やがて最強に至る弾丸付与術士の成り上がり

彼方

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第19話 昇級

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午後6時半、俺たちは地下65階層までたどり着いたが、そろそろ魔法弾も少なくなってきていたため、今回はここで引き返すことにした。

 ここまでたどり着くまでにB級モンスターを25体、A級モンスターを17体倒すことができ、ドロップアイテムもたくさん手に入れることができた。また、探索する中で5つの未発見宝箱も見つけることができ、さまざまな希少アイテムも手に入れた。一回の探索にしては十分すぎる結果だろう。

 俺たちは、紗奈の速度強化魔法を使用しながらきた道を急いで引き返していった。一度倒したモンスターは再び出現するのに時間がかかるため、帰りはスムーズに進むことができた。

 ギルドに到着したのは午後9時過ぎだった。俺たちはすぐにギルドカウンターに向かった。

「加賀様、大嶺様、お疲れ様でした!! そして、おめでとうございます!! 67階への到達は今季での最高記録ですよ!!」

 受付にいた男性は先ほどゲートで見送ってくれた男性職員だった。すごく興奮しているように見える。

「あ、ありがとうございます!」

「今回の探索のデータはすでにスーパーコンピュータ「ノイマン」から送られてきています。今回の探索の結果、大嶺様はA級79位から74に上がり、加賀様はB級序列129743位からB級1位に上がりましたよ! おめでとうございます!」

「B級1位!? 何かの間違いじゃないですか?」

 俺は聞き間違いかと思ってつい聞き返してしまう。そんな急激なランクの上昇なんて聞いたことがない。

「はい! B級1位です! 間違いじゃないですよ! なので、来月にはほぼ間違いなくA級への昇格が決まります!! おめでとうございます!」

 毎月の月末までにB級10位までに入れた探索者はA級に昇格することができる。今日が11月28日だからほぼ確定なのだろう。

「俺が、A級に? 信じられない……」

 俺はまだ、現実を受け止めきれずにいた。A級探索者になることは昔からの大きな目標だった。しかし、最近は自分の才能の限界を感じ諦めいた。A級になることは、どんなに頑張っても超えられない壁として、認識してしまっていたからだ。

「優斗さん、当たり前じゃないですか!あれだけA級魔法とS級魔法を使用すれば、そりゃあこうなりますって!!」

「そ、そっか……」

「やりましたね! 来月のA級への昇格は間違いありませんね。おめでとうございます。今夜はお祝いしなきゃですね!」

 紗奈は隣で大喜びしていた。

「11月の急上昇ランキングでは全国一位です! これは本当にすごいことですよ!」

 職員の男性と紗奈は凄く興奮していた。まだ実感はわかなかったが凄く俺も幸せな気持ちだった。

 俺と紗奈は手に入れたアイテムをギルドに買い取ってもらってから檜原ダンジョンを後にした。時刻は9時半過ぎだ。ちなみに今日手に入れたアイテムの買取額は2100万ほどだった。一日で行った探索としては十分すぎる額だ。

 このペースでいけば2億を遥かに超える額を貯めることができるだろう。

 唯を救うという目標に少し近づいてきたようで、たまらなく嬉しかった。

♢        ♢       ♢

ダンジョンからの帰りに俺たちは地元のスーパー「セイコー」に寄った。と言うのも、紗奈が魔法弾の開発成功と、探索者ランクがB級1位に上昇したことをお祝いしてくれるらしい。気が利く後輩をもてた俺は本当に幸せものだ。

 セイコーは檜原村にあるスーパーの中では最も大きく品揃えも豊富だ。夜も22時まで空いているため、なにかと重宝する店だった。

 紗奈は「先輩は待っていてください」と言い残すと楽しそうな笑みを浮かべながら車を出ていった。ダンジョンから戻ったばかりだと言うのにまだまだ元気そうに見える。流石はA級内でも上位の探索者だ。

 久々の探索で俺は少し疲れてしまった。車のシートを少しだけ倒し窓の外を見つめる。駐車場の端に生えている街路樹の葉が全て無くなっていた。いつのにか冬が深くなってきているようだ。

 先ほどのダンジョン内も寒かったが、街も相当気温が低い。吐く息が白くなる中、俺はポケットからスマホを取り出した。唯が入院している立川総合病院のサイトにアクセスすると、暗証番号を入力し、今日の唯の様子を確認した。

 看護師や医者が毎日の唯の様子をこと細かに報告してくれるのだ。通常の患者にはこういうサービスはないのだが、紗奈の場合は国指定の難病であるためと、死期が迫っているためこうしたサービスを受けられるのだ。

 俺はじっくりと文章に目を通していく。

『辛い投薬治療を今日も頑張りました。日中は好きなバラエティ番組を見て過ごしていました。食事ではお昼に出たシャインマスカットを美味しそうに食べていました。お手洗いに行く際は大腿骨の石化が進行してきてるためか、歩きづらそうにしていました』

「はぁ……。今日も頑張ったんだな……唯……」

 毎日の記録を読むと胸が締め付けられる。しかしそれと同時に熱い決意も込み上げてくる。

「必ず助けるからな。必ず……」

 俺は何度も自分に言い聞かせてきた言葉を今日も口にする。病と戦っている妹の姿を思い浮かべるだけで無限の勇気が湧いてくる気がした。

 魔法弾の売り上げは好調で、貯金は着実に増えていっている。また、今日みたいにダンジョン探索もしていったら、予定よりもかなり早く2億を貯めることができるだろう。

 医者に宣告された寿命まではまだ三ヶ月もある。当初は無謀とも思えた計画だったが、今は手に届く距離まで近づいてきている気がする。

 唯を助けるまでは少しの安心もできない。しかし、以前よりも確かに未来への希望を感じていた。

「明日は久しぶりに唯に会いにいこう。会って安心させてやらなくちゃな」

 俺は、魔法弾を開発している間も2週間に一度は病室を訪れていた。そして、会いにいけない日はテレビ通話を欠かさずにして唯とコミュニケーションをとってきていた。

 しかしここのところ、店の開店準備やらで顔を出せてはいなかったため、明日会いに行くことを決めた。

 もし紗奈の予定が空いてたら一緒に来てもらおう。

 そんなことを考えていたら助手席の扉が開いた。

「お待たせしました」

 紗奈は中に乗り込んでくるとシートベルトを閉めた。

「あれっ? 商品は?」

「全部異空間に入れちゃいましたよ」

「やっぱり便利だな、その能力」

「もうこれ無しじゃ生活出来ませんよ」

「ありがとう。いくらだった?」

 俺は財布を取り出しながら口を開いた。

「一万円ぐらいでした。あっ、お金は入りませんよ。ただで居候させてもらってるんです。食費や光熱費は私に出させてください」

「えっ? それは悪いよ」

 俺は財布から1万円を取り出して渡そうとする。

「いいですって。早く財布をしまってください。先輩は唯ちゃんのために少しでも多くお金を貯める必要があるじゃないですか! 私にも協力させてくださいよ」

「分かったよ。ありがとう紗奈」

 紗奈の優しさに甘えることにした。どこまでも優しい後輩だ。

 俺は車を走らせ自宅に向かった。

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