて店内の最奥にある扉へ案内される。扉の向こうには金髪丸メガネで白衣を纏った女性が木製のテーブル越しに座っていた。
「やあ、待っていたよヨイニ君! それと……君は"暴君"のアニーちゃんかな。まずはまずは座ってよ」
白衣の女性に促されるまま、椅子に腰を下ろす。
「初めまして、私はニーズズ、鍛治クラン"ウェーランド"のクランマスターをやらせてもらっているよ」
「ニーズズさんが全プレイヤー最高の鍛治職人なの?」
「いいや、私もそれなりにはできるけど……仲介係だよ」
「私の専用装備を作って欲しいんだけど、お願いできる?」
「ああ、アニーちゃんはカオスルーラーだからね。制限も多いだろうから専用装備はあった方が良いよね」
ニーズズさんが私の装備を上から下まで見る。
机に両肘をついて祈る様に両手を組んだ。
「だけど、全プレイヤー最高の鍛治士、ヴォルドは"暴君"の依頼は受けないと言っている」
「それはお金じゃ解決できない問題?」
「君はそのお金を何処で何をして稼いでいるんだい?」
「8割ぐらいはPKだね」
「ならその資金の少なからずは、本来、私達のお金になるはずだった訳だ」
確かに私は戦闘プレイヤーだけじゃなくて、採集系のプレイヤーも狩っている。
まあ戦闘プレイヤーを狩るのだって遠縁には生産系プレイヤーの資金を奪っている事にはなるんだけれど。
「つまり……本来は私達のお金になるはずだったお金を渡されて装備を作ってくれって言われても嫌だってこと?」
私の質問にニーズズさんは頷いた。
「そうだね。専用装備を用意すればPKを止めるなんてことは無いんだろ?」
「もちろん」
「ヴォルドの専用装備を手に入れた"暴君"は今以上に暴れ回って、更に被害は拡大するだろ? 奪われたお金で装備を作って、更に奪われる様になるなんて……割に合わなさすぎる。いち職人として見れば面白そうな依頼だけどね」
うーん、これは困った。
専用装備は欲しいけどPKを止める訳にはいかない。
「どーーーしてもダメ?」
「いいや? アニーちゃんとって幸運な事に、条件付きで依頼を受けても良いよ」
ニーズズさんが引き出しから地図を取り出すとテーブルへ広げた。
「これは?」
「ゴブリン鉱山は知っているよね?」
「うん、通ってる。ダンジョンの中には入った事ないけど」
ゴブリン鉱山は現時点で行けるダンジョンの中で最高難易度と目されている。そのダンジョンを攻略したプレイヤーがここ最近の私の獲物だ。
「……実はダンジョン内に隠し通路が見つかってね。そこから山頂へ向かう道に抜けられる様なんだ」
「ふーん?」
「この道の先に強力なエネミーが居て、まだ誰も先を知らないんだ」
「それが鍛治クランと関係があるの?」
「まぁ確証がある訳じゃないんだけどね? 一般的に閉ざされた山頂にあるものといえば?」
「お宝?」
「そうだね、特に伝説の鉱石とか」
「じゃあそこのお宝を持って帰ってくれば依頼を受けてくれるの?」
「そうだね、それと今後はウェーランドのクランメンバーを狩場で見つけても多少の配慮をもらえるとありがたいな」
「うーん、配慮なら良いよ?」
「よし、じゃあ交渉成立だ」
ニーズズさんと握手を交わす。
「それで、どんな装備が欲しいのかな?」
ニーズズさんが地図をひっくり返して瞳を輝かせる。何だかんだ言って、彼女個人は依頼に乗り気なのだろう。
「私の体型でもちゃんと装備できるやつ!」
「うん、そりゃそうだよね。素材は何が良いとかある?」
「腕は刃物と殴り合える強度は欲しいから金属かな? 殴る時には腕は重い方が良いんだけど、格闘がメインだと腕の振りが遅いのは嫌なんだよねー」
「アニーちゃんのダメージソースって殴りとパイルバンカー、どっちの方が高いの?」
「パイルかなー」
「それなら腕は振りの速さ重視の装甲厚が薄いタイプのガントレットの方がいいんじゃないかな」
ニーズズさんが裏返した地図にメモを取る。
「耐性は何を優先したい?」
「たいせー?」
「斬撃に強いとか、打撃に強いとか、刺突に強いとか、火に強いとか」
「うーん難しいー」
私が頭を抱えるとニーズズさんが追加で判断材料を投下してくれる。
「斬撃と刺突はダメージ効率が高めだから厚く守った方が良いよ。フォートシュロフでは刺突と打撃を厚くするのが流行っているね」
「なんで刺突と打撃なの?」
「なんでだろうねー、どっかにしばき上げパンチングパイルバンカーをしてくる有名PKプレイヤーでもいるのかもねー」
へーそんなプレイヤーもいるんだねー。
何となく次のトレンドは雷耐性な気がするなー。
「じゃー耐性は任せるよ。あっでも属性耐性は炎を厚めにして欲しいな」
「うんうん、了解。デザインはどういうのが良いの?」
「尻尾と翼も装備できるデザインで、トゲトゲと流線型を組み合わせた感じが良い!」
「ベースカラーは?」
「迷彩効果のある黒かなー」
「ステータス補正は何を優先する?」
「AGIとSTRとINT」
「うんうん、なるほどねー」
ニーズズが書き込んでいた地図がそろそろ手狭になってきた所で、ヨイニが大きく咳払いをした。
「ウォホン!」
その声にハッとした様子でニーズズが顔を上げる。
「えっと、じゃあ続きは依頼を達成してからだね」
「確かに、今してもしょうがない話だったね」
「それじゃ、依頼の方よろしく!」
「やあ、待っていたよヨイニ君! それと……君は"暴君"のアニーちゃんかな。まずはまずは座ってよ」
白衣の女性に促されるまま、椅子に腰を下ろす。
「初めまして、私はニーズズ、鍛治クラン"ウェーランド"のクランマスターをやらせてもらっているよ」
「ニーズズさんが全プレイヤー最高の鍛治職人なの?」
「いいや、私もそれなりにはできるけど……仲介係だよ」
「私の専用装備を作って欲しいんだけど、お願いできる?」
「ああ、アニーちゃんはカオスルーラーだからね。制限も多いだろうから専用装備はあった方が良いよね」
ニーズズさんが私の装備を上から下まで見る。
机に両肘をついて祈る様に両手を組んだ。
「だけど、全プレイヤー最高の鍛治士、ヴォルドは"暴君"の依頼は受けないと言っている」
「それはお金じゃ解決できない問題?」
「君はそのお金を何処で何をして稼いでいるんだい?」
「8割ぐらいはPKだね」
「ならその資金の少なからずは、本来、私達のお金になるはずだった訳だ」
確かに私は戦闘プレイヤーだけじゃなくて、採集系のプレイヤーも狩っている。
まあ戦闘プレイヤーを狩るのだって遠縁には生産系プレイヤーの資金を奪っている事にはなるんだけれど。
「つまり……本来は私達のお金になるはずだったお金を渡されて装備を作ってくれって言われても嫌だってこと?」
私の質問にニーズズさんは頷いた。
「そうだね。専用装備を用意すればPKを止めるなんてことは無いんだろ?」
「もちろん」
「ヴォルドの専用装備を手に入れた"暴君"は今以上に暴れ回って、更に被害は拡大するだろ? 奪われたお金で装備を作って、更に奪われる様になるなんて……割に合わなさすぎる。いち職人として見れば面白そうな依頼だけどね」
うーん、これは困った。
専用装備は欲しいけどPKを止める訳にはいかない。
「どーーーしてもダメ?」
「いいや? アニーちゃんとって幸運な事に、条件付きで依頼を受けても良いよ」
ニーズズさんが引き出しから地図を取り出すとテーブルへ広げた。
「これは?」
「ゴブリン鉱山は知っているよね?」
「うん、通ってる。ダンジョンの中には入った事ないけど」
ゴブリン鉱山は現時点で行けるダンジョンの中で最高難易度と目されている。そのダンジョンを攻略したプレイヤーがここ最近の私の獲物だ。
「……実はダンジョン内に隠し通路が見つかってね。そこから山頂へ向かう道に抜けられる様なんだ」
「ふーん?」
「この道の先に強力なエネミーが居て、まだ誰も先を知らないんだ」
「それが鍛治クランと関係があるの?」
「まぁ確証がある訳じゃないんだけどね? 一般的に閉ざされた山頂にあるものといえば?」
「お宝?」
「そうだね、特に伝説の鉱石とか」
「じゃあそこのお宝を持って帰ってくれば依頼を受けてくれるの?」
「そうだね、それと今後はウェーランドのクランメンバーを狩場で見つけても多少の配慮をもらえるとありがたいな」
「うーん、配慮なら良いよ?」
「よし、じゃあ交渉成立だ」
ニーズズさんと握手を交わす。
「それで、どんな装備が欲しいのかな?」
ニーズズさんが地図をひっくり返して瞳を輝かせる。何だかんだ言って、彼女個人は依頼に乗り気なのだろう。
「私の体型でもちゃんと装備できるやつ!」
「うん、そりゃそうだよね。素材は何が良いとかある?」
「腕は刃物と殴り合える強度は欲しいから金属かな? 殴る時には腕は重い方が良いんだけど、格闘がメインだと腕の振りが遅いのは嫌なんだよねー」
「アニーちゃんのダメージソースって殴りとパイルバンカー、どっちの方が高いの?」
「パイルかなー」
「それなら腕は振りの速さ重視の装甲厚が薄いタイプのガントレットの方がいいんじゃないかな」
ニーズズさんが裏返した地図にメモを取る。
「耐性は何を優先したい?」
「たいせー?」
「斬撃に強いとか、打撃に強いとか、刺突に強いとか、火に強いとか」
「うーん難しいー」
私が頭を抱えるとニーズズさんが追加で判断材料を投下してくれる。
「斬撃と刺突はダメージ効率が高めだから厚く守った方が良いよ。フォートシュロフでは刺突と打撃を厚くするのが流行っているね」
「なんで刺突と打撃なの?」
「なんでだろうねー、どっかにしばき上げパンチングパイルバンカーをしてくる有名PKプレイヤーでもいるのかもねー」
へーそんなプレイヤーもいるんだねー。
何となく次のトレンドは雷耐性な気がするなー。
「じゃー耐性は任せるよ。あっでも属性耐性は炎を厚めにして欲しいな」
「うんうん、了解。デザインはどういうのが良いの?」
「尻尾と翼も装備できるデザインで、トゲトゲと流線型を組み合わせた感じが良い!」
「ベースカラーは?」
「迷彩効果のある黒かなー」
「ステータス補正は何を優先する?」
「AGIとSTRとINT」
「うんうん、なるほどねー」
ニーズズが書き込んでいた地図がそろそろ手狭になってきた所で、ヨイニが大きく咳払いをした。
「ウォホン!」
その声にハッとした様子でニーズズが顔を上げる。
「えっと、じゃあ続きは依頼を達成してからだね」
「確かに、今してもしょうがない話だったね」
「それじゃ、依頼の方よろしく!」
21
あなたにおすすめの小説
異世界召喚に条件を付けたのに、女神様に呼ばれた
りゅう
ファンタジー
異世界召喚。サラリーマンだって、そんな空想をする。
いや、さすがに大人なので空想する内容も大人だ。少年の心が残っていても、現実社会でもまれた人間はまた別の空想をするのだ。
その日の神岡龍二も、日々の生活から離れ異世界を想像して遊んでいるだけのハズだった。そこには何の問題もないハズだった。だが、そんなお気楽な日々は、この日が最後となってしまった。
スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜
かの
ファンタジー
世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。
スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。
偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。
スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!
冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!
間違い召喚! 追い出されたけど上位互換スキルでらくらく生活
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕は20歳独身、名は小日向 連(こひなた れん)うだつの上がらないダメ男だ
ひょんなことから異世界に召喚されてしまいました。
間違いで召喚された為にステータスは最初見えない状態だったけどネットのネタバレ防止のように背景をぼかせば見えるようになりました。
多分不具合だとおもう。
召喚した女と王様っぽいのは何も持っていないと言って僕をポイ捨て、なんて世界だ。それも元の世界には戻せないらしい、というか戻さないみたいだ。
そんな僕はこの世界で苦労すると思ったら大間違い、王シリーズのスキルでウハウハ、製作で人助け生活していきます
◇
四巻が販売されました!
今日から四巻の範囲がレンタルとなります
書籍化に伴い一部ウェブ版と違う箇所がございます
追加場面もあります
よろしくお願いします!
一応191話で終わりとなります
最後まで見ていただきありがとうございました
コミカライズもスタートしています
毎月最初の金曜日に更新です
お楽しみください!
病弱少年が怪我した小鳥を偶然テイムして、冒険者ギルドの採取系クエストをやらせていたら、知らないうちにLV99になってました。
もう書かないって言ったよね?
ファンタジー
ベッドで寝たきりだった少年が、ある日、家の外で怪我している青い小鳥『ピーちゃん』を助けたことから二人の大冒険の日々が始まった。
癒し目的で始めたVRMMO、なぜか最強になっていた。
branche_noir
SF
<カクヨムSFジャンル週間1位>
<カクヨム週間総合ランキング最高3位>
<小説家になろうVRゲーム日間・週間1位>
現実に疲れたサラリーマン・ユウが始めたのは、超自由度の高いVRMMO《Everdawn Online》。
目的は“癒し”ただそれだけ。焚き火をし、魚を焼き、草の上で昼寝する。
モンスター討伐? レベル上げ? 知らん。俺はキャンプがしたいんだ。
ところが偶然懐いた“仔竜ルゥ”との出会いが、運命を変える。
テイムスキルなし、戦闘ログ0。それでもルゥは俺から離れない。
そして気づけば、森で焚き火してただけの俺が――
「魔物の軍勢を率いた魔王」と呼ばれていた……!?
癒し系VRMMO生活、誤認されながら進行中!
本人その気なし、でも周囲は大騒ぎ!
▶モフモフと焚き火と、ちょっとの冒険。
▶のんびり系異色VRMMOファンタジー、ここに開幕!
カクヨムで先行配信してます!
「キヅイセ。」 ~気づいたら異世界にいた。おまけに目の前にはATMがあった。異世界転移、通算一万人目の冒険者~
あめの みかな
ファンタジー
秋月レンジ。高校2年生。
彼は気づいたら異世界にいた。
その世界は、彼が元いた世界とのゲート開通から100周年を迎え、彼は通算一万人目の冒険者だった。
科学ではなく魔法が発達した、もうひとつの地球を舞台に、秋月レンジとふたりの巫女ステラ・リヴァイアサンとピノア・カーバンクルの冒険が今始まる。
異世界召喚された俺の料理が美味すぎて魔王軍が侵略やめた件
さかーん
ファンタジー
魔王様、世界征服より晩ご飯ですよ!
食品メーカー勤務の平凡な社会人・橘陽人(たちばな はると)は、ある日突然異世界に召喚されてしまった。剣も魔法もない陽人が頼れるのは唯一の特技――料理の腕だけ。
侵略の真っ最中だった魔王ゼファーとその部下たちに、試しに料理を振る舞ったところ、まさかの大絶賛。
「なにこれ美味い!」「もう戦争どころじゃない!」
気づけば魔王軍は侵略作戦を完全放棄。陽人の料理に夢中になり、次々と餌付けされてしまった。
いつの間にか『魔王専属料理人』として雇われてしまった陽人は、料理の腕一本で人間世界と魔族の架け橋となってしまう――。
料理と異世界が織りなす、ほのぼのグルメ・ファンタジー開幕!
俺得リターン!異世界から地球に戻っても魔法使えるし?アイテムボックスあるし?地球が大変な事になっても俺得なんですが!
くまの香
ファンタジー
鹿野香(かのかおる)男49歳未婚の派遣が、ある日突然仕事中に異世界へ飛ばされた。(←前作)
異世界でようやく平和な日常を掴んだが、今度は地球へ戻る事に。隕石落下で大混乱中の地球でも相変わらず呑気に頑張るおじさんの日常。「大丈夫、俺、ラッキーだから」
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる