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第11話 約束
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「魔法弾を私にも見せてください。かなり注目されてるみたいじゃないですか!」
しばらく抱きしめられていたが紗奈は身体を離すとそう口にした。
「あ、ああ。まぁな。それじゃあ、ちょっと寒いけど射撃場の方へ行こうか」
俺は紗奈を伴い玄関から出た。外は街灯が一つしかないため陽が沈んだ後はかなり薄暗い。射撃場への道を二人で歩いていく。
二人とも吐く息が白くなっている。気温は5度前後だろうか。檜原村の冬は都内よりもさらに寒い。
この三ヶ月間、魔法弾の開発と大量生産に没頭していたため、季節を感じ取る余裕もなかった。唯を助けることが出来たら、しばらくは仕事はせずにゆっくりとしたいな。
隣を歩く紗奈と目があった。いつ見ても綺麗な顔立ちをしている。控えめに言ってもとんでもない美少女だ。
紗奈とのんびり過ごせたらそれだけで何もいらないぐらい幸せだろう。紗奈を見ながらそんなことを考えていると不思議そうな顔をしながら紗奈が口を開いた。
「どうしました? 私の顔をそんなまじまじと見て」
「いや、ほんと久しぶりだなと思って……」
「なんだ……。こういう時はかわいくて見惚れてた。ぐらい言ってくださいよ」
「可愛くて見惚れてたよ」
「もう遅いです」
紗奈は悪戯な笑みを浮かべた。笑顔も悔しいぐらいかわいい。美少女はただ生きているだけで周りの人をドキドキさせてくる罪深い生き物だ。
射撃場兼店舗の入り口に着くと俺は鍵を開け、中に入った。紗奈の前で5種類の9ミリの弾を披露した。
電灯と昔ながらの石油ストーブをつけるとカウンターの上に5発の魔法弾を出した。
「これが開発した魔法弾だよ。右から順に火炎弾、電撃弾、氷結弾、風刃弾、爆裂弾」
俺は一つ一つの魔法弾を説明していった。
「5種類もあるんですか。これならほとんどの魔物の弱点属性を狙えますね。あれ? 優斗さんって土属性魔法も使えましたよね? 土属性の魔法弾は作らないんですか?」
「やってみたけど土属性魔法は付与できなかったんだ。まぁよく考えてみたら土属性魔法は他の属性魔法とは違って、岩や地面を直接的に操作することが多いからな。弾に込めることはできないんだと思う」
「なるほど……。では、弾を見せて頂いても良いですか?」
「ああ」
俺は5発の魔法弾をマガジンに詰め、次々と発射していった。炎や氷、雷や風といった魔法が発動し、射撃場の土壁を痛めつけていく。
最後に放った爆裂弾は西洋甲冑を粉々にした。破壊された甲冑の金属片がカウンターの近くまで飛んできたが少し前の地面に落下した。
「ど、どうかな?」
「すっっごいです!! 弾の中にこれほどの威力の魔法を込められるなんて、驚きました。優斗さん、とんでもない発明をしましたね!!」
「ありがとう」
「本当にすごいですよ! 先輩は只者ではありません!!」
俺のことをよく知る紗奈からの褒め言葉は今までの誰の言葉よりも嬉しかった。
「弾を見せてもらってもいいですか?」
「ああ」
俺は箱の中からまた5発取り出し射撃カウンターの上に置いた。紗奈は火炎弾を手に取ると注意深く観察している。
「B級魔法を使うには一回3万オーラぐらい消費しますよね。この弾の先にもそれぐらいのオーラが込められているんですか?」
「いや、それがさ。大した量は使ってないんだ。3万の100分の1も使ってない」
「えっ!? そうなんですか? それなのにB級魔法並の威力があるんですか!?」
「そうなんだよ。俺も驚いたよ。どうやら弾丸にオーラを付与すると威力が爆発的に上がるみたいなんだ」
「そうなんですね……。これは革命ですよ!! この弾を使うだけで誰でもB級魔法が使えるんですから。今後、探索者達のパワーバランスにも変化が出ると思います」
「ありがとう。紗奈に褒められるとすごく嬉しいよ」
「いや、ほんと流石としか言えません。! 昔からオーラのコントロールは抜群に上手かったですし、なんでも器用にこなす所を尊敬してきましたが、こんな凄いものを開発するとは思いませんでした。本当に尊敬しますよ」
「ありがとう」
「ところで、Zで見ましたが、確か50発入りの箱が5万円なんですよね」
「ああ」
「安すぎます!!」
「えっ? そうかな?」
「それはもう、圧倒的に! 先輩の感覚はどうかしてますよ。明日からすぐ値上げしましょう。倍の値段に!」
「ええ!? 倍!? それは流石にまずいんじゃ……。せっかくついたお客さんがいなくなっちゃうよ!」
倍と聞いて焦ってしまう。9ミリ弾は元々の仕入れ値が1発四十円だ。俺はそれを1発千円にして売っている。原価の20倍だ。もちろんオーラを込めているから決して高くはないと思っていたのだが、流石に倍の値段は気が引けてしまう。それに少しずつ仲良くなってきていた常連さんにがっかりされるのも嫌だった。
「先輩、自分のZに来てるコメントちゃんと読んでますか? みんな安すぎるって言ってますよ。需要と供給のバランスが全く取れていないんです! だから、おそらく近いうちに値上げするだろうという噂がすでに広がっていますよ」
「そ、そうだったんだ」
「ええ、すでに別のフリマサイトでは大体3倍の値段で転売されています」
「ええっ! 転売!?」
「当たり前じゃないですか、先輩が安く売りすぎたんですからそりゃそうなりますよ! 3倍でもすぐに買い手がつくぐらいなんですから2倍は何ら問題がありません。少し心配でしたら明日は様子を見て、明後日からでもいいので値上げしましょう」
「わ、分かった。紗奈がそう言うなら」
「B級魔法が一回千円で打てるなんて安すぎます。それに先輩は唯ちゃんのために少しでも多くのお金を集めなきゃいけないんですよね? だったら最終的には15万円まで上げましょう」
確かに2億円あっても確実にエリクサーを競り落とせるとは限らない。状況によってはもっと高くなることもあり得るだろう。金は多ければ多いだけあるに越したことはなかった。
「分かったよ」
紗奈は昔から頭がキレる。紗奈の言う通りにしておけばきっとうまくいくだろう。俺はさっそく明後日から値上げすることをZ上で告知した。
♢ ♢ ♢
「えっ!」
古民家に向かうために外に出ると、紗奈は突然叫んだ。目を見開き、凄い形相をしている。
紗奈の視線の先にはオーラ回復薬の空瓶が大量に積まれていた。
「あの瓶……、あれ、『タミエル』ですよね……、まさか、優斗さん……あれを飲んだんですか……」
紗奈は血の気が引いたような顔をしている。一番見られちゃいけない人に見られてしまった。早く捨てておけばよかったと後悔する。
「ああ。短い期間で開発するためには仕方なかったんだ」
「な、何本ぐらい飲んだんですか!?」
紗奈は声を震わせながらでこちらを見てくる。
「一日10本で50日だから。500本ぐらいかな。たぶん……」
俺の言葉を聞いた紗奈は、次第に顔面が蒼白になっていった。そして、大粒の涙を流し始めた。
「なにやってるんですか!! 優斗さん、4年以上も寿命が縮まってしまってるじゃないですか!!」
紗奈は両眼から溢れ落ちる涙を拭おうともせず俺を睨んでくる。
「ごめん。だけど、他に手はなかったんだ」
紗奈は顔を紅潮させながら震えている。
「ばか!!」
紗奈はそう言いながら抱きついてきた。すごく強い力だ。
「本当に1日に10本も飲んだんですか?」
「ああ」
「一本飲んだだけでも、数時間は耐えられない激痛が伴うと言うのに……。そんな苦しみに耐えながら、魔法弾を作り出したんですか……」
「唯を救うにはこれしかないと思ったんだ。心配かけてごめん」
「なんて人なんですか、あなたは……」
紗奈はしばらくの間、両手で顔を押さえて泣き続けていた。大切な人を悲しませてしまったことに胸が痛んだ。
しばらくして紗奈は泣き腫らした顔で口を開いた。
「優斗さんにとって妹さんが大切なように、私にとっては優斗さんが何より大切なんです!」
「紗奈……」
「もう、もう2度と、あの薬は飲まないでください!!」
「分かったよ。約束する」
「絶対ですよ!!」
「ああ」
「もっと早く私を頼って欲しかったです」
紗奈の気持ちが落ち着くのを待ってから俺たちは古民家に向かった。
しばらく会話をしていると、紗奈も夕食がまだ食べていないことが分かった。俺が買い込んでいるカップ麺を二人で食べはじめた。
しばらく抱きしめられていたが紗奈は身体を離すとそう口にした。
「あ、ああ。まぁな。それじゃあ、ちょっと寒いけど射撃場の方へ行こうか」
俺は紗奈を伴い玄関から出た。外は街灯が一つしかないため陽が沈んだ後はかなり薄暗い。射撃場への道を二人で歩いていく。
二人とも吐く息が白くなっている。気温は5度前後だろうか。檜原村の冬は都内よりもさらに寒い。
この三ヶ月間、魔法弾の開発と大量生産に没頭していたため、季節を感じ取る余裕もなかった。唯を助けることが出来たら、しばらくは仕事はせずにゆっくりとしたいな。
隣を歩く紗奈と目があった。いつ見ても綺麗な顔立ちをしている。控えめに言ってもとんでもない美少女だ。
紗奈とのんびり過ごせたらそれだけで何もいらないぐらい幸せだろう。紗奈を見ながらそんなことを考えていると不思議そうな顔をしながら紗奈が口を開いた。
「どうしました? 私の顔をそんなまじまじと見て」
「いや、ほんと久しぶりだなと思って……」
「なんだ……。こういう時はかわいくて見惚れてた。ぐらい言ってくださいよ」
「可愛くて見惚れてたよ」
「もう遅いです」
紗奈は悪戯な笑みを浮かべた。笑顔も悔しいぐらいかわいい。美少女はただ生きているだけで周りの人をドキドキさせてくる罪深い生き物だ。
射撃場兼店舗の入り口に着くと俺は鍵を開け、中に入った。紗奈の前で5種類の9ミリの弾を披露した。
電灯と昔ながらの石油ストーブをつけるとカウンターの上に5発の魔法弾を出した。
「これが開発した魔法弾だよ。右から順に火炎弾、電撃弾、氷結弾、風刃弾、爆裂弾」
俺は一つ一つの魔法弾を説明していった。
「5種類もあるんですか。これならほとんどの魔物の弱点属性を狙えますね。あれ? 優斗さんって土属性魔法も使えましたよね? 土属性の魔法弾は作らないんですか?」
「やってみたけど土属性魔法は付与できなかったんだ。まぁよく考えてみたら土属性魔法は他の属性魔法とは違って、岩や地面を直接的に操作することが多いからな。弾に込めることはできないんだと思う」
「なるほど……。では、弾を見せて頂いても良いですか?」
「ああ」
俺は5発の魔法弾をマガジンに詰め、次々と発射していった。炎や氷、雷や風といった魔法が発動し、射撃場の土壁を痛めつけていく。
最後に放った爆裂弾は西洋甲冑を粉々にした。破壊された甲冑の金属片がカウンターの近くまで飛んできたが少し前の地面に落下した。
「ど、どうかな?」
「すっっごいです!! 弾の中にこれほどの威力の魔法を込められるなんて、驚きました。優斗さん、とんでもない発明をしましたね!!」
「ありがとう」
「本当にすごいですよ! 先輩は只者ではありません!!」
俺のことをよく知る紗奈からの褒め言葉は今までの誰の言葉よりも嬉しかった。
「弾を見せてもらってもいいですか?」
「ああ」
俺は箱の中からまた5発取り出し射撃カウンターの上に置いた。紗奈は火炎弾を手に取ると注意深く観察している。
「B級魔法を使うには一回3万オーラぐらい消費しますよね。この弾の先にもそれぐらいのオーラが込められているんですか?」
「いや、それがさ。大した量は使ってないんだ。3万の100分の1も使ってない」
「えっ!? そうなんですか? それなのにB級魔法並の威力があるんですか!?」
「そうなんだよ。俺も驚いたよ。どうやら弾丸にオーラを付与すると威力が爆発的に上がるみたいなんだ」
「そうなんですね……。これは革命ですよ!! この弾を使うだけで誰でもB級魔法が使えるんですから。今後、探索者達のパワーバランスにも変化が出ると思います」
「ありがとう。紗奈に褒められるとすごく嬉しいよ」
「いや、ほんと流石としか言えません。! 昔からオーラのコントロールは抜群に上手かったですし、なんでも器用にこなす所を尊敬してきましたが、こんな凄いものを開発するとは思いませんでした。本当に尊敬しますよ」
「ありがとう」
「ところで、Zで見ましたが、確か50発入りの箱が5万円なんですよね」
「ああ」
「安すぎます!!」
「えっ? そうかな?」
「それはもう、圧倒的に! 先輩の感覚はどうかしてますよ。明日からすぐ値上げしましょう。倍の値段に!」
「ええ!? 倍!? それは流石にまずいんじゃ……。せっかくついたお客さんがいなくなっちゃうよ!」
倍と聞いて焦ってしまう。9ミリ弾は元々の仕入れ値が1発四十円だ。俺はそれを1発千円にして売っている。原価の20倍だ。もちろんオーラを込めているから決して高くはないと思っていたのだが、流石に倍の値段は気が引けてしまう。それに少しずつ仲良くなってきていた常連さんにがっかりされるのも嫌だった。
「先輩、自分のZに来てるコメントちゃんと読んでますか? みんな安すぎるって言ってますよ。需要と供給のバランスが全く取れていないんです! だから、おそらく近いうちに値上げするだろうという噂がすでに広がっていますよ」
「そ、そうだったんだ」
「ええ、すでに別のフリマサイトでは大体3倍の値段で転売されています」
「ええっ! 転売!?」
「当たり前じゃないですか、先輩が安く売りすぎたんですからそりゃそうなりますよ! 3倍でもすぐに買い手がつくぐらいなんですから2倍は何ら問題がありません。少し心配でしたら明日は様子を見て、明後日からでもいいので値上げしましょう」
「わ、分かった。紗奈がそう言うなら」
「B級魔法が一回千円で打てるなんて安すぎます。それに先輩は唯ちゃんのために少しでも多くのお金を集めなきゃいけないんですよね? だったら最終的には15万円まで上げましょう」
確かに2億円あっても確実にエリクサーを競り落とせるとは限らない。状況によってはもっと高くなることもあり得るだろう。金は多ければ多いだけあるに越したことはなかった。
「分かったよ」
紗奈は昔から頭がキレる。紗奈の言う通りにしておけばきっとうまくいくだろう。俺はさっそく明後日から値上げすることをZ上で告知した。
♢ ♢ ♢
「えっ!」
古民家に向かうために外に出ると、紗奈は突然叫んだ。目を見開き、凄い形相をしている。
紗奈の視線の先にはオーラ回復薬の空瓶が大量に積まれていた。
「あの瓶……、あれ、『タミエル』ですよね……、まさか、優斗さん……あれを飲んだんですか……」
紗奈は血の気が引いたような顔をしている。一番見られちゃいけない人に見られてしまった。早く捨てておけばよかったと後悔する。
「ああ。短い期間で開発するためには仕方なかったんだ」
「な、何本ぐらい飲んだんですか!?」
紗奈は声を震わせながらでこちらを見てくる。
「一日10本で50日だから。500本ぐらいかな。たぶん……」
俺の言葉を聞いた紗奈は、次第に顔面が蒼白になっていった。そして、大粒の涙を流し始めた。
「なにやってるんですか!! 優斗さん、4年以上も寿命が縮まってしまってるじゃないですか!!」
紗奈は両眼から溢れ落ちる涙を拭おうともせず俺を睨んでくる。
「ごめん。だけど、他に手はなかったんだ」
紗奈は顔を紅潮させながら震えている。
「ばか!!」
紗奈はそう言いながら抱きついてきた。すごく強い力だ。
「本当に1日に10本も飲んだんですか?」
「ああ」
「一本飲んだだけでも、数時間は耐えられない激痛が伴うと言うのに……。そんな苦しみに耐えながら、魔法弾を作り出したんですか……」
「唯を救うにはこれしかないと思ったんだ。心配かけてごめん」
「なんて人なんですか、あなたは……」
紗奈はしばらくの間、両手で顔を押さえて泣き続けていた。大切な人を悲しませてしまったことに胸が痛んだ。
しばらくして紗奈は泣き腫らした顔で口を開いた。
「優斗さんにとって妹さんが大切なように、私にとっては優斗さんが何より大切なんです!」
「紗奈……」
「もう、もう2度と、あの薬は飲まないでください!!」
「分かったよ。約束する」
「絶対ですよ!!」
「ああ」
「もっと早く私を頼って欲しかったです」
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