やがて最強に至る弾丸付与術士の成り上がり

彼方

文字の大きさ
18 / 22

第18話 衝撃

しおりを挟む
俺たちは順調にダンジョンを探索して行き、1時間後の午後4時には地下60階を超えた。

 地下60階以下の階層はデスゾーンと呼ばれ、一気に死亡率が跳ね上がる。それは60階を超えるとA級モンスターが出現するようになるからだ。

 俺と紗奈は先ほどまでとは比べ物にならないほど集中して辺りを警戒して歩いていく。60階以下は少しの気の緩みが死に直結することを俺らはよく認識していた。

 今いる61階は通路も壁も天井も全てが凍りついているフロアだ。温度は間違いなく氷点下だろう。防寒着を着ていてもすごく寒い。

 足元はツルツルしていて歩きにくいし、たまに天井から巨大な氷柱が落ちてくるため、まったく気が休まらない。探索するだけでもかなりの難易度があるフロアだった。

 今歩いている場所はやや奥に向かって降っているため、滑らないように壁を触りながら足元を見てゆっくりと進んでいた。すると突然、部屋の奥から唸り声が聞こえてきた。

 慌てて顔を上げると、4メートルを越す巨大な虎がこちらに向かって歩いてきていた。距離が50メートルほど離れているためか、まだ俺たちに気づいた様子はない。

「シルバーライガーですね。あのモンスターはA級の中でも序列が9位。私たち二人では危険です。今回はここまでにしましょうか」

 紗奈は魔物を見ると冷静な声で囁いてきた。
すぐ後ろには上層に続く階段がある、今引き返せばあいつとの接触は防げるだろう。

 確かに、シルバーライガーは多くの熟練探索者達を仕留めてきている獰猛な魔物だ。紗奈が2人だけでは勝てないと判断するのも頷ける。だが俺は引く気はなかった。

「あいつなら多分大丈夫だと思う。紗奈はそこにいてくれ」

「優斗さん?」

 俺は氷の坂を滑るようにして降りていく、すると奴は俺を認識したようで、耳をつんざくような叫び声をあげた。距離はおよそ30メートル。

 あいつはは確か火属性が弱点だったな。俺は胸のホルスターからグロッグ19を引き抜くと、腰に収納していたマガジンを抜き、拳銃に差し込んだ。そして、モンスターに向かって引き金を引いた。

 号砲と共に射出された弾丸はシルバーライガーの頭部に直撃すると炸裂した。周囲5メートルに巨大な爆炎が広がった。

 シルバーライガーは炎から逃げるように爆炎の中から飛び出してきた。全身の皮膚は焼け爛れており、力無く俺を睨んでいる。俺は続けて引き金を引き、2発目、3発目を叩き込んだ。

 再び巨大な爆炎が奴を包み、シルバーライガーは呻き声を上げた。炎に包まれながら倒れ込むと動かなくなった。

「よし」

 後ろを振り返ると紗奈が慌てた様子で氷の坂を滑り降りてきたところだった。

 紗奈は立ち上がると大きな声をあげた。

「優斗さん!! 今の弾はなんなんですか!?  A級並の威力じゃないですか!!」

 紗奈は目を丸くしてこちらを見てくる。驚いた顔もとてつもなくかわいい。

「これは俺専用に開発した魔法弾なんだ。販売しているやつの10倍のオーラを込めていて、A級魔法レベルの威力が出せるんだ」

「す、凄いじゃないですか!! A級魔法って言ったらもう優斗さんの元々の実力を超えちゃってるじゃないですか!!」

「うん。俺もここまで威力が上がるとは思っていなかったから開発した時は驚いたよ」

「凄すぎます!! やっぱ優斗さんはとんでもない人ですね!!」

 紗奈は宝石のようにキラキラした瞳を俺に向けながら両手で俺の腕を掴んできた。まるで自分のことのように嬉しそうにしている。こんな風に嬉しそうにされたら俺までテンションが上がってしまう。 

「紗奈……。実はまだもう一段階、上の弾もあるんだ」

「ええー!! まだ上があるんですか!?」

「うん。射撃場でやったら店が壊れちゃうから、俺もまだ試したことはないんだけどさ。見てみる?」

「ぜひ!」

 S級魔法弾は多くのオーラが込められているため大量には作れない。こんなところで使うつもりは無かったが、紗奈の反応を見ていたら、どうしても見せたくなってしまった。

 俺は右腰に付けている小さなポーチからから一つの弾丸を取り出した。その弾は弾頭が赤褐色に輝いている。

「なんかすごく綺麗な弾ですね。宝石みたい……」

 俺はその弾をグロッグ19のカートリッジに入れると目の前に広がる、何もない空間に向かって引き金を引いた。

 発射された弾丸は赤く輝く尾を空中に引きながらまっすぐに飛んでいき壁に当たった。

 するとダンジョン内の全てが赤く染まるほどの輝きを放ちながら爆炎が広がり、周囲一帯が火の海になった。みるみるうちにフロア内の氷が溶けていき灼熱の世界が広がっていく。

 着弾点から30.メートルは離れているが、キャンプファイヤーのすぐそばにいるかのような鋭い熱気がこちらまで届いてきた。爆風が紗奈と俺の髪の毛を揺らす。

 あまりの光景に俺は圧倒されてしまった。目の前に広がる光景を呆然と見つめてしまう。

「…………」

「…………」

 隣を向くと、紗奈は目を見開き、口をあんぐりと開けたまま固まっている。

「ど、どうかな?」

「え、映像でしか見たことがないですが、私が見たことがあるS級魔法よりもさらに強力なように見えました。と、とんでもない威力ですよ! これ……」

「そ、そうだよな……。同感だ。まさかこれほどとは俺も思わなかったよ……」

 燃えたぎるダンジョンを前に俺たちの間にわずかな静寂が広がった。まだ炎は燃え続けている。

 自分でもまさかこれほどの威力になるとは思わなかった。嬉しいに違いないがそれよりも驚きの感情が遥かに優っていた。

「やりましたね!! この弾を使えば、S級探索者への道も開けますよ! いや、もしかしたらSS級も行けるかもしれません!」

 紗奈は両手を上に突き上げて興奮した様子で叫んだ。さっきよりもさらに目を輝かせている。

「あ、ありがとう」

 驚く紗奈の様子を見て、俺もようやく実感が込み上げてきた。紗奈が言うようにこの弾はかなりやばい。S級魔法なんてごく限られた探索者にしか使うことができない大技だ。俺が開発した魔法弾がその域に達していたことを知り喜びが込み上げてくる。

 ちなみに先ほどキラーライガーを倒したA級魔法弾は販売している弾丸の10倍である2996.34のオーラが込められている。そして、今放ったやつはさらに10倍の29963.4のオーラが込められている。

 初めの適正オーラ量を見つけるまではすごく大変だったが、強化バージョンの弾はすぐに適正オーラ量を見つけることができた。

「いやー、優斗さんが凄い人だと言うのは、昔から気付いていましたが、まさかここまでとは思いませんでした。本当に常識では測れない人ですね!!」

「ま、まぁ。4年以上の命を捧げているからね。これくらいは得られないと元が取れないよ」

「そうでしたね……」

 俺は気軽に口にしたのだが、紗奈の顔を見てすぐに自分の失言に気がついた。紗奈は顔を歪め、すごく悲しそうな表情をしている。

「もうタミエルは絶対に使っちゃダメですよ!」

「ああ。分かってるよ」

 俺たちは再び探索を始めた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ダンジョン発生から20年。いきなり玄関の前でゴブリンに遭遇してフリーズ中←今ココ

高遠まもる
ファンタジー
カクヨム、なろうにも掲載中。 タイトルまんまの状況から始まる現代ファンタジーです。 ダンジョンが有る状況に慣れてしまった現代社会にある日、異変が……。 本編完結済み。 外伝、後日譚はカクヨムに載せていく予定です。

現実世界にダンジョンが出現したのでフライングして最強に!

おとうふ
ファンタジー
2026年、突如として世界中にダンジョンが出現した。 ダンジョン内は無尽蔵にモンスターが湧き出し、それを倒すことでレベルが上がり、ステータスが上昇するという不思議空間だった。 過去の些細な事件のトラウマを克服できないまま、不登校の引きこもりになっていた中学2年生の橘冬夜は、好奇心から自宅近くに出現したダンジョンに真っ先に足を踏み入れた。 ダンジョンとは何なのか。なぜ出現したのか。その先に何があるのか。 世界が大混乱に陥る中、何もわからないままに、冬夜はこっそりとダンジョン探索にのめり込んでいく。 やがて来る厄災の日、そんな冬夜の好奇心が多くの人の命を救うことになるのだが、それはまだ誰も知らぬことだった。 至らぬところも多いと思いますが、よろしくお願いします!

【もうダメだ!】貧乏大学生、絶望から一気に成り上がる〜もし、無属性でFランクの俺が異文明の魔道兵器を担いでダンジョンに潜ったら〜

KEINO
ファンタジー
貧乏大学生の探索者はダンジョンに潜り、全てを覆す。 ~あらすじ~ 世界に突如出現した異次元空間「ダンジョン」。 そこから産出される魔石は人類に無限のエネルギーをもたらし、アーティファクトは魔法の力を授けた。 しかし、その恩恵は平等ではなかった。 富と力はダンジョン利権を牛耳る企業と、「属性適性」という特別な才能を持つ「選ばれし者」たちに独占され、世界は新たな格差社会へと変貌していた。 そんな歪んだ現代日本で、及川翔は「無属性」という最底辺の烙印を押された青年だった。 彼には魔法の才能も、富も、未来への希望もない。 あるのは、両親を失った二年前のダンジョン氾濫で、原因不明の昏睡状態に陥った最愛の妹、美咲を救うという、ただ一つの願いだけだった。 妹を治すため、彼は最先端の「魔力生体学」を学ぶが、学費と治療費という冷酷な現実が彼の行く手を阻む。 希望と絶望の狭間で、翔に残された道はただ一つ――危険なダンジョンに潜り、泥臭く魔石を稼ぐこと。 英雄とも呼べるようなSランク探索者が脚光を浴びる華やかな世界とは裏腹に、翔は今日も一人、薄暗いダンジョンの奥へと足を踏み入れる。 これは、神に選ばれなかった「持たざる者」が、絶望的な現実にもがきながら、たった一つの希望を掴むために抗い、やがて世界の真実と向き合う、戦いの物語。 彼の「無属性」の力が、世界を揺るがす光となることを、彼はまだ知らない。 テンプレのダンジョン物を書いてみたくなり、手を出しました。 SF味が増してくるのは結構先の予定です。 スローペースですが、しっかりと世界観を楽しんでもらえる作品になってると思います。 良かったら読んでください!

なんとなく歩いてたらダンジョンらしき場所に居た俺の話

TB
ファンタジー
岩崎理(いわさきおさむ)40歳バツ2派遣社員。とっても巻き込まれ体質な主人公のチーレムストーリーです。

最弱無双は【スキルを創るスキル】だった⁈~レベルを犠牲に【スキルクリエイター】起動!!レベルが低くて使えないってどういうこと⁈~

華音 楓
ファンタジー
『ハロ~~~~~~~~!!地球の諸君!!僕は~~~~~~~~~~!!神…………デス!!』 たったこの一言から、すべてが始まった。 ある日突然、自称神の手によって世界に配られたスキルという名の才能。 そして自称神は、さらにダンジョンという名の迷宮を世界各地に出現させた。 それを期に、世界各国で作物は不作が発生し、地下資源などが枯渇。 ついにはダンジョンから齎される資源に依存せざるを得ない状況となってしまったのだった。 スキルとは祝福か、呪いか…… ダンジョン探索に命を懸ける人々の物語が今始まる!! 主人公【中村 剣斗】はそんな大災害に巻き込まれた一人であった。 ダンジョンはケントが勤めていた会社を飲み込み、その日のうちに無職となってしまう。 ケントは就職を諦め、【探索者】と呼ばれるダンジョンの資源回収を生業とする職業に就くことを決心する。 しかしケントに授けられたスキルは、【スキルクリエイター】という謎のスキル。 一応戦えはするものの、戦闘では役に立たづ、ついには訓練の際に組んだパーティーからも追い出されてしまう。 途方に暮れるケントは一人でも【探索者】としてやっていくことにした。 その後明かされる【スキルクリエイター】の秘密。 そして、世界存亡の危機。 全てがケントへと帰結するとき、物語が動き出した…… ※登場する人物・団体・名称はすべて現実世界とは全く関係がありません。この物語はフィクションでありファンタジーです。

ある日、俺の部屋にダンジョンの入り口が!? こうなったら配信者で天下を取ってやろう!

さかいおさむ
ファンタジー
ダンジョンが出現し【冒険者】という職業が出来た日本。 冒険者は探索だけではなく、【配信者】としてダンジョンでの冒険を配信するようになる。 底辺サラリーマンのアキラもダンジョン配信者の大ファンだ。 そんなある日、彼の部屋にダンジョンの入り口が現れた。  部屋にダンジョンの入り口が出来るという奇跡のおかげで、アキラも配信者になる。 ダンジョン配信オタクの美人がプロデューサーになり、アキラのダンジョン配信は人気が出てくる。 『アキラちゃんねる』は配信収益で一攫千金を狙う!

オッサン齢50過ぎにしてダンジョンデビューする【なろう100万PV、カクヨム20万PV突破】

山親爺大将
ファンタジー
剣崎鉄也、4年前にダンジョンが現れた現代日本で暮らす53歳のおっさんだ。 失われた20年世代で職を転々とし今は介護職に就いている。 そんな彼が交通事故にあった。 ファンタジーの世界ならここで転生出来るのだろうが、現実はそんなに甘く無い。 「どうしたものかな」 入院先の個室のベッドの上で、俺は途方に暮れていた。 今回の事故で腕に怪我をしてしまい、元の仕事には戻れなかった。 たまたま保険で個室代も出るというので個室にしてもらったけど、たいして蓄えもなく、退院したらすぐにでも働かないとならない。 そんな俺は交通事故で死を覚悟した時にひとつ強烈に後悔をした事があった。 『こんな事ならダンジョンに潜っておけばよかった』 である。 50過ぎのオッサンが何を言ってると思うかもしれないが、その年代はちょうど中学生くらいにファンタジーが流行り、高校生くらいにRPGやライトノベルが流行った世代である。 ファンタジー系ヲタクの先駆者のような年代だ。 俺もそちら側の人間だった。 年齢で完全に諦めていたが、今回のことで自分がどれくらい未練があったか理解した。 「冒険者、いや、探索者っていうんだっけ、やってみるか」 これは体力も衰え、知力も怪しくなってきて、ついでに運にも見放されたオッサンが無い知恵絞ってなんとか探索者としてやっていく物語である。 注意事項 50過ぎのオッサンが子供ほどに歳の離れた女の子に惚れたり、悶々としたりするシーンが出てきます。 あらかじめご了承の上読み進めてください。 注意事項2 作者はメンタル豆腐なので、耐えられないと思った感想の場合はブロック、削除等をして見ないという行動を起こします。お気を悪くする方もおるかと思います。予め謝罪しておきます。 注意事項3 お話と表紙はなんの関係もありません。

異世界帰りの元勇者、日本に突然ダンジョンが出現したので「俺、バイト辞めますっ!」

シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
俺、結城ミサオは異世界帰りの元勇者。 異世界では強大な力を持った魔王を倒しもてはやされていたのに、こっちの世界に戻ったら平凡なコンビニバイト。 せっかく強くなったっていうのにこれじゃ宝の持ち腐れだ。 そう思っていたら突然目の前にダンジョンが現れた。 これは天啓か。 俺は一も二もなくダンジョンへと向かっていくのだった。

処理中です...