【野生の暴君が現れた!】忍者令嬢はファンタジーVRMMOで無双する【慈悲はない】《殺戮のパイルバンカー》

オモチモチモチモチモチオモチ

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オーディアス攻略作戦

実は黒幕だったかもしれないタイプのJK

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「お迎えに上がるのでそこでお待ちください」

 父は私の方へとがめるような視線を一瞬だけ送り、小さくため息をついて与一へ伝え、玄関の方へ消えていった。

奏音かのん、客間へ行っていなさい」

「えっあっはい」

 父の言葉に、若干キョドリながら返事をする。

 私にとって、彼は絶対に逆らうことができない存在で、交渉によって状況が動く何て考えたことも無かった。

「でも、与一は動かしたんだ……」

 絶対に壊れないと思っていた大きな、壁。私の心にしか無い壁にハンマーが打ち付けられるのを感じながら、客間へ足を進めた。





「あっ」

 客間の扉を開けると、途中で父が呼んだのだろう。既に兄と姉、そして母の3人が集合していた。

 自然と私に視線が集中して、なんだか責められているような気分になった。いや、実際にそうなんだろうけど。

「CM、見たぞ」

 下座側は残り1席、父は下座に座るから私は与一と一緒に上座ってことになるかな。そう考えて席につくなり、兄がポツリとつぶやいた。

「……」

 なんと答えれば良いのか分からなくて、間が空いてしまった。この時間が長くなるほど、より答えにくくなるよね。

「奏音」

 気まずい空気が流れる中、再び扉が開いた。そこには父と、彼に連れられた与一が居た。

「与一、ごめん……」

「いいや、奏音が謝ることなんて何も無いよ」

 泣きそうな声で反射的に私が謝ると与一はほっとした表情を浮かべて、優しく私の手を包んでくれた。

「それで、聞きたい事というのは?」

 苛立たしげに下座へ座った父が切り出す。与一は彼の方へ向き直って、毅然きぜんとした態度で答えた。

「奏音さんのゲームを禁止したそうですね。なぜですか?」

「……奏音はあまり成績が良くない。学生の本分を果たせない状態でゲームをする余裕はない」

「奏音さんは学校で非常に優秀な成績を残しています、把握されてないんですか?」

「良くなってきたからこそ……今は勉学に集中するべきだ」

 バンッ。与一が強くテーブルを叩いた。そのまま父の方を睨みながら言葉を続ける。

「じゃああなたは、仕事や自己研鑽以外、趣味の時間を全く作っていないんですか?」

 与一の言葉に、父は少し笑って答える。

「いいや」

「どうして、ご自身がやっていない事を娘さんにさせるんですか?」

「私と娘では状況が違う」

「ご自身でやってもうまくいかない方法を想像だけで子供にやらせてうまく行くわけないじゃないですか」

 与一の言葉に、父が押し黙る。その様子を見て、彼女は小さく一度だけ深呼吸をして言葉を続けた。

「もうそろそろ、建前で話すのを辞めませんか? 奏音さんにあのゲームをさせたくない本音を聞かせてください」

 部屋の中に、長い……長い無音の時間が流れた。やがて、父が唇を震わせてゆっくりと喋り出す。

「……奏音は普通じゃ無いんだ。どう表現すれば良いのか、感情の制御が難しい一方、すごく簡単に、冷静に悪意を組み立ててしまう」

 父の言葉に続いて、兄や姉からも私の激ヤバなエピソードが次々と語られていく。

 IAFを通して自分と向き合った私は、既に自分がどういう人間かを認識している。だけど父や家族は、もっと前から知っていたらしい。

「(……あれこれ、悪いの私じゃ無い?)」

 今まで私は、この家族において自分をどこか被害者の様に思っている節があったけど、それは傲慢な考えだ。

「そうですね。多分、奏音さんは状況が許されるならなんの躊躇ためらいも無く人を害することができる。それは私も感じています」

 父の話す言葉に、与一もうなずいて返した。その様子を見て、彼はほっとした様に言葉を続けた。

「奏音が社会で生きていくには、他の人より多くの努力が必要だ。そしてその教育を施すのは親の責任だと私は思っている」

「奏音さんに厳しく接したり、勉強を強要する事がどうして社会で生きていく教育なんですか?」

 父の言葉に、与一が聞き返す。共通理解が得られたことで、部屋には最初にあった様な剣呑な雰囲気は薄れつつあった。

「AIが普及した現代において、勉学そのものの重要性は高く無い。しかし、勉学を通して鍛えられる知性には高い価値がある。そして、どんな時代でもより職業の選択肢が多いのは知性に優れた者だ」

 父はそこで一度言葉を区切り、お茶を一口。

「例えば奏音が将来、あまり人と関わらないで生きる選択しようとした時、それが可能であって欲しい。奏音が間違いを犯さないためにも」

「……お話はわかりました。でも、奏音さんは現時点で優秀な成績を残しています」

「奏音の厳しく接するのは、奏音には他の人よりも強い、道徳観が必要だと考えているからだ。君は、あのCMを見たか?」

 父が言うCMとは、今回の発端となった、私がゲーム内で興奮しながら大暴れしているシーンのことだ。

「もちろん、見ました」

「奏音の心には、悪魔が住んでいる。あのゲームはそれを呼び覚ましてしまう。そのうち、現実でも同様の事をしてしまったらどうする」

 父の言葉に、今度は与一が小さく笑った。

「じゃああなたは、VR世界に入ると現実とVRの区別がつかなくなるんですか?」

「いいや、それは無いが……」

「そうですよね。なら、奏音さんだって同じです」

「いや、奏音は……」

 父はそこまで行って、言い淀む。その様子を見て、与一は静かに一呼吸してから言葉を続けた。

「私は教科書でしか知らないですが、かつてテレビゲームが発売されてから、残虐ざんぎゃくな描写のあるゲームは子供に悪影響だって話があったそうですね」

 与一の言葉に、私も現代史の内容を思い出す。ちょうど、一ヶ月前に中間試験があったばかりだ。

 私の記憶では確かにそこにテレビゲームが発売された歴史やVR技術の進歩と影響に関する話があった。

「あ、ああ」

 父が頷いたのを見て、与一がさらに続けた。

「でもそれは、統計的な事実として否定されましたよね。過去には凶悪犯がゲーム廃人だった事もあったみたいですが、別にゲームが無い時代にだって凶悪犯はいた」

「そう、だな」

「構造としてはそれと全く同じです。結局、新しい娯楽の影響が不安になるのは成長期にその娯楽がなかった世代で、子供の世代からすれば当然の事実として娯楽と現実は全くの別物です」

 与一が言葉を尽くす。父が、家族が私からゲームを取り上げる理由を聞いて、合理的に一歩ずつ、不安要素を排除していく。

 力関係を用いず、善意と善意を結び合わせて相手の不安を排除していく。これが、言葉の持つ本当の力か。

「私がVRゲームに誘う前の奏音さんは、すごく……辛そうで、ご家族の事を話す言葉はまるで悲鳴の様に聞こえました。でも、今は毎日が楽しそうですし、成績も良いです」

 与一はそこで、言葉を一度区切った。

「だから、彼女から幸せを奪わないでください」

 与一の言葉を最後まで聞き終え、父が呆然とした表情で天井の方を見つめる。そして、大きく息を吐いて。

「……ダメだ」
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