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オーディアス攻略作戦
親バレするタイプのJK
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ゲームを終了して、感覚が現実世界へと帰ってくる。小さなため息を1つついて、ゲーム機を取り外してベッドから起き上がった。
「……」
立ち鏡の前に立って、自分の姿を見つめる。捻れた角、自在に動く腰の翼も、それに尻尾だって無い。どこにでもいる、どこかか弱い雰囲気のある少女の姿がそこにはあった。
ゲームの中では誰からも恐れられる"暴君"も、現実世界では親に逆らう事もできないただの女子高生だ。
「まぁ、そりゃそうだよね」
胸元まで伸びている髪の毛を手で弄びながら、自虐的にふふっと笑った。ゲームの中でどれだけ活躍したって、現実の自分が変わることはない。
そんな、当然のことを再確認してテレビを付ける。気分転換に例のCMでも見てみよう。
*「Inequality&Fairここはどこまでも不平等で、そして公平な世界――」*
チャンネルを合わせると、ちょうどタイミングよくCMが流れ出した。すでに親の声より聞いたログインルームのAIボイスが流れる。それに合わせて、画面一杯に広大な森が映されて流れていく。
「(あーそう言えば、私が初めてログインした時もそんな風な事を言われったっけなー)」
私はそんなことを考えながら、ベッドの上で体育座りをしながら枕を抱えてCMを眺める。
*「自らの力を極め、世界を開拓する者――」*
画面には、第1回イベントでキングゴブリンと戦う私の姿が映し出された。最早、出演に関しては何も言うまい。
「(でも……あれは楽しかったな)」
最後の最後、窮地に陥った瞬間。イベントに参加した皆が、私に希望を託して応援してくれた。
初めて誰かから、世界から自分は自分のまま、この世界にいて良いんだって感じられた。たとえ仮想世界での出来事だったとしても、それで心が救われる事だってある。
*「世界の真理を解き明かし、革命を起こす者――」*
今度は、シュクレが身の丈に合わない大きな杖を振り回しながら大量の敵を薙ぎ倒すシーンが映し出された。
他人の事を推し量ろうとするのは傲慢な事だけれど、彼女もこのゲームを始めて何かを掴んだ。
*「現実ではできない様な、もう1つの人生をお楽しみください」*
そうして、テレビのCMは終わった。
人差し指を突き出す様な仕草をテレビのモーションキャプチャーが検知し、画面の電源が切れる。真っ暗な画面に私の顔がボンヤリと反射して映る、その顔は、僅かに笑っていた。
「奏音、起きているか?」
ゴンゴン、と無遠慮にドアが叩かれ、続いてお父様の声が聞こえてきた。普段から高圧的な声音に、今はさらに怒りの色が感じ取られる。
「(めんどうくさいなぁ……)」
私はこの人が好きじゃない。
普段から高圧的だし、過剰に人の道を説いてきたり、正しくあろうとしてもつい感情が入っちゃって論理崩壊しても引っ込みがつかなくなったり。不完全なのに、不完全なのを認識できていない。
そして私は、そんな彼よりずっと不出来で、彼の庇護下にいて、言う事を聞かざるおえない立場だ。
「はい、お父様、どうされましたか?」
急いでドアを開けて、眉間に皺を寄せながら人を殺しそうな眼力で見下ろす父を見上げる。
「これは、どう言う事だ?」
父はそう言うと、懐から携帯端末を取り出して私の方へディスプレイを向けてきた。そこにはつい先ほど見ていた、IAFのプロモーションムービーが綺麗に写っている。
瞬間、血の気が引く。
「なな、なんのことでしょう?」
足元の地面が急に消失したかの様な浮遊感を味わうと同時に、脳がこの危機的な状況を打開すべく高速で回転を始める。
幼稚園での記憶、小学生での記憶、暗黒の中学時代、そして、与一君と再会した高校入学初日のこと。それらが使い古されたレトロフィルムの様に脳内をスクロールしていく。
そして私はたった1つの真理に辿り着いた。
「(あっこれ走馬灯だ、終わったこれ死んだ)」
「誤魔化せる訳あるか!!」
全てを察して自ら天へ向かい始めた魂が父の怒号にびっくりして体の中に帰ってきた。
「これは、お前だろう!」
そう言って、父がさらに携帯端末のディスプレイを私の方へと突き出す。そこではちょうど、私は大量PKをして狂気乱舞しているシーンだった。
悪逆非道、存在が反則。IAFで"暴君"と恐れられるアニー・キャノン(私のキャラクター)がどう考えても常軌を角度にして90度ぐらい逸しちゃってる奇声を発しながら大暴れしていた。
「た、確かに声が少し似ている様ですが……」
私が震える声でワタワタしながら、現実逃避気味に一縷の望みを託して弁明を試みると、父の額に特大の青筋が浮かぶ。
「声なんて知るか! これはどう考えても風間流本家の技だ!! そして、この家でこんな事をするのはお前ぐらいだ!」
「そ、そんな……」
何かを言おうとするも、何も思いつかない。いや、言い訳の言葉は湯水の如く思い浮かぶけど、そのどれも成功する道筋が無かった。
「(でもそっか、お父様は、私が"そんなこと"をしそうだって思ってたんだ)」
私は、IAFを始めるまで私の中にある破壊衝動? みたいな物に全くの無自覚だった。だけど、彼は現実とはかけ離れた言動をしている私を見て、一瞬で確信を得たらしい。
もしかして、私は私が気がついていないだけで、現実でもそれなりに異常者的な片鱗を見せてしまっていたのだろうか。
「(もしそうなら、お父様の考えも良くわかる。だって、ゲーム世界での私はどう考えても異常者だ)」
「普段から、風間家の伝統を汚す様な真似はするなと言っていただろう! このゲームはお前に悪影響だ、以後、禁止する!」
私が何も言えずに口をパクパクしていると、父は一方的に言い放つとバァン! と扉を閉めて出て行った。
「……」
立ち鏡の前に立って、自分の姿を見つめる。捻れた角、自在に動く腰の翼も、それに尻尾だって無い。どこにでもいる、どこかか弱い雰囲気のある少女の姿がそこにはあった。
ゲームの中では誰からも恐れられる"暴君"も、現実世界では親に逆らう事もできないただの女子高生だ。
「まぁ、そりゃそうだよね」
胸元まで伸びている髪の毛を手で弄びながら、自虐的にふふっと笑った。ゲームの中でどれだけ活躍したって、現実の自分が変わることはない。
そんな、当然のことを再確認してテレビを付ける。気分転換に例のCMでも見てみよう。
*「Inequality&Fairここはどこまでも不平等で、そして公平な世界――」*
チャンネルを合わせると、ちょうどタイミングよくCMが流れ出した。すでに親の声より聞いたログインルームのAIボイスが流れる。それに合わせて、画面一杯に広大な森が映されて流れていく。
「(あーそう言えば、私が初めてログインした時もそんな風な事を言われったっけなー)」
私はそんなことを考えながら、ベッドの上で体育座りをしながら枕を抱えてCMを眺める。
*「自らの力を極め、世界を開拓する者――」*
画面には、第1回イベントでキングゴブリンと戦う私の姿が映し出された。最早、出演に関しては何も言うまい。
「(でも……あれは楽しかったな)」
最後の最後、窮地に陥った瞬間。イベントに参加した皆が、私に希望を託して応援してくれた。
初めて誰かから、世界から自分は自分のまま、この世界にいて良いんだって感じられた。たとえ仮想世界での出来事だったとしても、それで心が救われる事だってある。
*「世界の真理を解き明かし、革命を起こす者――」*
今度は、シュクレが身の丈に合わない大きな杖を振り回しながら大量の敵を薙ぎ倒すシーンが映し出された。
他人の事を推し量ろうとするのは傲慢な事だけれど、彼女もこのゲームを始めて何かを掴んだ。
*「現実ではできない様な、もう1つの人生をお楽しみください」*
そうして、テレビのCMは終わった。
人差し指を突き出す様な仕草をテレビのモーションキャプチャーが検知し、画面の電源が切れる。真っ暗な画面に私の顔がボンヤリと反射して映る、その顔は、僅かに笑っていた。
「奏音、起きているか?」
ゴンゴン、と無遠慮にドアが叩かれ、続いてお父様の声が聞こえてきた。普段から高圧的な声音に、今はさらに怒りの色が感じ取られる。
「(めんどうくさいなぁ……)」
私はこの人が好きじゃない。
普段から高圧的だし、過剰に人の道を説いてきたり、正しくあろうとしてもつい感情が入っちゃって論理崩壊しても引っ込みがつかなくなったり。不完全なのに、不完全なのを認識できていない。
そして私は、そんな彼よりずっと不出来で、彼の庇護下にいて、言う事を聞かざるおえない立場だ。
「はい、お父様、どうされましたか?」
急いでドアを開けて、眉間に皺を寄せながら人を殺しそうな眼力で見下ろす父を見上げる。
「これは、どう言う事だ?」
父はそう言うと、懐から携帯端末を取り出して私の方へディスプレイを向けてきた。そこにはつい先ほど見ていた、IAFのプロモーションムービーが綺麗に写っている。
瞬間、血の気が引く。
「なな、なんのことでしょう?」
足元の地面が急に消失したかの様な浮遊感を味わうと同時に、脳がこの危機的な状況を打開すべく高速で回転を始める。
幼稚園での記憶、小学生での記憶、暗黒の中学時代、そして、与一君と再会した高校入学初日のこと。それらが使い古されたレトロフィルムの様に脳内をスクロールしていく。
そして私はたった1つの真理に辿り着いた。
「(あっこれ走馬灯だ、終わったこれ死んだ)」
「誤魔化せる訳あるか!!」
全てを察して自ら天へ向かい始めた魂が父の怒号にびっくりして体の中に帰ってきた。
「これは、お前だろう!」
そう言って、父がさらに携帯端末のディスプレイを私の方へと突き出す。そこではちょうど、私は大量PKをして狂気乱舞しているシーンだった。
悪逆非道、存在が反則。IAFで"暴君"と恐れられるアニー・キャノン(私のキャラクター)がどう考えても常軌を角度にして90度ぐらい逸しちゃってる奇声を発しながら大暴れしていた。
「た、確かに声が少し似ている様ですが……」
私が震える声でワタワタしながら、現実逃避気味に一縷の望みを託して弁明を試みると、父の額に特大の青筋が浮かぶ。
「声なんて知るか! これはどう考えても風間流本家の技だ!! そして、この家でこんな事をするのはお前ぐらいだ!」
「そ、そんな……」
何かを言おうとするも、何も思いつかない。いや、言い訳の言葉は湯水の如く思い浮かぶけど、そのどれも成功する道筋が無かった。
「(でもそっか、お父様は、私が"そんなこと"をしそうだって思ってたんだ)」
私は、IAFを始めるまで私の中にある破壊衝動? みたいな物に全くの無自覚だった。だけど、彼は現実とはかけ離れた言動をしている私を見て、一瞬で確信を得たらしい。
もしかして、私は私が気がついていないだけで、現実でもそれなりに異常者的な片鱗を見せてしまっていたのだろうか。
「(もしそうなら、お父様の考えも良くわかる。だって、ゲーム世界での私はどう考えても異常者だ)」
「普段から、風間家の伝統を汚す様な真似はするなと言っていただろう! このゲームはお前に悪影響だ、以後、禁止する!」
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